本プロシーディングスの著作権は日本加速器学会に帰属します。本プロシーディングス全体または個々の論文を転載する場合には、予め日本加速器学会の許可を必要とします。論文中または口頭発表スライド中の図表を複製使用する際には、日本加速器学会の許可は不要ですが、自分が著者に含まれない場合には必ず著者名を含め出典を明らかにしてください。

2016年11月23日 公開

プロシーディングス目次(アブストラクト付き) (論文掲載 347 件、○印は発表者)

[プロシーディングス目次(アブストラクトなし)へ]
[著者索引ページへ]

8月8日(月)口頭発表セッション
 合同セッション(8月8日 国際会議室 10:00 ) 4  件
 電子加速器/真空(8月8日 国際会議室 15:20 ) 7  件
 ハドロン加速器(8月8日 会議室201 15:20 ) 7  件
 特別講演(8月8日 国際会議室 18:00 ) 1  件
 
8月9日(火)口頭発表セッション
 加速器制御/電磁石と電源1(8月9日 国際会議室 9:00 ) 4  件
 電磁石と電源2(8月9日 国際会議室 10:30 ) 5  件
 ビームダイナミクス・加速器理論(8月9日 会議室201 9:00 ) 4  件
 ビーム診断・ビーム制御/高周波源(8月9日 会議室201 10:30 ) 5  件
 技術研修会1(8月9日 国際会議室 15:20 ) 1  件
 学会賞受賞講演(8月9日 国際会議室 17:20 ) 3  件
 
8月10日(水)口頭発表セッション
 技術研修会2(8月10日 国際会議室 9:00 ) 1  件
 加速器応用・産業利用1/加速器土木・放射線防護1(8月10日 国際会議室 10:10 ) 5  件
 レーザー/粒子源1(8月10日 会議室201 10:10 ) 6  件
 加速器土木・放射線防護2/粒子源2(8月10日 国際会議室 13:10 ) 5  件
 加速器応用・産業利用2(8月10日 国際会議室 15:00 ) 6  件
 高周波加速空胴/LLRF(8月10日 会議室201 13:10 ) 5  件
 光源加速器(8月10日 会議室201 15:00 ) 6  件
 
8月8日(月)ポスターセッション1
 ハドロン加速器(8月8日 コンベンションホール 13:10 ) 8  件
 LLRF(8月8日 コンベンションホール 13:10 ) 4  件
 高周波加速空胴(8月8日 コンベンションホール 13:10 ) 15  件
 高周波源(8月8日 コンベンションホール 13:10 ) 11  件
 粒子源(8月8日 コンベンションホール 13:10 ) 12  件
 レーザー(8月8日 コンベンションホール 13:10 ) 5  件
 電子加速器(8月8日 コンベンションホール 13:10 ) 9  件
 光源加速器(8月8日 コンベンションホール 13:10 ) 9  件
 ビーム診断・ビーム制御(8月8日 コンベンションホール 13:10 ) 14  件
 加速器制御(8月8日 コンベンションホール 13:10 ) 10  件
 ビームダイナミクス・加速器理論(8月8日 コンベンションホール 13:10 ) 5  件
 真空(8月8日 コンベンションホール 13:10 ) 2  件
 電磁石と電源(8月8日 コンベンションホール 13:10 ) 11  件
 加速器応用・産業利用(8月8日 コンベンションホール 13:10 ) 13  件
 加速器土木・放射線防護(8月8日 コンベンションホール 13:10 ) 6  件
 
8月9日(火)ポスターセッション2
 ハドロン加速器(8月9日 コンベンションホール 13:10 ) 8  件
 LLRF(8月9日 コンベンションホール 13:10 ) 4  件
 高周波加速空胴(8月9日 コンベンションホール 13:10 ) 14  件
 高周波源(8月9日 コンベンションホール 13:10 ) 10  件
 粒子源(8月9日 コンベンションホール 13:10 ) 12  件
 レーザー(8月9日 コンベンションホール 13:10 ) 5  件
 電子加速器(8月9日 コンベンションホール 13:10 ) 10  件
 光源加速器(8月9日 コンベンションホール 13:10 ) 9  件
 ビーム診断・ビーム制御(8月9日 コンベンションホール 13:10 ) 14  件
 加速器制御(8月9日 コンベンションホール 13:10 ) 8  件
 ビームダイナミクス・加速器理論(8月9日 コンベンションホール 13:10 ) 5  件
 真空(8月9日 コンベンションホール 13:10 ) 3  件
 電磁石と電源(8月9日 コンベンションホール 13:10 ) 10  件
 加速器応用・産業利用(8月9日 コンベンションホール 13:10 ) 13  件
 加速器土木・放射線防護(8月9日 コンベンションホール 13:10 ) 7  件
 
8月8日(月)- 9日(火)革新的加速器技術(の提案)ポスター
 革新的加速器技術(の提案)(8月8,9日 コンベンションホール 13:10 ) 2  件
 
8月8日(月)- 9日(火)施設現状報告ポスター常設展示
 施設現状報告ポスター(8月8,9日 コンベンションホール 13:10 ) 30  件

合同セッション (8月8日 国際会議室)
10:00 - 10:30 
MOOLP01
p.1
実用加速器を目指したステージングレーザー航跡場加速
Staging laser wakefield acceleration research aiming at practical accelerators

○細貝 知直(阪大工),益田 伸一,ジドコフ アレクセイ,パサック ナビーン,大塚 崇光,荻野 純平(阪大 光センター),中村 隆浩(阪大工),末田 敬一,金 展(阪大 光センター),田口 雄基,大迫 浩幹(阪大 工),中新 信彦(量子機構 関西研),兒玉 了祐(阪大 レーザー)
○Tomonao Hosokai (Dept. Eng. , Osaka Univ.), Shin'ichi Masuda, Alexei Zhidkov, Naveen Pathak, Takamitsu Otsuka, Junpei Ogino (PPC , Osaka Univ.), Takahiro Nakamura (Dept. Eng. , Osaka Univ.), Keiichi Sueda, Jin Zhan (PPC , Osaka Univ.), Yuki Taguchi, Kouki Osako (Dept. Eng. , Osaka Univ.), Nobuhiko Nakanii (QST KPSI), Ryosuke Kodama (ILE, Osaka Univ.)
 
内閣府ImPACTプログラム(佐野PM)にてテーブルトップサイズXFELの実現を目指してレーザー航跡場加速(LWFA)の開発を進めている。XFELには超安定かつ高品質のGeV級高輝度極短電子ビームが必要である。これまでのLWFA研究では数GeVの準単色電子ビームの発生は既に報告されているものの、再現性の高いリピータブルな電子ビームは得られていない。我々は、リピータブルなGeV級LWFAを実現するため、マルチレーザービーム駆動のステージングLWFAを提案し研究を開始した。はじめに、我々はプラズママイクロオプティクスと名付けられたプラズマ集光デバイスを提案しリピータブルな入射電子ビームの生成法を確立した。続いて、入射電子を追加速用レーザー航跡場によって自在に加速/減速し準単色電子を発生するステージング加速にも成功した。これらの技術に電子集束用オプティクスを用いたエネルギースライス技術を加え、現在、装置サイズ~1mで200MeV級のリビータブルルな単色電子を発生するレーザー加速装置を構築した。今回は、これらの要素技術をさらに展開して開発を進めている「リピータブルなGeV級ステージングLWFA」研究の進捗を報告する。加えて、内閣府ImPACTプログラムにてSP-8播磨キャンパスの旧SCSS加速器トンネル内にて構築を開始したLWFA専用プラットフォームについても紹介する。
 
10:30 - 11:00 
MOOLP02
p.4
[Slides]
SuperKEKB フェーズ1における入射器とリングの現状
SuperKEKB Phase1 (Injector+Ring) Status Report

○紙谷 琢哉,赤井 和憲,秋山 篤美,明本 光生,安達 利一,阿部 哲郎,荒川 大,荒木田 是夫,有永 三洋,有本 靖,飯田 直子,飯沼 裕美,池田 仁美,池田 光男,石井 仁,石橋 拓弥,岩崎 昌子,岩瀬 広,植木 竜一,上原 貞治,宇野 彰二,江川 一美,榎本 收志,榎本 嘉範(KEK),El Khechen Dima(オルセー研究所、フランス),海老原 清一,生出 勝宣,大内 徳人,大木 俊征,大沢 哲,大澤 康伸,大西 幸喜,大見 和史,小川 雄二郎,小田切 淳一,小野 正明,柿原 和久,影山 達也(KEK),風間 慎吾(チューリッヒ大学、スイス),梶 裕志,片桐 広明,加藤 茂樹,金澤 健一,可部 農志,川村 真人,川本 崇,菊池 光男,工藤 喜久男,倉品 美帆,小磯 晴代,小島 裕二,小玉 恒太,小林 鉄也,坂井 浩,坂本 裕,佐々木 信哉,佐武 いつか ,佐藤 大輔,佐藤 政則,佐藤 政行,佐波 俊哉,設楽 哲夫,柴田 恭,清水 洋孝,周 翔宇,周 徳民,白井 満,白川 明広,末武 聖明,末次 祐介,菅原 龍平,杉本 寛,諏訪田 剛,清宮 裕史,宗 占国,鷹崎 誠治,竹内 保直,竹中 たてる,田中 窓香,多和田 正文,張 叡,邱 xO①づ擴・清澄,照井 真司,峠 暢一,飛山 真理,内藤 孝,仲井 浩孝,中尾 克巳,中島 啓光,中西 功太,中村 衆,中村 達郎,中山 浩幸,夏井 拓也,西脇 みちる,二宮 重史,野島 健大,原 和文,肥後 寿泰,久松 広美,福田 茂樹,福間 均,船越 義裕,舟橋 義聖,フラナガン ジョン,古川 和朗,古屋 貴章,細山 謙二,本間 輝也,本間 博幸,増澤 美佳,松下 英樹,松本 修二,松本 利広,丸塚 勝美,三浦 孝子,三川 勝彦,道園 真一郎,光延 信二,三増 俊広,宮原 房史,森 健児,森 隆志,森田 昭夫,森田 欣之,矢野 喜治,山岡 広,横山 和枝,吉田 正人,吉田 光宏,吉野 一男,吉本 伸一,渡邉 謙,王 旭東(KEK)
○Takuya Kamitani, Kazunori Akai, Atsuyoshi Akiyama, Mitsuo Akemoto, Toshikazu Adachi, Tetsuro Abe, Dai Arakawa, Yoshio Arakida, Mitsuhiro Arinaga, Yasushi Arimoto, Naoko Iida, Hiromi Iinuma, Hitomi Ikeda, Mitsuo Ikeda, Hitoshi Ishii, Takuya Ishibashi, Masako Iwasaki, Hiroshi Iwase, Ryuichi Ueki, Sadaharu Uehara, Shoji Uno, Kazumi Egawa, Atsushi Enomoto, Yoshinori Enomoto (KEK), Dima El Khechen (LAL, Orsay, France), Kiyokazu Ebihara, Katsunobu Oide, Norihito Ohuchi, Toshiyuki Oki, Satoshi Ohsawa, Yasunobu Ohsawa, Yukiyoshi Ohnishi, Kazuhito Ohmi, Yujiro Ogawa, Jun-ichi Odagiri, Masaaki Ono, Kazuhisa Kakihara, Tatsuya Kageyama (KEK), Shingo Kazama (University of Zurich, Switzerland), Hiroshi Kaji, Hiroaki Katagiri, Shigeki Kato, Ken-ichi Kanazawa, Atsushi Kabe, Masato Kawamura, Takashi Kawamoto, Mitsuo Kikuchi, Kikuo Kudo, Miho Kurashina, Haruyo Koiso, Yuuji Kojima, Kota Kodama, Tetsuya Kobayashi, Hiroshi Sakai, Yutaka Sakamoto, Shinya Sasaki, Itsuka Satake, Daisuke Satoh, Masanori Satoh, Masayuki Sato, Toshiya Sanami, Tetsuo Shidara, Kyo Shibata, Hirotaka Shimizu, Xiangyu Zhou, Demin Zhou, Mitsuru Shirai, Akihiro Shirakawa, Masaaki Suetake, Yusuke Suetsugu, Ryuhei Sugahara, Hiroshi Sugimoto, Tsuyoshi Suwada, Yuji Seimiya, Zhanguo Zong, Seiji Takasaki, Yasunao Takeuchi, Tateru Takenaka, Madoka Tanaka, Masafumi Tawada, Rui Zhang, Feng Qiu, Kiyosumi Tsuchiya, Shinji Terui, Nobukazu Toge, Makoto Tobiyama, Takashi Naito, Hirotaka Nakai, Katsumi Nakao, Hiromitsu Nakajima, Kota Nakanishi, Shu Nakamura, Tatsuro Nakamura, Hiroyuki Nakayama, Takuya Natsui, Michiru Nishiwaki, Shigeshi Ninomiya, Kenta Nojima, Kazufumi Hara, Toshiyasu Higo, Hiromi Hisamatsu, Shigeki Fukuda, Hitoshi Fukuma, Yoshihiro Funakoshi, Yoshisato Funahashi, John Flanagan, Kazuro Furukawa, Takaaki Furuya, Kenji Hosoyama, Teruya Honma, Hiroyuki Honma, Mika Masuzawa, Hideki Matsushita, Shuji Matsumoto, Toshihiro Matsumoto, Katsumi Marutsuka, Takako Miura, Katsuhiko Mikawa, Shinichiro Michizono, Shinji Mitsunobu, Toshihiro Mimashi, Fusashi Miyahara, Kenji Mori, Takashi Mori, Akio Morita, Yoshiyuki Morita, Yoshiharu Yano, Hiroshi Yamaoka, Kazue Yokoyama, Masato Yoshida, Mitsuhiro Yoshida, Kazuo Yoshino, Shin-ichi Yoshimoto, Ken Watanabe, Xudong Wang (KEK)
 
KEKでは2010年まで約10年間にわたり運転を行ってきたBファクトリー加速器(KEKB)のルミノシティーを40倍向上させるSuperKEKB加速器のための増強改造を進めてきた。これの本格的な運転に入る前の試験運転段階として、2016年2月よりPhase1と呼ばれる状態での運転を開始し同年6月末まで行われる。このPhase1では電子陽電子衝突実験のためのBelle2検出器、衝突点でのビーム収束のための超伝導マグネットによる最終収束系及び陽電子ダンピングリングはまだ設置されていない。Phase1運転の主な目的は入射器、ビームトランスポートライン及び電子と陽電子の蓄積リングを通して問題無くビーム入射、蓄積が行える状態になっていることを確認し、各種機器の立ち上げ、初期調整や較正を行うこと、さらに陽電子蓄積リング(LER)においては放射光による壁面からの電子放出の影響を軽減するために新型の真空チェンバーに全面的に更新したことで初期到達真空度が悪いため、ビームによる真空焼き出しを進めてPhase2以降の運転に向けて真空度を向上させておくことである。本講演では入射器のコミッショニングの状況を含めて、SuperKEKB加速器のPhase1運転で達成された事柄についての現状を報告する。
 
11:00 - 11:30 
MOOLP03
p.9
[Slides]
113番元素発見:理研RIBFでの超重元素合成
RIBF Accelerators and Synthesis of the New Element [113]

○上垣外 修一(理化学研究所 仁科加速器研究センター)
○Osamu Kamigaito (RIKEN Nishina Center)
 
昨年の大晦日、「113番元素の命名権獲得」というニュースが全国を駆け巡った。理化学研究所の森田浩介氏らの研究グループが113番元素の発見者であると国際純正・応用化学連合(IUPAC)に認められ、この元素の名前と記号を提案するよう要請されたことに関する報道である。これにより、長い歴史を持つ元素の周期表に、日本で発見された元素が加えられることになった。この講演では、欧米及び理研RIビームファクトリーでの超重元素合成への取り組みと、今後の展望をお話ししたい。
 
11:30 - 12:00 
MOOLP04
p.14
[Slides]
ニュートリノの加速器実験 T2K J-PARC
Accelerator Based Neutrino Experiments T2K J-PARC

○五十嵐 進(高エネルギー研)
○Susumu Igarashi (KEK)
 
1998年にスーパーカミオカンデの大気ニュートリノ測定からニュートリノ振動の観測が発表された。これはニュートリノに質量があることを示し、素粒子の標準模型の枠を超える重要な発見となった。この現象を人工的に発生させたニュートリノで精密測定するため、大強度陽子加速器研究施設(J-PARC)でミューニュートリノを発生させ、295 km離れたスーパーカミオカンデでニュートリノを測定する長基線ニュートリノ振動実験T2K (Tokai to Kamioka)が行われている。主リング(MR)から大強度の陽子を供給することが求められ、エネルギー30 GeV、パルスあたりの陽子数2×10^14個を2.48秒周期でニュートリノターゲットへ取り出し、390 kWのビームパワーを達成している。そのためのビーム調整として、基本波に2倍高調波を重畳したrf電圧を使い空間電荷効果を低減し、ベータトロン振動の線形結合共鳴および3次共鳴を補正すること等でビームロスを低減した。MRの設計ビームパワーは750 kWであり、その達成のために繰り返し周期を1.3秒に速める計画で、電磁石電源の製作、rfの増強、コリメータの増強、および入射機器および速い取り出し機器の改造が行われている。更に反ニュートリノの振動確率の違いを測定することでCP対称性の破れを検証するため、設計性能を大きく上回る大強度ビームの実現を目指している。
 
電子加速器/真空 (8月8日 国際会議室)
15:20 - 15:40 
MOOL01
p.19
[Slides]
極短電子バンチからのテラヘルツ領域コヒーレント遷移放射の計測
Measurement of coherent transition radiation in the THz region from extremely short electron bunch

○阿部 太郎,柏木 茂,日出 富士雄,武藤 俊哉,柴崎 義信,南部 健一,長澤 育郎,高橋 健,齊藤 寛峻,濱 広幸(東北大学電子光理学研究センター)
○Taro Abe, Shigeru Kashiwagi, Fujio Hinode, Toshiya Muto, Yoshinobu Shibasaki, Kenichi Nanbu, Ikuro Nagasawa, Ken Takahashi, Hirotoshi Saito, Hiroyuki Hama (Research Center for Electron Photon Science, Tohoku University)
 
我々は、東北大学電子光理学研究センターに建設した小型試験加速器施設(t-ACTS:test Accelerator for Coherent THz Source)において、加速器ベースのコヒーレントテラヘルツ光源の研究開発を行っている。テラヘルツ領域でのコヒーレント放射を得るためには、サブピコ秒オーダーの電子バンチを生成する必要がある。我々はVelocity bunching法を用いてバンチ圧縮を行い、ストリークカメラを用いた可視光領域の遷移放射の測定によって500 fs以下の極短電子バンチの生成を確認した。しかし、現在のセットアップではストリークカメラを用いた測定系では時間分解能が約400 fsであり、テラヘルツ領域のコヒーレント放射を発生するのに十分なバンチ長まで電子ビームが圧縮されているかを確認することができなかった。そこで、遷移放射の電荷量依存性および干渉計を用いた遷移放射のスペクトルを測定し、極短電子バンチからのテラヘルツ領域のコヒーレント遷移放射を確認した。本発表では、コヒーレント遷移放射強度の電荷量依存性の測定、ならびに干渉計によるスペクトル測定の結果について報告する。
 
15:40 - 16:00 
MOOL02
p.24
SuperKEKBのフェーズ1のビームコミッショニング
Phase 1 beam commissioning of SuperKEKB

○船越 義裕(高エネ機構)
○Yoshihiro Funakoshi (KEK)
 
2010年6月にKEKBの運転が休止し、SuperKEKBに向けての改造工事が開始された。5年以上にわたる工事や調整の後、2016年2月初めから6月末までビーム運転が行われた。この運転はPhase 1と呼ばれ、物理実験用の検出器(Belle-II)と衝突点近傍のFinal doublet(超電導4極電磁石)は設置されていない。このPhase 1の運転の主な目的は以下の通りである。1)各機器の立ち上げ、2)ビーム運転用のソフトウエアーツールの確立、3)Belle-II検出器設置の前に十分な真空焼き(vacuum scrubbing)を行う、4)Belle-II検出器のソレノイド磁場やFinal doubletなどの電磁石がない状態でのoptics補正(特に十分小さな垂直エミッタンスが得られることを確認)、5)小さなテスト検出器を用いてビームバックグラウンドがシミュレーションと合うかどうかを確認する、6)その他ビーム運転上の問題がないかを確認する。この発表においては、以上の目的に対するビーム運転の結果を報告する。
 
16:00 - 16:20 
MOOL03
p.29
[Slides]
コンパクトERLにおけるビームロス低減のためビームハロー観察及び解析
Beam halo observation and examination for beam loss reduction at the Compact ERL

○田中 オリガ,中村 典雄,島田 美帆,宮島 司,帯名 崇,高井 良太(KEK)
○Olga Tanaka, Norio Nakamura, Miho Shimada, Tsukasa Miyajima, Takashi Obina, Ryota Takai (KEK)
 
Since the Compact ERL (cERL) was constructed and successfully commissioned, the beam loss studies are performing systematically to prevent the radiation damage of the accelerator elements, and to keep the irradiation outside the machine at the safety level. There are different reasons of the beam losses in cERL. It could be the beam halos and longitudinal bunch tales; dark currents from the cathode and the superconductive accelerator cavities; beam line elements misalignment; kicks from the steering coils, input / HOM couplers, as well as laser mask diffraction and scattering at the camera’s mirror. Our goal is to find the reason of the beam halo and beam loss in cERL. Some result of the beam halo measurements and corresponding simulations, that are one step towards to the beam halo and beam loss mitigation are presented in this work.
 
16:20 - 16:40 
MOOL04
p.34
[Slides]
ATF2焦点における FONT パルス内フィードバックを使ったジッター低減
Beam jitter reduction with FONT intra-train feedback at ATF2

○奥木 敏行,照沼 信浩(高エネ研、総研大),加納 勇也,駒宮 幸男(東大),Kraljevic Neven,Christian Glenn,Bromwich Talitha,Burrows Philip,Perry Colin(Oxford University)
○Toshiyuki Okugi, Nobuhiro Terunuma (KEK, SOKENDAI), Yuya Kano, Sachio Komamiya (University of Tokyo), Neven Kraljevic, Glenn Christian, Talitha Bromwich, Philip Burrows, Colin Perry (Oxford University)
 
ATF2ビームラインは、国際リニアコラー計画(ILC)の衝突点でビームを小さく絞るための技術開発をおこなっている。ILCでは、1つのパルス内に他数のバンチを加速する多バンチビーム運転を考えていて、ATF2ビームラインでも約180ns離れた2つのビームを同時に焦点に送ることが出来る。 Oxford大学の研究グループは、同一パルス内で1番目のビームの位置の情報から2番目以降のビームの位置ジッター、角度ジッターを低減する高速Feedback 技術(FONT)の開発を進めていて、ATF2ビームラインにおいて開発試験を進めている。 現在、ATF2の焦点では電子ビームの位置ジッター、角度ジッターがビームサイズや角度分散の20-30%程度ある。本発表では、2バンチビーム運転時の後続バンチの位置ジッター、角度ジッターを高速 Feedback 技術を使い抑えた時のATF2の焦点でのビームサイズの影響について報告する。
 
16:40 - 17:00 
MOOL05
p.39
ELECTRON BEAM FOR COMPACT THZ FEL AMPLIFIER AT KYOTO UNIVERSITY
○Sikharin Suphakul, Konstantin Torgasin, Kenichi Morita, Heishun Zen, Toshiteru Kii, Kai Masuda, Hideaki Ohgaki (Institute of Advanced Energy, Kyoto University)
 
A compact terahertz radiation source is under developing at Institute of Advanced Energy Kyoto University. The electron bunches are generated by 1.6 cells photocathode RF-gun which provides the beam energy of 4.6 MeV and the rms bunch length of 7.6 ps. The bunches are compressed longitudinally by a magnetic chicane bunch compressor. The compressed electron bunches pass through a short planar undulator where the terahertz radiation will be generated via coherent synchrotron radiation. The electron beam and terahertz radiation characterization will be present in this contribution.
 
17:00 - 17:20 
MOOL06
p.43
[Slides]
ILCのためのSTF超伝導加速器開発の進展
Progress of STF Accelerator development for ILC

○早野 仁司(高エネルギー加速器研究機構)
○Hitoshi Hayano (High Energy Accelerator Research Organization)
 
The superconducting RF test facility (STF) in KEK is the facility for developing superconducting Linac technologies of the International Linear Collider (ILC). The STF accelerator is a test accelerator by the integration of these ILC technologies such as superconducting cavities and cryomodules. In 2015, the cavities in the 12m-cryomodule and the 6m-cryomodule were tested the accelerating gradient with 2K cold state, and achieved 30.3MV/m average gradient for total 12 cavites. They were powered individually by the klystron, and processed up cavity by cavity. After the high power test, the waveguide system to distribute the klystron power to 8 cavities simultaneously was constructed. The MARX modulator for the multi-beam-klystron is also newly developed and installed, and is under improvement of pulse voltage flatness. These recent new developments of the STF accelerator will be summarized and discussed in this paper.
 
17:20 - 17:40 
MOOL07
p.47
[Slides]
超高真空における電子刺激脱離と直流放電現象の関係
Relation between electron-stimultated desorption and dc discharge in ultra high vacuum

○山本 将博(高エネ研),西森 信行(量子科学技術研究開発機構)
○Masahiro Yamamoto (KEK), Nobuyuki Nishimori (QST)
 
高輝度電子ビーム源の開発は、高繰り返しX-FELや高ルミノシティーの電子‐イオン衝突型加速器の実現に不可欠である。直流電界型電子源では、電極間に高電圧を長時間安定に印可することが求められ、特に数百kV以上の高電圧を安定に維持するためには、電極間で微小な放電を繰り返して放電電圧を上昇させるコンディショニングが不可欠である。KEKに建設されたエネルギー回収型リニアックの実証機であるcompact ERLの電子銃についてコンディショニングを実施し、i)放電が停止する電圧(以下、放電停止電圧)が存在すること、ii)放電停止電圧は放電回数に対してほぼ連続的に増加すること、iii)放電発生時に放出されるガスは放電開始時の電圧と放電停止電圧の差にほぼ比例すること、iv)電圧の保持時間は放電停止電圧以下では非常に長いこと、を明らかにした。我々はこれらの現象を無矛盾に説明できる物理現象として陽極で起きる電子刺激脱離現象に注目し、超高真空における直流放電発生およびコンディショニング進行のメカニズムについて考察した。ここで得られた知見は、電子源に限らず高真空より良い真空の直流高電圧機器のコンディショニングの進行状況の判断や安定に保持できる電圧を知る点で有用である。
 
ハドロン加速器 (8月8日 会議室201)
15:20 - 15:40 
MOOM01
p.52
[Slides]
複合イオンビーム利用研究の展開を目指した6 MVタンデム型静電加速器の開発
Development of the 6 MV Tandem Electrostatic Accelerator for New Prospects of Multiple Ion Beam Applications

○笹 公和(筑波大学 応用加速器部門),Stodola Mark,Sundquist Mark(National Electrostatics Corp.)
○Kimikazu Sasa (UTTAC, Univ. Tsukuba), Mark Stodola, Mark Sundquist (National Electrostatics Corp.)
 
筑波大学では、2011年から米国National Electrostatics Corp.と共同で6 MVタンデム型静電加速器の開発と建設を行ってきた。東日本大震災で損壊した12UDペレトロン型タンデム加速器の更新加速器として、国内では約20年振りの建設となる大型静電加速器である。加速器システムとしては、5台の負イオン源と12本のビームラインを有しており、複合的なイオンビーム利用研究の新たな展開が期待される。 6 MVタンデム型静電加速器は、全長10.5 m、直径2.7 mの加速タンク内に強化アクリルガラス支柱に保持されたコンプレスト型加速管を設置しており、最高到達電圧として6.5 MVを達成している。荷電変換機構は、80枚の荷電変換用フォイルユニットとArガスストリッパーカナルを併用している。電圧制御はGVM制御とスリット電流負帰還制御の2方式により、10E-4以下の電圧安定性を得ている。ラムシフト偏極イオン源による偏極陽子と重陽子から、重イオン用Csスパッタ負イオン源によるAuまでの多種のイオンを加速可能である。加速エネルギー範囲は、1 keV分解能で陽子は1.5 MeVから13 MeVまで、Auイオンでは90 MeVまでとなっている。高度に制御されたイオンビームは、イオンビーム物質分析法や加速器質量分析法、宇宙環境用半導体のイオン照射実験などに適用可能である。2016年3月より稼働を開始した最新鋭の6 MVタンデム型静電加速器の設計と開発状況及びイオンビーム利用研究の展開について報告する。
 
15:40 - 16:00 
MOOM02
p.56
リング荷電変換器
ring charge stripper

○今尾 浩士,上垣外 修一,奥野 広樹,福西 暢尚,須田 健嗣,坂本 成彦,山田 一成,矢野 安重(理研仁科センター)
○Hiroshi Imao, Osamu Kamigaito, Hiroki Okuno, Nobuhisa Fukunishi, Kenji Suda, Naruhiko Sakamoto, Kazunari Yamada, Yasushige Yano (RIKEN Nishina Center)
 
理研RIビームファクトリー(RIBF)の様な重イオン加速器において、加速途中での荷電変換は効率的加速の為に必要不可欠なプロセスである。 しかし、一般に荷電変換器による1回の荷電変換効率は15-30%程度であり、効率的加速と引き換えに強度を大きく損ねる事は避けられない。例えばRIBFでは2回の荷電変換を行い、トータル僅か6%程度の変換効率となっており、大強度化の大きなボトルネックとなっている。 米国の次世代計画FRIBにおいては、超伝導線形加速器を用い多数の電荷の重イオンを同時に加速する事で(マルチチャージ加速)、荷電変換効率の実質的増強を図っている。しかし、これは線形加速器特有の手法であり、サイクロトロン等のリング型の加速器を用いて高エネルギーまで効率的な加速を行う際には応用できない。本研究では近年開発された大強度重イオンビームに適用可能なガスストリッパーの知見を元に、RIBFに代表される多段リング加速器においても使用可能な荷電変換リングの考察と設計について発表する。
 
16:00 - 16:20 
MOOM03
p.61
[Slides]
J-PARC 3GeV陽子シンクロトロンにおける1MW運転時のビーム損失とその低減
1-MW beam tuning for beam loss mitigation in the J-PARC 3-GeV RCS

○發知 英明,原田 寛之,加藤 新一,金正 倫計,岡部 晃大,サハ プラナブ,菖蒲田 義博,田村 文彦,谷 教夫,渡辺 泰広,山本 風海,山本 昌亘,吉本 政弘(原子力機構・J-PARCセンター)
○Hideaki Hotchi, Hiroyuki Harada, Shinichi Kato, Michikazu Kinsho, Kota Okabe, Pranab Saha, Yoshihiro Shobuda, Fumihiko Tamura, Norio Tani, Yasuhiro Watanabe, Kazami Yamamoto, Masanobu Yamamoto, Masahiro Yoshimoto (J-PARC, JAEA)
 
昨年に引き続き、J-PARC 3GeV RCSにおける1MWビーム調整の進捗状況を報告する。 J-PARC RCSでは、昨年の夏に、RF陽極電源の増強作業を行い、その後、 10月より1MWビーム調整を再開した。その10月のビーム試験では、 Beam loading補償の最適化やペイント入射法の導入等により、 縦方向のビーム損失や空間電荷に由来するビーム損失をほぼ最小化することに成功した。 また、引き続き行ったビーム試験では、新規導入した補正四極電磁石と共に、 Anti-correlated ペイント入射を採用することで横方向ペイント入射範囲をこれまでの2倍にまで拡幅することに成功し、その結果、 入射中の荷電変換フォイル上での散乱現象に起因したビーム損失を大幅低減させることができた。こうした一連のビーム調整により、1MW運転時のビーム損失は、十分に許容範囲内と言えるレベルにまで大幅低減された。 本発表では、ビーム増強過程で顕在化したビーム損失の発生メカニズムやその低減に向けた取り組みを中心に、RCSビームコミッショニングにおける最近の成果を報告する。
 
16:20 - 16:40 
MOOM04
p.66
[Slides]
J-PARCにおけるミューオンg-2/EDM精密測定実験のためのミューオンリニアック
The muon linac for the precise measurement of muon g-2/EDM at J-PARC

○近藤 恭弘,長谷川 和男,伊藤 崇,Artikova Sayyora(JAEA),大谷 将士,三部 勉,内藤 富士雄,吉田 光宏(KEK),北村 遼(東大理),岩下 芳久(京都大学),岩田 佳之(放医研),林崎 規託(東工大),齊藤 直人(J-PARC)
○Yasuhiro Kondo, Kazuo Hasegawa, Takashi Ito, Sayyora Artikova (JAEA), Masashi Otani, Tsutomu Mibe, Fujio Naito, Mitsuhiro Yoshida (KEK), Ryo Kitamura (Univ. of Tokyo), Yoshihisa Iwashita (Kyoto univ.), Yoshiyuki Iwata (NIRS), Noriyosu Hayashizaki (TITEC), Naohito Saito (J-PARC)
 
近年、素粒子標準理論を超える物理を探索するためのプローブとしミューオンが注目されている。我々は、J-PARCにおいて、新たなミューオン異常磁気モーメント(g-2)及び電気二重極モーメント(EDM)精密測定実験計画(E34)を推進している。この実験では、収束電場なしでビーム蓄積する要請から、10^-5 rad以下にミューオンビームの広がりを抑える必要があり、J-PARC MLFにおいて超低速ミューオンを生成し、212 MeVまで加速することでこの要求を満たす。規格化rms横エミッタンス1.5pi mm mradであり、ミューオンビームとしては従来にない低エミッタンスとなる。 ミューオンリニアックは本実験の成否を握る重要な要素であり、高周波四重極空洞(RFQ)、IH型ドリフトチューブリニアック(IH-DTL)、ディスクアンドワッシャ(DAW)型結合空洞、円盤装荷型進行波リニアックという構成で開発を進めている。RFQはJ-PARCリニアックの予備機を用いる予定であり、IH-DTL、DAWはビーム力学、空洞設計を完了し、DAWのコールドモデルによる測定を行っている。 本論文では、この世界初となるミューオンリニアックの全体設計、ビームシミュレーションについて報告する。各加速要素開発の概要についても触れるが、RFQでのミューオン加速の実証実験、IH-DTL設計の詳細については、本学会の別の発表を参照されたい。
 
16:40 - 17:00 
MOOM05
p.70
J-PARC遅い取り出し運転の現状と今後の計画
Present Status and Future Plans of J-PARC Slow Extraction

○冨澤 正人,新垣 良次,木村 琢郎,下川 哲司,村杉 茂,岡村 勝也,白壁 義久,武藤 亮太郎,柳岡 栄一(高エネ機構),田村 文彦(J-PARC/原子力機構),石 健(IMP/CAS)
○Masahito Tomizawa, Yoshitsugu Arakaki, Takuro Kimura, Tetsushi Shimogawa, Shigeru Murasugi, Katsuya Okamura, Yoshihisa Shirakabe, Ryotaro Muto, Eiichi Yanaoka (KEK), Fumihiko Tamura (J-PARC/JAEA), Jian Shi (IMP/CAS)
 
J-PARCメインリングにおける遅い取り出し運転は、2013年5月23日に起こった異常な短パルスビームによるターゲット損傷による放射線漏洩事故後、再発防止策が認められ2015年4月に再開を果たした。その後同年10月中旬から約2ヶ月に渡る長期運転が無事終了した。2016年は5月末から約1か月の運転が予定されている。事故前の遅い取り出し利用運転におけるビームパワーは24kWであったが、現在のビームパワーは42kW(4.8x10^13ppp)に到達している。ビームパワーを上げて行く際に、取り出し直前のビームデバンチ過程においてビームインスタビリティーが起こり取り出し時に大きなビームロスが発生した。この深刻な問題の解決のために、ビームの進行方向にダイポール振動をさせる手法を新たに導入しビームインスタビリティーの回避に成功した。報告の最後に、SX運転に関係した今後の計画についても簡単に報告する予定である。
 
17:00 - 17:20 
MOOM06
p.75
ドイツ・重イオン研究所GSIにおける国際加速器プロジェクトFAIRとその超伝導電磁石開発の現状
Status of international accelerator project FAIR at GSI and the superconducting magnet developments

○杉田 圭,シュニツァー ピエール,フィッシャー エクバート(ドイツ・重イオン研究所 GSI)
○Kei Sugita, Pierre Schnizer, Egbert Fischer (GSI Helmholtzzentrum fuer Schwerionenforschung)
 
ドイツ・ヘルムホルツ協会傘下の重イオン研究所GSIでは,国際加速器プロジェクトFAIRの建設が始まっている.FAIRは,GSI既存の重イオンシンクロトロンSIS18などの加速器の性能を向上させ入射器として利用し,SIS100と中核とする加速器群を新たに建設し,これまでの加速器性能を大幅に向上させ,物理実験などを行うことを目的とした国際協力プロジェクトである.プロジェクト上の様々な問題に対し,昨年国際的な評価委員会によるレビューを受け,計画通り進めることが承認された.FAIRではSIS100とSuper-FRSで超伝導電磁石システムが採用されている.それぞれの調達先が決まり,量産へ向けた技術的な詰めが本格化している.本発表ではGSIの紹介とFAIRの現状,とくに超伝導電磁石開発について報告する.
 
17:20 - 17:40 
MOOM07
p.78
IFMIF/EVEDA原型加速器の開発の現状
Progress of Development of IFMIF/EVEDA Prototype Acceletator

○春日井 敦,坂本 慶司,杉本 昌義,前原 直,近藤 恵太郎,一宮 亮,新屋 貴浩(量研機構/六ヶ所),ナスター ホアン,奥村 義和(IFMIF/EVEDA PT),ハイディンガー ローランド,カラ フィリップ,ジッコ エルベ,フィリップス ガイ(F4E)
○Atsushi Kasugai, Keishi Sakamoto, Masayoshi Sugimoto, Sunao Maebara, Keitaro Kondo, Ryo Ichimiya, Takahiro Shinya (QST/Rokkasho), Juan Knaster, Yoshikazu Okumura (IFMIF/EVEDA PT), Roland Heidinger, Philippe Cara, Herve Dzitko, Guy Phillips (F4E)
 
核融合エネルギーの実現に向けた日欧共同プロジェクトである幅広いアプローチ活動のもとで、国際核融合材料照射施設(IFMIF)の工学設計・工学実証活動(EVEDA)が2007年から実施されている。IFMIF の工学実証における最大の課題が重陽子大電流線形加速器である。IFMIFでは中性子発生用ドライバーとして40MeV-125mA-CWのビームラインを2基用いる。現在青森県六ヶ所村の量子科学技術研究開発機構六ヶ所核融合研究所で、2019年末の9MeV-125mA-CWの工学実証完了を目指した原型加速器の据付調整が進行中である。入射器については、2015年7月から重陽子ビームの試験を開始し、現在までに100keV-140mAの重陽子ビームの試験を完了し、目標である性能をクリアした。さらに低エミッタンス条件下でビーム改善を目指した電極及びパラメータ調整を行った。現在据付を進めているRFQでは、2月に欧州から搬入された3つのRFQモジュールを4月に組み上げ、RFQ単体のビーズを用いた電界強度分布測定を実施した。175MHz-200kW-CWの高周波源8基がRFQ用に据え付けられ、同軸導波管の敷設、RFカプラの取り付け等を経て今秋からRFコンディショニングを開始する予定である。さらにニオブ材を用いた超伝導加速器用半波長空洞の冷凍保安則に基づく高圧ガス許認可を取得し、フランスCEAサクレー研究所が超伝導空洞の調達を開始している。講演ではIFMIF/EVEDA原型加速器の進捗について述べる。
 
特別講演 (8月8日 国際会議室)
18:00 - 19:00 
MOOLS01

粒子線治療の過去、現在、未来
Particle Therapy : Past, Present and Future
○辻井 博彦(放射線医学総合研究所)
○Hirohiko Tsujii (National Institute of Radiological Sciences)
 
わが国の放射線治療患者数は、がん患者の3人に1人に相当する約24万人であるが、今後さらに増加すると考えられる。放射線治療の原則は、放射線を出来るだけ病巣に限局し、かつ正常組織の障害を低減することで、これは加速器や治療計画装置の進歩に依るところが大きい。因みに、筆者が放射線治療の世界に足を踏み入れた1970-80年代は、例えば上・中咽頭がん治療において、がんは治っても患者は唾液腺障害のため口内乾燥症で苦しむことが多かった。それが今では、こういった後遺症は激減し、がん制御率も格段に向上し、まさに隔世の感がある。 粒子線にはいろいろな種類がある。最も歴史の古いのは中性子線で、他に、パイ中間子線、陽子線、重粒子線(He、Ne、Arなど)があり、いずれも米国で開始された。現在、陽子線と重粒子線が生き残っているが、理由は明瞭で、いずれも体内でブラッグピークを形成し、がん病巣の選択的照射が可能だからである。重粒子線はさらに、ピーク部分の生物効果がX線や陽子線よりも高いので、適応対象が広がり、かつ治療期間の大幅な短縮が可能になった。今後、加速器の小型化と低価格化、および次世代装置の開発に向けて、さらなる努力が求められる。 本講演においては、粒子線治療の歴史、現状、可能性について幅広くお話ししたい。
 
加速器制御/電磁石と電源1 (8月9日 国際会議室)
9:00 - 9:20 
TUOL01
p.82
[Slides]
MADOCA IIデータ収集フレームワークの開発
Development of MADOCA II data collection framework

○松本 崇博,古川 行人,濱田 洋輔((公財)高輝度光科学研究センター)
○Takahiro Matsumoto, Yukito Furukawa, Yousuke Hamada (JASRI)
 
SPring-8では制御フレームワークにMADOCA (Message And Database Oriented Architecture)を採用し長年運用してきたが、 現状及び将来計画であるSPring-8-IIでの要求を満たすため、現在、次世代制御フレームワークMADOCA IIの開発を進めている。メッセージング及びデータ蓄積に関するMADOCA II化は完了し、2013年以後にSPring-8制御系に実装された。本発表では、MADOCA IIデータ収集フレームワークの設計及び開発の現状を報告する。MADOCA IIデータ収集フレームワークでは、今まで課題となってきた、 定周期およびEvent型など様々なデータ収集の一元管理、ポイントデータや波形データなど多様なデータ形式でのデータ収集、テンポラリDBを用いたデータ収集試験、信号登録の簡易化が対応できるように設計をし、その開発を進めている。LabVIEWでのデータ収集もLabVIEW-MADOCA IIを介して実装でき、複数信号を纏めてメッセージ送受信することで数百点/秒でのデータ収集 が実現できる。定周期データ収集に関しては2016年3月に SPring-8制御系に実装し、151のホストにおいて MADOCA IIデータ収集運用を安定に開始することができた。
 
9:20 - 9:40 
TUOL02
p.87
[Slides]
高精度時刻同期技術をベースとしたトリガ・タグ情報配信システムの開発
Development of a trigger and tag information distribution system based on the high-precision time synchronization technology

○増田 剛正((公財)高輝度光科学研究センター)
○Takemasa Masuda (JASRI)
 
 汎用ネットワークを用いたサブナノ秒以下の高精度時刻同期技術であるWhite Rabbitを用いて、SPring-8蓄積リング(RF周波数~508.58MHz)の特定バンチに同期した~209kHzの周回周波数信号の生成と、バケット番号や高精度同期時刻情報などの任意の付加情報を配信する、新しい概念によるトリガ・タグ情報配信システムの開発を進めている。このシステムでは時刻情報というデジタル量の配信によりトリガ信号の生成を行うため、ソフトウェアにより容易にタイミングの調整が行えるというメリットがある。またネットワークを用いて情報が配信されるため、低コストで簡便にタイミング出力ノードを増設して行くことが可能である。  システムの概念検証を行うために、マスターPCとスレーブPC、White Rabbitネットワークスイッチ2台から成るシステムを構築した。マスターPC側では、ゼロ番地信号と呼ばれる基準周回周波数信号の入力時刻を2psの時間分解能で記録する。これをN回前のプリトリガであると定義して、N回後のゼロ番地信号の絶対時刻をネットワーク経由でスレーブPCに配信する。スレーブPC側では受け取った時刻情報をもとに、特定バンチ分のオフセットを加えることで、そのバンチに同期した周回周波数信号が出力される。検証システムにおける現段階でのスレーブPCからの出力周回周波数信号のジッタはσ~130ps程度である。
 
9:40 - 10:00 
TUOL03
p.92
System-on-Chip FPGAを用いた多目的制御ボードの開発
A Multi-purpose Digital Controller Based on System-on-Chip Technologies

○栗本 佳典(高エネルギー加速器研究機構)
○Kurimoto Yoshinori (High Energy Accelerator Research Organization)
 
 近年、ハードのプロセッサとFPGAを一つのチップに統合したSystem-on-Chip (SOC)とよばれるICやその評価用ボードが市場に出回るようになってきた。これらのICチップを使用すれば、リアルタイム制御をFPGA内に構成し、上位からの指令やモニタ等の役割を担うネットワークサーバプログラムをOS上で実行することで、様々な加速器デバイスの制御を容易に実現することができる。  発表者は、このSOC FPGAと大容量のDDR3メモリを組み合わせたボードを開発し、J-PARC Main Ringのいくつかの試験機器で運用している。大容量のメモリはJ-PARC MRのように加速時間が比較的長く(1.4秒)、高精度制御が要求される大強度シンクロトロンの機器では重要である。なぜなら、その間、変化し続ける制御量(磁石電流など)があり、それに加えて、これら時間変化する値の補正量も格納できることが望ましいからである。  本ポスター発表では、開発したボードの用途の一つであるJ-PARCの主電磁石電源制御ボードを例として、ハードウェア、ソフトウェアおよびファームウェアの開発および運用の詳細を報告する。
 
10:00 - 10:20 
TUOL04
p.97
第一世代高温超伝導線材を用いた磁石の開発
Developments of HTS Magnets Utilizing First Generation Wire

○鎌倉 恵太,畑中 吉治,福田 光宏,植田 浩史,安田 裕介,依田 哲彦,島田 健司,原 周平(阪大核物理センター)
○Keita Kamakura, Kichiji Hatanaka, Mitsuhiro Fukuda, Hiroshi Ueda, Yuusuke Yasuda, Tetsuhiko Yorita, Kenji Shimada, Shuhei Hara (RCNP, Osaka University)
 
At RCNP, we have been developing magnets utilizing first generation HTS wire for this decade. HTS materials have advantages over LTS materials. Magnets can be operated at 20 K or higher temperature and cooled by cryocoolers. The cooling structure becomes simpler and the cooling power of a cooler is high. Owing to a large margin in operating temperature, it is possible to excite HTS magnets by AC or pulsed currents without quenching. Three model magnets were fabricated; a mirror coil for an ECR ion source, two sets of race track coils for a scanning magnet, and a 3T super-ferric dipole magnet having a negative curvature. They were excited with AC and pulse currents as well as DC currents and their performance was investigated. After successful tests of proto type models, two magnets have been fabricated for practical use. A cylindrical magnet generates a magnetic field higher than 3.5 T at the center to polarized 210 neV ultra cold neutrons. A dipole magnet is excited by pulse currents in order to deliver accelerated beams to two target stations by time sharing. The design of the dipole magnet and operational performance are discussed.
 
電磁石と電源2 (8月9日 国際会議室)
10:30 - 10:50 
TUOL05
p.101
[Slides]
LHC高輝度アップグレード用超伝導磁石の開発(3) - 2mモデル磁石製作 -
Development of superconducting magnets for LHC luminosity upgrade (3) - Fabrication of the 2m model magnet -

○菅野 未知央,中本 建志,榎本 瞬,川又 弘史,岡田 尚起,岡田 竜太郎,東 憲男,荻津 透,佐々木 憲一,木村 誠宏,高橋 直人(KEK),Musso Andrea,Todesco Ezio(CERN)
○Michinaka Sugano, Tatsushi Nakamoto, Shun Enomoto, Hiroshi Kawamata, Naoki Okada, Ryutaro Okada, Norio Higashi, Toru Ogitsu, Kenichi Sasaki, Nobuhiro Kimura, Naoto Takahashi (KEK), Andrea Musso, Ezio Todesco (CERN)
 
CERN-LHC加速器では、積分ルミノシティを現行LHCの10倍以上である3000 fb-1まで向上させることを目指した高輝度アップグレード計画(HL-LHC)が進行中である。このために特に重要になるのが実験衝突点近傍の加速器システムの性能向上であり、KEKはこの中でビーム分離超伝導双極磁石(D1磁石)の開発を担当している。この磁石の要求性能を以下の通りである。 ・大コイル口径:150 mm ・積分磁場:35 Tm(主双極磁場5.6 T, 温度1.9 K, 運転電流12 kA) ・耐放射線性:想定される吸収線量25 MGy ・除熱性能:磁石全体入熱135 W, コイルへのピーク入熱2 mW/cm3   D1磁石製作の技術的課題として、大口径化に伴ってより顕著になる鉄ヨークの飽和を考慮した磁場設計および大口径に起因する組み立て時や励磁時のコイルの大きな変形量を考慮した設計の必要性、想定される放射線に耐え得る絶縁材料を用いた磁石開発などが挙げられる。  実機の磁石機械長は約7 mであるが、原理検証のために現在KEKで2 m長のモデル磁石の開発を行っている。要求磁場精度を満足するための磁場設計、冷却、励磁状態でコイル応力を適切に維持するための機械設計を行った。さらに設計に基づいて、Cu/Nb-Tiラザフォードケーブルを用いたコイル巻線、キュアリング、カラーリング、ヨーキング、シェル溶接の各工程を経て2 mモデル磁石の製作を完了している。 設計および磁石製作の詳細については当日の講演で説明する。
 
10:50 - 11:10 
TUOL06
p.106
[Slides]
LHC高輝度アップグレード用超伝導磁石の開発(4)- 2mモデル磁石の冷却・励磁試験-
Development of superconducting magnets for LHC luminosity upgrade (4) - test results of the 2m model magnet -

○榎本 瞬,菅野 未知央,中本 建志,川又 弘史,岡田 尚起,岡田 竜太郎,東 憲男,荻津 透,佐々木 憲一,木村 誠宏,田中 賢一,大畠 洋克,飯田 真久,菅原 繁勝,高橋 直人(KEK),Musso Andrea,TODESCO Ezio(CERN)
○Shun Enomoto, Michinaka Sugano, Tatsushi Nakamoto, Hiroshi Kawamata, Naoki Okada, Ryutaro Okada, Norio Higashi, Toru Ogitsu, Ken-ichi Sasaki, Nobuhiro Kimura, Ken-ichi Tanaka, Hirokatsu Ohhata, Masahisa Iida, Shigekatsu Sugawara, Naoto Takahashi (KEK), Andrea Musso, Ezio Todesco (CERN)
 
欧州原子核研究機構(CERN)のLHC加速器では高輝度化アップグレードを計画している。高エネルギー加速器研究所(KEK)はCERNとの国際協力の枠組みのもと、ATLAS実験の高性能化に資するため、粒子衝突点近くのビーム分離用超伝導双極磁石(D1)の開発を行っている。磁石は口径150mm、全長7mとなり、超伝導コイルにはNbTi超伝導線を用い、磁場は12kA, 1.9Kで5.6 T、積分磁場長35Tmを公称値としている。 KEKでは、設計検証のために磁石機械長2mのモデル磁石1号機を開発し、2016年4月から6月にかけてモデル磁石の冷却・励磁試験を実施している。磁石は1.9Kまで冷却され、トレーニングクエンチ試験、ヒータークエンチ試験、ならびに回転コイルによる磁場測定を実施した。また並行して、冷却、励磁時の磁石構造体(カラー、ヨーク、シェル)の応力変化をひずみゲージにより観察した。本講演ではそれらの試験結果について報告する。
 
11:10 - 11:30 
TUOL07
p.110
SuperKEKB電磁石用電源
Magnet power supplies for SuperKEKB

○中村 衆,大木 俊征,安達 利一(高エネルギー加速器研究機構)
○Shu Nakamura, Toshiyuki Oki, Toshikazu Adachi (KEK)
 
KEKB電子・陽電子衝突型加速器の高度化計画として、2010年からSuperKEKB加速器へのアップグレードが進められてきた。 Phase1として、2016年2月から試験運転が始まり、ビームコミッショニングや真空ダクトの焼き出しが6月まで行われた。 2017年秋に予定されているビーム衝突運転(Phase2)までの間に、衝突点にBelle II検出器、その近傍に超伝導電磁石群及び衝突点軌道保持用の常伝導電磁石群を導入する予定である。 SuperKEKB加速器では、電磁石用電源として大小合わせて約2400台の直流電源を運用している。 それらの大部分はKEKB加速器で使用していた物をオーバーホール後に再利用している。 本件ではこれらの電源について、オーバーホールの内容やオーバーホール後の性能試験、そしてPhase1での運転状況について紹介する。
 
11:30 - 11:50 
TUOL08

[Slides]
SuperKEKB用高安定度電磁石電源
High-stability magnet power supplies for SuperKEKB
○大木 俊征,中村 衆,安達 利一(高エネルギー加速器研究機構)
○Toshiyuki Oki, Shu Nakamura, Toshikazu Adachi (KEK)
 
世界最高のルミノシティを達成したKEKB電子・陽電子衝突型加速器の高度化計画として、SuperKEKB加速器の建設が進められてきた。2016年2月から始まった試験運転は6月まで行われ(Phase 1)、2017年秋に予定されているビーム衝突運転(Phase 2)までの間に、衝突点にBelle II検出器と、その近傍に配置される超伝導電磁石を導入する予定である。 SuperKEKB加速器では、2400台程度の電磁石用直流電源が運用されるが、そのうち2000台程度はKEKB加速器をオーバーホールの後、再利用したものである。 本発表では、新規に製作した約400台の内、出力電流安定度やリップルなどの仕様が特に厳しい、偏向電磁石電源(860 A, 1.1 kV, 1ppm/ 36時間)、超電導主四極電磁石電磁石電源(2 kA, 10 V, 1.9 ppm/8時間)、超電導補正電磁石電源(±70 A, ±10 V, 2.1 ppm/8時間)(それぞれ定格出力、試験で得られた典型的な安定度結果)について紹介する。
 
11:50 - 12:10 
TUOL09
p.115
[Slides]
J-PARC-MRアップグレードのための新しい入射セプタム電磁石の開発(2)
The Development of New Injection Septum Magnet for upgrating of J-PARC MR(2)

○芝田 達伸(KEK),川口 祐介,中村 健太(ニチコン草津),石井 恒次,杉本 拓也,松本 教之,松本 浩(KEK),Fan Kuanjun(HUST)
○Tatsunobu Shibata (KEK), Yusuke Kawaguchi, Kenta Nakamura (Nichicon), Koji Ishii, Takuya Sugimoto, Noriyuki Matsumoto, Horoshi Matsumoto (KEK), Kuanjun Fan (HUST)
 
J-PARC-MRの速い取り出し用ビームパワーの目標値は750kWである。そのため繰返し周期を1.3秒(1Hz化)にする必要がありMR用入射電磁石の改修が進行中である。本発表ではその内の高磁場セプタム電磁石(以下入射セプタム)のアップグレードについて報告する。現行入射セプタム用電源の出力電流の時間幅は1.5秒あり1Hzに対応していない。電磁石については磁極からの漏れ磁場が大きく大強度ビームには対応できない。そこで電源と電磁石両方の新規製作を行った。新規電源の出力波形の時間幅を0.6秒である。電磁石も漏れ磁場が磁極内磁場の10^-4以下になるように設計した。新電源と新電磁石の製作は2014年に完了した。本来2015年夏にMRに導入予定であったが2015年8月に発生した真空ダクトの真空漏れが原因で導入を1年延期した。真空漏れの原因は真空ダクトとフランジの接続面の構造的欠陥が原因であると判断し、新しい真空ダクトを製作する事にした。一方磁極内BLや漏れ磁場測定を行った。BLの平坦度を10^-5にする電流波形の生成や漏れ磁場を小さくする磁気遮蔽の工夫等を行った。新真空ダクトは真空漏れの原因となった欠陥の対策だけでなく漏れ磁場を小さくするため、それまでSUS製だった周回側の真空ダクトをSUY製にする工夫を導入した。新真空ダクトは2016年3月に完成した。5月下旬から最終的な磁場測定を行い、夏にMRに導入する予定である。本発表では最終試験結果までのまとめを報告する。
 
ビームダイナミクス・加速器理論 (8月9日 会議室201)
9:00 - 9:20 
TUOM01
p.120
[Slides]
非線形光学を用いたJ-PARC核破砕中性子源へのビーム輸送技術開発
Development of beam transport to spallation neutron source at J-PARC with non-linear optics

○明午 伸一郎(日本原子力研究開発機構 J-PARCセンター)
○Shin-ichiro Meigo (JAEA J-PARC center)
 
J-PARCでは速い繰り返し(25Hz)の3GeV陽子シンクロトロン加速器(RCS)から出射する1MWの大強度の陽子ビームを用いた核破砕中性子源(JSNS)の運転を目指している。RFの大強度化により、昨年度からRCSの数ショットの1MWビームがターゲットに重大なビーム損失を起こすことなく、輸送することに成功した。核破砕中性子源のターゲットには液体金属となる水銀を用いるが、ビーム起因の衝撃波による水銀容器のピッティング損傷が重要な問題となっている。この損傷により、米国オークリッジ研究所(ORNL)の核破砕中性子源(SNS)ではピッティング損傷が容器の寿命を決定しており、頻繁な容器の交換が必要とされている。ピッティング損傷はピーク電流密度の4乗に比例するために、ピーク電流密度を低く抑えた運転が重要となる。そこで非線形のビーム光学に着目し、八極電磁石を用いた非線形ビーム光学によるビーム平坦化技術の開発を行ってきた。さらに、RCSへの入射に用いるペイント領域を拡幅し、水平方向と垂直方向のペイント方向が逆行するanti correlateペイントを採用することにより平坦なビームを得ることが可能となった。本発表では、大強度運転における非線形光学の開発状況を報告する。
 
9:20 - 9:40 
TUOM02
p.125
J-PARC 3GeVシンクロトロンにおけるビーム不安定性の抑制
Beam Instability Suppression in the 3-GeV RCS of J-PARC

○サハ プラナブ クマル,発知 英明,菖蒲田 義博,原田 寛之(J-PARC/原子力機構)
○Pranab Kumar Saha, Hideaki Hotchi, Yoshihiro Shobuda, Hiroyuki Harada (J-PARC/JAEA)
 
The beam instability in the 3-GeV RCS (Rapid Cycling Synchrotron) is caused by the transverse impedance of the extraction kicker magnets. At 80% of the designed 1 MW beam power, significant beam instability occurs depending on the choice of betatron tunes even if the degree of chromaticity correction is reduced to be a minimum. The parameter space at high intensity thus becomes narrower, while RCS has to satisfy multi-users demand in the downstream facilities. In the simulation by using ORBIT code we studied in detail the beam instability nature and parameter dependence in order to take measures to suppress the beam instability at 1 MW and also for choices on the betatron tunes needed for further beam loss mitigation as well as to improve extracted beam qualities. The simulation results are well reproduced in the measurements. An acceleration of 1 MW beam has already been successfully accomplished, while further efforts are ongoing in order to realize enough parameter variation for further beam loss reduction as well as to ensure the beam qualities requested by the downstream facilities. A detail of simulation and experimental results are presented in this paper.
 
9:40 - 10:00 
TUOM03
p.130
[Slides]
レーザーイオン源からシンクロトロンにシングルターン入射を行ったときのビーム不安定性の検討
Research on instability of single-turn-injected beam into synchrotron by laser ion source

○野田 悦夫,中尾 政夫,野田 章,野田 耕司(放医研),後藤 彰,岩井 岳夫(山形大),山口 晶子,佐古 貴行(東芝)
○Etsuo Noda, Masao Nakao, Akira Noda, Koji Noda (NIRS), Akira Goto, Takeo Iwai (Yamagata Univ.), Akiko Yamaguchi, Takayuki Sako (Toshiba)
 
パルスレーザーをターゲットに集光照射して生成したイオンをシンクロトロンに入射したときのビーム不安定性の解析を、空間電荷を考慮した粒子軌道シミュレーションにより行った。レーザーイオン源はパルス動作をし、パルス幅は通常数百ns~数μsであるため1パルスのシングルターン入射を行う。具体的には、シンクロトロンの水平方向の位相空間に対し、アクセプタンスの1/10程度のエミッタンスを持ち 4MeV/uまで加速した炭素ビーム(6価)を、シンクロトロンの中心を外して入射する。1パルスあたりのイオン数を5×10^9個、パルス幅を1μsecとするとビーム電流は約4.8mA、ビーム平均半径を12~13[mm]、チューン(ν)を1.25~2としたとき、空間電荷によるチューンシフト(⊿ν)は0.02~0.05となる。今回、νが2~2.05の範囲について、中心を外してビームを入射した時の整数・半整数共鳴によるビーム不安定性を電流を変化させて調べた。2極誤差磁場による整数共鳴については、νが2に近いところでビームの中心軌道が大きく変化するが半径は変わらないこと、電流依存性はないことが分かった。4極誤差磁場による半整数共鳴については、中心軌道は、νが2に近いところで大きく変化するが電流依存性はないこと、ビーム半径は、⊿ν=1.8(ν-2) を満たすような電流値で変化が最大になることが分かった。この結果は、Hillの方程式をビーム中心軌道とその周りの式の2つに分離することで説明できる。
 
10:00 - 10:20 
TUOM04
p.135
[Slides]
下記論文には訂正があります。 Corrections applied to the paper: TUOM04_errata.pdf
空間電荷効果によるエミッタンス低減現象を活かした電子銃システム設計
Electron Injector design based on emittance reductions caused by space charge effects

○水野 明彦(高輝度光科学研究センター)
○Akihiko Mizuno (JASRI)
 
線型加速器においては、エミッタンスの定義としてRMSエミッタンスが良く用いられる。これはリウヴィルの体積とは異なるので不変量ではない。実際、空間電荷効果によってRMSエミッタンスが増大することは良く認識されているが、同じく空間電荷効果によってRMSエミッタンスが減少することもあり、著者等によってそのメカニズムが明らかにされている[1]。エミッタンスの低減は、カソード直後に特徴的な空間電荷効果が形成する電場の径方向非線形性によって引き起こされ、ある位置でエミッタンス最小値を示し、その後は増大する。本発表では、まず、このエミッタンス低減現象について概要を論じる。ところで、電子ビーム源は電子銃だけで完結するのではなく、電子銃後に集束および加速デバイスを設置してエミッタンスが安定するまでビームをトランスポートする必要がある。エミッタンスは、集束デバイスにより電場の非線形性が変化するため振動し、また、加速管の位置によっても変化する。発表では、RF電子銃を題材とし、これらデバイスの励磁量、位置を調整することによって、第1加速管以降まで、本現象によってエミッタンスが低減した状態でビームをトランスポートすることが可能であることを示す。[1] A.Mizuno, K.Masuda and M.Yamamoto, NIMA 774(2015) p51-59.
 
ビーム診断・ビーム制御/高周波源 (8月9日 会議室201)
10:30 - 10:50 
TUOM05
p.140
[Slides]
J-PARC MRにおける4極キッカーとストリップラインピックアップによるビーム応答測定
Measurement of beam response for the Quadrupole kicker with the stripline pickup in J-PARC MR

○中西 芳枝(京都大学大学院理学研究科),岡田 雅之,小関 忠,外山 毅,久保木 浩功(KEK/J-PARC),仲村 佳悟,中家 剛,市川 温子,南野 彰宏(京都大学大学院理学研究科)
○Yoshie Nakanishi (Division of Physics and Astronomy ,Graduated School of Science, Kyoto University), Masashi Okada, Tadashi Koseki, Takeshi Toyama, Hironori Kuboki (KEK/J-PARC), Keigo Nakamura, Tsuyoshi Nakaya, Atsuko Atsuko, Akihiro Minamino (Division of Physics and Astronomy ,Graduated School of Science, Kyoto University)
 
大強度陽子ビーム加速器、J-PARC MRでは、ビームロスがビームの出力を制限している。ビームロスの原因の一つは、空間電荷効果によるインコヒーレントチューンスプレッドであると考えられる。チューンの広がりが共鳴線に触れるとビームの振動が増幅し、ビームロスを引き起こす。チューンスプレッドの直接的な測定は、よりビームロスの少ない運転パラメータの手がかりとなる。我々は、この直接測定を目指し、4極キッカーと4極ピックアップを用いた方法を検討している。単色周波数の4極キックを加えると、その周波数に対応したチューンの粒子が共鳴し振動が増幅する。4重極振動の振幅はそのインコヒーレントチューンの粒子数の情報を含んでいると考えられる。本試験では、イントラバンチ・フィードバックで使用中の2極キッカーの配線を変更し、同位相で励振することにより4極キッカーを実現した。ビーム応答の測定には、キッカーの上流に位置する4電極ピックアップを用いた。6種類の周波数でキックを加えた結果、キッカーによるビームの応答が観測された。この結果はチューンの計算値に対応していると考えられる。今後は、より詳細なビーム試験と、シミュレーションを行い、ビームの振幅とチューンスプレッド分布の関係性を解明する予定である。本発表では4極キッカーの原理、ビーム試験の方法と結果、考察、今後の課題についての説明を行う。
 
10:50 - 11:10 
TUOM06
p.144
[Slides]
SueprKEKBリング用個別バンチフィードバックシステム
Bunch by bunch feedback systems for SuperKEKB rings

○飛山 真理,フラナガン ジョン(KEK加速器研究施設),ドラゴ アレッサンドロ(フラスカティ国立研究所)
○Makoto Tobiyama, John Flanagan (KEK Accelerator Laboratory), Alessandro Drago (INFN-LNF)
 
SuperKEKBリング用に個別バンチフィードバックシステムを開発した。 横方向(水平、鉛直)及び進行方向のフィードバックシステムをリング コミッショニング初期に立ち上げ、運転に供用することで、リングコ ミッショニングを強力にサポートするとともに、各種の不具合発見に も大きく貢献した。これらのフィードバックシステムの性能について 報告するとともに、観測されたビーム不安定についても紹介する。 また、個別バンチフィードバックの技術を応用した各種モニターに ついても報告を行う。
 
11:10 - 11:30 
TUOM07
p.149
[Slides]
J-PARC MR 遅いビーム取出し運転モードにおける電子雲の研究
Electron Cloud Study at SX Operation Mode at J-PARC MR

○イーレンドン ブルース,久保木 浩功,佐藤 健一郎,外山 毅(KEK/J-PARC)
○Bruce Yee-rendon, Hironori Kuboki, Kenichirou Satou, Takeshi Toyama (KEK/J-PARC)
 
Electron cloud is a main limitation for the successful operation of the high intensity proton beam in the world. Its presence at Main Ring (MR) of the Japan Proton Accelerator Research Complex (J-PARC), during the Slow beam extraction (SX) mode, was already observed through several systems: sweeping electron detector, beam loss detectors, vacuum gauges, beam position monitors, etc. A more detailed survey and upgrade of the beam loss system were implemented for this study. The latest results of the electron cloud study are presented here.
 
11:30 - 11:50 
TUOM08
p.152
ILC用SiC MOS FET MARX方式クライストロン モジュレータ用電源の開発
A development of SiC MOS FET MARX type Klystron Modulator for International Linear Collider

○徳地 明,澤村 陽(パルスパワー技術研究所),明本 光生,中島 啓光,川村 真人(高エネルギー加速器研究機構 ),江 偉華,鈴木 隆太郎,林 拓実(長岡技術科学大学)
○Akira Tokuchi, Yo Sawamura (PPJ (Pulsed Power Japan Laboratory Ltd.)), Mitsuo Akemoto, Hiromitsu Nakajima, Masato Kawamura (KEK), Weihua Jiang, Ryutaro Suzuki, Takumi Hayashi (Nagaoka University of Technology)
 
ILC(国際リニアコライダー)計画は、全長約30kmの直線加速器で、現在達成しうる最高エネルギーで電子と陽電子の衝突実験を行う計画。宇宙初期に匹敵する高エネルギーの反応を作り出すことによって、宇宙創成の謎に迫る。 ILC計画の主線形加速器には378台の1.3GHz 10MWマルチビームクライストロンシステムが搭載される。超伝導加速空洞に加速電場を生成するためのRF電力は、マルチビームクライストロンとそれを駆動するクライストロン電源で構成される。 クライストロン電源はマルクス変調器と呼ばれ、120kV 140A 1.65msのパルス電圧を生成し、マルチビームクライストロンのカソードに供給する。 本稿は、ILC加速器に設置されるクライストロン用モジュレータ電源の開発に関するものである。 搭載される電源は、小型化、低コスト化、高信頼性が強く望まれ、また電源が出力するパルスはフラットトップが1.65msの非常に長いパルス幅と電圧変動率1%以内という高精度の出力が要求される。 本研究では、マルクス電源の構成とチョッパ回路を組み合わせた小型で安価なパルスパワー電源の提案でPWM制御によるドループの補償と位相制御によるリップルの低減を行う。 電源は1ユニット4段のチョッパ制御方式マルクス回路を20ユニットで構成する。より小型化を目指しPWMスイッチングロスを低減するSiCデバイスの導入、A/Dコンバータを用いた充電電圧デジタルフィードバック制御についても言及する。
 
11:50 - 12:10 
TUOM09
p.156
CLIC計画用1GHz,20MWマルチビームクライストロンの開発
Development of a 20-MW, 1-GHz Multi Beam Klystron for CLIC Project

○青山 真士,手塚 勝彦,林 健一,大久保 良久(東芝電子管デバイス株式会社)
○Masato Aoyama, Katsuhiko Tetsuka, Kenichi Hayashi, Yoshihisa Okubo (Toshiba Electron Tubes & Devices Co., Ltd.)
 
現在、欧州原子核研究機構(CERN)が中心となり、大型ハドロン衝突型加速器(LHC)の次期計画として電子-陽電子衝突実験(CLIC)計画の検討が進められている。 東芝電子管デバイスはCLIC計画RF源のR&D用として1 GHzマルチビームクライストロン(MBK)1式をCERNから受注し、開発中である。 CERNからの要求仕様はパルス繰り返し50pps、パルス幅150μsにてピーク電力20MW、動作効率はCERN電源仕様の制約から67-70%である。 東芝電子管デバイスには1.3 GHz MBK(パルス繰り返し10pps、パルス幅1500μs、ピーク電力10MW、動作効率66%)の開発実績があり、本MBKの基本設計は この1.3 GHz管を基に行った。1.3 GHz管と比較してさらに高効率での動作が要求されており、これを達成するためにパービアンスを下げた設計とした。 また、要求される動作パラメータから管球サイズが全体的に巨大化することで、設備的な制約条件が厳しくなるが、それもクリアする設計としている。 本発表ではCERN向け1 GHz MBKの設計、評価結果等について報告する。
 
技術研修会1 (8月9日 国際会議室)
15:20 - 16:20 
TUOLT01

「超伝導電磁石技術」大型加速器応用
Superconducting Magnet Technologies for Large Accelerators
○荻津 透(高エネルギー加速器研究機構)
○Toru Ogitsu (KEK)
 
TEVATRONでハドロンコライダーに超伝導電磁石が採用されて以来、超伝導電磁石技術はエネルギーフロンティアのハドロンコライダーにとってなくてはならない技術となった。本講演では加速器用超伝導技術をその発展の歴史を踏まえながら紹介していく。
 
学会賞受賞講演 (8月9日 国際会議室)
17:20 - 17:35 
TUOLA01
p.161
加速を伴う遅い取り出しビームのエネルギー変動補正
ENERGY COMPENSATION OF SLOW EXTRACTED BEAMS WITH RF ACCELERATION

○藤本 哲也(加速器エンジニアリング株式会社)
○Tetsuya Fujimoto (Accelerator Engineering Corporation)
 
 重粒子線治療施設では炭素イオンを治療に適したエネルギーまでシンクロトロンにより加速し、遅い取り出し法により約1秒かけてビームを取り出し患者に照射する。群馬大学重粒子線施設ではビームを少し加速することで3次共鳴による遅い取り出しを実現している。電場を利用した取り出しのため素早いビームの遮断が可能であるが、加速のプロセスにより取り出されたビームは体内飛程に時間変化をもたらす。従来の拡大ビーム照射法においては複数回の照射によりこの変化量は平均化される。しかし、現在治療利用に向けてR&Dが進められているペンシルビームによる3次元スキャニング照射ではこのような平均化が期待できないことから、この飛程変化を抑制する研究に取り組んだ。エネルギー変動を抑制するために、高エネルギーイオンが物質中を通過した時に生じるエネルギーロスを利用した回転エネルギーアブソーバーシステムを考案した。装置を新たに開発、製作し検証実験を行った所、1スピル中でのBragg-peakの位置変動を0.2mm以下に抑えられることを確認した。一方、アブソーバー厚を変化させるため横方向のビーム広がりは時間とともに変化する。散乱角が変化してもアイソセンターで時間変化のない小さいスポットを実現するため、アブソーバーの最適な配置およびビーム輸送ラインの光学設計の検討を行った。その結果アイソセンタースポットサイズを小さく一定に保てる解を見つけることができた。
 
17:35 - 17:50 
TUOLA02
p.166
[Slides]
重イオン蓄積リング個別入射方式の開発
Development of the individual injection method for heavy ion storage ring

○山口 由高(理化学研究所 仁科加速器研究センター 実験装置開発室)
○Yoshitaka Yamaguchi (RIKEN Nishina Center, Instrumentation Development Group)
 
 個別入射方式とは、サイクロトロンで加速した1次ビームを標的に照射することにより生成された2次ビームのうち、必要なものだけを選別・輸送し蓄積リングへ入射することに適した手法である。具体的には、蓄積リング用入射キッカー電磁石を励磁するためのトリガー信号を入射させたい粒子自信で予め発生させ、そのトリガー信号を高速で伝達し直ちにキッカー電磁石を励磁する。一方でその粒子は、ビーム輸送ラインを飛行した後に励磁中のキッカー電磁石を通過することで、キッカー磁場を感じ蓄積リングの周回軌道へと入射される。この仕組みを理研RIビームファクトリーの超伝導RIビーム生成分離装置(BigRIPS)とそれに繋がる稀少RIリング(R3)において使用することで、安定核から遠く離れた稀にしか生成されず且つ極短寿命な不安定核でさえもR3に確実に入射でき、精度良い質量測定や寿命測定などが実現可能となる。  2015年6月に核子当たり168MeVの78Krビームを用いてR3のビームコミッショニングを実施した際、78KrをR3に個別入射することに成功しこの仕組みを初めて実証した。また12月の質量導出原理実証試験では、36Arと35Clの2核種を問題なく個別入射できることを確認したので、それらの結果にも言及しつつ個別入射方式の開発を中心に話を進める。
 
17:50 - 18:05 
TUOLA03
p.169
[Slides]
加速器施設に世界初の熱電併給装置(CGS)導入他
The world’s first Co-Generation System for accelerator facilities and others

○藤縄 雅(理化学研究所 仁科加速器科学センター)
○Tadashi Fujinawa (RIKEN Nishina Center)
 
First of all, the author would like to thank all of his colleagues in receiving the Particle Accelerator Society of Japan’s Award for Significant Contributions. In this paper, the co-generation system (CGS) in the RIBF (Radioactive Isotropy Beam Factory) RIKEN Nishina Center, which follows the measures of the Kyoto Protocol for global warming and black out in utility company is explained in detail. Furthermore, Following the CGS explanation the author will explain cables and cabling for the Heavy Ion Accelerator in Chiba, Hyogo Ion Beam Medical Center and RIBF. In addition, the cranes at RIBF are also detailed.
 
技術研修会2 (8月10日 国際会議室)
9:00 - 10:00 
WEOLT01

「超伝導電磁石技術」小型加速器応用
Superconducting magnet technology for compact accelerator
○折笠 朝文((株)東芝京浜事業所)
○Tomofumi Orikasa (Toshiba Corporation Keihin Product)
 
小型加速器応用 ~産業、医療応用等に向けてよりカジュアルに使える磁石技術をわかりやすく解説します。
 
加速器応用・産業利用1/加速器土木・放射線防護1 (8月10日 国際会議室)
10:10 - 10:30 
WEOL01
p.174
[Slides]
可搬型高エネルギーX線源による橋梁検査向け部分角度CT再構成の研究
Study on Partial CT Reconstruction for Bridge Inspection with the Portable High Energy X-ray Source

○矢野 亮太,竹内 大智(東大 工学系 原子力国際専攻),上坂 充(東大 工学系 原子力専攻),草野 譲一((株)アキュセラ),土橋 克広(東大 工学系 原子力専攻),丸山 夏代((株)日立パワーソリューションズ),村田 健太郎((株)XIT),立若 正弘((株)関東技研),大島 義信(土木研究所)
○Ryota Yano (Uesaka-lab, Dept. of NEM, Grad. School of Eng. , The Univ. of Tokyo), Hiroaki Takeuchi, Mitsuru Uesaka (Dept. of NEM, Grad. School of Eng. , The Univ. of Tokyo), Joichi Kusano (Accuthela Inc.), Katsuhiro Dobashi (Dept. of Nuclear Engineering, Grad. School of Eng. , The Univ. of Tokyo), Natsuyo Maruyama (Hitachi Power Solutions Co., Ltd.), Kentaro Murata (XIT Inc.,), Masahiro Tatewaka (Kanto-Giken), Yoshinobu Oshima (Public Works Research Institute)
 
2015年11月に可搬型高エネルギーX線源を用いて、新潟県妙高市に位置している妙高大橋において、透過X線画像を撮像する実地試験を行い、橋梁のコンクリート部に埋め込まれている、より線状のPCワイヤの損傷状況を可視化することに成功した。その結果を用いることで、橋梁の耐力の減少度を推定することに成功した。一方で耐力の推定を目視で行ったこともあり、精度のさらなる向上が望まれている。 本研究ではこのインフラ検査システムにおいて、より詳細な健全性評価を行うために、現在主に医療や小型工業の非破壊検査で利用されている、検査体の断面画像を得ることが可能な部分角度CTをPCコンクリート対に適用することを目標としている。そのために、実験室系において、PCコンクリート試験体を用いて、X線の照射角度と角度の刻みによって再構成画像がどのように変化するか測定を行い、実橋梁における適用可能性を検討した。
 
10:30 - 10:50 
WEOL02
p.179
重粒子線がん治療装置用C6+イオン源・高周波四重極線形加速器のビーム加速試験
Beam acceleration test of C6+ ion source and RFQ linac for carbon ion radiotherapy

○佐古 貴行,山口 晶子,竹内 猛,佐藤 潔和(東芝),後藤 彰,岩井 岳夫,根本 建二,嘉山 孝正(山形大),野田 悦夫(放医研)
○Takayuki Sako, Akiko Yamaguchi, Takeshi Takeuchi, Kiyokazu Sato (TOSHIBA), Akira Goto, Takeo Iwai, Kenji Nemoto, Takamasa Kayama (Yamagata Univ.), Etsuo Noda (NIRS)
 
株式会社東芝および山形大学医学部は重粒子線がん治療装置に使用可能なレーザイオン源および高周波四重極(RFQ)線形加速器を開発した。従来の重粒子線がん治療では電子サクロトロン共鳴イオン源(ECRイオン源)でC4+を生成、RFQ・DTL加速後に荷電変換膜によりC6+へと変換していた。一方でレーザイオン源ではC6+の直接生成が可能であり、加速効率の向上により省エネルギー化・小型化が可能となる。また、従来型のRFQでは外胴体とベーンが分割されていたが、今回開発したRFQでは銅ブロックからの削り出しによる外胴体・ベーン一体構造を採用した。その結果、理論値の95%を超えるQ値を達成、半導体方式高周波増幅器・C6+直接加速と合わせて消費電力の低減を実現している。今回開発した要素技術の一部が山形大学医学部で建設中の次世代重粒子線がん治療装置の入射器に適用される予定である。本イオン源およびRFQによるビーム加速試験について報告する。
 
10:50 - 11:10 
WEOL03
p.182
高精度飛程測定のためのRF-knock out 取り出し試験及びその評価
Experiment of RF-knock out Extraction for high precision range measurement

○菊池 遥(群馬大学大学院医学系研究科),想田 光,金井 達明,平野 裕之(群馬大学重粒子線医学研究センター),Sung Hyun Lee,大崎 晃平(群馬大学大学院医学系研究科),取越 正己(群馬大学重粒子線医学研究センター)
○Haruka Kikuchi (Gunma University), Hikaru Souda, Tatsuaki Kanai, Hiroyuki Hirano (Gunma University Heavy Ion Medical Center), Lee Sung Hyun, Kohei Osaki (Gunma University), Masami Torikoshi (Gunma University Heavy Ion Medical Center)
 
群馬大学では、シンクロトロンにより炭素イオンを400MeV/nまで加速しがんの治療を行っている。現在はブロードビーム照射により行っており、ビーム取り出しにはRF加速による遅い取り出しを採用している。今後スキャニング照射による治療も検討されており、飛程変動を抑えるためにRF-knock outによる取り出しが必要となる。また今後行う平均励起ポテンシャルの測定においても、RF-knock outによるビームを採用する予定である。この測定は、ビームの飛程の変化から各物質の平均励起ポテンシャルを求める実験である。この実験にRF-knock outを採用する理由として、加速取り出しに比べるとエネルギーの変動が一桁小さい・ビームの位置変動が少ないという特徴があり、正確な飛程測定に向いているためである。現在群馬大学には140 , 290 , 400MeV/nのRF-knock out 取り出しのOPFファイルが存在する。しかし実験には、新たに170MeV/nでのRF-knock out 取り出しによるビームを使用する。これは実験に使用する高精度水カラムの測定可能範囲に合わせ、かつエナジーストラグリングをできるだけ軽減させるためである。そのため今回新たに作成した170MeV/nでの取り出し実験を行い、400MeV/nとビーム状態(ビーム漏れがないか・チューン・クロマティシティ)の比較・評価を行う。その上で今後行う平均励起ポテンシャルの測定実験に用いることができるか、また治療にも用いることができるかなどの検討を行う。
 
11:10 - 11:30 
WEOL05
p.187
[Slides]
良好な花崗岩盤中に建設されるILC加速器トンネルおよび衝突実験空洞の耐震性検討
Study on the earthquake-resistant performance of ILC tunnel and large cavern into good-quality granitic rock masses

○白岩 丈幸(岩手県),大山 寛夫(鹿島建設株式会社),京谷 孝史,佐貫 智行,吉岡 正和(東北大学),武内 邦文(株式会社大林組),名合 牧人(大成建設株式会社),福田 和寛(清水建設株式会社),山下 了(東京大学)
○Takeyuki Shiraiwa (Iwate Prefectural Government), Hiroo Ohyama (Kajima Corporation), Takashi Kyoya, Tomoyuki Sanuki, Masakazu Yoshioka (Tohoku University), Kunifumi Takeuchi (Obayashi Corporation), Makito Nago (Taisei Corporation), Kazuhiro Fukuda (Shimizu Corporation), Satoru Yamashita (The University of Tokyo)
 
人類の抱える根源的な謎である宇宙の創生と未来を研究する大型国際科学技術プロジェクトとして注目されている国際リニアコライダー(ILC)計画が推進中で、現在、文科省に設置されたILCに関する有識者会議でその意義、実現性、社会的影響等が議論されている。その中間まとめの中には想定される地震の規模に応じた耐震設計及びコスト検討等の対応方策を行う必要があると記載されている。 そこで、本検討では良好な花崗岩盤中に建設される予定のILC施設の加速器トンネルおよび中央の衝突実験空洞の耐震性確保に関する概略的な見通しを得ることを目的に、トンネル等地下構造物の耐震性に関する既往の知見をまとめ、そして、定量的な見通しを得るためにILC施設の候補地である北上山地を想定した動的応答耐震解析による検討を実施した。具体的には、ILC施設の耐震性検討の考え方と説明シナリオ、入力地震動の設定、ILCトンネルの地震被害の許容状態の定義、そして、加速器トンネル及び衝突実験空洞の耐震性に関する動的応答解析の条件設定を示す。その解析的検討の結果として、良好な岩盤中に建設されたILC加速器トンネル及び衝突実験空洞については、仮にかなり大きな地震に襲われた場合にも、その地下施設としての基本的な機能喪失には至らない可能性が高いと評価された。
 
11:30 - 11:50 
WEOL06
p.192
[Slides]
無人ヘリコプターによる光波測距儀の気象補正の高精度化
High accurate way of meteorological correction for the EDM by the Drone

○三島 研二((株)パスコ),増澤 美佳,大澤 康伸,安達 利一,川本 崇,山岡 広(高エネルギー加速器研究機構),海津 優,福島 芳和,阿部 直宏,宮坂 正樹,中村 保彦((株)パスコ)
○Kenji Mishima (PASCO), Mika Masuzawa, Yasunobu Ohsawa, Toshikazu Adachi, Takashi Kawamoto, Hiroshi Yamaoka (KEK), Yu Kaitsu, Yoshikazu Fukushima, Naohiro Abe, Masaki Miyasaka, Yasuhiko Nakamura (PASCO)
 
本研究は,ドローンに搭載した気象観測機器で得られた気温,気圧,湿度で光波測距儀の測定距離を補正することで,大型加速器の建設時あるいは保守点検時の測量&アライメントの精度を向上させることが目的である. 測量&アライメントに用いられる光波測距儀(Electromagnetic Distance Measure,以下「EDM」とする )は,EDM本体から送光されたレーザ光は大気の屈折率の影響を受ける.そのため,従来は器械点と反射点の両測点で気温,気圧,湿度を測定し,両測点の平均値で測定距離に補正計算をしている.加速器トンネルのような密閉された空間では,気象分布が均一であることが容易に推測でき,両測点の平均値が光路沿いの気象を代表するとして補正することは問題ないと思われる.しかし,地上部の測量のように開放された空間では両測点の平均値が必ずしも光路沿いの気象を代表しているかは疑問である. 本実証実験では,気象観測装置を搭載した無人ヘリコプタ(Drone)を光路沿いに飛行させて気象観測することによって,光路沿いの気象分布を明らかにすることを試みた. 高エネルギー加速器研究機構の敷地内で実証実験をおこない,現行の両測点の気象測定の平均値で光路沿いの気象を代表しているとしても差し支えがないことを確認した. 今後の大型加速器の建設時あるいは保守点検時の高精度化に資することができものである.
 
レーザー/粒子源1 (8月10日 会議室201)
10:10 - 10:30 
WEOM01
p.197
格子構造中におけるレーザー駆動誘電体加速の数値解析
Numerical study of a laser-driven grating-based dielectric accelerator

○陳 昭福(東大・原子力国際専攻),小山 和義,上坂 充(東大・原子力専攻),吉田 光宏(高エネ研),岡元 勇人(東大・原子力国際専攻)
○Zhaofu Chen (UTokyo, Dept. of NEM), Kazuyoshi Koyama, Mitsuru Uesaka (UTokyo, Nuclear Professional School), Mitsuhiro Yoshida (KEK), Hayato Okamoto (UTokyo, Dept. of NEM)
 
The dielectric laser accelerators (DLAs) have attracted increasing interest in the recent years due to its potential for high acceleration gradient. We present numerical investigation of a dual dielectric grating structure designed for the 50 keV electrons. The simulation results show that this structure efficiently modulates the wave front of the incident laser and generates electric field parallel to the electron travel direction at the synchronous phase velocity. We exploit the first spatial harmonic of the grating structure to accelerate the electrons, with the height and width of the pillar of the grating optimized for the maximum acceleration gradient. We also investigate the effect of the starting phase in the optical cycle, indicating the capability of bunching with the structure. The described design shows great potential in staging by adding consecutive acceleration regions due to the linear interaction of the laser-induced electric field with the electrons. The potential of the smaller size as well as the lower cost of DLAs may enable the wide use of accelerators for higher energy physics, university-scale light sources and radiobiology applications.
 
10:30 - 10:50 
WEOM02
p.200
SuperKEKBに向けた RF電子銃用Nd/Ybハイブリッドレーザーシステム
Nd/Yb hybrid amplifier laser system of RF gun for SuperKEKB

○周 翔宇,夏井 拓也,吉田 光弘,張 叡,小川 雄二郎(KEK/総研大)
○Xiangyu Zhou, Takuya Natsui, Mitsuhiro Yoshida, Rui Zhang, Yujiro Ogawa (KEK/SOKENDAI)
 
SuperKEKB計画には高ルミノシティーを目指すため、RF電子銃および電子銃用レーザーの開発・試験を行ってきた。Ybファイバー発振器・Ybファイバー増幅器及びYb:YAGのthin-disk型マルチパス増幅器により、25Hzレーザー光源を開発した。そして、このレーザーシステムを用いて、シングルバンチの3nC及びダブルバンチの1nC電子ビームが得られ、入射器ビームコミッショニングを行っている。 一方、ポンプLDの繰り返し周波数を50Hzに上がると、熱蓄積が熱レンズ効果を引き起こし、Yb:YAG結晶の増幅率及びビーム品質を悪くなる。さらに、Nd:YAG利得媒質は、高い光学的均一性や耐力性を備え、高繰り返し増幅に対応できる。したがって、NdおよびYbドップ利得媒質を用いて、新しいハイブリットレーザーシステムを開発している。 Ybファイバー発振器とYbファイバー増幅した後、シグナルパルスを中心波長1030nmと1064nmの成分を分け、Yb:YAG及びNd:YAG増幅を両方対応できる。
 
10:50 - 11:10 
WEOM03
p.204
[Slides]
LaB6及びCeB6光陰極の温度・照射レーザー波長依存性
Dependence of LaB6 and CeB6 Photocathodes on Temperature and Incident Laser Wavelength

○守田 健一,全 炳俊,増田 開,Torgasin Konstantin,Suphakul Sikharin,桂山 翼,山下 大樹,紀井 俊輝,長﨑 百伸,大垣 英明(京大エネ研)
○Kenichi Morita, Heishun Zen, Kai Masuda, Konstantin Torgasin, Sikharin Suphakul, Tsubasa Katsurayama, Hiroki Yamashita, Toshiteru Kii, Kazunobu Nagasaki, Hideaki Ohgaki (IAE, Kyoto Univ.)
 
近年、熱陰極材料を長寿命かつ低コストな光陰極材料として利用する試みがなされている。中でもLaB6やCeB6といった金属六ホウ化物単結晶陰極は低仕事関数、低蒸発率といった特徴を有するため、優れた熱陰極であると同時に光陰極運転時の優位性も期待されている。先行研究ではLaB6を光陰極として使用した際に量子効率が陰極温度の上昇に応じて改善することや、その理由が表面の清浄化によるものであり、1000 ℃以上での光陰極運転が適切であることが報告されている。この次の段階として、暗電流や熱エミッタンスが大きな問題にならない装置において、熱電子放出電流が無視できる程度の熱励起をレーザーによる励起と併用することで、量子効率の改善が可能であると考えられる。また、熱励起によりエネルギーが付与される事から、光電子放出に要求される光子エネルギーの低減が予想される。本研究では熱励起併用による量子効率改善の実現性と材料依存性を評価するために、仕事関数がほぼ等しく熱電子放出特性の異なるLaB6とCeB6に対し、光子エネルギーが仕事関数以上となる266, 355 nm, 仕事関数未満となる532 nmのナノ秒レーザーを照射し、広い温度範囲において光電子放出特性の計測と比較を行った。結果として、熱励起併用による量子効率改善と要求光子エネルギーの低減が確認されたので、ここに報告する。
 
11:10 - 11:30 
WEOM04

高周波同期型短パルスレーザーイオン源の開発
Development of RF Synchronized Short Pulse Laser Ion Source
○不破 康裕,岩下 芳久,井上 峻介,橋田 昌樹,阪部 周二,頓宮 拓(京大化研)
○Yasuhiro Fuwa, Yoshihisa Iwashita, Shunsuke Inoue, Masaki Hashida, Shuji Sakabe, Hiromu Tongu (Kyoto U., ICR)
 
極短パルスレーザーを用いた短パルスのレーザーイオン源を開発している。このレーザーイオン源では、高周波共振器の加速ギャップ中でRF位相と同期したレーザーとガスジェットを相互作用させることでプラズマを生成し、プラズマの膨張前に高周波電場でイオンバンチを引き出す。生成されるイオンバンチの時間幅は数ナノ秒で、RFQの加速セクションにマイクロバンチとしてそのまま入射することで、バンチングが不要な入射器システムを実現できる。本発表では、イオンバンチ生成・分析実験の結果の報告とともに、このイオン源を用いた入射器システムの構想を提案する。
 
11:30 - 11:50 
WEOM05

[Slides]
IFMIF/EVEDA原型加速器(LIPAc)の入射器のビーム特性改善
Injector beam quality improvement of the IFMIF/EVEDA prototype accelerator (LIPAc)
○一宮 亮,近藤 恵太郎,新屋 貴浩,杉本 昌義,春日井 敦,坂本 慶司,奥村 義和(量研),Bolzon Benoit,Gobin Raphael,Scantamburlo Francesco,Pruneri Giuseppe,Knaster Juan,Bellan Luca,Dzitko Herve()
○Ryo Ichimiya, Keitaro Kondo, Takahiro Shinya, Masayoshi Sugimoto, Atsushi Kasugai, Keishi Sakamoto, Yoshikazu Okumura (QST), Benoit Bolzon, Raphael Gobin (CEA), Francesco Scantamburlo, Giuseppe Pruneri, Juan Knaster (IFMIF/EVEDA Project Team), Luca Bellan (INFN), Herve Dzitko (F4E)
 
IFMIFは核融合炉材料試験用の加速器駆動型中性子源施設であり、LIPAcはそのための大電流重陽子加速器の技術実証を行う試験加速器である。CWの大電流(140 mA以上)・低エミッタンス(0.25π mm 以下(規格化rms))・高信頼性(IFMIF加速器全体の稼働率87%以上)と言った開発項目は、新世代プロトンドライバーとして加速器研究への貢献が期待される。 LIPAcは平均電流が100 mAを越えるCW重陽子加速器であり、加速器筐体の放射化は人間によるメンテナンスを困難にさせるため、ビームロスを十分に低減せねばならない。そのため、エミッタンスを低減し、安定したビームを確立する必要がある。また、100 keVから5 MeVまで125 mAのCWビームを加速させるRFQの入射条件に合致するビームを供給する事が求められている。 RFQコミッショニングはまず、放射化を起こしにくい水素ビーム(100 keV、140 mAの同サイズの重陽子ビームと同じ空間電荷効果となる50 keV、70 mA)にて開始する。 50 keVの水素ビームで低エミッタンスを得るためプラズマ電極口径を12 mmφから10 mmφに変更したところ、0.30π mm mrad以内で55 mA引き出す事が出来た。この時100 keVのD+ビームの場合(12 mmφ)は110 mAであった。このため、エミッタンスを維持しつつ引き出し電流目標を達成するよう再設計した各電極に交換し、ビーム試験を進めている。 本報告では、これらのコミッショニングで得られた結果並びに知見を報告する。
 
11:50 - 12:10 
WEOM06
p.208
低加速勾配キャプチャー空洞による電子ビームドライブ方式ILC陽電子源
Electron Driven ILC Positron Source With Low Gradient Capture Cavities

○栗木 雅夫(広島大学先端研),根岸 健太郎(岩手大学),柿田 和臣,高橋 徹(広島大学先端研),清宮 裕史,奥木 敏行,浦川 順治,佐藤 政則,横谷 馨(KEK加速器),大森 恒彦(KEK素核研)
○Masao Kuriki (AdSM, Hiroshima U. ), Kentaro Negishi (Iwate U. ), Kazuomi Kakita, Tohru Takahashi (AdSM, Hiroshima U. ), Yuji Seimiya, Toshiyuki Okugi, Junji Urakawa, Masanori Sato, Kaoru Yokoya (KEK, Accelerator Lab. ), Tsunehiko Omori (KEK, IPNS)
 
ILC国際リニアコライダー計画は円形コライダーでは事実上不可能な350GeVを超える重心系エネルギーでの電子陽電子衝突を実現できる唯一の加速器として、ICFA主導のもと、日本を最有力建設候補地としてプロジェクトが進められている。陽電子はアンジュレーターから発生するガンマ線の対生成反応により生成するが、技術的バックアップとして、従来方式である電子ビームドライブによる陽電子生成が検討されている。技術的バックアップとして、リスクを極力低減するため、開発要素を極力排除し、既存技術を基盤とした陽電子生成標的、捕獲のためのRF加速空洞、ブースター加速器を仮定し、ILC陽電子源の設計を行った。陽電子捕獲に大きく影響する捕獲RF空洞には、定在波型空洞を使用予定であるが、ビームローディングの大きな状態では、空洞全体を単一の空洞とみなした単セルモデルでは、その加速勾配を正確に評価できない。そのため、セル間結合を考慮した多セルモデルを構築し、ビーム負荷電流がダイナミックに変化する空洞による陽電子捕獲を評価した。本発表では、システム全体の概要、定在波型加速管の多セルモデルによるビームローディングを含んだ加速勾配の導出、陽電子捕獲シミュレーションの結果について報告する。
 
加速器土木・放射線防護2/粒子源2 (8月10日 国際会議室)
13:10 - 13:30 
WEOL07
p.213
[Slides]
J-PARC MRにおける反跳中性子防護壁の検討
Shield Design for the Scattered Neutrons at the J-PARC MR

○白形 政司(高エネ研)
○Masashi Shirakata (KEK)
 
J-PARC MRでは、入射直線部にビームロス局在化のためのコリメータを設置している。コリメータの上流には入射キッカーがあるが、コリメータから後方散乱で出てくる中性子は間にある四極電磁石によって阻まれ、入射機器を放射化する度合いは大きくないと考えられていた。ところが2012年12月、入射キッカーを収納するキッカーチェンバーの上面で1 mSv/hを超える残留線量が観測され、メンテナンス作業において大きな制約となる事が懸念された。2016年5月現在で残留線量に特段の増加は見られていないが、今後MRサイクルを倍増した際には障害となってくる可能性がある。ここではキッカーチェンバーを放射化する原因と、それを防止する中性子防護壁の検討をする。
 
13:30 - 13:50 
WEOL08
p.218
ATFダンピングリング軌道安定化のための 冷却水温度制御
Temperature control of the cooling water for the orbit stabilization of KEK-ATF

○内藤 孝,荒木 栄,奥木 敏行,久保 浄,黒田 茂,照沼 信浩(高エネルギー加速器研究機構)
○Takashi Naito, Sakae Araki, Toshiyuki Okugi, Kiyoshi Kubo, Shigeru Kuroda, Nobuhiro Terunuma (KEK)
 
高エネルギー加速器研究機構先端試験加速器ATF/ATF2では超低エミッタンス電子ビームによる最終収束系の試験が進められている。ATFダンピングリング(ATF-DR)の軌道変動は、最終収束系のビーム調整に大きく影響するため安定化の努力が続けられて来た。軌道変動要素の一つとしてマグネット、真空チャンバーなどの冷却水の温度変動が挙げられる。ATF-DRでは、アーク部にコンバインドベンドを採用しているため冷却水の温度による熱収縮のためわずかな軌道の変動やTuneの変動が起こる。ビーム制御の精度が上がり、冷却水の制御温度+/-1℃に比例してビーム軌道が変動していることが解った。このビーム軌道の変動を抑えるために、冷却水の温度をさらに安定化させる必要が生じるようになってきた。 マグネット、真空チャンバーなどの冷却水は気化熱を利用したクーリングタワーによって作られている。冷却水の温度制御はクーリングタワーの散水ポンプとファンの発停によるオンオフ制御と三方弁のFID制御の組み合わせによって行われている。冷却水の温度安定化のためにPID制御のパラメータの調整を行ったが、クーリングタワーのオンオフ制御時に急激に変動する水温変化を吸収しきれず1℃以下の温度制御は難しいように思われた。この問題を解決するためにオンオフ制御の特殊な設定を行い、冷却水の制御温度を+/-0.1℃程度まで下げることが出来、軌道の安定化を実現することが出来た。
 
13:50 - 14:10 
WEOL09
p.221
SPring-8蓄積リング収納部床面レベルの長期変位解析
Analysis of the long term floor deformation of SPring-8 ring tunnel

○木村 洋昭,岡安 雄一,張 超,安積 則義(JASRI),松井 佐久夫(RIKEN)
○Hiroaki Kimura, Yuichi Okayasu, Zhang Chao, Noriyoshi Azumi (JASRI), Sakuo Matsui (RIKEN)
 
SPring-8の蓄積リング(周長約1.5km)のように大型の加速器の場合には、長期的・短期的に安定な収納部床面であるかが、性能や維持管理のコストを左右する。その為、安定な岩盤の上に建屋を建設できる現在の場所が選定された。そのおかげで、1997年の供用開始以来、床面の変位に対応する為の加速器の再アライメントは一度も行っていないが、加速器運転上の大きな問題になってはいない。 一方、SPring-8では次期計画に向けて、極低エミッタンスの蓄積リングの設計を行っている。このリングでは、架台間のアライメント許容値として約50μm(1σ)という現リングの4分の1の値が要求されている。そこで、現状の収納部床面の変位を調査し、大きな変位がある場合はその原因特定を行うこととなった。 1996年の設置当時、リング加速器の全周の高低差は±0.5mm程度であったのが、2014年では±2mm程度になっていた。解析には、高さではなく積分する前の比高差の変位を使用した。大きな経年変位の場所は主にRF用の地下ピットで、比高差の年間最大変位は50μm程度であった。又、近年の夏と冬の測定データから同様に季節変位を抽出した。変位の原因は主に埋設排水管と地下通路、建屋下通過道路で、年間最大変位は200μm程度であることがわかった。
 
14:10 - 14:30 
WEOL10
p.225
3次元PIC解析による重粒子線治療ISOLシステム用1価イオン源の最適化
Optimization of singly charged ion source with 3-D PIC simulation

○片桐 健,野田 章,永津 弘太郎,涌井 崇志,野田 耕司(放医研)
○Ken Katagiri, Akira Noda, Kotaro Nagatsu, Takashi Wakui, Koji Noda (QST/NIRS)
 
重粒子線治療において,PET装置で照射野をリアルタイムに検証する技術を実現するために,Isotope Separation On-Line (ISOL)法により11CビームをHIMACシンクロトロンから供給することを計画している.この方法では,小型サイクロトロンによるプロトン照射で生成された11C分子をイオン化して加速する.このイオン化のプロセスでは,まず1価イオンを生成し不要な同位体を分離した後に,目的の11C+イオンをEBISイオン源に入射して荷電増幅を行う.このISOLシステムに用いる低エネルギー電子ビーム1価イオン源の開発を現在進めている.限られた生成量の11C分子から,治療に要求される量の11Cイオンを生成するためには,1価イオン源は少なくとも~0.1%のC+イオンの生成効率を達成しなければならない.このイオン化効率を得るためには,イオン源内ドリフトチューブにおける電子ビーム実効電流量が100 mA以上必要であると見積もられている.この実効電流量を達成するために,イオン源内電極構造の最適化を行った.この最適化は,新たに開発したPIC (Particle in Cell) 法を用いた3次元粒子計算コードにより,電子ビームの軌道を解析することで行った.本発表では,これらの計算結果と実験結果の比較を示すと共に,最適化されたイオン源の性能を議論する.
 
14:30 - 14:50 
WEOL11
p.229
SiC複合材料を用いた陽子加速器標的の開発
Development of SiC composite material for proton-accelerator target

○牧村 俊助(高エネ研),佐藤 朗(大阪大),朴 峻秀(室蘭工大),的場 史朗(高エネ研),二宮 和彦,嶋 達志,鈴木 智和(大阪大),河村 成肇,下村 浩一郎,三原 智(高エネ研),青木 正治(大阪大),中平 武(高エネ研)
○Shunsuke Makimura (KEK), Akira Sato (Osaka Univ.), Joon-soo Park (MIT), Shiro Matoba (KEK), Kazuhiko Ninomiya, Tatsushi Shima, Tomokazu Suzuki (Osaka Univ.), Naritoshi Kawamura, Koichiro Shimomura, Satoshi Mihara (KEK), Masaharu Aoki (Osaka Univ.), Takeshi Nakadaira (KEK)
 
素粒子実験、物理実験において世界中で大強度陽子加速器のパイオン・ミュオン生成標的材料として、優れた耐熱性能、機械特性、パイオン・ミュオン生成効率の観点から等方性黒鉛材が採用されている。我々は、等方性黒鉛に代わる標的材料として炭化ケイ素(以下;SiC)複合材料を採用する事を計画している。SiC材は、等方性黒鉛と同様に耐熱特性、機械特性に優れていると同時に、耐酸化性能、放射性物質を標的中に閉じ込めるガス遮蔽性能は等方性黒鉛材よりも優れている。密度も等方性黒鉛に比べ高く(3.2 g/cc)、パイオン・ミュオン発生源を局所化することにより高いミュオン輸送効率を期待できる。モノリシックSiCは脆性材料であり熱衝撃に弱いという欠点を持つが、その欠点を解消するためにSiC複合材料の実用化が室蘭工業大学において進められている。この複合材料は、繊維の積層方向によって、熱、強度特性を制御できると同時に擬延性を持たせる事が出来る。現在、大阪大学RCNP/MuSIC計画、J-PARC/COMET第一期計画、J-PARC/MLFの等方性黒鉛標的をSiC複合材料に交換することを目指し、基礎実験、評価を計画している。本発表内ではSiC複合材料を用いた陽子加速器標的の開発状況を報告する。 本研究はJSPS科研費16H03994の助成を受けたものです。
 
加速器応用・産業利用2 (8月10日 国際会議室)
15:00 - 15:20 
WEOL12
p.233
[Slides]
SAGA-HIMATでのスキャニング照射装置の建設
Construction of a scanning irradiation system at SAGA-HIMAT

○金澤 光隆,遠藤 真広,溝田 学,日向 猛,綱島 義一,佐藤 弘史,工藤 祥,塩山 善之,北村 信,十時 忠秀,中川原 章(SAGA-HIMAT),築島 千尋(三菱電機)
○Mitsutaka Kanazawa, Masahiro Endo, Manabu Mizota, Takeshi Himukai, Yoshikazu Tsunashima, Hiroshi Sato, Sho Kudo, Yoshiyuki Shioyama, Makoto Kitamura, Tadahide Totoki, Akira Nakagawara (SAGA-HIMAT), Chihiro Tsukishima (Mitsubishi Electric Corporation)
 
九州国際重粒子線がん治療センター(SAGA HIMAT)では、2013年8月末に治療がスタートして以来、順調に治療患者数が増えてきていて、2015年度には620名の患者の治療を行うことが出来た。今後、さらに治療希望の患者の増加が見込まれる事から、これまでの2治療室のみの利用から、3室目の整備を行うことにした。現在使用している照射室では技術が確立されているパッシブ照射法を採用したが、3室目では、放医研で実用化されたスキャニング照射法を採用する事にした。この3室目整備の判断は治療開始したのと同じ年になされて、次の年度からは正式にメーカーと契約し、3年間で完成させる計画とした。その際条件とされたのは、治療には影響しないようにという事で、建設作業のための特別な治療休止期間は設けなかった。したがって建屋の工事及び装置建設は、センターがビームを使わない夜間、週末、及び7月後半に設けている2週間の装置メンテナンス期間に行う必要がある。現在、薬機申請のためのビームデータがほぼ取れていて、治療照射に向けてビームテストを行っている所である。本講演では、SAGA-HIMATでのスキャニング照射室の立ち上げの現状について報告する。
 
15:20 - 15:40 
WEOL13
p.238
[Slides]
炭素線治療用超伝導回転ガントリーの開発
Development of a superconducting rotating-gantry for carbon radiotherapy

○岩田 佳之,野田 耕司,白井 敏之,藤田 敬,佐藤 眞二,古川 卓司,原 洋介,水島 康太,皿谷 有一,丹正 亮平,森 慎一郎(放医研),藤本 哲也(加速器エンジニアリング),松葉 俊哉(広島大),荻津 透(高エネ研),雨宮 尚之(京大工),長本 義史,松田 晋也,折笠 朝史,高山 茂貴(東芝)
○Yoshiyuki Iwata, Koji Noda, Toshiyuki Shirai, Takashi Fujita, Shinji Sato, Takuji Furukawa, Yosuke Hara, Kota Mizushima, Yuichi Saraya, Ryohei Tansho, Shinichiro Mori (NIRS), Tetsuya Fujimoto (AEC), Shunya Matsuba (Hiroshima Univ.), Toru Ogitsu (KEK), Naoyuki Amemiya (KUEE), Yoshifumi Nagamoto, Shinya Matsuda, Tomofumi Orikasa, Shigeki Takayama (Toshiba)
 
粒子線がん治療において、粒子ビームを患者に対して任意の角度から照射可能とさせる回転ガントリーは重要な装置であり、陽子線がん治療装置では標準採用されるに至っている。一方、炭素線用回転ガントリーは、搭載される電磁石に必要な磁気剛性が陽子線用のそれに比べ約3倍高いことから、電磁石群やそれらを支える構造体のサイズ・重量が非常に大型となる。現在、炭素線用回転ガントリーは世界で唯一、ハイデルベルグに建設され稼働中であるが、その回転部重量は600tを超えると報告されている。我々は回転ガントリーの小型・軽量化のため、超伝導回転ガントリーの開発を進めてきた。この回転ガントリーは主に10台の超伝導電磁石と、1対のスキャニング電磁石により構成されており、最大430 MeV/uの炭素イオンを患者に対し0-360度の如何なる方向からも高速3次元スキャニング法にて照射を行うことができる。また、二極・四極磁場が同時発生且つ、独立励磁可能な機能結合型超伝導電磁石を採用することで、全長14m、ビーム軌道半径5.5m、重量約300tと大幅な小型・軽量化を実現している。超伝導回転ガントリーは製造後、平成27年初頭より放医研への輸送並びに組立工事が行われ、同年9月に完成した。その後、ビームコミッショニングが行われ、所期の性能が得られていることを確認した。本発表では超伝導回転ガントリー研究開発の概要、並びにビームコミッショニング結果について紹介する。
 
15:40 - 16:00 
WEOL14

[Slides]
フェムト秒MeV電子線パルスを用いた超高速電子顕微鏡の開発
Ultrafast electron microscopy using femtosecond MeV electron pulses
○楊 金峰,浅川 稜,吉田 陽一(阪大産研),谷村 克己(阪大工)
○Jinfeng Yang, Ryo Asakawa, Yoichi Yoshida (ISIR, Osaka Univ.), Katsumi Tanimura (HVEM, Osaka Univ.)
 
我々はフェムト秒時間とナノメートル空間分解能を同時に実現する電子顕微鏡の実現を目指して、フォトカソード高周波(RF)電子銃を用いた超高速電子顕微鏡の研究開発を進めている[1]。昨年度には、RF電子銃における熱エミッタンスの低減を行い、ビームの高輝度化と検出効率の向上を試みた。その結果、エネルギーが3.1MeV、パルス幅が100fsの相対論的フェムト秒電子線パルスを用いた明瞭な電子回折図形とポリスチレンや金のナノ微粒子の透過電子顕微鏡像の測定に成功した。電子回折の観測では、シングルパルスの測定が可能となり、低倍率の電子顕微鏡像の測定では、シングルパルスの観測も成功した。本年会では、低エミッタンス・フェムト秒電子ビームの発生およびそれを用いた超高速電子顕微鏡の測定結果について報告する。
 
16:00 - 16:20 
WEOL15
p.241
[Slides]
950keVXバンドライナックX線源による実橋梁その場透視検査・構造強度診断の開始
COMISSIONING OF ON-SITE INSPECTION AND STRUCTURAL ANALYSIS BY 950 KEV X-BAND LINAC X-RAY SOURCE

○上坂 充,橋本 英子,土橋 克広,矢野 亮太,竹内 大智,ベレデ ジャン ミシェル(東京大学),大島 義信,石田 雅博(土木研究所),草野 譲一,田辺 英二((株)アキュセラ),丸山 夏代((株)日立パワーソリューション),大矢 清司((株)シーエックスアール),服部 行也((株)日立パワーソリューション),小石川 篤,村田 健太郎((株)XIT),櫻井 栄男((株)アクシオン・ジャパン),尾川 浩一,貝吹 太志(法政大学),關 義親(原機構),立若 正弘,小野 洋伸((株)関東技研)
○Mitsuru Uesaka, Eiko Hashimoto, Katsuhiro Dobashi, Ryota Yano, Hiroaki Takeuchi, Jean Michel Bereder (University of Tokyo), Yoshinobu Oshima, Masahiro Ishida (), Joichi Kusano, Eiji Tanabe (ACCUTHERA Co.,Inc.), Natsuyo Maruyama (Hitachi Power Solutions Co.,Ltd), Seiji Ooya (CXR Co.,Ltd), Ikuya Hattori (Hitachi Power Solutions Co.,Ltd), Atsushi Koishikawa, Kentaro Murata (XIT Co.,Ltd), Hideo Sakurai (AXION-JAPAN Co.,Ltd), Koichi Ogawa, Futoshi Kaibuki (Hosei University), Yoshichika Seki (JAEA), Masahiro Tatewaka, Hironobu Ono (KANTOGIKEN Co.,LTD)
 
950keVXバンド(9.3GHz)電子ライナックX線源による産業インフラの検査は商用ベースでの実用化が進展している。我々のグループは、内閣府SIP(Strategic Innovation Program)プロジェクトの中で平成27年11月から実橋梁のその場透視検査と構造強度評価が開始された。第2回が平成28年7月に実施される。その結果を報告する。 土木研究所ご協力の元、平成27年11月に、実橋梁(妙高大橋:新潟県妙高市)で950keVXバンドライナックX線源による透過X線撮像試験を行った。透過画像からPC(Prestressed Concrete)の外径7mmのワイアの切断やほつれが明確に測定された。その結果をもとに、ファイバーモデルはり理論による橋梁全体の構造計算、検査周辺部の有限要素法による3次元非線形鉄筋コンクリート構造解析も実施し、実際の現場での健全性診断応用の可能性を見出す結果を得られ、実用化に向けて大きな一歩を踏み出すことが出来た。 現在東大実験室にて、限定されたスキャン走行からの透視画像によって内部構造情報を得られる部分角度CT 法とTomosynthesis法の試験を実施している。スキャン走行とデータが限定されることによる鉄筋の再構成画像の評価及び補正手法開発を、ファントム試料を使って行っている。またPCワイアが装填されている外径30mmのシース管中のグラウトの未充填状態もX線透過画像で確認できた。950keV/3.95MeVX線源による実橋梁の健全性評価を、日本、世界に普及させていきたい。
 
16:20 - 16:40 
WEOL16
p.246
名古屋大学における静電加速器を用いたホウ素中性子捕捉療法用中性子源の開発
Development of the Electrostatic Accelerator driven BNCT neutron source at Nagoya University

○鬼柳 善明,土田 一輝,古澤 大貴,校條 洋輔,山崎 淳,渡辺 賢一,瓜谷 章,辻 義之,恒吉 達矢(名大工),市川 豪,広田 克也,伊藤 維久弥,北口 雅暁,清水 裕彦(名大理)
○Yoshiaki Kiyanagi, Kazuki Tsuchida, Daiki Furuzawa, Yosuke Menjo, Atsushi Yamazaki, Kenichi Watanabe, Akira Uritani, Yoshiyuki Tsuji, Tatsuya Tsuneyoshi (Graduate School of Eng., Nagoya Univ.), Go Ichikawa, Katsuya Hirota, Ikuya Ito, Masaaki Kitaguchi, Hirohiko Shimizu (Graduate School of Sci., Nagoya Univ.)
 
名古屋大学では、ボロン中性子捕捉療法用の工学実験を主たる目的とし、理工学実験にも供することができる中性子源NUANS(Nagoya University Accelerator-driven Neutron Source)の建設を進めている。加速器はIBA社の静電加速器ダイナミトロン(最大2.8MeV、15mA)で、リチウムターゲットを使用したコンパクトな中性子源を開発し、これらを組み合わせてBNCT装置としての工学的成立性を検証するのを目的としている。加速器は2016年1月に2.8MeV,11mAのビームを達成した。その後、安定したビームをえるために調整を続けている。ターゲットは、水素脆化に強いエンボス構造をもつTa基板にTiの薄膜を接合し、エンボス構造の間にLiを封入する構造になっている。ターゲットに入射する陽子のヒートフラックスは6.6MW/m2であり、高効率の除熱が必要となる。銅の水冷却部を作成し、電子ビーム加熱実験をNIFSのACT2を用いて行った。その結果、冷却水チャンネルに乱流促進の機構をつけることにより、除熱効率が大幅に向上し、除熱が可能である見通しを得た。また、減速材システムはMgF2を主たる減速材とし、反射体、コリメータを設置したものを数値シミュレーションで検討し、約2x10**9n/sec/cm2の熱外中性子束が得られる高性能システムを設計した。 今後、加速器の安定ビーム供給、ターゲットの冷却性能の向上や全体製作、減速材システムの性能向上を進めていく。
 
16:40 - 17:00 
WEOL17
p.248
[Slides]
ILCにおけるエネルギー・マネージメントに関する考察と提案
A Proposal on Energy Utility Management of the ILC

○石田 聖(双日株式会社),吉岡 正和(東北大学・岩手大学)
○Hisashi Ishida (Sojitz Corporation), Masakazu Yoshioka (Tohoku University/Iwate University)
 
ILC第1期計画におけるピーク電力は164 MW、年間使用電力量は10億 kWh以上になる。我々の過去の経験ではピーク電力はTRISTANの96 MW、年間使用電力量はBファクトリーの5億 kWhが最大であり、ILCはそれらを凌ぐ。近年、世界的に研究用の大型電力施設が消費する電力によるCO2排出について厳しく見ることは共通認識になってきており、ILCにおいても「持続可能性」について真剣に検討が進められている。ILCへの入力電力はその100%が熱として、最終的に冷却塔により空中に放出される。 我々は主としてその排熱の有効利用を中心課題とし、自家発電装置の設置や地元の一次産業などに密着した連携を考えている。これらをベースにした持続可能なトータル・プラニングの一例を紹介する。通常、自家発電装置は非常用として事故時にのみに起動されるが、バイオマス発電施設やLNGの供給によるガス発電施設などの複数施設の常時運転による系統連系を前提とする。それらからの排熱の平滑化をはかり、かつ電力の冗長性も確保しながら地元一次産業などにも貢献する。
 
高周波加速空胴/LLRF (8月10日 会議室201)
13:10 - 13:30 
WEOM07
p.253
[Slides]
大強度超伝導陽子加速器用低ベータ型超伝導空洞の開発
Development of Half Wave Resonator for High Intensity Superconducting Proton Accelerator at KEK.

○朴 建泰,加古 永治,小林 幸則,小関 忠,丸田 朋史,道園 真一郎,内藤 富士雄,梅森 健成,山口 誠哉(高エネ研)
○Gun-tae Park, Eiji Kako, Yukinori Kobayashi, Tadashi Koseki, Tomofumi Maruta, Shinichiro Michizono, Fujio Naito, Kensei Umemroi, Seiya Yamaguchi (KEK)
 
At KEK, a proposal is being prepared for a new linac-based proton driver that can accelerate the proton beam up to 9GeV with 9MW beam power and 100mA peak current. In this report, we present the study on the front end design of the linac, which will accelerate the beam to 1. 2GeV: The baseline layout, the acceleration energy structure, RF characteristics of components, cryomodule configurations, and the detailed design of half-wave resonator 1.
 
13:30 - 13:50 
WEOM08
p.259
[Slides]
超伝導空洞のHigh-Qの実現に向けての開発研究
Development of Superconducting RF cavities Toward High-Q Operation

○梅森 健成,井上 均,植木 竜一,加古 永治,許斐 太郎,久保 毅幸,阪井 寛志,清水 洋孝,土屋 清澄,寺島 昭男,増澤 美佳,道前 武,山中 将,渡辺 勇一(高エネ研),仙入 克也,原 博史,柳澤 剛(三菱重工メカトロシステムズ)
○Kensei Umemori, Hitoshi Inoue, Ryuichi Ueki, Eiji Kako, Tarou Konomi, Takayuki Kubo, Hiroshi Sakai, Hirotaka Shimizu, Kiyosumi Tsuchiya, Akio Terashima, Mika Masuzawa, Takeshi Dohmae, Masashi Yamanaka, Yuichi Watanabe (KEK), Katsuya Sennyu, Hiroshi Hara, Tsuyoshi Yanagisawa (MHI-MS)
 
超伝導空洞のCW運転においては、冷凍機負荷を削減するために低負荷運転、すなわちhigh-Qでの運転が望まれる。そのためには、周辺磁場の低減、超伝導への転移の際に磁場を空洞にトラップしずらくする方策、空洞内面の処理方法、空洞材料の選定などが重要になってくる。これらの対策として、コイルを用いて周辺磁場を打ち消すことによる磁場の削減、超伝導への転移する瞬間の冷却方法の最適化、窒素ドープの手法による空洞表面処理方法開発、ラージグレインと呼ばれる大きな結晶粒界を持つニオブ板を用いた空洞製作など様々な手法を試みている。これらの研究内容について、実験方法の説明を行い得られた結果を紹介する。
 
13:50 - 14:10 
WEOM09
p.263
[Slides]
EUV光源加速器に適した9セル超伝導空洞のRF設計
Design of the 9-cell superconducting cavity for EUV light source accelerator

○許斐 太郎,梅森 健成,加古 永治,阪井 寛志,久保 毅幸(高エネ研),太田 智子(東芝),沢村 勝(量子科学技術研究機構)
○Taro Konomi, Kensei Umemori, Eiji Kako, Hiroshi Sakai, Takayuki Kubo (KEK), Tomoko Oota (TOSHIBA), Masaru Sawamura (QST)
 
KEKではERL型の10mA級EUV光源の検討を進めている。主加速部には9セル超伝導加速空洞を用いる。目標加速電界は12.5MV/mである。cERLの主加速空洞は100mAに対応できるようHOM-BBUを抑える設計に特化した結果、最大表面電界強度と加速電界の比(Ep/Eacc)が3となった。これにより、Field Emissionが表面電界の強いアイリス部から出やすくなった。そのため、cERLでCW加速を行っているビーム運転中では、結果として、多くのField Emission電流が出ることとなり、加速電界は8.5から10MV/mに制限されることとなった。EUVでは目標電流が10mAであり、HOM-BBUに対する要請が緩い。空洞アイリス径をφ80mmからφ70mmに変更しEp/Eaccを2程度に抑える設計を行う。cERLと同等の最大表面電界を得られれば、目標電界を達成できると考えている。上記の条件の元、HOMに対する最適な設計を行った。9セル空洞のセンターセルとエンドセルの固有HOM共振周波数を計算し、各セル周波数を微調整することで、最適形状を探索した。この結果HOMダンパーが吸収する熱量を10W程度に抑えられる設計が行えた。また、モジュールはSTFタイプを基本としてCW化のための改良を行う。本発表ではEUV光源用超伝導空洞のRF設計を中心に、同時に進行しているモジュール設計とHOM ダンパー開発について報告する。
 
14:10 - 14:30 
WEOM10
p.268
[Slides]
ILC計画実現に向けたKEKにおける超伝導加速空洞の製造技術研究
SRF Cavity Fabrication Study for ILC at KEK

○山中 将,井上 均,渡辺 勇一,清水 洋孝,道前 武,佐伯 学行,梅森 健成,加古 永治,早野 仁司,道園 真一郎,山口 誠哉(高エネ研)
○Masashi Yamanaka, Hitoshi Inoue, Yuichi Watanabe, Hirotaka Shimizu, Takeshi Dohmae, Takayuki Saeki, Kensei Umemori, Eiji Kako, Hitoshi Hayano, Shin-ichiro Michizono, Seiya Yamaguhi (KEK)
 
KEKでは従来、機械工学センターにて超伝導加速空洞の試作を行っていたが、ILC計画に向けて製造技術研究を加速するために、空洞製造技術開発施設(Cavity Fabrication Facility: CFF)を整備し、2011年7月に竣工した。ここには大型のEBW機,プレス機,化学処理室などが整備されている.これらは19 m×14 mのクラス100,000のクリーンルームにコンパクトに配置されている.従来から有る機械工学センターの工作機械と合わせれば,空洞をKEK所内で全て製造することができる.これらの設備を用いて、大量生産に向けた効率的な生産技術と空洞の性能を維持しながらコスト低減を図ることを主眼として研究を行っている。これまでに3台の1.3 GHz TESLA-like 9セル空洞と5種類の研究用1又は3セル空洞を製造し、空洞製造の経験を蓄えている。9セル空洞のKEK-1号機は最大加速勾配36 MV/mに達し、ILC仕様を満たした。製造に必要な治具等も自前で開発している。これまでの取り組みについて紹介する。さらに、いくつかの産学協同研究を行っている。新たに超伝導加速空洞用の高純度ニオブ材の製造を実現した例と塑性加工を高度化して、空洞部品の製造に適用した例についても紹介する。
 
14:30 - 14:50 
WEOM11
p.273
[Slides]
SACLA線型加速器におけるショットごとバンチ長制御のためのRFパラメータ切り替え
Shot-by-shot RF Parameter Switching for Bunch Length Control at the SACLA Linac

○前坂 比呂和,大島 隆(理研 放射光科学総合研究センター),松原 伸一(高輝度光科学研究センター),森本 理(スプリングエイトサービス),大竹 雄次(理研 放射光科学総合研究センター)
○Hirokazu Maesaka, Takashi Ohshima (RIKEN SPring-8 Center), Shin-ichi Matsubara (JASRI), Osamu Morimoto (SPring-8 Service), Yuji Otake (RIKEN SPring-8 Center)
 
SPring-8アップグレード計画では、560 pm rad以下の低エミッタンスビームを入射する必要があるため、現状のシンクロトロンではなく、SACLA線型加速器から入射することとなっている。SACLAでは通常、X線自由電子レーザ (XFEL) を発生させるために10 fs程度の極短バンチを生成しているが、蓄積リング入射においてはビーム輸送路におけるコヒーレントシンクロトロン放射 (CSR) によるエミッタンス悪化を防ぐため、1 ps程度のバンチ長で入射する必要がある。そこで、SACLA線型加速器のバンチ圧縮部の加速RFパラメータをショットごとに切り替えることにより、ショットごとにバンチ長の異なるビームを生成する方法をとることを検討している。まず、原理検証のため、バンチ圧縮部のある1ユニットの加速RFパラメータをショットごとにバンチング位相・デバンチング位相を交互に切り替える試験をおこなった。その結果、適切なRFパラメータ切り替えができているだけでなく、短バンチ (20 fs FWHM) と長バンチ (100 fs FWHM) が適切に生成されていることをRFデフレクタ空洞によるバンチ長測定で確認した。今後、不定期な入射要求にも対応できるよう、オンデマンドなRFパラメータ切り替えができるイベント・タイミング・RFシステムを開発している。本発表では、これまでの試験結果を報告するとともに今後の展望について触れることとする。
 
光源加速器 (8月10日 会議室201)
15:00 - 15:20 
WEOM12
p.278
[Slides]
SAGA-LS電子蓄積リングにおける超伝導ウィグラー2台運用プロジェクトの概要と現状
Overview of the project of two superconducting wiggler operation and current status at the SAGA-LS electron storage ring

○岩崎 能尊,高林 雄一,金安 達夫,江田 茂(九州シンクロトロン光研究センター)
○Yoshitaka Iwasaki, Yuichi Takabayashi, Tatsuo Kaneyasu, Shigeru Koda (SAGA Light Source)
 
SAGA-LS電子蓄積リングには2015年秋に2台目となる4T超伝導ウィグラーが設置された。2015年11月28日には1.4 GeVビーム蓄積時における2台同時のウィグラー励磁に成功した。2016年2月8日には超伝導ウィグラーに係わる制御システムの整備が全て完了し、超伝導ウィグラーを2台励磁した蓄積リングの定常運転が可能となった。2016年2月29日には、超電導ウィグラー2台を励磁した状態での放射光提供を一部のビームラインに対し実施した。超伝導ウィグラー2台励磁におけるビーム寿命は1台励磁の場合と比較しやや低減したものの、放射光実験への影響は報告されなかった。現在、他ビームラインへの影響調査等、超伝導ウィグラー2台を励磁したユーザー運転に向けた試験を継続している。本学会にて、超伝導ウィグラー2台運用プロジェクトの概要、コミッショニング、および現在の運用状況を報告する。
 
15:20 - 15:40 
WEOM13
p.282
[Slides]
SACLAマルチビームライン運転に向けての取り組み
Toward the multi-beamline operation of SACLA

○原 徹,稲垣 隆宏(理化学研究所),近藤 力(高輝度光科学研究センター),渡川 和晃(理化学研究所),深見 健司(高輝度光科学研究センター),中澤 伸侯(スプリングエイトサービス(株)),大竹 雄次,田中 均(理化学研究所)
○Toru Hara, Takahiro Inagaki (RIKEN), Chikara Kondo (JASRI), Kazuaki Togawa (RIKEN), Kenji Fukami (JASRI), Shingo Nakazawa (SPring-8 Service), Yuji Otake, Hitoshi Tanaka (RIKEN)
 
高輝度電子ビームを必要とするXFELは線型加速器を用いることから、通常1本のビームラインにしか電子ビームを送ることができない。これは蓄積リングベースの放射光施設と比較して、利用効率が劣る要因となっている。XFEL利用実験枠への要望が増加している今日、施設利用効率の改善に向け、電子ビームをバンチ毎に複数ビームラインへ振り分けるマルチビームライン運転の実現が重要な課題となっている。 SACLAでは2015年1月に線型加速器出口にキッカーとセプタム電磁石を設置し、マルチビームライン運転試験を行ってきた。これまでに30 Hzの電子ビームをBL2とBL3へ振り分け、2本のビームラインで同時レーザー発振を達成している。しかしながら、BL2へのドッグレッグビーム輸送路におけるCSR効果の影響で、ピーク電流を上げた時に電子ビーム軌道や電子バンチ形状が不安定になり、現状安定したレーザー発振を得るにはピーク電流やレーザーパルス出力を通常の約半分に制限しなければならない。そこでCSR効果を抑制するため、ドッグレッグ部の偏向電磁石を4台に増やした新しいビーム光学系を2016年1月に導入する予定である。新光学系では、偏向電磁石間のベータトロン振動の位相差を制御することで、CSRが電子ビームに与える横方向の影響をキャンセルする。本発表では、新しく導入するビーム光学系および現在製作を進めているキッカー電磁石などについて報告する。
 
15:40 - 16:00 
WEOM14
p.286
[Slides]
SACLA BL1における軟X線FELの発振と調整の状況
First lasing and commissioning status of the EUV-FEL beamline at SACLA

○稲垣 隆宏,渡川 和晃,原 徹,大竹 雄次,大和田 成起,金城 良太,田中 隆次,長谷川 照晃,前坂 比呂和,矢橋 牧名,田中 均,石川 哲也(理化学研究所/SPring-8),安積 隆夫,安積 則義,大島 隆,木村 洋昭,近藤 力,櫻井 辰幸,富樫 格,登野 健介,備前 輝彦,細田 直康,松井 佐久夫,松原 伸一(高輝度光科学研究センター/SPring-8),田尻 泰之,田中 信一郎(スプリングエイトサービス)
○Takahiro Inagaki, Kazuaki Togawa, Toru Hara, Yuji Otake, Shigeki Owada, Ryota Kinjo, Takashi Tanaka, Teruaki Hasegawa, Hirokazu Maesaka, Makina Yabashi, Hitoshi Tanaka, Tetsuya Ishikawa (RIKEN SPring-8 Center), Takao Asaka, Noriyoshi Adumi, Takashi Ohshima, Hiroaki Kimura, Chikara Kondo, Tatsuyuki Sakurai, Tadashi Togashi, Kensuke Tono, Teruhiko Bizen, Naoyasu Hosoda, Sakuo Matsui, Shinichi Matsubara (JASRI/SPring-8), Yasuyuki Tajiri, Shinichiro Tanaka (SPring-8 Service Co. Ltd.)
 
自由電子レーザー施設SACLAでは、レーザー波長域の極紫外線~軟X線への拡大と実験への供用を目的として、SACLAビームライン1(BL1)に専用の加速器を設置した。加速器の主要な部分はSACLAのプロトタイプ機であるSCSS試験加速器を移設し、Cバンド加速器を1台追加して電子ビームのエネルギーを500 MeVに上げた。また、アンジュレータも3台に増やすと共に磁石列を交換してレーザーの強度を高められるようにした。2015年9月より開始したビームコミッショニングでは、加速器の上流から順に、電子ビームの軌道やエンベロップ、バンチ圧縮などの調整を行い、ビームを最終ダンプまで導いた。そしてアンジュレータの磁石列を閉じると、下流の光検出器にて波長30 nmのSASE増幅を観測することができた。その後、バンチ圧縮に関係する高周波電力・位相やビーム軌道等の詳細な調整や光診断系の整備・調整を行い、現在では波長30 nmにてパルスエネルギー20 micro-J程度のSASEレーザーを恒常的に発生させることができている。今後も条件の最適化を行い、今夏からのユーザー実験に提供する予定である。また今夏にはCバンド加速器を2台追加して電子ビームエネルギーを800 MeVに上げ、波長12 nmまでの短波長化を行う予定である。本発表では、ここまでの調整の過程や、現在の電子ビームやSASEレーザーの諸特性について報告する。
 
16:00 - 16:20 
WEOM15
p.291
[Slides]
コンパクトERLにおけるビーム電流約1mAの運転
Operations with 1-mA beam current at the compact ERL

○坂中 章悟,芳賀 開一,本田 洋介,松村 宏,宮島 司,野上 隆史,帯名 崇,下ヶ橋 秀典,島田 美帆,山本 将博,中村 典雄,高井 良太,田中 オリガ,原田 健太郎,許斐 太郎,阪井 寛志,梅森 健成,河田 洋,小林 幸則(高エネルギー加速器研究機構),羽島 良一(量子科学技術研究開発機構),西森 信行(東北大学)
○Shogo Sakanaka, Kaiichi Haga, Yosuke Honda, Hiroshi Matsumura, Tsukasa Miyajima, Takashi Nogami, Takashi Obina, Hidenori Sagehashi, Miho Shimada, Masahiro Yamamoto, Norio Nakamura, Ryota Takai, Olga Tanaka, Kentaro Harada, Taro Konomi, Hiroshi Sakai, Kensei Umemori, Hiroshi Kawata, Yukinori Kobayashi (KEK), Ryoichi Hajima (QST), Nobuyuki Nishimori (Tohoku University)
 
コンパクトERL(cERL)は、ERL放射光源に必要な技術を実証するための超伝導加速器である。cERLでは、低エミッタンス(1 mm-mrad以下)かつ大電流(平均電流10 mA以上)のビームを周回させた後、エネルギーを回収してビームをダンプに導くことが目標である。大電流のビームを周回させる際には、周回部でのビーム損失を非常に小さく(例えば0.01%以下)に抑える事が重要である。コンパクトERLでは2016年3月に、平均電流約1 mA, 19.9 MeVのビームを周回させ、減速後、ビームダンプまで導く事に成功した。ビームの調整とコリメータ使用により、コリメータ以外の箇所でのビーム損失を非常に小さく(0.01%以下に)抑える事ができ、加速器室(遮蔽体)外での放射線レベルを十分低くできた。運転モードとしても、バンチ繰り返し1.3 GHz(バンチ電荷: 0.7 pC)において良好な運転条件を確立した後、バンチ繰り返し162.5 MHz(バンチ電荷:5.5 pC)でも良好な運転を実現した。これにより、ビーム電流を10 mAまで増強できる目処もついた。本発表では、コンパクトERLの大電流運転におけるビームの調整方法や放射線レベル等の運転経験について述べ、ビーム電流を増強する見通しについても述べる。
 
16:20 - 16:40 
WEOM16
p.296
[Slides]
短直線部のあるHMBA型3GeV放射光源の設計
Design of the 3GeV light source of HMBA type lattice with short straight section

○原田 健太郎,小林 幸則,本田 融,中村 典雄,生出 勝宣,阪井 寛志,阿達 正浩,土屋 公央,船守 展正(KEK)
○Kentaro Harada, Yukinori Kobayashi, Tohru Honda, Norio Nakamura, Katsunobu Oide, Hiroshi Sakai, Masahiro Adachi, Kimichika Tsuchiya, Nobumasa Funamori (KEK)
 
ESRFで開発されたHMBA型ラティスの特徴は、線形オプティクスの工夫により、極低エミッタンスを実現しつつ、6極電磁石の強さを抑制でき、広いダイナミックアパーチャを確保できることにある。ESRF型のHMBAを基本とし、オプティクスが絞られた部分に真空封止短周期挿入光源に対して最適化された短直線部を挿入すると、従来のラティスに比べて高輝度な挿入光源ビームラインの数を2倍に増やすことができる。ここでは、3GeV、周長約570m、水平自然エミッタンス130pmrad、5.6mの長直線部20本、1.2mの短直線部20本という蓄積リング型光源の設計について発表を行う。
 
16:40 - 17:00 
WEOM17
p.300
[Slides]
共振器型X線自由電子レーザーにおけるコンプトン散乱ガンマ線の発生
Compton gamma-ray geneartion from a X-ray FEL Oscillator

○羽島 良一(量研機構),藤原 守(量研機構、大阪大学)
○Ryoichi Hajima (QST), Mamoru Fujiwara (QST, Osaka U.)
 
UV領域で動作する共振器型FELでは、電子ビームとFELパルスを共振器内で衝突させることで、レーザーコンプトン散乱によるMeV領域のガンマ線ビームの発生が可能であり、Duke大学のHIGSなどでMeVガンマ線のユーザー利用が行われている。 われわれは、これと同様に硬X線領域の共振器型FEL(XFELO)からGeVガンマ線の発生が可能であることを示す[1]。 完全結晶サファイアは硬X線に対して直入射で高い反射率を持つ。このような結晶を用いた硬X線領域の共振器型FEL(XFELO)がK-J. Kimらによって提案されている。ここで、電子ビームの繰り返し周波数をX線パルスが共振器を往復する周波数の2倍に選ぶと、電子とX線は共振器の中央で正面衝突し、コンプトン散乱によって反跳した光子はGeVガンマ線となる。さらに、ここでは、電子の静止系における入射光子のエネルギーが電子の静止質量よりもはるかに大きくなるため、散乱光子のエネルギーは電子のエネルギーとほぼ等しくなり、エネルギースペクトルは狭帯域(~0.1% FWHM)となる。このようなガンマ線ビームはハドロン物理の研究に有用なプローブとなる。発表では、電子ビームのエミッタンスとエネルギー広がり、X線レーザーの波長広がりと角度発散が、それぞれガンマ線のスペクトルに及ぼす影響、ガンマ線のエネルギー可変方法、フラックス増大の可能性などについて述べる。 [1] R. Hajima and M. Fujiwara, PR-AB 19, 020702 (2016)
 
ハドロン加速器 (8月8日 コンベンションホール)
13:10 - 15:10 
MOP002
p.304
リニアック加速空洞用冷却水設備の現状
PRESENT STATUS OF WATER COOLING SYSTEM AT J-PARC LINAC

○菅沼 和明,廣木 文雄,伊藤 崇,山﨑 良雄(原子力機構 J-PARC)
○Kazuaki Suganuma, Fumio Hiroki, Takashi Ito, Yoshio Yamazaki (JAEA J-PARC)
 
加速空洞用冷却水設備は、以前より流量が減少する事象が見受けられ、冷却水の流量低下によって警報が発報し、加速器全体の運転を停止させることがある。警報発報から復旧までに時間を費やすため、早急な対策が望まれており、 J-PARC加速器全体で取り組む課題となっている。筆者らは、リニアック空洞のRFQからSDTLまでの冷却水設備である設備名称RI4系について、これまで現象が確認されている、冷却水設備のバッファタンクの水位変動と、冷却水全体流量の変動の関連について、再度注目してみた。 同時に、冷却水設備の運転データーから新たな情報の有無を調べた。冷却水の全体流量の減少原因について、運転データーと関連づけながら、仮説を立ててみる。
 
13:10 - 15:10 
MOP003
p.307
J-PARCリニアッ クMEBT1部垂直コリメーターの開発
Development of a vertical collimator at the MEBT1 of J-PARC Linac

○杉村 高志,丸田 朋史(KEK),平野 耕一郎(JAEA)
○Takashi Sugimura, Tomofumi Maruta (KEK), Koichiro Hirano (JAEA)
 
J-PARC リニアックでは、イオン源、RFQ(高周波四重極型リニアック)で 3MeVに加速されたビームを、MEBT1(中間エネルギービーム輸送系)でマッチング及びパルス成形を行いDTL(ドリフトチューブ型リニアック)に入射している。 現在の運転パラメータは、ビーム電流40 mA、繰り返し25 Hz, ビームパルス幅500μsであるが、ビーム強度を50mA、50Hz、500μsに増強することを計画している。 加速器で大強度ビームを得るためには、ビームロスを出来得る限り軽減しておくことが必須である。 そこで、ビームシミュレーションをした結果、MEBT1に新たに垂直方向のコリメーターを設置することによって、DTLにおけるビームロスを軽減できることが分かった。 本発表では、上記目的のため、MEBT1に設置する垂直方向コリメーターの設計及び製作状況について報告する。
 
13:10 - 15:10 
MOP004

J-PARC における荷電変換型ビームハロースクレーパの開発
Development of the charge exchange type beam halo scraper at the J-PARC
○岡部 晃大,山本 風海(原研)
○Kota Okabe, Kazami Yamamoto (JAEA)
 
J-PARC 3-GeV シンクロトロン(RCS)では1MWビーム定常利用運転実現に向けた精力的な研究開発が進められているが、その最も大きな障害として、ビーム損失が原因となる加速器機器の放射化が懸念されている。RCSにおいて、ビーム入射部の放射化を抑制するためには、入射ビームのクオリティを向上させる必要がある。我々はリニアックからの入射ビームのハロー部分を除去するため、荷電変換型ビームハロー除去システム(スクレーパ)の開発を行った。本スクレーパシステムは、まず、リニアックにより加速された負水素イオンビームのハロー部分のみを炭素薄膜にて荷電変換する。陽子へと荷電変換されたハロー部は、下流に設置された偏向電磁石によって入射ビームから分離され、ビームダンプに打ち込まれる。このスクレーパシステムを実現するにあたり、荷電変換膜による多重散乱効果に起因するスクレーパ周辺部の放射化が課題となる。本発表では、炭素薄膜による荷電変換効率、及び、GEANT4による荷電変換された粒子の軌道シミュレーション結果をもとに、スクレーパ周辺部の放射化を最小化する荷電変換膜厚について議論する。さらに、製作した荷電変換型スクレーパシステムとその性能評価試験結果を紹介する。
 
13:10 - 15:10 
MOP005
p.310
J-PARC3MeVリニアックを用いたビームスクレーパの開発
Development of beam scrapers using a 3-MeV linac at J-PARC

○平野 耕一郎,浅野 博之,石山 達也,伊藤 崇,大越 清紀,小栗 英知,近藤 恭弘,川根 祐輔,菊澤 信宏,佐藤 福克,篠崎 信一,神藤 勝啓,武井 早憲,千代 悦司,根本 康雄,三浦 昭彦,溝端 仁志,明午 伸一郎,森下 卓俊(原子力機構、J-PARC),栗原 俊一,柴田 崇統,杉村 高志,高木 昭,南茂 今朝雄,福井 佑治,二ツ川 健太,方 志高,丸田 朋史,宮尾 智章(高エネ研),堀 利彦(日本アドバンストテクノロジー),澤邊 祐希,真山 実(三菱電機システムサービス)
○Koichiro Hirano, Hiroyuki Asano, Tatsuya Ishiyama, Takashi Itou, Kiyonori Ohkoshi, Hidetomo Oguri, Yasuhiro Kondo, Yusuke Kawane, Nobuhiro Kikuzawa, Yoshikatsu Sato, Shinichi Shinozaki, Katsuhiro Shinto, Hayanori Takei, Etsuji Chishiro, Yasuhiro Nemoto, Akihiko Miura, Satoshi Mizobata, Shin-ichiro Meigo, Takatoshi Morishita (JAEA,J-PARC), Toshikazu Kurihara, Takanori Shibata, Takashi Takashi, Akira Takagi, Kesao Nanmo, Yuji Fukui, Kenta Futatsukawa, Zhigao Fang, Tomofumi Maruta, Tomoaki Miyao (KEK), Toshihiko Hori (NAT), Yuki Sawabe, Minoru Mayama (MELSC)
 
パルス幅500μsのマクロパルスビームは、RFQ下流のMEBT領域にあるRFチョッパ空洞の電界によって、その一部が蹴りだされ、パルス幅456nsの中間パルスが815nsの周期で並んだ構造を持つビームに整形される。蹴りだされたビームは、RFチョッパ空洞から約70cm離れた場所にあるビームスクレーパに負荷される。これまで、ビームスクレーパの表面最大温度は2500℃、損傷による深さは300μmであった。ビーム電流を50mAに増強するため、ビーム照射時のビームスクレーパの耐電力を知る必要がある。そこで、J-PARCリニアックとは別に、3MeVリニアックを構築し、ビームスクレーパの照射試験ができるように準備している。3MeVリニアックは、負水素イオン源、低エネルギービーム輸送系、高周波四重極型リニアック(RFQ)、ビーム診断系、及び、ビームダンプで構成される。運転条件は、ビームエネルギー3MeV、ビーム電流30mA、最大ビームパワー540W、最大パルス幅1msを計画している。3MeVリニアックでは、まず、イオン源の動作確認試験、及び、RFQのコンディショニングを行った後、バンチシェイプモニタ等のビームコンポーネントの動作試験、及び、レーザ荷電変換試験などを行い、次に、ビームスクレーパの照射試験を実施する予定である。今回は、3MeVリニアック、及び、J-PARCリニアックのビームスクレーパの現状について報告する。
 
13:10 - 15:10 
MOP006

J-PARCリニアックビームスタディー進歩
Progresses of J-PARC linac commissioning
○劉 勇,丸田 朋史(高エネルギー加速器研究機構),三浦 昭彦(原研),宮尾 智章 (高エネルギー加速器研究機構)
○Yong Liu, Tomofumi Maruta (KEK), Akihiko Miura (JAEA), Tomoaki Miyao (KEK)
 
Main progresses of J-PARC linac commissioning in the past year were presented in the paper. Systematic Q-scan studied at MEBT1 helped to get more precise Twiss parameters, which are necessary to match to DTL and to set the whole linac with equi-partitioning condition. And furthermore, consistency was obtained with the measurement and improved RFQ simulation. In the MEBT2, which takes the role for the 3-fold frequency transition, measurements with presently one bunch shape monitor (BSM) were studied for a better understanding of the longitudinal phase space. Intra-beam striping effects of H- beam was identified as the dominant beam loss at the 191~400 MeV ACS section. Trials of mitigation with decreased transverse focusing were tested and candidate setting was proposed.
 
13:10 - 15:10 
MOP007
p.314
J-PARC 3 GeVシンクロトロンビームコリメータの故障事象
A malfunction of the beam collimator system in J-PARC 3 GeV Rapid Cycling Synchrotoron

○山本 風海(日本原子力研究開発機構 J-PARCセンター)
○Kazami Yamamoto (J-PARC Center, JAEA)
 
J-PARC 3 GeVシンクロトロン(RCS)では、最大1 MWの大強度陽子ビームを加速し、後続の物質生命科学実験施設と主リングシンクロトロンに供給している。このような大強度陽子加速器では、ビーム損失による機器の放射化により保守作業時の被ばくが増加し、ビーム出力が制限される恐れがある。それを避けるために、RCSには加速中に発生するビーム損失の原因となるハローを局所化するためのビームコリメータが設置されている。このコリメータは、他の加速器真空容器と比べて力学口径を狭められるようにしてあり、加速中に広がったハローは他の真空容器に当たる前にすべてコリメータに衝突し、回収される。2007年のRCSの運転開始以後、ビームコリメータではこれまで不具合は起きていなかったが、2016年4月の保守作業時に真空漏れが発生した。ビームコリメータはその機能の上から、非常に放射化する事が予想されていたため、真空フランジを遠隔から着脱するためのリモートクランプシステムを始めとして、作業中の被ばく量を低減するための準備がなされていた。そのため、今回故障が発生してから代わりのダクトへの入れ替えを行うに際して、ビームが直接当たるコリメータ本体では40 mSv/hという非常に高い表面線量が測定されたにも関わらず、作業者の被ばく線量は最大でも60 マイクロSvに抑える事に成功した。本発表では、コリメータの故障から復旧までの状況について報告する。
 
13:10 - 15:10 
MOP008
p.319
8GeVおよび30GeV陽子の遅い取り出しのための大口径セプタム磁石の設計
Design of Large Aperture Septum Magnets for the slow extraction of 8 and 30 GeV proton beam

○武藤 亮太郎,新垣 良次,木村 琢郎,村杉 茂,岡村 勝也,白壁 義久,冨澤 正人,柳岡 栄一(高エネ研)
○Ryotaro Muto, Yoshitsugu Arakaki, Takuro Kimura, Shigeru Murasugi, Katsuya Okamura, Yoshihisa Shirakabe, Masahito Tomizawa, Eiichi Yanaoka (KEK)
 
J-PARCメインリングでは、現在30GeVまで加速された陽子を3次共鳴を用いた遅い取り出しによって取り出し、ハドロン実験施設における素粒子原子核実験のために供しているが、ハドロン実験施設の将来計画として、8GeV陽子を用いた素粒子実験(COMET実験)が提案され、準備が進められている。8GeV陽子の取り出しのためには、大きなエミッタンスを受け入れるための大口径のセプタム磁石が必要となるが、30GeV陽子と8GeV陽子の両方を同じセプタム磁石を用いて取り出すことが出来るようにするために、30GeV用の偏向磁場やセプタム厚を保ったまま、コイルのアンペアターンを増やして8GeV用に大口径化する必要がある。本発表では、大口径セプタム磁石の要求仕様および設計案と、コイルの発熱およびそれに伴う熱応力、偏向および漏れ磁場、また磁場による力に起因する応力の計算結果を報告する。
 
13:10 - 15:10 
MOP009
p.323
超冷中性子リバンチャーの現状
Present status of Ultracold Neutron Rebuncher

○今城 想平(京大理),岩下 芳久(京大化研),三島 賢二(高エ研),北口 雅暁,清水 裕彦(名大理),猪野 隆(高エ研),山下 了(東大ICEPP)
○Sohei Imajo (Dep. of Phys., Kyoto Univ.), Yoshihisa Iwashita (ICR, Kyoto Univ.), Kenji Mishima (KEK), Masaaki Kitaguchi, Hirohiko M. Shimizu (Dep. pf Phys., Nagoya Univ.), Takashi Ino (KEK), Satoru Yamashita (ICEPP, Univ. of Tokyo)
 
我々はJ-PARCにおいて中性子の電気双極子能率(EDM)を探索する実験を計画している。中性子EDMの探索は運動エネルギーを200neV以下に減速させた超冷中性子(UCN)をUCN源から約10m離れた地点にある実験容器まで導き、系統誤差の低減と誤差原因の把握が容易な小容器に貯蔵して行う。従って統計誤差の低減のためには体積密度の高いUCNの封入が必要となる。しかしJ-PARCの陽子ビームによる核破砕中性子源はパルス間隔が長いためパルスで生成されたUCNが輸送中に自身の速度拡がりに従って拡散し、実験容器地点では密度が大きく落ちてしまう。その解決策として我々は中性子の運動エネルギーを輸送中に100neV程度制御し、実験容器地点にUCNを時間的に集束させる中性子加速器「超冷中性子リバンチャー」を開発した。中性子は磁気モーメントを持つため磁場中でポテンシャルエネルギーを持つ。本装置は静磁場勾配中のUCNに高周波磁場を印加し、AFP-NMR法によってそのスピンを反転させ静磁場通過前後の中性子の運動エネルギーに収支差を生じさせることで中性子を加速する。印加した高周波磁場の周波数に応じて磁場勾配中でのスピン反転位置が変化することを利用し、周波数を約0.1秒の間に適切にスイープさせ中性子の運動エネルギーを制御する。原理実証機を完成させた我々は完成機の前段階となる2号機を開発し、動作の調整と性能試験を行っている。本発表では2号機の動作試験結果について報告する。
 
LLRF (8月8日 コンベンションホール)
13:10 - 15:10 
MOP010
p.327
J-PARCリニアックにおける中間パルス形状に対応したビーム負荷補償試験
Study of Beam Loading Compensation with Comb-like Structure at J-PARC Linac

○二ツ川 健太,小林 鉄也,方 志高,福井 佑治,道園 真一郎(高エネルギー加速器研究機構),佐藤 福克,篠崎 信一,溝端 仁志(日本原子力研究開発機構)
○Kenta Futatsukawa, Tetsuya Kobayashi, Zhigao Fang, Yuji Fukui, Shinichiro Michizono (High Energy Accelerator Research Organization), Yoshikatsu Sato, Shinichi Shinozaki, Satoshi Mizobata (Japan Atomic Energy Agency)
 
 J-PARCリニアックは, RFQ下流のビーム輸送路(MEBT1)に設置されているRFチョッパ空洞で不必要なビームを蹴ることにより、中間パルスと呼ばれる櫛形構造のビームを生成している。従って, RFQ下流の空洞では中間パルス形状を持つビームが通過すると, 必然的にこのビーム形状の負荷がある。現在までは, ビーム電流を設計値で運転していないこともあり, 中間パルス形状に対応した負荷補償ではなく, 平均的なビーム電流を仮定した矩形の負荷補償を行ってきた。しかし, ビーム電流の増加でビーム負荷が大きくなるに伴い, RFの要求精度を満たすことが難しくなってきた。そこで, 中間パルス形状に対応したビーム負荷補償の試験を実施した。本件では, 中間パルス形状でのビーム負荷補償試験の結果を報告する。
 
13:10 - 15:10 
MOP011
p.332
cERLにおける高周波計測系の振幅・位相変動
Amplitude and phase drift observed at LLRF system of compact ERL in KEK

○荒川 大,片桐 広明,竹中 たてる,Qiu Feng,三浦 孝子,道園 真一郎,矢野 喜治,明本 光生(高エネルギー加速器研究機構)
○Dai Arakawa, Hiroaki Katagiri, Tateru Takenaka, Feng Qiu, Takako Miura, Shinichiro Michizono, Yoshiharu Yano, Mitsuo Akemoto (High Energy Accelerator Research Organization)
 
cERLは1.3GHzのCW高周波を用いた超伝導エネルギー回収型リニアック (ERL)である。次世代放射光源の施設として高安定の電子ビームが 求められており、このため加速高周波に対しても高い安定度が要求 されている。 しかしERL開発棟の設備環境は、加速器室と高周波 制御室の間には空調装置がなく、この部分に敷設される高周波モニター ケーブルの温度特性による位相及び振幅のドリフトが懸念されたため、 ケーブル用の恒温ダクトを設置した。 また低電力高周波系の制御室内 における温度安定化対策を行ってきた。 この温度安定化の効果と ビーム運転時の高周波振幅・位相への環境温度や湿度などの影響に ついて報告する。
 
13:10 - 15:10 
MOP012
p.336
cERL用デジタルLLRF制御システム
Digital LLRF control system for cERL

○三浦 孝子,チュウ ファン,道園 真一郎,片桐 広明,荒川 大,松本 利広,矢野 喜治,明本 光生(高エネ研)
○Takako Miura, Feng Qiu, Shinichiro Michizono, Hiroaki Katagiri, Dai Arakawa, Toshihiro Matsumoto, Yoshiharu Yano, Mitsuo Akemoto (KEK)
 
コンパクトエネルギー回収型線形加速器(cERL)は、KEKの次世代放射光源用3GeV ERLの試験施設で、1.3 GHzの超伝導加速空洞を用いた入射器と主線形加速器から成る。高い安定度をめざし、デジタル低電力高周波(LLRF)制御系の開発と改良を行ってきた。入射器はβが1より低いエネルギー領域にあるが、3空洞のうち下流の2空洞はベクターサム運転をおこなっているため、ここでの調整がビームのエネルギー変動に影響を及ぼしやすい。主線形加速器の空洞は負荷Qが10^7と高いため、マイクロフォニクスの影響が懸念されたが、十分に抑制することができ、ビームのエネルギー変動が非常に小さいことが測定から示された。
 
13:10 - 15:10 
MOP013
p.340
MTCA.4準拠のRF信号処理システム
MTCA.4 RF Signal Processing System

○漁師 雅次,岩城 孝志,田尻 敬一,出口 久城,林 和孝,松本 隆太郎,水野 隼一,宮村 良(三菱電機特機システム)
○Masatsugu Ryoshi, Takashi Iwaki, Keiichi Tajiri, Hisakuni Deguchi, Kazutaka Hayashi, Ryuutaro Matsumoto, Junichi Mizuno, Ryo Miyamura (Mitsubishi Electric TOKKI Systems)
 
MTCA.4(Micro Telecommunications Computing Architecture.4)規格に準拠し、DESY推奨のRFバックプレーンを実装したRF信号処理システムを開発した。 このシステムは、シェルフ前面のAMC(Advanced Mezzanine Card)にデジタル処理機能を持たせて、背面のRTM(Rear Transition Module)にRF信号を検波やダウンコバートおよびアップコンバートするようなRFフロントエンド機能を持たせた。このRTMおよびクロック生成用のeRTM(Extended RTM)はRFバックプレーンを介して信号のやり取りをする構造である。これにより、ケーブル接続を削減し、LLRFやBPM等のRF信号処理システムを小型に実現できる。また、MTCAで標準的にサポートしている監視機能のIPMIを使いモジュールごとの状態監視および活線挿抜ができるため故障モジュール単位で交換でき、稼働時間が向上できる。 まず、約500MHzのRF信号をダイレクトサンプリングできるBPM信号処理システムを開発した。そのために、高速サンプリングADCとEPICS IOCを組込んだXilinx製FPGA「Zynq」を搭載した信号処理カードに続き、ダイレクトサンプリング用のフロントエンドRTMおよびクロック生成用eRTM(Extended RTM)を開発した。 RTMの開発と並行して、信号処理カードを単体で評価するユニットを準備して、BPM用信号処理を組込み、SPring-8、KEK-PF、J-PARC LINACで実際のビームを利用させていただきビームの挙動をモニタできることを確認できた。
 
高周波加速空胴 (8月8日 コンベンションホール)
13:10 - 15:10 
MOP014
p.345
アルバックの高純度ニオブ材を用いた超伝導加速空洞
Superconducting cavity fabricated from high purity Nb materials produced by ULVAC

○永田 智啓,阿部 知行,増居 浩明,篠澤 精一,村上 裕彦((株)アルバック),井上 均,山中 将,加古 永治(KEK)
○Tomohiro Nagata, Noriyuki Abe, Hiroaki Masui, Seiichi Shinozawa, Hirohiko Murakami (ULVAC Inc.), Hitoshi Inoue, Masashi Yamanaka, Eiji Kako (KEK)
 
超伝導加速空洞のニオブ素材には高純度であることが求められるが、 我々は、高純度ニオブ精製用の600kW電子ビーム溶解炉を独自の設計により導入し、現状ではRRR 250以上の高純度インゴットの安定生産が可能となっている。今回はこの電子ビーム溶解により製造した高純度インゴットを用いた 2つの単セル空洞試作と加速特性評価について紹介する。まず一つが、板材からハーフセルを成形し電子ビーム溶接により接合した空洞で、最大加速勾配41MV/mの良好な特性が確認され、我々の素材が超伝導加速空洞部材として申し分ないことを実証した。もう一つは溶接して製造する従来の手法とは異なり、アルバック独自の技術で作製されるニオブシームレス管を利用して、液圧成形により試作した。シームレス空洞の最大加速勾配は37MV/mとなり、溶接型空洞と比べやや劣るもののILC計画の仕様である35MV/mを上回る結果となった。この特性は 表面処理の最適化で改善できる見込みである。 当日は素材の特性や表面観察による加速特性の考察についても述べる。
 
13:10 - 15:10 
MOP015
p.348
KEK/Nextef における単セル型加速構造の高電界試験
High-Gradient Testing of Single-Cell Test Cavities at KEK/Nextef

○阿部 哲郎,松本 修二,荒木田 是夫,高富 俊和,肥後 寿泰(KEK),ウー シャオウェイ,シー ジァルー(清華大学(中国))
○Tetsuo Abe, Shuji Matsumoto, Yoshio Arakida, Toshikazu Takatomi, Toshiyasu Higo (KEK), Xiaowei Wu, Jiaru Shi (THU (China))
 
我々はこれまでに、常伝導リニアコライダー主加速器用プロトタイプ加速管の製作・試験を行ってきた。そこでは高電界加速のための包括的な開発を目指し、セルの加工、洗浄、接合、組立、真空ベーキング、高電界試験 といった一連の工程を確立してきた。一方、常伝導での高電界性能の限界が明らかになっていないことに着目し、真空中の放電物理に特化した新たなテストスタンドを立ち上げた(KEK/Nextef/シールドB)。そこでは、単一の試験セルに電磁界を集中させたコンパクトな試験空洞を用い、空洞ブレークダウンに伴う現象の観測・解析、及び、放電に至るトリガーメカニズムの解明を目指した新たな基礎研究を展開する。本発表では、シールドB実験システムの概要、及び、実際の高電界試験の結果・現状・展望について報告する。
 
13:10 - 15:10 
MOP016
p.353
高周波窓が交換可能なARES空洞用入力結合器
RF INPUT COUPLER WITH A REPLACEABLE WINDOW FOR THE ARES CAVITY

○影山 達也,吉野 一男,坂井 浩,阿部 哲郎,竹内 保直(KEK)
○Tatsuya Kageyama, Kazuo Yoshino, Hiroshi Sakai, Tetsuo Abe, Yasunao Takeuchi (KEK)
 
SuperKEKBにおいては、先のKEKBでの大電流ビーム加速に実績を有するアレス空洞(RF周波数:508.9 MHz)が再使用される。一方、入力結合器については、空洞1台あたりのビーム電力増大に伴い、性能増強型(給電電力750kW以上、入力結合度5以上)に順次交換を進めている。当該入力結合器は、ループアンテナを先端に有する同軸管構造であり、途中に円板形アルミナ窓が配されており、多段ロウ接合(通常2~3段)にて製作される。窓の真空側表面にはマルチパクタ放電を抑えるべく窒化チタン膜が施こされるが、現製作方法では後工程のロウ接合での膜への熱影響が避けられない。成膜条件にも依るが、熱影響による窒化チタン膜の電気抵抗の著しい低下が窓破損に至る異常発熱を起こした事例もある。逆に言えば、多段ロウ接合による製作方法が窓の成膜条件に制限を課すことになる。本論文では、成膜済みの窓に対する後工程での熱影響を避けるべく、新たに製作方法を見直して開発された入力結合器について報告する。新型と従来型の最も違う点は高周波窓部品と同軸管部品の組立にある。従来型はロウ接合であったが、新型では、内・外導体のRFコンタクト(真空中)はボルト締結方式とした。外導体側の真空封止については、外縁リップ金具をシール溶接する方式を採用した。結果として、損耗リスクの高い窓部品のみを交換すれば結合器として再生可能な構造となっている。
 
13:10 - 15:10 
MOP017
p.357
Large Grainニオブを用いた9セル超伝導加速空洞の製造と評価
Fabrication and Evaluation of SRF 9-Cell Cavity Made of Large Grain Niobium

○道前 武,梅森 健成,渡辺 勇一,井上 均,山中 将(KEK)
○Takeshi Dohmae, Kensei Umemori, Yuichi Watanabe, Hitoshi Inoue, Masashi Yamanaka (KEK)
 
超伝導加速空洞の開発に於いて、空洞表面の発熱を抑えることは一つの重要な課題である。特に無変調連続波を扱う空洞では、空洞表面での発熱が冷凍機システムに与える負荷が大きいため、これを抑えることが冷凍機システムの規模及び運転コストの軽減につながる。この空洞表面での発熱を抑える手段の一つとして、空洞の素材にLarge Grain(LG)材と呼ばれる大きな結晶を持ったニオブ材を用いる方法がある。LG材を用いることによって高いQ0値が得られ、結果として空洞表面での発熱を抑えることが出来ると期待されている。 KEKの空洞製造技術開発施設では2013年にLG材を用いた1セル空洞をニオブの板材をプレスする工程から電子ビーム溶接まですべてを施設内のみで行い完成させた。その後の縦測定では高いQ0値を得ている。この結果を受け、2015年にはLG材を用いた9セル空洞の製造を開始し、2016年2月に完成した。その後、空洞内部の表面処理を行い、縦測定を行った結果、通常の材質を用いた9セル空洞より高いQ0値を得る事が出来た。 本研究ではこのLG材を用いた9セル空洞の製造過程及び縦測定の結果に関して発表を行う。
 
13:10 - 15:10 
MOP018
p.361
超伝導加速空洞表面処理設備の検証試験
Commissioning of surface treatment facility for SRF cavity

○宮本 明啓,柳澤 剛,原 博史,沖平 和則,仙入 克也(MHI-MS),梅森 健成,許斐 太郎(KEK)
○Akihiro Miyamoto, Takeshi Yanagisawa, Hiroshi Hara, Kazunori Okihira, Katsuya Sennyu (MHI-MS), Kensei Umemori, Taro Konomi (KEK)
 
超伝導加速空洞の製造にあたっては,空洞の表面処理が重要な役割を果たす。 三菱重工メカトロシステムズは,超伝導加速空洞のための表面処理設備を導入した。 設備は,化学研磨装置,超音波洗浄装置,超純水製造装置,高圧水洗浄装置,クリーンルームから構成される。 導入した表面処理設備の検証試験として,KEK殿と共同で,超伝導加速空洞に表面処理を行った後に,縦測定試験を実施した。 本発表では検証試験結果を報告する。
 
13:10 - 15:10 
MOP019
p.364
R & D on vertical electropolishing at TRIUMF
○Tamao Shishido (N/A), James Keir, Peter Harmer, Devon Lang, Robert Laxdal (TRIUMF), Toshio Shishido (KEK)
 
Vertical electropolishing is being developed at TRIUMF. The development is being done on a single cell 1.3GHz cavity. Various variants of cathode geometry, paddle geometry and cathode bag shape have been employed. The results of the various approaches will be presented.
 
13:10 - 15:10 
MOP020
p.368
低エネルギー電子ビームにより9セル超伝導加速空洞内に誘起されたTE111-6の電気的中心の新解析手法
New analysis method for estimating electrical centre of TE111-6 excited in the 9-cell superconducting cavity by low energy electron beam

○服部 綾佳(茨城工業高等専門学校),早野 仁司(高エネルギー加速器研究機構)
○Ayaka Hattori (National Institute of Technology, Ibaraki College), Hitoshi Hayano (KEK)
 
ビーム誘起高調波モードの電気的中心を求めることでクライオモジュール内の9セル超伝導空洞のアライメントを評価できる。これまで電気的中心算出の際には「空洞モードの長手方向中心を空洞の長手方向中心とする」、「空洞内ではビーム軌道は直線であらわせる」、「空洞内でのビーム通過角は小さく平行に通過しているとみなせる」という3点を仮定し、解析を行ってきた。ビーム軌道を詳細に解析すると、実際にはSTF加速器で行った測定では入射ビームのエネルギーが低いことより、9セル超伝導空洞の入射部にてビームの急速な曲がりが生じており、ビームがまっすぐには空洞内を通過していないことが分かってきた。さらに、空洞モードは空洞長手方向にも分布を持っているため、長手方向でのビーム通過位置を考慮した励起を考えなければない。今回はこれらの仮定が成り立たない場合についてTE111-6に焦点を当て、新しい解析方法の議論を行う。
 
13:10 - 15:10 
MOP021
p.372
薄膜超伝導体の高周波臨界磁場評価のためのニオブ製マッシュルーム型空洞の設計研究
Design study of niobium mushroom-shaped cavity for evaluating RF critical magnetic field of thin-Film superconductor

○及川 大基,東口 武史(宇都宮大学),岩下 芳久,日野 正裕(京都大学),久保 毅幸,加藤 茂樹,佐伯 学行,早野 仁司(高エネ研)
○Hiroki Oikawa, Takeshi Higashiguchi (Utsunomiya University), Yoshihisa Iwashita, Masahiro Hino (Kyoto University), Takayuki Kubo, Shigeki Kato, Takayuki Saeki, Hitoshi Hayano (KEK)
 
According to the Technical Design Report (TDR) of International Linear Collider (ILC), the higher gradient of 45 MV/m is required in the second stage of ILC. One of such methods is coating multi-layer thin-film superconductor on the inner surface of RF superconducting cavity. The thin film improves the RF critical magnetic field on the inner surface of the cavity. To establish the RF performance of thin-film structure on a small coupon sample, we designed the RF mushroom-shaped cavity which could measure the RF critical magnetic field on a thin-film coupon sample set on the inner surface of the cavity. If the RF cavity is cooled down below the critical temperature of thin-film superconductor with supplying RF power, the heat dissipation might be measured on the coupon sample in the cavity. The shape of the cavity is necessary to produce a strong RF magnetic field parallel to the sample surface efficiently. The design, manufacturing and RF property of the Nb mushroom-shaped cavity are described in this presentation.
 
13:10 - 15:10 
MOP022
p.377
超伝導加速空洞用HOMダンパーの開発
Development of HOM Dampers for Superconducting Cavities

○太田 智子,高崎 正浩,山田 正博,宮本 篤,佐藤 潔和(㈱東芝),許斐 太郎,梅森 健成,加古 永治,阪井 寛志(KEK),沢村 勝(QST)
○Tomoko Ota, Masahiro Takasaki, Masahiro Yamada, Atsushi Miyamoto, Kiyokazu Sato (Toshiba Corporation), Taro Konomi, Kensei Umemori, Eiji Kako, Hiroshi Sakai (KEK), Masaru Sawamura (QST)
 
東芝は、2015年度より、大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構(KEK)との共同研究により、超伝導加速空洞用HOM(High Order Mode)ダンパーの開発に着手した。高周波吸収材の候補として、窒化アルミの高周波特性を測定した。また、1.3GHzの超伝導9セル空洞用HOMダンパーのモデルを試作するためのR&Dとして、窒化アルミと銅を接合し、冷却試験を実施した。これらの結果について報告する。
 
13:10 - 15:10 
MOP023
p.380
ARES空洞用高周波窓可換式入力結合器の熱解析
THERMAL ANALYSIS OF RF INPUT COUPLER WITH A REPLACEABLE WINDOW FOR THE ARES CAVITY

○吉野 一男,影山 達也,坂井 浩,阿部 哲郎,竹内 保直(高エネ研)
○Kazuo Yoshino, Tatsuya Kageyama, Hiroshi Sakai, Tetsuo Abe, Yasunao Takeuchi (KEK)
 
SuperKEKB用アレス空洞ではKEKBに比べ結合度を増強した入力結合器を順次導入している。 これらの入力結合器はループアンテナ型で、RF窓部分は一体構造となっている。 このループアンテナ型入力結合器で、RF窓部分を分離し取り換えできる概念が2014年の本学会において提案された。 この構造にすると入力結合器の製造時のメリットとして、TiN成膜後のロウ付けによる熱処理を回避できるのでTiN膜への影響を避ける事ができる。 又アルミナのロウ付け面からのリークのリスクも少なくなる。 更に運用後、何かの事情によりRF窓だけを交換して本体を再利用する事が可能になる。 今回、この提案に基づきループアンテナ型の入力結合器でRF窓部分が取り換えできる構造を検討・試作した。 本稿ではこの窓可換式入力結合器について熱解析を行い、これまでのモデルとの比較及び更なる改善につながる熱的な構造についても検討した。
 
13:10 - 15:10 
MOP024

KEKにおける薄膜サンプルのための超伝導特性測定システムの構築
CONSTRUCTION OF MEASUREMENT SYSTEM FOR SUPERCONDUCTING CHARACTERISTICS ON THIN-FILM SAMPLES AT KEK
○佐伯 学行(高エネ研)
○Takayuki Saeki (KEK)
 
近年、超伝導加速空洞の内面に超伝導の薄膜層を作ることによって、 その加速電界を著しく向上させることができる可能性について盛んに 議論されており、いくつかの実験も行われている。このような 状況において、KEKでも超伝導加速空洞の薄膜技術を研究するために、 薄膜サンプルのための超伝導特性測定システムの構築を行った。 このシステムは、手軽に実験を行える小型冷凍機ユニットを1本備えた 小型クライオスタットと、さらに複雑な実験を行うために小型冷凍機 ユニットを2本備えた中型クライオスタットを含んでいる。 小型クライオスタットを使用した実験セットアップでは、小型冷凍機 ユニットの簡単な操作で実験サンプルを冷却して、超伝導臨界温度、 残留抵抗、残留抵抗比(RRR)等を迅速に測定することができる。 一方、中型クライオスタットを使用した実験セットアップでは、 液体ヘリウムによって実験サンプルを冷却し、磁化特性、交流や RFでの超伝導特性等を測定することができる。 この発表では、 このシステムの詳細について報告する。
 
13:10 - 15:10 
MOP025
p.383
cERL主空洞のマイクロフォニックス原因調査
Investigation about Cause of Microphonics on cERL Main Cavity

○江木 昌史,梅森 健成,江並 和宏,阪井 寛志(KEK),沢村 勝(QST),篠江 憲治,古屋 貴章(KEK)
○Masato Egi, Kensei Umemori, Kazuhiro Enami, Hiroshi Sakai (KEK), Masaru Sawamura (QST), Kenji Shinoe, Takaaki Furuya (KEK)
 
超伝導加速空洞は高いQL値を持ち、加速電圧やRF位相等の揺らぎ(マイクロフォニックス)が容易に生じる。cERLの9セル主加速超伝導空胴空洞は実際の加速器運転時に加速電圧とRF位相に揺らぎが観測されており、LLRF制御によりこれら揺らぎを抑制している。cERL主加速空洞は将来的に更に高いQL値により運転を行う可能性があり、LLRFの負荷を軽減するためにRF揺らぎの原因調査を実施した。RF揺らぎは9セル主加速空洞に伝わる機械振動が原因と考えられ、空洞と周辺構造物の振動測定を行うことにより、原因の機械振動モードの一つを突き止めることができた。本稿ではcERL主加速空洞とそれを格納するクライオモジュールの振動状況とRF揺らぎを起こす原因及びその回避策について述べる。
 
13:10 - 15:10 
MOP026
p.387
シームレスニオブパイプを用いた液圧成形による3セル超伝導加速空洞の製造と評価
Hydroforming SRF Three-cell Cavity from Seamless Niobium Tube

○山中 将,井上 均,道前 武,梅森 健成,Park Gunn-Tae,江並 和宏(高エネ研),Hocker Andy(フェルミ研),Tajima Tsuyoshi(ロスアラモス研)
○Masashi Yamanaka, Hitoshi Inoue, Takeshi Dohmae, Kensei Umemori, Gunn-tae Park, Kazuhiro Enami (KEK), Andy Hocker (FNAL), Tsuyoshi Tajima (LANL)
 
超伝導加速空洞について、現在主流である電子ビーム溶接を用いる製造方法に対して、液圧成形を用いる製造技術の開発を行っている。大幅なコスト低減と信頼性向上を期待している。本開発のためには、『成形性が優れた高品質なシームレスニオブパイプの入手』と『液圧成形技術の高度化』が必要である。これまでに、米国ATI Wah Chang社製とアルバック社製のシームレスパイプを使って、1セル空洞の製造を行った。今回、米国ATI Wah Chang社製のシームレスニオブパイプ(外径130 mm×長さ800 mm)を用いて、液圧成形による1.3 GHz TESLA-like 3セル空洞の製造に成功した。たて測定の結果、最大加速勾配は32 MV/mに達した。成形後の内面は肌荒れしたので、前回の1セル空洞の際にはバレル研磨を行い平滑化した。今回は、工程をより簡単化するためにバレル研磨を行わず、電解研磨のみを行った。たて測定は非常に粗い内面のまま実施した。非常に興味深く、驚きの結果を得た。
 
13:10 - 15:10 
MOP027
p.392
低RRR/Large Grainニオブを用いた1セル超伝導加速空洞の製造と評価
Fabrication and Evaluation of SRF Single-cell Cavity Made of Low RRR/Large Grain Niobium

○山中 将,清水 洋孝,井上 均,渡辺 勇一,道前 武,梅森 健成(高エネ研)
○Masashi Yamanaka, Hirotaka Shimizu, Hitoshi Inoue, Yuichi Watanabe, Takeshi Dohmae, Kensei Umemori (KEK)
 
超伝導加速空洞のセル部の製造には、ニオブインゴットを鍛造・圧延して結晶粒を微細化した板材(Fine Grainと呼んでいる)を用いるのが一般的である。これに対して、円柱状のニオブインゴットを2~3 mmの厚さに切断して板材として用いる方法がある。電子ビーム溶解で製造されたインゴットの中央部は150 mm角程度の巨大結晶となり、周辺部は10~50 mm程度の結晶が見られる。これをLarge Grainと呼んでいる。切断には、半導体用シリコンを切断するのと同じく、マルチワイヤーソーにて一気に複数毎の切断を行う。ニオブは活性であり、鍛造時に1000℃近くまで加熱するため表面が酸化する。これを圧延前に除去するため歩留まりが悪い。Large Grain材は低コストの特徴がある。また、空洞の表面抵抗の低減に有効という報告もある。さらに本研究では、低RRRの安価なインゴットを採用して、更なるコストダウンの可能性を探求した。KEK/CFFにおいて、上記の材料を用いて1.3 GHz TESLA-like 1セル空洞を製造した。たて測定の結果、最大加速勾配は31 MV/mに達した。高RRRのLG材、FG材を用いた同形状の空洞も製造して、性能比較を行った。LG材は異方性があり、製造しにくい問題点もある。また、今回の低RRR材では、ILC仕様には到達していない。総合的に評価した結果について報告する。
 
13:10 - 15:10 
MOP028
p.397
スパークプラズマ焼結法で製作されたフェライト-銅接合ブロックの特性
Characteristics of Ferrite-Copper Blocks Fabricated by Spark Plasma Sintering (SPS)

○末次 祐介,石橋 拓弥,照井 真司(KEK),石﨑 博之,木村 惇郎,澤畠 孝博(金属技研株式会社)
○Yusuke Suetsugu, Takuya Ishibashi, Shinji Terui (KEK), Hiroyuki Ishizaki, Atsurou Kimura, Takahiro Sawahata (MTC)
 
フェライトは効率の良い電波吸収体として知られており、加速器分野でもHOM (Higher Order Modes)吸収体等として使われてきた。我々は、SuperKEKBのビームコリメータ用に、フェライトを用いたHOM吸収体チェンバーの開発を行っている。フェライトを超高真空下にあるビームパイプに適用するには、ガス放出が少なく、密着性の良いフェライト-金属接合ブロックを製作する必要がある。しかし、フェライトは線膨張率が小さく、引っ張り強度も弱いことから、金属との接合が難しいと言われてきた。我々は、スパークプラズマ焼結法(SPS)に注目し、直径30~50 mm、フェライト厚み5 mmのフェライト-銅接合ブロックの製作に成功した。フェライトと銅との熱伝達率も良好であった。SPS法で焼結されたフェライトは市販のフェライトブロックと同等の密度、複素誘電率、複素透磁率を持っていた。Lバンドの導波管で行った低パワー試験では予想通りのS11特性が得られた。また、SuperKEKBのビームパイプを模した試験空洞でのS21特性もシミュレーションと良い一致を示した。ただし、ベーキング前の熱的ガス放出率はSiCや銅よりは悪く、まだ改善の余地がある。ここでは、SPS法によるフェライト-銅接合ブロックの製作やその特性の測定結果等について報告する。
 
高周波源 (8月8日 コンベンションホール)
13:10 - 15:10 
MOP029
p.400
J-PARCクライストロン電源の高圧整流器の改修
Improvement of High Voltage Rectifier of J-PARC Klystron Power Supply

○千代 悦司(J-PARC/原子力機構),佐川 隆(ユニバーサルエンジニアリング),鳥山 稔(日立製作所)
○Etsuji Chishiro (J-PARC/JAEA), Ryu Sagawa (Universal Eng.), Minoru Toriyama (Hitachi)
 
J-PARCリニアックのクライストロン電源は、12相の600Vの交流電圧を位相制御されたサイリスタにてチョップし、変圧器にて110kVまで昇圧し、整流器にて直流化し、直流高電圧を発生している。本電源では、昇圧変圧器、整流器および平滑用リアクトルが一体化し、変圧整流器を構成しているが、この変圧整流器の整流器が、稼働時間が30,000時間以上経過すると故障が発生し、しばしば加速器を長期間停止させてきた。整流器は、ダイオードと分圧用のコンデンサーを並列に接続し、多段にスタックすることで耐電圧を得ている。故障した整流器を調査したところ、セラミックコンデンサーのモールド内のセラミック沿面で絶縁破壊しており、耐圧以上の電圧がコンデンサーに印加されていた。高電圧がコンデンサーに印加される原因を調査し、その対策を整流器に施した。現在、改修された整流器を装着した変圧整流器を長時間運転し、対策の妥当性を評価している。
 
13:10 - 15:10 
MOP030
p.403
Cバンド大電力3ポートサーキュレータの設計・製作
DEVELOPMENT OF A C-BAND 3-PORT CIRCULATOR

○金田 健一,水島 弘二,田辺 英二(株式会社エーイーティー),豊川 弘之(産総研)
○Kenichi Kaneta, Hiroji Mizushima, Eiji Tanabe (AET Inc.), Toyokawa Hiroyuki (AIST)
 
産総研殿の950keV非破壊検査装置の小型化を実現するために5.3GHz帯Cバンド大電力3ポートサーキュレータの開発を行った。当初、ピーク電力600kW、平均電力600Wの出力が可能なマグネトロンのアイソレータとして海外製3ポートサーキュレータを採択したが、大電力試験中に非線形効果が確認された。調査を行ったところ海外製サーキュレータはBelow Resonanceで設計されていた。緊急措置として4ポートサーキュレータで後方散乱X線試験を行っていただくことになったが、4ポートサーキュレータのサイズは3ポートサーキュレータの倍以上あり、装置の小型化に大きな支障を生じる。今回開発したサーキュレータは放電を抑えるためにフェライト間隔を広げ、非線形効果を避けるためにAbove Resonanceで設計している。サイズは海外製3ポートサーキュレータより小さく設計した。VSWR1.1以下の帯域は48MHzとなるが、狭帯域である加速器等の装置で使用する限り問題ない。Calcium Vanadiumドープのフェライトを選択し、挿入損失が0.1dB以下となるよう設計した。フェライトは水冷方式を採用して温度特性変化を抑えながら使用する。動作周波数5.3GHz、ピーク出力600kW、 平均出力600Wのマグネトロンを使用した大電力試験で動作を確認した。またショート板を用いた負荷側が完全反射した場合の大電力試験も実施している。本論文ではシミュレーション結果から設計製作、大電力試験について報告する。
 
13:10 - 15:10 
MOP031
p.407
クライストロンモジュレータ用50kV 半導体スイッチ回路の開発
Development of 50 kV Solid-state Switch for the Klystron Modulator

○天神 薫,徳地 明(株式会社パルスパワー技術研究所),大竹 雄次,稲垣 隆宏,近藤 力(理研 放射光科学総合研究センター)
○Kaoru Tenjin, Akira Tokuchi (Pulsed Power Japan Laboratory Ltd.), Yuji Otake, Takahiro Inagaki, Chikara Kondo (National Institute of RIKEN,SPring-8 Center)
 
クライストロンに電力を供給するモジュレータ部の高電圧、高電流スイッチには、ガス封入放電管の一種であるサイラトロンが使用される場合が多い。 サイラトロンは物理的な構造上の要因にて、故障率、経年劣化の問題があり、寿命を伴う。 我々は、半永久的に使用可能となる静電誘導型サイリスタ素子(SIサイリスタ)を用いた半導体高電圧スイッチを開発中である。 その特性はX線自由レーザー施設(SPring-8 SACLA)など高強度、短パルス、高繰返し運転の要求される電源に合致するものであり、最大ブロッキング電圧:50kV、最大電流:6kA、パルス幅:4.5us、繰返し運転:120ppsを可能とする。本稿は、このSIサイリスタ素子を計192個組合せたスイッチ回路の詳細と試験結果に関するものである。
 
13:10 - 15:10 
MOP032
p.412
KEK電子陽電子入射器モジュレータ用インバータ電源の現状
Present Status of Inverter Power Supplies for Modulators in KEK Electron-Positron Linac

○川村 真人,明本 光生,中島 啓光(高エネ研),今井 康雄,東福 知之,馬場 昌夫,諸富 哲夫(三菱電機システムサービス(株)),遠藤 治,秋川 藤志,佐藤 和行(日本高周波(株)),高山 智也(東芝電波プロダクツ(株))
○Masato Kawamura, Mitsuo Akemoto, Hiromitsu Nakajima (KEK), Yasuo Imai, Tomoyuki Toufuku, Masao Baba, Tetsuo Morotomi (Mitsubishi Electric System & Service Co.,Ltd.), Osamu Endo, Hisashi Akikawa, Kazuyuki Sato (Nihon koushuha Co.,Ltd.), Tomoya Takayama (Toshiba Electro-wave Products Co., Ltd.)
 
KEK電子陽電子入射器では、現在12台のモジュレータにおいて充電電源にインバータ電源を使用している。本論文では、過去1年間の運転状況を中心としたインバータ電源の現状を報告する。
 
13:10 - 15:10 
MOP033
p.416
SACLA-BL1用高精度PFN充電器の開発
Development of High Precision PFN Charger for SACLA-BL1

○近藤 力(高輝度光科学研究センター),稲垣 隆宏(理研 放射光科学研究センター),櫻井 辰幸(高輝度光科学研究センター),大竹 雄次(理研 放射光科学研究センター)
○Chikara Kondo (JASRI), Takahiro Inagaki (RIKEN SPring-8 Center), Tatsuyuki Sakurai (JASRI), Yuji Otake (RIKEN SPring-8 Center)
 
X線自由電子レーザー(FEL)施設SACLAでは、極紫外線~軟X線領域のFELの供用を目的として、BL1に専用の線形電子加速器を建設した。この加速器のクライストロン電源ではFEL強度を安定化させるため、PFNコンデンサの充電電圧を最大50kVで100ppm以下(pk-pk)の精度で制御する必要がある。SACLAのPFN充電器は、精度は要求を満たすものの、定格60pps運転においては絶縁油中に配置された高電圧整流ダイオードに温度余裕が少なく、長期信頼性に問題があることが分かった。そこで、使用する各素子に十分な温度余裕を持たせるため、2倍の定格出力を持つ高精度充電器を新たに開発した。本電源の開発では熱対策を特に重視した。構造設計において熱流体シミュレーションを用いて絶縁油の自然対流の最適化を行ない、更に試作機モデルを用いた温度測定や絶縁油の対流観察にて、各素子が十分な温度余裕を持つことを確認した。電圧安定化に関しては、新たにデジタル・フィードバック制御を導入することで、負荷コンデンサの容量や充電電圧などの条件の違いに対しても幅広く対応できるようになった。電圧精度は50kVにおいて15ppm(pk-pk)以下を実現している。このようにして開発したPFN充電器をBL1専用加速器に5台設置した。そして、2014年から2000時間以上のコンディショニング運転(60pps)を実施し、さらに2015年秋から約3000時間のビーム運転(10pps)に使用し、いずれもトラブル無く運転できている。
 
13:10 - 15:10 
MOP034
p.421
空洞型合成器を用いた509MHz固体化電力増幅器の開発
Development of 509 MHz solid state amplifier with a cavity-type power combiner

○春松 和孝,寺田 晃,宮川 敏,山本 恭敬,林 和孝(三菱電機特機システム株式会社),大竹 雄次,稲垣 隆宏(理研),櫻井 辰幸(高輝度光科学研究センター),惠郷 博文(理研、高輝度光科学研究センター)
○Kazutaka Harumatsu, Akira Terada, Satoshi Miyagawa, Yasunori Yamamoto, Kazutaka Hayashi (Mitsubishi Electric TOKKI Systems Corp.), Yuji Otake, Takahiro Inagaki (RIKEN SPring-8 Center), Tatsuyuki Sakurai (JASRI), Hiroyasu Ego (RIKEN SPring-8 Center, JASRI)
 
現在、SPring-8など多くの電子蓄積リングでは、高周波源として1MW級のCWクライストロンが使用され、高周波電力を分配し多数の加速空洞に供給されている。近年の半導体素子の発展により、1台の空洞で使用する100kW程度の高周波電力を半導体増幅器により供給することが現実的となった。各加速空洞に半導体増幅器を1:1で接続する構成をとることで、加速空洞毎の電力制御が可能となり、高周波源の冗長化が図られ、また高電圧がなくなるため保守性が向上することが期待される。 多数の半導体素子を出力合成した際の電力損失を極力減らすために、TM010モード共振空洞の側面に80個の結合用アンテナを配置した空洞型合成器を使用することとし、設計検討、試作を行った。また増幅素子として、後段に高出力LDMOS-FET、前段に高効率GaN-HEMTを用いた増幅モジュールを試作し、空洞型合成器との組合せ試験を行った。 今回の発表では、開発した半導体増幅器の設計、試作、評価試験について報告する。
 
13:10 - 15:10 
MOP035
p.425
J-PARC RCS MW級陽極電源のアップグレード
UPGRADE OF MW-CLASS ANODE POWER SUPPLY FOR J-PARC RCS

植木 克彦,冨永 勇,長谷川 智宏,○山﨑 長治(東芝三菱電機産業システム株式会社),佐藤 耕輔(株式会社東芝),山本 昌亘(日本原子力研究開発機構),吉井 正人(高エネルギー加速器研究機構)
Katsuhiko Ueki, Isamu Tominaga, Chihiro Hasegawa, ○Choji Yamazaki, (Toshiba Mitsubishi-Electric Industrial Systems Corporation), Kosuke Sato (Toshiba Corporation), Masanobu Yamamoto (Japan Atomic Energy Agency), Masahito Yoshii (High Energy Accelerator Research Organization)
 
J-PARCではさらなるビームパワーの増強が計画されており、それに伴う各装置のアップグレードも進められている。 既に、MW級の直列共振形ゼロ電流スイッチング方式のインバータを用いた直流電源(以下、陽極電源と称する)が開発され、四極管増幅器用の高圧直流源として運用している。この陽極電源はMW級出力をしながら、低電圧リプル(±0.2%以下)、低電圧変動(±1.0%以下)、さらに従来の四極管用電源では必要とされていたクローバ回路を無くすことを実現している。 本論文では、この陽極電源の出力電流増強をRCSに設置されている12台を対象に検討した。限られたスペースで陽極電源主回路のインバータユニットを増設する方法を検討し、現状の定格13kV、92A、1.2MWから出力電流をアップさせ、13kV、116A、1.5MWに増強したので報告する。
 
13:10 - 15:10 
MOP036
p.429
J-PARCリニアック クライストロンパービアンス&ゲインモニタの開発状況
Development of Klystron Perveance and Gain Monitor in J-PARC Linac

○堀 利彦(日本アドバンストテクノロジー),篠崎 信一,佐藤 福克,溝端 仁志(日本原子力研究開発機構),福井 祐治,二ツ川 健太(KEK)
○Toshihiko Hori (Nippon Advanced Technology Co., Ltd), Shinichi Shinozaki, Yoshikatsu Sato, Satoshi Mizobata (JAEA J-PARC), Fukui Yuji, Kenta Futatsukawa (KEK J-PARC)
 
本研究会において、324MHzクライストロン電子銃部の変調アノード電位の放電に起因する高圧電源停止頻度を改善した報告を過去3年間行った。放電は25Hz、0.7ms変調パルス以外の充電時間帯に生じており、変調アノードの耐圧劣化が主原因のクライストロン交換数は4本となった。2015年11月以降は、クライストロン印加電圧を従来の2~3kV低い値での運転を始め、放電回数の増減を継続して調査している。印加電圧を下がったデメリットとして、利用運転時におけるクライストロンパワーのマージンの低下並びに高電流ビーム加速(~50mA)時には印加電圧を再設定し直すことなどが考えられ、各クライストロンの現在の動作点(入出力曲線の肩特性に対するマージンなど)を正確に把握する必要があった。そこで本年より、クライストロンのカソード電圧、電流から算出されるパービアンス値並びに3種類の加速ビーム幅、ビームローディングの有無に対応したクライストロンゲイン値を測定するためのクライストロン特性用モニタを開発中である。本発表では、パービアンス&ゲインモニタの概要、初号機の試験結果など詳細を報告する。
 
13:10 - 15:10 
MOP037
p.433
RFカプラー伝送試験のための 175MHzカップリングキャビティの工学設計
Engineering design of a 175MHz coupling cavity for the RF power transmission tests of RF input coupler

○前原 直,新屋 貴浩,春日井 敦,鈴木 寛光,杉本 昌義(量研機構・核融合)
○Sunao Maebara, Takahiro Shinya, Atsushi Kasugai, Hiromitsu Suzuki, Masayoshi Sugimoto (QST・Fusion)
 
国際核融合中性子照射施設(IFMIF)加速器系の工学設計工学実証活動(EVEDA)では、重陽子イオンビーム125mAを9MeVまで定常運転で加速するためにInjector(100kV-140mA)、運転周波数175MHzを採用したRFQライナック(0.1-5.0MeV-130mA)と超伝導RFライナック(5.0MeV-9MeV-125mA)の開発を進めている。RFQライナックでは8つのRFインプットカプラーを用いて1.4MWレベルのRF電力入射が要求されている。このために6 1/8インチ同軸導波管をベースにループアンテナを採用した定常運転用RFカプラーの開発を進めている。このRFカプラーの定常運転での伝送試験のために2つのループアンテナを容量結合させたカップリングキャビティを設計した。カップリングキャビティは高周波源の周波数帯域(175±0.250MHz)を満たすように容量結合部にφ60mmのチューナーを設けた。また容量結合部のギャップ長W[mm]はVrms1[kV]以上におけるマルチパクタリング放電を避けるためにW=20mmを採択してHFSSコードによる構造を行った。また定常運転時の熱除去を容易にするために材質はアルミ材を採用して冷却チャンネルを設けた。定常熱解析では最大温度上昇が12℃程度に抑制できることが判明した。製作したカップリングキャビティのRF特性測定では、設計仕様を満たす175.00MHzにて反射率0.4%であることを計測した。本講演ではRF構造解析、熱解析及びRF特性の測定結果について詳細に発表する。
 
13:10 - 15:10 
MOP038
p.436
STFにおけるILC建設に向けた大電力RF分配系構築の現状
Status of RF Power Distribution System Construction for ILC in STF

○花香 宣彦,石本 和也,沼田 直人,安 和彦(日本アドバンストテクノロジー),明本 光生,荒川 大,江木 昌史,片桐 広明,竹中 たてる,中島 啓光,福田 茂樹,松下 英樹,松本 利広,三浦 孝子,道園 真一郎(KEK)
○Norihiko Hanaka, Kazuya Ishimoto, Naoto Numata, Kazuhiko Yasu (NAT), Mitsuo Akemoto, Dai Arakawa, Masato Egi, Hiroaki Katagiri, Tateru Takenaka, Hiromitsu Nakajima, Shigeki Fukuda, Hideki Matsushita, Toshihiro Matsumoto, Takako Miura, Shinichiro Michizono (KEK)
 
KEKつくばSTF棟では、ILC(国際リニアコライダー)建設に向けた試験施設としてSTF2加速器の構築が進められている。STF2加速器は、ビーム上流よりフォトカソードRF電子銃(常伝導空洞1台)、キャプチャークライオモジュール(超伝導空洞2台)、CM1クライオモジュール(超伝導空洞8台)、CM2aクライオモジュール(超伝導空洞4台)で構成され、これらの空洞へ1.3 GHz高周波パルス(幅1.65ms, 繰り返し5Hz)を安定に供給をする高周波源を構築する必要がある。現状としては、2基のクライストロンから3台のクライオモジュールへ、Lバンド導波管等を配置した大電力分配系の構築が終了し、2016年9月からの超伝導空洞の試験運転に向けた準備を進めている。各クライオモジュール直近では、ILCのTDR(技術報告書)に準拠したLPDS(局所電力分配系)を構築し、各空洞(計12ヶ所)の入力カップラーまで高周波を供給する構成を採用した。このLPDSは、各空洞への高周波の分配比とその移相量がリモートで調整可能なものである。この大電力分配系の構築において、特にクライオモジュール付近では、限られたスペースと既設機器への干渉を考慮する必要があり、また、入力カップラー間の距離を基準にLPDSを正確に配列して導波管を組込むことが難しく、更にメンテナンス性も踏まえると非常に困難な作業となった。今回の得られた構築技術の紹介やILCに向けた大電力分配系構築についてポイントを紹介する。
 
13:10 - 15:10 
MOP039
p.440
IOTの利得変動の経験とその対策
Experience of gain drop of IOT and its improvement

○安 和彦,石本 和也,花香 宣彦,沼田 直人(日本アドバンストテクノロジー株式会社),明本 光生,荒川 大,竹中 たてる,中島 啓光,松本 利広,三浦 孝子,道園 真一郎,チュウ セン(高エネルギー加速器研究機構)
○Kazuhiko Yasu, Kazuya Ishimoto, Norihiko Hanaka, Naoto Numata (Nippon Advanced Technology Co. Ltd.), Mitsuo Akemoto, Dai Arakawa, Tateru Takenaka, Hiromitsu Nakajima, Toshihiro Matsumoto, Takako Miura, Shinichirou Michizono, Feng Qiu (High Energy Accelerator Research Organization)
 
KEKのcERL棟内においてRF入力カップラのエージングや機器の試験用として1.3GHz,30kW CW出力のCPI社製のIOTを用いてRFテストスタンドを構築した。このIOTはcERLの9セル超伝導加速空洞用のRF源として導入されたが、現在は8kWの半導体アンプに置き換えられ、一年間程使用していなかった。再度このIOTを運転することとなった為、動作試験を行ったところ、試験中にRF出力が急落する事象が多発した。特に一度RFが切られると、RF再投入時は、必ず3dB程度のゲインの低下が見られた。一度ゲイン低下が起こると、ゲインが再度回復することは無く、運転を停止して次の日の立ち上げ時には、ゲインが回復することが多かった。このゲイン低下の原因究明の過程や対策について報告する。
 
粒子源 (8月8日 コンベンションホール)
13:10 - 15:10 
MOP040
p.444
SPring-8 線型加速器における低暗電流型電子銃カソードアセンブリの開発
Development of low-dark-current cathode assembly for grided thermionic electron gun of SPring-8 Linear Accelerator

○馬込 保,小林 利明,谷内 努,鈴木 伸介,花木 博文((公財)高輝度光科学研究センター)
○Tamotsu Magome, Toshiaki Kobayashi, Tsutomu Taniuchi, Shinsuke Suzuki, Hirofumi Hanaki (JASRI/SPring-8)
 
SPring-8線型加速器では、グリッド付きディスペンサーカソードを電子銃カソードアセンブリに採用している。2012年度から、現行のカソードアセンブリの代替機の開発を行ってきたが、プロトタイプを実機にて試験運転したところ、電子銃の発射トリガーとなるグリッド自身からの電界放出のため、電子銃としての暗電流が多く実用に至らなかった。この暗電流の低減のため、その発生源であるグリッドを改良(チタンコーティングタイプ・電解研磨タイプ)した2種類の電子銃カソードアセンブリを開発した。これらのカソードアセンブリからの暗電流は、加速電圧をDCで印加したテストベンチで測定・評価した。本講演ではこの結果について発表する。
 
13:10 - 15:10 
MOP042
p.449
チョーク構造付き超伝導RF電子銃(試作1号機)の高電界試験
High gradient test of the Superconducting RF gun (Prototype #1) with choke structure

○許斐 太郎,梅森 健成,加古 永治,小林 幸則,道園 真一郎,山口 誠哉(高エネ研),松田 竜一,柳澤 剛(三菱重工)
○Taro Konomi, Kensei Umemori, Eiji Kako, Yukinori Kobayashi, Shinichiro Michizono, Seiya Yamaguchi (KEK), Ryuichi Matsuda, Takeshi Yanagisawa (MHI)
 
KEKでは1.3GHz超伝導RF電子銃の開発を進めている。超伝導RF電子銃は楕円空洞形状の加速セルと背面照射型フォトカソード、カソードプラグ、チョークから構成される。試作した超伝導RF電子銃1号機は段階的に構造を付加して高電界試験を進めている。加速空洞単体の高電界試験では最大表面電界強度66MV/mを達成し、目標最大表面電界42M/m、Q値4.5×10^9を満足している。その後、チョークを付けずにカソードプラグを取り付けたところ、電界が低い初期Q値は~1E9であった。このことからチョークに求める減衰率を-30dBと決定した。チョークを取り付けた初めての高電界試験の結果は最大表面電界30MV/mであった。温度マッピングの結果から原因はチョーク周辺の表面処理不足によるマルチパクターとフィールドエミッションであると考えられる。本発表では、新たに行ったチョーク周辺の研磨と洗浄、その結果得られた高電界試験結果について報告する。
 
13:10 - 15:10 
MOP043
p.453
大電流CWビーム運転前後の半導体フォトカソード量子効率分布測定
QE map measurement of semiconductor-type photocathode before and after the high current CW beam operation

○山本 将博,金 秀光(高エネ研),西森 信行(量子科学技術研究開発機構),本田 洋介,宮島 司,帯名 崇(高エネ研),亀田 吉郎(東日技研),川崎 泰介(東芝)
○Masahiro Yamamoto, Xiuguang Jin (KEK), Nobuyuki Nishimori (QST), Yosuke Honda, Tsukasa Miyajima, Takashi Obina (KEK), Yoshiro Kameta (e-JAPAN IT Co., Ltd.), Taisuke Kawasaki (Toshiba)
 
ERL実証機としてKEKで開発が進められているcompact-ERLは、2016年3月に電子銃に装着されたGaAs半導体フォトカソードより900uAを超えるCWビームの安定供給に成功した。大電流運転では、電子銃近傍でビーム軸上でビームと残留ガスの衝突により発生するイオンが電子銃へ逆流し、カソードを衝撃するイオンボンバードによってフォトカソードの量子効率(QE)が低下する問題がフォトカソード寿命を決める一番の要因となるが、今回のcERL大電流CW運転では電子銃においてビーム発生点となるレーザー照射位置をカソード中心からわずかにずらすオフセンター運転を行うことで、積算電荷量10 Coulomb程度ではビーム起因(イオンボンバード現象など)によるQEの定常的な低下は今のところ明確には確認されていない。イオンボンバード等によってダメージを受ける領域を分析する目的で今回のcERL運転よりカソード準備装置に新たにQE分布測定装置が設置された。これを用いてCW運転前後のQE分布について詳細な測定を行い、カソードの電場中心付近においてフォトカソードの再活性化過程でQEの回復が不十分となるイオンボンバードと推測される領域を確認した。
 
13:10 - 15:10 
MOP044

低エネルギー電子銃の最適化設計
Optimization of design for a low energy electron gun
○小川 博嗣(産総研)
○Hiroshi Ogawa (AIST)
 
低エネルギー電子銃は、表面物性研究における逆光電子分光、中和銃などの電子源として広く利用されている。これまでにErdman-Zipf型やStoffel-Johnson型等の電子銃が用いられているが、逆光電子分光等の研究においては、低エネルギー領域(E < 10eV)で更なる電子源の性能の向上(大電流かつ低エミッタンス化)が求められている。 本発表では、低エネルギー電子銃(E < 10eV)の静電レンズの電極構造の最適化をSIMIONコード等を用いた電子軌道計算により行った結果について報告する。
 
13:10 - 15:10 
MOP045
p.458
高周波電子銃用CsKSbフォトカソードの開発
Study on CsKSb photocathode for the RF electron gun

○小野 央也,宮松 順也,鷲尾 方一(早稲田大学理工学研究所),坂上 和之(早稲田大学高等研究所),飯島 北斗(東京理科大学)
○Hiroya Ono, Junya Miyamatsu, Masakazu Washio (Waseda Univ. Research Institute for Science and Engineering), Kazuyuki Sakaue (Waseda Univ. Institute for Advanced Study), Hokuto Iijima (Tokyo Univ. of Science)
 
フォトカソードとは, 光電効果によって電子を放出する電子源であり, 加速器や光電子増倍管などに広く用いられているものである。早稲田大学ではCs-Teフォトカソード高周波電子銃を用いてパルスラジオリシスや逆コンプトン散乱などの研究を行っているが, 電子源であるフォトカソードの性能は高周波電子銃の性能に直接かかわる重要な要素である。我々は電子ビームの電荷量向上およびレーザーシステムへの要求緩和などのため, 緑色光でも電子が取り出し可能なCsKSbフォトカソードを導入することを検討中である。現在は, 光電効果の効率である量子効率(Q.E.:Quantum Efficiency)が高く, 高周波電子銃内の環境で長期間Q.E.を維持できるCsKSbフォトカソードを生成することを目標として研究を行っている。 我々は実際に蒸着チャンバー内でCsKSbフォトカソードを生成し, そのフォトカソードを用いて高周波電子銃の運転試験を行った。その結果, S-band高周波電子銃では初めての緑色光での電子ビーム生成に成功した。現状ではCs-Teフォトカソードを用いていた時と同程度の電荷量の取り出しに成功している。カソード輸送過程での劣化抑制および電子銃内で長期利用化に向け, 現在はCsKSbフォトカソード表面に保護膜を蒸着することを検討中である。本発表ではCsKSbカソードの現状, 及び長寿命化に関する検討状況に関して報告する。
 
13:10 - 15:10 
MOP046
p.461
入力カプラー付き20K C-band 2.6セル高周波電子銃低電力試験空洞の低温試験
Low-Temperature Test of 20K C-Band 2.6 Cell RF-Gun Test Cavity with Input Coupler

○境 武志,田中 俊成,中尾 圭佐,野上 杏子,高塚 健人,早川 建,早川 恭史(日大量科研),高富 俊和,佐藤 大輔,福田 将史,吉田 光宏,照沼 信浩,浦川 順治(高エネ研)
○Takeshi Sakai, Toshinari Tanaka, Keisuke Nakao, Kyoko Nogami, Kento Takatsuka, Ken Hayakawa, Yasushi Hayakawa (LEBRA, Nihon University), Toshikazu Takatomi, Daisuke Satoh, Masafumi Fukuda, Mitsuhiro Yoshida, Nobuhiro Terunuma, Juniji Urakawa (KEK)
 
日本大学では、文部科学省「光・量子融合連携研究開発プログラム」の「光・量子ビーム技術の融合・連携促進のための基盤技術開発」の助成を受けて、20K程度まで冷却した高純度銅による低損失常伝導高周波空洞を用いたC バンド(5712 MHz)動作の高周波電子銃の基礎的開発を行ってきた。矩形導波管から円筒導波管への変換RF入力カプラーを備えた2.6 セルのπモード空洞について検討を行い、これまでにNISTによる高純度銅材の低温特性データを考慮し、SUPERFISH、CST-STUDIOを用いたシミュレーションによってカプラー及び空洞形状最適化を行った。空洞はKEKでの超精密加工により製作を行い、室温での測定に引き続きKEKにおいて20 Kでの低電力試験を行った。試験の結果、ほぼCST-STUDIOでの設計通りの特性が得られていることを確認した。本発表では、シミュレーション及び20 K冷却時のRF特性測定結果に関して報告する。
 
13:10 - 15:10 
MOP047
p.464
アルカリアンチモン光陰極高電圧電子銃からのビーム生成
Beam generation from a high voltage dc gun with an alkali antimonide photocathode

○西森 信行(東北大学 多元研),永井 良治,沢村 勝,羽島 良一(量子機構)
○Nobuyuki Nishimori (Tohoku University ), Ryoji Nagai, Masaru Sawamura, Ryoichi Hajima (QST)
 
次世代ERL放射光源やテラヘルツスミスパーセル放射光源開発のため 50mAビーム生成を目指した250kV光陰極電子銃を開発している。最初に 鍵となるのは安定な高電圧印加と高量子効率光陰極の成膜である。 高電圧については暗電流を抑制するようにデザインしたカソード電極 をインストールし、230kVまでの高電圧印加と210kVでの長時間保持に 成功した。成膜についてはCs3Sbカソードの成膜を行っている。 蒸着条件の最適化により量子効率5.8%@530nmを達成した。 ビーム生成試験は電圧150kVにて最大1.3uAのビームを生成し、 0.18uAで2時間の連続生成を行った。開発状況について発表する。
 
13:10 - 15:10 
MOP048
p.468
コンパクトERL電子銃の高性能化
Improved performance of the cERL gun

○西森 信行(東北大学 多元研),山本 将博(高エネ研),羽島 良一,森 道昭,永井 良治(量子機構),宮島 司,内山 隆司,本田 洋介(高エネ研)
○Nobuyuki Nishimori (Tohoku University), Masahiro Yamamoto (KEK), Ryoichi Hajima, Michiaki Mori, Ryoji Nagai (QST), Tsukasa Miyajima, Takashi Uchiyama, Yosuke Honda (KEK)
 
コンパクトERLは2013年4月の運転開始以降、順調にコミッショニングを進めている。その間、cERL電子銃はトラブル無く、安定なビーム供給に貢献している。ただし、分割セラミック管の不具合のため、運転電圧が390kVに留まっていた。2015年度夏のシャットダウン期間中にセラミック管増設作業に取り組み、500kVに近い性能でビーム生成を行える目途を得た。2016年2月~3月のコミッショニングでは約1mA@390kVのビーム生成、微少電流での450kVビーム生成を行った。また、FELへの利用を視野に入れ、高電荷ビーム生成用電子銃駆動レーザーの開発にも着手している。本発表では、これらcERL電子銃の高性能化について報告する。
 
13:10 - 15:10 
MOP049
p.473
SACLAにおける熱電子銃カソードの長寿命化に向けて
Toward lifetime extension of the thermionic gun cathode at SACLA

○渡川 和晃,稲垣 隆宏,前坂 比呂和,原 徹,田中 均,安積 隆夫,杉本 崇(理研),馬込 保,櫻井 辰幸,池永 英司,小嗣 真人,室 隆桂之,大河内 拓雄(高輝度光科学研究センター),田中 信一郎(スプリングエイトサービス株式会社)
○Kazuaki Togawa, Takahiro Inagaki, Hirokazu Maesaka, Toru Hara, Hitoshi Tanaka, Takao Asaka, Takashi Sugimoto (RIKEN), Tamotsu Magome, Tatsuyuki Sakurai, Eiji Ikenaga, Masato Kotsugi, Takayuki Muro, Takuo Ohkochi (JASRI), Shinichiro Tanaka (SES)
 
X線自由電子レーザー施設SACLAでは、CeB6単結晶を熱カソードとして用いたパルス型電子銃を使用している。本電子銃は、プロトタイプ機であるSCSS試験加速器において2年以上の寿命で使用できることが実証されたのであるが、24 時間連続運転を行うSACLAでは寿命が1 年程度未満に短縮されるといった問題が発生している。効率良く営業運転を進めるには、電子ビームの初期条件を決定するカソードの交換頻度を可能な限り減らすことが極めて重要である。カソードの長寿命化のために、放射光等を利用した表面分析による劣化原因の究明を開始した。また、これと並行して電子銃テストスタンドを構築し、オフラインで改良カソードの試験が行えるように準備を整えた。本学会では、SACLAにおける熱電子銃カソードの長寿命化に向けた取り組みについて報告する予定である。
 
13:10 - 15:10 
MOP050
p.476
ミューオンg-2/EDM実験のためのRFQを用いたミューオン初期加速の現状
Current status of the muon initial acceleration with RFQ for muon g-2/EDM experiment

○北村 遼(東大理),大谷 将士,深尾 祥紀,河村 成肇,三部 勉,三宅 康博,下村 浩一郎(KEK),近藤 恭弘,長谷川 和男(JAEA),石田 勝彦(理研),Kim BongHo(SNU),半澤 光平(総研大),齋藤 直人(J-PARCセンター)
○Ryo Kitamura (Univ. of Tokyo), Masashi Otani, Yoshinori Fukao, Naritoshi Kawamura, Tsutomu Mibe, Yasuhiro Miyake, Koichiro Shimomura (KEK), Yasuhiro Kondo, Kazuo Hasegawa (JAEA), Katsuhiko Ishida (RIKEN), Bongho Kim (SNU), Kohei Hanzawa (Sokendai), Naohito Saito (J-PARC)
 
The muon anomalous magnetic moment (g-2) has a difference of approximately three standard deviations between the experimental value and the standard model (SM) prediction. More precise measurement is required since it implies an evidence of the physics beyond SM. The J-PARC E34 experiment aims to measure muon g-2 with a statistical uncertainty of 0.1 ppm using novel techniques. Muon linear accelerator is one of the most important techniques for our experiment. As the first trial of the muon acceleration, the muon initial acceleration with the J-PARC RFQ-&#65533; plans to be demonstrated at the muon H-line in J-PARC MLF. First, the incident muons with an energy of 4 MeV are decelerated to sub-keV with the thin metal foil. The decelerated muons are extracted and accelerated to 5.6 keV by the electro-static field. Then the muons are injected to the RFQ and accelerated to 0.34 MeV. We conducted the muon beam experiments towards the muon initial acceleration in February 2016. We succeeded to demonstrate the muon deceleration and electro-static acceleration. In this poster, the beam test results and prospects for the muon acceleration with RFQ will be reported.
 
13:10 - 15:10 
MOP051
p.480
ASTRAを用いた4.5空胴LaB6光陰極高周波電子銃の数値計算
Numerical Simulation of 4.5-cell LaB6-Photocathode RF Gun by ASTRA Code

○全 炳俊,紀井 俊輝,大垣 英明(京大エネ研)
○Heishun Zen, Toshiteru Kii, Hideaki Ohgaki (IAE, Kyoto Univ.)
 
京大エネ研では中赤外自由電子レーザの高性能化を達成すべく、4.5空胴高周波電子銃中に設置されたLaB6陰極をUVレーザにより励起し、光電子放出により電子を供給する運転モードについて研究を行っている。この陰極では、光電子放出におけるSchottky効果(量子効率の陰極表面電界依存性)が大きく、Schottky効果を考慮しない数値計算では、実験で観測された発生電荷量のレーザ入射位相依存性を再現する事ができない。そこで、今回、Schottky効果を取り入れた計算が可能な計算コードASTRAを用いて、数値計算を行った。その結果、適切にSchottky効果に関するパラメータを調整する事で、発生電荷量のレーザ入射位相依存性を再現する事に成功した。Schottky効果を考慮に入れた場合と入れない場合との電子ビーム特性の違いなどについても報告する予定である。
 
13:10 - 15:10 
MOP052
p.484
医療サイクロトロン用大電流水素負イオン源の開発
Development of a high current negative ion source for medical cyclotrons

○衞藤 晴彦,荒川 慶彦,青木 康,三堀 仁志,櫻庭 順二,加藤 隆典,密本 俊典,矢島 暁(住友重機械工業株式会社),尾内 杜彰,畑山 明聖(慶應大理工),奥村 義和(量子科学技術研究開発機構)
○Haruhiko Etoh, Yoshihiko Arakawa, Yasushi Aoki, Hitoshi Mitsubori, Junji Sakuraba, Takanori Kato, Toshinori Mitsumoto, Satoru Yajima (Sumitomo Heavy Industries, Ltd.), Moriaki Onai, Akiyoshi Hatayama (Keio Univ.), Yoshikazu Okumura (QST)
 
ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)や核医学診断用放射性同位体製造に用いられる医療用陽子サイクロトロンの性能向上を目的として、アーク放電型水素負イオン源の大電流化の開発を進めている。開発したイオン源は、アーク放電パワー6.5kWの入力で15.2 mAのH-ビームが、2.4kWで3.3mAのD-ビームが出力可能で、さらにイオン源プラズマへセシウムを添加することにより最大で22mAのH-ビーム電流が得られる事を確認した。セシウムを添加しない場合、負イオン電流量は高アークパワーで飽和するが、慶應義塾大学で開発された電子輸送計算コードKEIO-MARCによってプラズマ中の電子エネルギー分布関数を計算し、振動励起分子ポピュレーションおよび負イオン密度を解析することでその飽和機構を調べている。本発表では以上の開発について報告する。
 
レーザー (8月8日 コンベンションホール)
13:10 - 15:10 
MOP053

レーザーコンプトン光源のための自発共鳴型光共振器のモードロックパルス発振
Mode-locked pulse oscillation of self-resonating optical cavity for laser-Compton photon sources
○保坂 勇志(早大理工研),上杉 祐貴(東北大多元研),本田 洋介,小菅 淳,大森 恒彦,浦川 順治(高エネ研),高橋 徹(広大院先端研),坂上 和之(早大高等研),鷲尾 方一(早大理工研)
○Yuji Hosaka (RISE, Waseda University), Yuuki Uesugi (IMRAM, Tohoku University), Yosuke Honda, Atsushi Kosuge, Tsunehiko Omori, Junji Urakawa (KEK), Tohru Takahashi (Hiroshima University), Kazuyuki Sakaue (WIAS, Waseda University), Masakazu Washio (RISE, Waseda University)
 
レーザーコンプトン光源は、レーザーと電子ビームのレーザーコンプトン散乱によるX線・γ線を利用した光源である。生成されたX線・γ線は波長選択性や偏光調整の容易さなどの利点を有しており、輝度が低いという問題を解決できれば優れたX線・γ線源として利用可能である。輝度を高めるには光共振器を構築しパルスレーザーを高増大率で蓄積させピークパワーを上昇させることが重要であるが、通常の光共振器で高増大率を実現するにはpm以下の精度で制御された高剛性光共振器の構築が必要であり、技術的な問題となっていた。 自発共鳴型光共振器はこの問題に対する新しい解決法である。自発共鳴型光共振器は、光共振器の透過光を増幅し再度の光共振器に入射するレーザー発振器であり、光共振器の共振条件を満たす波長の光のみが自発的に周回する機構となっている。通常の光共振器であれば高精度の共振器長制御が必要だが、自発共鳴型では光学系が共振波長を自発的に選択するため制御が不要となる。本発表では自発共鳴型光共振器のパルス発振試験について主に紹介する。 現在、光ファイバー中での非線形偏波回転現象を用いて受動モードロックパルス発振を試みており、不安定ではあるが自発共鳴型光共振器のモードロックパルス発振に成功している。本発表では波長スペクトル、パルス幅測定、共振器の増大率、蓄積パワー測定等、測定結果を交えながら進捗報告を行う。
 
13:10 - 15:10 
MOP054
p.487
レーザーコンプトン散乱におけるルミノシティ増大のためのクラブ衝突
Luminosity increase in laser-Compton scattering by crab crossing method

○小柴 裕也,五十嵐 大裕,高橋 孝,太田 昇吾(早大理工研),坂上 和之(早大 高等研),鷲尾 方一(早大理工研),浦川 順治(高エネ研)
○Yuya Koshiba, Daisuke Igarashi, Takashi Takahashi, Shogo Ohta (RISE, Waseda Univ.), Kazuyuki Sakaue (WIAS, Waseda Univ.), Masakazu Washio (RISE, Waseda Univ.), Urakawa Junji (KEK)
 
レーザーコンプトン散乱は加速器による相対論的高品質電子ビームとレーザー光を衝突させることでエネルギーの高い光子を発生させる手法で、輝度、単色性、指向性、偏光特性に優れた次世代小型高輝度X線/γ線源として期待される。このときの散乱光子エネルギー及び散乱光強度にあたるルミノシティは電子ビームとレーザーの衝突角に依存することが知られており、衝突角が0度の場合の正面衝突が最もエネルギー、ルミノシティともに大きくなる。しかし我々の行っている光共振器を用いる手法では、現実的に電子ビームとレーザーを同軸に構築することは困難であり有限交差角衝突を余儀なくされるのが現状である。そこで粒子ビーム同士を衝突させる衝突型加速器ではクラブ衝突と呼ばれる手法を使い、ビーム自体を傾けながら衝突させることで擬似的な正面衝突を再現し、ルミノシティの増大を図っている。本研究は既に衝突型加速器で実績のあるクラブ衝突をレーザーコンプトン散乱に応用する研究である。レーザーコンプトン散乱におけるクラブ衝突はその提案がされてはいるものの実際に行なったという報告はなく、我々早稲田大学のコンパクト加速器システムにて世界に先駆けて行うことでその原理実証を行う計画である。本発表では加速器システムの現状とレーザーコンプトン散乱のためのレーザーシステム構築について述べるとともに、クラブ衝突によって予想される現象について議論する。
 
13:10 - 15:10 
MOP055
p.492
レーザーコンプトン散乱ガンマ線(LCS-ガンマ線)による偏光軸に対する中性子の放出角度分布の測定
Neutron emission distribution dependence on polarization with LCS γ-ray

○武元 亮頼,山口 将志,杉田 健人,橋本 智,天野 壮(兵庫県立大 高度研),早川 岳人(量子科学技術研究開発機構),浅野 芳裕(理化学研究所),糸賀 俊朗(高輝度光科学研究センター),佐波 俊哉(高エネルギー加速器研究機構),宮本 修治(兵庫県立大 高度研)
○Akinori Takemoto, Masashi Yamaguchi, Kento Sugita, Satoshi Hashimoto, Sho Amano (LASTI univ. of Hyogo), Takehito Hayakawa (QST), Yoshihiro Asano (RIKEN), Toshiro Itoga (JASRI), Toshiya Sanami (KEK), Shuji Miyamoto (LASTI univ. of Hyogo)
 
NewSUABRU放射光施設にあるレーザーコンプトン散乱ガンマ線(以下LCS-ガンマ線と表記する)ビームラインでは電子ビームのエネルギーやレーザーの波長を変えることにより最大エネルギーが1.7~76MeVのγ線ビームを生成できる。このLCS-ガンマ線は中心軸からの角度にエネルギーが依存しているのでコリメータを設置することにより、準単色のガンマ線が得られる。また、レーザーの偏光を高い割合で保存するのでレーザーの偏光を変えることによってLCS-ガンマ線の偏光も簡単に変えることができる。この実験ではNewSUBARUをシングルバンチモードで運転し、電子ビームに同期した直線偏光のパルスレーザーを蓄積リングに入射することで周期的にLCS-ガンマ線を発生させ、そのLCS-ガンマ線をターゲットに照射することによって光核反応を起こさせた。この時、光核反応と同時に一部のガンマ線が電子により散乱される。この中性子と散乱ガンマ線をプラスチックシンチレータで計測し、TOF法により中性子と散乱ガンマ線の信号を分別することで、偏光軸に対する中性子の放出角度分布を計測した。前回はターゲットとしてAu,Ag,Yを使い、巨大双極子核共鳴(GDR)における中性子の放出角度分布を計測した。今回はベリリウムターゲットを使いクラスター双極子核共鳴(CDR)における角度分布の計測を予定している。電子ビームのエネルギーを変化させることでLCS-ガンマ線のエネルギーを変え共鳴させようとしている。
 
13:10 - 15:10 
MOP056
p.495
レーザーコンプトン散乱ガンマ線ビームを用いた磁気コンプトン散乱測定
Measurement of Magnetic Compton Scattering by Laser Compton Scattering Gamma-ray Beam

○山口 将志,武元 亮頼,杉田 健人(兵庫県立大学 高度産業科学技術研究所),小泉 昭久(兵庫県立大学),天野 壮,橋本 智(兵庫県立大学 高度産業科学技術研究所),堀 史説(大阪府立大学),宮本 修治(兵庫県立大学 高度産業科学技術研究所)
○Masashi Yamaguchi, Akinori Takemoto, Bento Sugita (LASTI,Univ.of.Hyogo), Akihisa Koizumi (Univ.of.Hyogo), Sho Amano, Satoshi Hashimoto (LASTI,Univ.of.Hyogo), Fuminobu Hori (Osaka Prefecture University), Shuji Miyamoto (LASTI,Univ.of.Hyogo)
 
NewSUBARU放射光施設ビームライン01のレーザーコンプトン散乱(LCS)ガンマ線源を利用し、Feにおける電子スピンのみの磁気モーメントによるヒステリシスを磁気コンプトン散乱を用いて測定した。LCSガンマ線は電子ビームまたは、入射レーザーのエネルギーを変えることで1.7MeV&#12316;76MeVまでのLCSガンマ線を生成できる。 ガンマ線の偏光は入射レーザーの偏光に依存し、また、コリメータを設置し中心を切り取ることで準単色のガンマ線が得られる。正確なLCSガンマ線の偏光を測定するために偏光計を導入することで、入射レーザーの電子ビームとの衝突点に到達するまでのミラー系での偏光面変化を測定し、円偏光度の高いガンマ線生成を実現した。偏光計はLCSガンマ線源の90°コンプトン散乱の強度を水平から180°測定することで偏光を測定している。測定角を固定することでLCSガンマ線のフラックスモニターとしても利用している。 磁気コンプトン散乱はガンマ線領域では、x線に比べコンプトン散乱との強度比が大きい。今回は16.9MeVガンマ線を用い磁気コンプトン散乱測定を行い、前回の1.7MeVと比較することで散乱強度比の増加を確認する予定である。
 
13:10 - 15:10 
MOP058
p.497
レーザーコンプトン散乱光源のための光共振器開発
Development of optical cavity for the laser-Compton scattering photon source

○赤木 智哉,小菅 淳(高エネ研)
○Tomoya Akagi, Atsushi Kosuge (KEK)
 
レーザコンプトン散乱を利用した小型加速器による高輝度X線源の開発を行っている。LCS光源は準単色、エネルギー可変、微小光源さらに偏光の切り替えが容易という特徴をもつため様々な分野での応用が期待されるが、実用化のためにはX線の強度が課題である。X線強度を上げるためには高強度のレーザーパルスを電子ビームとの衝突点において10ミクロン程度のスポットサイズに絞りこみ、電子ビームの周波数と同期させて衝突させることが必要である。このようなレーザーシステムを実現するため、光共振器の開発を行っている。現在我々の光共振器では、レーザーを蓄積すると共振器の急激な温度上昇が確認されている。共振器の温度が上昇し続けると周長が変化し、共振器の繰り返し周波数を加速器の周波数に同期し続けることが困難になり安定なレーザーコンプトン散乱を行えなくなるため、高強度レーザーの蓄積を実現させるには対策が必要である。この問題を解決するため共振器の熱対策について検討する。
 
電子加速器 (8月8日 コンベンションホール)
13:10 - 15:10 
MOP059
p.501
KEK 7-GeV 電子陽電子入射器と複数の蓄積リングへの入射運転
Injection operation into multiple storage rings at KEK Electron/Positron 7-GeV Injector Linac

○古川 和朗,明本 光生,荒川 大,荒木田 是夫,池田 光男,榎本 收志,榎本 嘉範,大沢 哲,小川 雄二郎,柿原 和久,片桐 広明,紙谷 琢哉,川村 真人,倉品 美帆,佐武 いつか,佐藤 大輔,佐藤 政則,設楽 哲夫,周 翔宇,白川 明広,諏訪田 剛,清宮 裕史,竹中 たてる,田中 窓香,張 叡,邱 &#20016;,峠 暢一,中尾 克巳,中島 啓光,夏井 拓也,肥後 寿泰,福田 茂樹,舟橋 義聖,本間 博幸,松下 英樹,松本 修二,松本 利広,三浦 孝子,三川 勝彦,道園 真一郎,宮原 房史,矢野 喜治,横山 和枝,吉田 光宏(KEK)
○Kazuro Furukawa, Mitsuo Akemoto, Dai Arakawa, Yoshio Arakida, Mitsuo Ikeda, Atsushi Enomoto, Yoshinori Enomoto, Satoshi Ohsawa, Yujiro Ogawa, Kazuhisa Kakihara, Hiroaki Katagiri, Takuya Kamitani, Masato Kawamura, Miho Kurashina, Itsuka Satake, Daisuke Satoh, Masanori Satoh, Tetsuo Shidara, Xiangyu Zhou, Akihiro Shirakawa, Tsuyoshi Suwada, Yuji Seimiya, Tateru Takenaka, Madoka Tanaka, Rui Zhang, Feng Qiu, Nobukazu Toge, Katsumi Nakao, Hiromitsu Nakajima, Takuya Natsui, Toshiyasu Higo, Shigeki Fukuda, Yoshisato Funahashi, Hiroyuki Honma, Hideki Matsushita, Shuji Matsumoto, Toshihiro Matsumoto, Takako Miura, Katsuhiko Mikawa, Shinichiro Michizono, Fusashi Miyahara, Yoshiharu Yano, Kazue Yokoyama, Mitsuhiro Yoshida (KEK)
 
KEK の電子陽電子入射器は、コミッショニング中の SuperKEKB 衝突型加速器や 2 つの放射光光源に性質の異なる電子や陽電子のビームを入射する。そのビームのエネルギーは 2.5 GeV から 7 GeV、バンチあたりの電荷は 0.2 nC から 10 nC など、ビーム特性や安定性についての仕様は対象となる蓄積リングによって大きく異なる。入射器は 50 Hz でビームを生成することが可能であるが、必要に応じて、パルス毎に対象蓄積リングを替えて入射を行わなくてはならない。特に SuperKEKB 向けのエミッタンスに関しては厳しい管理が必要となると考えられる。また、入射器の各区間に配置されている 60 台のマイクロ波源について、安定性や故障に備えた冗長性を考慮しながら、適切に役割を与える必要がある。このようなビーム特性管理には、高速同期イベント制御システムの整備と、各加速器装置の特性管理や、ビームを使った較正作業、日々の最適化が必要となる。これらについて、機器運転制御やオンラインシミュレーションを含めた現実的な方策について検討する。
 
13:10 - 15:10 
MOP060
p.505
SuperKEKB入射器コミッショニングの現状 (III)
PRESENT STATUS OF SUPERKEKB INJECTOR LINAC COMMISSIONING (III)

○佐藤 政則,明本 光生,荒川 大,荒木田 是夫,飯田 直子,池田 光男(KEK加速器),岩瀬 広(KEK放射線科学センター),榎本 收志,榎本 嘉範,大沢 哲,大西 幸喜,小川 雄二郎,柿原 和久,風間 慎吾,梶 裕志,片桐 広明,紙谷 琢哉,菊池 光男,小磯 晴代,Qiu Feng,佐武 いつか,佐藤 大輔(KEK加速器),設楽 哲夫(KEK研究支援戦略推進部),周 翔宇,白川 明広,末武 聖明,杉本 寛,諏訪田 剛,清宮 裕史,田中 窓香,多和田 正文,張 叡,峠 暢一,中尾 克巳,中島 啓光,夏井 拓也,肥後 寿泰,福田 茂樹,船越 義裕,古川 和朗,本間 博幸,松下 英樹,松本 修二,松本 利広,三浦 孝子,三川 勝彦,道園 真一郎,三増 俊弘,宮原 房史,森 隆志,森田 昭夫,矢野 喜治,横山 和枝,吉田 光宏(KEK加速器)
○Masanori Satoh, Mitsuo Akemoto, Dai Arakawa, Yoshio Arakida, Naoko Iida, Mitsuo Ikeda (KEK Acc. Lab.), Hiroshi Iwase (KEK, Radiation Science Center), Atsushi Enomoto, Yoshinori Enomoto, Satoshi Ohsawa, Yukiyoshi Ohnishi, Yujiro Ogawa, Kazuhisa Kazuhisa Kakihara, Shingo Kazama, Hiroshi Kaji, Hiroaki Katagiri, Takuya Kamitani, Mitsuo Kikuchi, Haruyo Koiso, Feng Qiu, Itsuka Satake, Daisuke Satoh (KEK Acc. Lab.), Tetsuo Shidara (KEK Research Administration Department), Xiangyu Zhou, Akihiro Shirakawa, Masaaki Suetake, Hiroshi Sugimoto, Tsuyoshi Suwada, Yuji Seimiya, Madoka Tanaka, Masafumi Tawada, Rui Zhang, Nobu Toge, Katsumi Nakao, Hiromitsu Nakajima, Takuya Natsui, Toshiyasu Higo, Shigeki Fukuda, Yoshihiro Funakoshi, Kazuro Furukawa, Hiroyuki Honma, Hideki Matsushita, Shuji Matsumoto, Toshihiro Matsumoto, Takako Miura, Katsuhiko Mikawa, Shinichiro Michizono, Toshihiro Mimashi, Fusashi Miyahara, Takashi Mori, Akio Morita, Yoshiharu Yano, Kazue Yokoyama, Mitsuhiro Yoshida (KEK Acc. Lab.)
 
本年2月より,SuperKEKB加速器Phase Iコミッショニングを開始した。最終ステージであるPhase III運転においては,電子(陽電子)ビーム入射に要求されるバンチ電荷量は5 nC (4 nC)であり,KEKB入射器と比較して約5倍のバンチ電荷量が求められている。一方,ナノビーム方式を採用した主リングの低エミッタンス化にともない,入射器ビームの垂直方向エミッタンスは, 20 mm&#61655;mrad以下であることが必要とされる。とりわけ電子ビームについては,ダンピングリングを用いずに低エミッタンスビーム入射を実現する必要があるため,高度なビーム制御技術が要求される。これらの要求を満足するため,新方式の光陰極RF電子銃を始めとした種々の技術開発が進められてきた。本稿では,これらの機器開発状況およびPhase Iコミッショニングの現状について報告する。また, Phase IIおよびPhase IIIコミッショニングへ向けた取り組みについても触れる予定である。
 
13:10 - 15:10 
MOP061
p.511
SPring-8 線型加速器の機器改良
The component improvement of the SPring-8 Linac

○鈴木 伸介,小林 利明,谷内 努,出羽 英紀,水野 明彦,柳田 謙一,安積 隆夫,花木 博文(公益財団法人高輝度光科学研究センター)
○Shinsuke Suzuki, Toshiaki Kobayashi, Tsutomu Taniuchi, Hideki Dewa, Akihiko Mizuno, Kenichi Yanagida, Takao Asaka, Hirofumi Hanaki (JASRI/SPring-8)
 
一昨年よりSPring-8 線型加速器において以下の項目において改良点があったので、報告する。 ○運転状況や主なフォールトについて ○入射部立体回路の真空化 入射部の立体回路の導入は終了したが、その後の真空リーク及びその対策など状況 ○ BT系ステアリング電磁石等の配置変更 NewSUBARU へのビーム輸送トランスポート系及び電子ビーム試験用トランスポート系の軌道補正の自由度向上のために、四極電磁石、ステアリング電磁石の強化、配置変更 を行い、上流での軌道変動に対応しての補正範囲が拡がった。 ○ 電子銃交換時の状況 ○オシロスコープ波形伝送システムの更新
 
13:10 - 15:10 
MOP062
p.515
SuperKEKBの初期コミッショニングおけるビーム光学の測定とその補正
Beam optics measurement and correction at the initial commissioning of SuperKEKB

○杉本 寛,大西 幸喜,森田 昭夫,小磯 晴代,船越 義裕,生出 勝宣(高エネ研)
○Hiroshi Sugimoto, Yukiyoshi Ohnishi, Akio Morita, Haruyo Koiso, Yoshihiro Funakoshi, Katsunobu Oide (KEK)
 
SuperKEKBは電子-陽電子の衝突型円形加速器である。2016年2月より試験運転を開始し、ビーム調整が進められている。本発表ではSuperKEKBのPhase1(ビーム衝突無しでのビームコミッショニング期間)におけるビーム光学の測定とその補正に関して報告する。
 
13:10 - 15:10 
MOP063
p.520
SuperKEKB用フラックスコンセントレータの開発
Development of a flux concentrator for SuperKEKB

○榎本 嘉範,紙谷 琢哉,横山 和枝,田中 窓香,柿原 和久,高富 俊和,岡田 尚起,肥後 寿泰(高エネ研),牛本 信二(三菱電機システムサービス)
○Yoshinori Enomoto, Takuya Kamitani, Kazue Yokoyama, Madoka Tanaka, Kazuhisa Kakihara, Toshikazu Takatomi, Naoki Okada, Toshiyasu Higo (KEK), Shinji Ushimoto (Mitsubishi Electric System & Service )
 
2016年2月よりコミッショニング始まったSuperKEKB計画では、KEKBに比べルミノシティーを約40倍に増強することを目的として、様々な開発が行われている。陽電子に関しては、KEKBではバンチチャージが1 nCであったがSuperKEKBでは4 nCが要求されている。しかもDR(ダンピングリング)への入射エネルギーを確保するために陽電子生成ターゲットの位置をこれまでより上流へ移動せざるをえず、ターゲット位置での入射電子エネルギーが低下し、1電子あたりの陽電子生成量が低下することが避けられない。 これを補い要求性能である4 nCの陽電子を確保するために、これまでよりも数倍効率のよい陽電子捕獲系の開発が進められている。その中で中心となる装置がフラックスコンセントレータ(FC)と呼ばれるパルス電磁石である。 本発表では現在稼働中の1号機から得られた経験を元に、改良、製作した2号機に関して、テスト結果を示しながら現状を報告する。 特にFCヘッド部の加工硬化処理による耐力の増大が大電流運転での重要点と考えられているため、処理の有無による結果の違いを紹介する予定でいる。
 
13:10 - 15:10 
MOP064
p.524
SuperKEKB用RF gunのコミッショニング状況
Commissioning of RF Gun for SuperKEKB

○夏井 拓也,吉田 光宏,周 翔宇,張 叡,小川 雄二郎(高エネ研)
○Takuya Natsui, Mitsuhiro Yoshida, Xiangyu Zhou, Rui Zhang, Yuujiro Ogawa (KEK)
 
現在,KEKではSuperKEKBに向けた加速器全体のアップグレードが行われている.SuperKEKBでは非常に高いルミノシティを得るための低エミッタンス化によりダイナミックアパーチャーの減少とビーム寿命の減少が起こる.特に電子ビームはダンピングリングなしで5 nC, 20 mm-mradという高電荷低エミッタンスのビームが求められる.そのため新たにフォトカソードS-band RF gunの開発が進められている.電子発生用のレーザは広帯域のYb:YAGを用いたものを開発している.現在RF gunのコミッショニングはKEKB時代から使用している熱電子銃の運転と並行して行うために,2階建て構造のビームラインを使用いている.SuperKEKB Phase 1運転が今年の2月から6月まで進められており,RF gunによる入射試験も予定されている.KEK入射器で進められているRF gunのコミッショニング状況について報告する.
 
13:10 - 15:10 
MOP065
p.527
SuperKEKB入射器におけるミスアラインメント、ジッターによるエミッタンス増大
EMITTANCE GROWTH BY MISALIGNMENTS AND JITTERS IN SUPERKEKB INJECTOR LINAC

○清宮 裕史,佐藤 政則,諏訪田 剛,肥後 寿泰,榎本 嘉範,宮原 房史,古川 和郎(KEK)
○Yuji Seimiya, Masanori Satoh, Tsuyoshi Suwada, Toshiyasu Higo, Yoshinori Enomoto, Fusashi Miyahara, Kazuro Furukawa (KEK)
 
SuperKEKB入射器では、低エミッタンスを実現するため、電子源としてフォトカソードRF電子銃が用いられる。ビーム制御の観点では、その高電荷かつ低エミッタンスビームを低エミッタンスのままSuperKEKB Ringへ輸送する必要がある。エミッタンスが増大してしまう主な理由は、ビームが加速空洞内で発生させるwakeによって、そのビーム自身が蹴られてしまうことにある。あるビームが空洞の中心からあるオフセットを持って通過する時、そのオフセットに依存したwakefieldの影響を受ける。そのため、ビームを空洞の中心を通すように適切にステアリング磁石を制御することでエミッタンス増大を最小限に抑えることができる。我々は、いくつかのミスアラインメントとジッターを考慮した粒子トラッキングシミュレーションを行った。
 
13:10 - 15:10 
MOP066
p.532
BPMの感度最適化シミュレーション
An optimization of BPM sensitivity by simulation

○清宮 裕史,諏訪田 剛,佐藤 政則,宮原 房史,飯田 直子(KEK)
○Yuji Seimiya, Tsuyoshi Suwada, Masanori Satoh, Fusashi Miyahara, Naoko Iida (KEK)
 
SuperKEKBでは陽電子においても低エミッタンスビームが必要となるため、Damping Ring(DR)が使用される。Linacで生成された陽電子はDRへの輸送路を通過する。この輸送路でビームは偏極磁石によって曲げられるため、ビームダクトは横長の楕円のような形をしている。そのため、BPMで信号を受け取るSMA端子の設置場所に一定の任意性が生まれる。我々は、輸送路にて予想されるビーム分布を用いて、端子の位置の最適化シミュレーションをCST PARTICLE STUDIOによる3次元荷電粒子運動解析で行った。
 
13:10 - 15:10 
MOP067
p.537
ストリークカメラを用いたOTR測定による極短電子ビームバンチ長計測(II)
Ultra-short bunch length measurement via observation of OTR using a streak camera (II)

齊藤 寛峻,柏木 茂,日出 富士雄,武藤 俊哉,南部 健一,阿部 太郎,柴崎 義信,髙橋 健,長澤 育郎,○濱 広幸(東北大学電子光理学研究センター)
Hirotoshi Saito, Shigeru Kashiwagi, Fujio Hinode, Toshiya Muto, Kenichi Nanbu, Taro Abe, Yoshinobu Shibasaki, Ken Takahashi, Ikuro Nagasawa, ○Hiroyuki Hama (Research Center for Electron Photon Science, Tohoku University)
 
東北大学電子光理学研究センターでは極短パルス電子ビームを用いた加速器ベースの高輝度テラヘルツ光源の開発研究を行っている。現在、コヒーレントテラヘルツ放射光の生成に必要な100 fs以下の極短パルス電子ビーム生成を目指し実験が進められている。同センターの試験加速器(t-ACTS: test Accelerator as the Coherent THz Source)では、加速構造中のvelocity bunchingにより極短パルス電子ビームを生成し、ビームからの可視光領域の遷移放射光(OTR)のパルス長をストリークカメラで測定することによりバンチ長測定を行っている。これまでのOTR輸送光学系のレイトレースなどによる測定システムの評価から、光学系の収差や波長分散により生じる被測定光の時間拡がりやストリークカメラの掃引時間に起因する時間分解能により、測定システムの時間分解能が約400 fsに制限されることが分かった。今回、測定時間分解能の向上を図るために、ストリークカメラの掃引時間を高速化するとともに波長分散による被測定光の時間拡がりを抑制するために光輸送路の短縮および被測定光の波長の狭帯域化を試みた。発表では時間分解能向上のための取り組みとバンチ長測定結果について報告する。
 
光源加速器 (8月8日 コンベンションホール)
13:10 - 15:10 
MOP068
p.542
観測の観点からみたエッジ放射の一般的特性についての検討
Investigation of general properties of edge radiation in viewpoint of observation

○江田 茂,高林 雄一,金安 達夫,岩崎 能尊(九州シンクロトロン光研究センター)
○Shigeru Koda, Yuichi Takabayashi, Tatsuo Kaneyasu, Yoshitaka Iwasaki (SAGA-LS)
 
エッジ放射は、二つの偏向磁石に挟まれた直線部を高エネルギー電子が通過する際に発生する長波長域の放射である。偏向電磁石の放射光が長波長極限において波長の3乗根に比例して放射角が増大するのとは対照的にエッジ放射は1/γ領域に集中する。非常に単純な磁石配置にも関わらず高い輝度を持つ興味深い放射現象である。SAGA-LS蓄積リング直線部LS8における可視域のエッジ放射の観測実験において、paraxial近似によるエッジ放射理論によってその基本的放射特性が見通しよく簡便に理解できることがわかってきた。この近似ではエッジ放射が直線部の各微小区間からの電場の足し合わせとして表現され、エッジ放射は端部ではなく、区間から放射されると解釈される。エッジ放射は、観測波長をλとした時、直線部においてλγ^2という特徴的スケールが存在し、これに対する直線部長さの大小がエッジ放射の放射特性を決定する。この特徴的スケールの観点から空間分布等の観測される放射の性質を整理し、SAGA-LSでの観測実験の結果に加え、SAGA-LSとは異なったより広い条件(赤外、THz領域)でのエッジ放射観測についても検討する。
 
13:10 - 15:10 
MOP069
p.546
SPring-8 蓄積リングの電磁石と架台の温度および位置の変動と軌道変動
Temperature and Position Variation of the SPring-8 Storage Ring Magnets and Girders and its Effect to Electron Orbit

○妻木 孝治(高輝度光科学研究センター)
○Koji Tsumaki (JASRI/SPring-8)
 
SPring-8では初期のころ、運転開始とともに軌道が徐々に変動していくことが観測された。その理由として通電により電磁石や架台が温められ磁石中心の位置が変化し、軌道が変化するものと推定された[1]。そのため運転の一週間ほど前から通電し、電磁石と架台を熱平衡状態に持って行ってから運転するようにしていた。さらに最近では経費節約の観点からクイックスタートの試験を行い[2]運転の2日まえから通電するようにしている。軌道変動の原因は電磁石や架台の位置の変化とされているが、以前調査した時は1架台上の電磁石と架台の温度を測定しただけであり、位置の変化はレーザーとCCDカメラによる測定で精度的にも必ずしも十分とは言えなかった。今回、温度と磁石の位置の変化と軌道の変化の関係をより明確にするため、温度測定は2セル分6架台上の電磁石と架台の温度を熱電対で測定し、位置の変化もより正確なワイヤーによる計測システムを3架台に設置し、その結果をデータベース上に記録するようにした。これらの結果をもとに温度とともに電磁石や架台がどのように変形し、それが軌道にどのような影響を及ぼすかについて述べる。 [1] K. Tsumak et. al., "Effect of Temperature Variation to the Beam Stability of the SPring-8 Storage Ring", SPring-8 Annual Report, 1998, p. 129. [2] 高雄勝,"クイック・スタート試験の結果報告", SPring-8 ACC-MEMO, 2009-07.
 
13:10 - 15:10 
MOP070

円偏光アンジュレータから発生する光渦の観測
Observations of Optical Vortices Radiated from Helical Undulator
○藤本 將輝,加藤 政博,ミリアン ナジメ(分子研UVSOR),保坂 将人,高嶋 圭史,持箸 晃(名大SRセンター),平 義隆(産総研),佐々木 茂美(広大放射光センター)
○Masaki Fujimoto, Masahiro Katoh, Najmeh Mirian (UVSOR), Masahito Hosaka, Yoshifumi Takashima, Akira Mochihashi (Nagoya University), Yoshitaka Taira (AIST), Shigemi Sasaki (HSRC)
 
円偏光アンジュレータから発生する高調波は、波面が螺旋状に回転しながら伝播する光渦となることが知られている。アンジュレータ放射による光渦では、電子の運動方向や高調波の次数によって光波面の回転方向や回転数が決定する。円偏光アンジュレータ高次光が螺旋状の位相勾配をもつことは、2台のアンジュレータを用いて発生した異なる次数の高調波間の干渉実験によって実証された。アンジュレータ光渦の性質を更に詳しく調べるため、我々は、分子科学研究所UVSOR-ⅢのBL1Uに設置されたAPPLE-Ⅱ型アンジュレータを用いて、様々なパターンの光学スリットを用いた回折実験や波面センサによる観測を進めている。本発表では、UVSOR-Ⅲで行われているアンジュレータ光渦観測の最新の結果について報告する。
 
13:10 - 15:10 
MOP071
p.551
赤外自由電子レーザーによるアト秒・ゼプト秒X線発生
Generation of atto- and zepto-second X-ray pulses from infrared FEL oscillators

○羽島 良一,永井 良治(量研機構)
○Ryoichi Hajima, Ryoji Nagai (QST)
 
超短パルスレーザーをガス中に集光することで発生する高次高調波(High Harmonics Generation; HHG)は、VUVから軟X線領域における超短パルス発生技術として研究が進んでおり、すでに、アト秒パルスの生成が実現している。HHGでは、ターゲットガス中における入射レーザーと高調波の位相速度を合わせることが必要であるが、高調波の次数が大きくなるにつれて、 位相整合が難しくなることが、HHGの短波長化の妨げの一つとなっている。 位相整合条件で決まるHHG短波長化の限界は、入射レーザー波長の1.7 乗に比例することがわかっていることから、中赤外(4-μm以上)の数サイクルレーザーパルスが望まれている。JAEA-FELでは、波長22μmにおいて、2.32サイクルのレーザーパルスを発生した実績がある。これは、高ゲインかつ低共振器損失のパラメータ領域で発現するFEL発振(完全同期長発振)によるものである。本技術を応用すれば、高次高調波の限界をVUVから軟X線、さらに硬X線の領域に拡大できる可能性があり、この時のパルス長はアト秒からゼプト秒となる。本発表では、中赤外において1-2サイクルのFELパルスを発生するための装置の設計例を示す。
 
13:10 - 15:10 
MOP072
p.556
レーザー・コンプトン光源における短パルスX線の発生
Ultra-short pulse generation at Compton X-ray sources

○羽島 良一(量研機構、高エネ機構),宮島 司(高エネ機構),松葉 俊哉(広島大学)
○Ryoichi Hajima (QST, KEK), Tsukasa Miyajima (KEK), Shunya Matsuba (Hiroshima U.)
 
LCS光源においてフェムト秒領域の超短パルスX線を生成する方法として、フェムト秒までバンチ圧縮した電子をレーザーと正面から衝突させる、 あるいは、フェムト秒のレーザーを電子ビームの側方、または、後方から衝突させる方法が知られている。本発表では、ERL-LCS光源において、 これらと異なる方法に基づく超短パルスX線の発生が可能であることを示す。 第一の方法は、ERLの入射部に偏向空洞を設置し、衝突点においてバンチを傾ける方法である。第二は、オフクレスト加速した電子に対してERL周回軌道にて有限の運動量分散を残すことで、第一の方法と同様にバンチを傾けた状態で衝突点に導くものである。いずれの方法も、衝突点において正面から入射したレーザーがバンチの一部(スライス)のみと衝突することで 電子バンチよりも短いX線パルスを得ることができる。従来から知られている方法との比較検討を示す。
 
13:10 - 15:10 
MOP073
p.560
SACLAアンジュレータの狭ギャップ化に向けた機械駆動部の強化
Improvements of the SACLA undulator driving system toward a narrow gap operation

○長谷川 照晃,田中 隆次,金城 良太,貴田 祐一郎(理研 放射光科学総合研究センター),備前 輝彦,清家 隆光,久間 正之,鏡畑 暁裕(高輝度光科学研究センター)
○Teruaki Hasegawa, Takashi Tanaka, Ryota Kinjo, Yuichiro Kida (RIKEN SPring-8 Center), Teruhiko Bizen, Takamitsu Seike, Masayuki Kuma, Akihiro Kagamihata (JASRI)
 
アンジュレータの狭ギャップ化により、同一電子ビームエネルギーにおける利用波長の広帯域化とパルスエネルギー増大が見込まれ、これにより実験ユーザーの利便性は大きく向上する。しかし、SACLA供用開始後、複数のアンジュレータで当初よりも光スペクトルのバンド幅が広くなり、その場磁場測定システム(SAFALI)による評価で、磁場性能が劣化していることが明らかとなった。アンジュレータの使用とともに症状が発生したことから、使用条件を再現して調査した。その結果、原因は磁石列を支持するボールネジ固定部にある精密ロックナットの緩みであると判明した。アンジュレータには上下に対向する磁石列の支持点が12箇所あり、1箇所でもこの不具合が発生すると磁石列ギャップの均一性が保てず、レーザー増幅利得が劣化する。そこで既存装置に大きな改造を施すことなく、付加的に追加できる緩み対策部品を考案し、運用中のBL3アンジュレータに適用した。さらに、狭ギャップ化に伴うSAFALIの諸問題を解決することにより、狭ギャップ化を実現し、2016年9月以降、これまでの最小ギャップ3.5mm/K値2.1から2.7mm/ K値2.7程度への性能向上が予定されている。
 
13:10 - 15:10 
MOP074
p.563
アト秒・ゼプト秒X線パルス発生のための共振器型赤外FELの3次元シミュレーション
Infrared FEL oscillator 3D simulation for an atto- and zepto-second x-ray generation

○永井 良治,羽島 良一(量研機構)
○Ryoji Nagai, Ryoichi Hajima (QST)
 
高次高調波発生(HHG)を用いたアト秒・ゼプト秒X線パルスには、波長4ミクロン以上、パルスエネルギー1mJ級、パルス長数サイクルの中赤外レーザーが必要であが、既存の光パラメトリック増幅器(OPA)などを用いた手法では、このようなレーザー光の発生は困難である。そこで、共振器型自由電子レーザー(FEL)における完全同期発振を用いれば、このようなレーザー光が発生可能であり、高次高調波発生を用いた硬X線パルス発生が実現できる。ここでは、数サイクル、mJ級の中赤外パルス光を発生するための諸条件を明確にするために共振器型赤外FELの3次元シミュレーションを行ったので、その結果について報告する。
 
13:10 - 15:10 
MOP075
p.567
PF-AR直接入射路の建設
The construction of the direct beam transport line for the PF-AR

○長橋 進也,浅岡 聖二,飯田 直子,岩瀬 広,上田 明,内山 隆司,小川 雄二郎,尾崎 俊幸,小野 正明,帯名 崇,柿原 和久,紙谷 琢哉,菊池 光男,岸本 祐二,工藤 喜久雄,久米 達哉,小玉 恒太,小林 幸則,下ヶ橋 秀典,佐藤 政則,佐藤 政行,佐波 俊哉,諏訪田 剛,高井 良太,高木 宏之,鷹崎 誠治,多田野 幹人,田中 窓香,谷本 育律,田原 俊央,多和田 正文,峠 暢一,中村 典雄,中村 一,夏井 拓也,濁川 和幸,丹羽 尉博,野上 隆史,芳賀 開一,原田 健太郎,肥後 寿泰,古川 和朗,本田 融,本間 博幸,三川 勝彦,三増 俊広,宮内 洋司,宮原 房史,山田 悠介,山本 将博,吉田 光宏(高エネ研)
○Shinya Nagahashi, Seiji Asaoka, Naoko Iida, Hiroshi Iwase, Akira Ueda, Takashi Uchiyama, Yujiro Ogawa, Toshiyuki Ozaki, Masaaki Ono, Takashi Obina, Kazuhisa Kakihara, Takuya Kamitani, Mitsuo Kikuchi, Yuji Kishimoto, Kikuo Kudo, Tatsuya Kume, Kota Kodama, Yukinori Kobayashi, Hidenori Sagehashi, Masanori Satoh, Masayuki Sato, Toshiya Sanami, Tsuyoshi Suwada, Ryota Takai, Hiroyuki Takaki, Seiji Takasaki, Mikito Tadano, Madoka Tanaka, Yasunori Tanimoto, Toshihiro Tahara, Masafumi Tawada, Nobukazu Toge, Norio Nakamura, Hajime Nakamura, Takuya Natsui, Kazuyuki Nigorikawa, Yasuhiro Niwa, Takashi Nogami, Kaiichi Haga, Kentaro Harada, Toshiyasu Higo, Kazuro Furukawa, Tohru Honda, Hiroyuki Honma, Katsuhiko Mikawa, Toshihiro Mimashi, Hiroshi Miyauchi, Fusashi Miyahara, Yusuke Yamada, Masahiro Yamamoto, Mitsuhiro Yoshida (KEK)
 
電子陽電子入射器(LINAC)は、4台の蓄積リング(SuperKEKBのHER及びLER、PFリング、PF-AR)に対して、電子または陽電子を供給している。LINACは、エネルギーや電荷量の異なる電子または陽電子を50Hzのパルス毎に高速で切り替え、任意の蓄積リングへ供給することが可能である。SuperKEKB及びPFリングに対しては、この高速に切り替えたビームを使用して、同時に入射をすることが可能であるが、PF-ARはSuperKEKBと共通の入射路を使用しているために、他の3台の蓄積リングへの入射を中断し、入射路の入射モードを切り替えて入射しなければならない。これに要する時間は、最短でも10分程度であり、蓄積ビームの寿命が極端に短いSuperKEKBとは、同時に運転できないことになってしまう。そこで、SuperKEKBの物理実験が開始される前に、6.5GeVの電子ビームをPF-ARに直接入射するための専用の入射路(PF-AR直接入射路)を建設し、他の3台の蓄積リングと同時に入射できる様にするための計画が進行中である。また、この入射路が完成することによって、将来のトップアップ運転に備えることも可能となる。新トンネルや設備工事は終了し、2016年夏より、ビームラインの建設が始まる。
 
13:10 - 15:10 
MOP076
p.571
cERLにおける共振器型CDRによるTHz光源の設計
Design of THz Source utilizing an Resonant CDR System at cERL

○本田 洋介,アリシェフ アレクサンダー,島田 美帆,加藤 龍好,宮島 司,高井 良太,帯名 崇,山本 尚人(高エ研)
○Yosuke Honda, Alexander Aryshev, Miho Shimada, Ryukou Kato, Tsukasa Miyajima, Ryota Takai, Takashi Obina, Naoto Yamamoto (KEK)
 
cERL周回部では高繰り返しの短バンチビームが得られ、バンチからのコヒーレント放射によってTHz域の放射が発生できる。直線部にビーム繰り返しと整合した共振器を構成したCDR(コヒーレント回折放射)のシステムを用いることで、バンチ間の放射をコヒーレント加算し、高効率に放射を取り出すことが可能である。共振型の放射現象の実証を目的とする実験を計画している。cERLは長期運転休止中であるが、この期間を利用して装置開発と設置を行う予定である。本発表では、この共振器型CDRシステムの検討状況を報告する。
 
ビーム診断・ビーム制御 (8月8日 コンベンションホール)
13:10 - 15:10 
MOP077
p.576
cERL周回部におけるバンチ長と放射スペクトルの測定
Bunch Length and Radiation Spectrum Measurement at Return Loop of cERL

○本田 洋介,島田 美帆,高井 良太,アリシェフ アレクサンダー,ミハイル シェベレフ,加藤 龍好(高エ研)
○Yosuke Honda, Miho Shimada, Ryota Takai, Alexander Aryshev, Shevelev Mikhail, Ryukou Kato (KEK)
 
cERLではアーク部を利用してバンチ長を圧縮し、コヒーレント放射の発生などの応用を行う予定である。バンチ長の調整および測定を行う目的で、アーク下流の直線部のOTR標的でコヒーレント遷移放射(CTR)を発生させる装置を立ち上げた。マイケルソン型干渉計の分光器を構成し、自己相関の手法で測定を行う。バンチ圧縮の調整を行ったビームについて、放射のスペクトルとバンチ長の評価を行った。
 
13:10 - 15:10 
MOP078
p.580
SPring-8線型加速器プロファイルモニタ画像システムの更新
Update of the Image System used for Beam Profile Monitoring in the SPring-8 Linac

○竹中 寿行,鍛治本 和幸((スプリングエイトサービス株式会社)),柳田 謙一,馬込 保,出羽 英紀,清道 明男,増田 剛正,石塚 規友紀,鈴木 伸介((公益財団法人高輝度光科学研究センター))
○Toshiyuki Takenaka, Kazuyuki Kajimoto ((SPring-8 Service Co.Ltd)), Kenichi Yanagida, Tamotsu Magome, Hideki Dewa, Akio Kiyomichi, Takemasa Masuda, Miyuki Ishizuka, Shinsuke Suzuki ((JASRI/SPring-8))
 
SPring-8線型加速器プロファイルモニタ系では、LSビーム輸送系やL3ビーム輸送系に於いて、ビームプロファイル画像信号の処理を行い、ビームの重心位置や広がり(標準偏差)等の測定を行ってきた。また、20年近く使用してきたアナログ(NTSC規格)カメラが老朽化している事案もあり、全プロファイルモニタカメラ49台をディジタル(カメラリンク規格)カメラへ更新する事とした。同時に現在上記の一部輸送系だけで行われている画像処理を全てのプロファイルモニタカメラに適用する事とした。画像処理システムは将来に亘る保守維持管理を容易にするため、SPring-8制御系の標準的なフレームワークであるMADOCAⅡに準拠させた。2015年度はL4ビーム輸送系7台のカメラを交換し、画像処理システムとカメラからの画像データを伝送するカメラリンク機器を設置した。画像処理システムにはSPring-8蓄積リングの二次元干渉計等で運用実績のあるMicroTCAベースのシステムを採用した。画像処理システムはカメラリンクFMCとFMCスロット付きFPGA AMC、CentOSを搭載したプロセッサAMCで構成される。本システムは2016年1月からハード及びソフトウェアを入れ替え、4月からの稼動で正常動作を確認している。本年会では、カメラ及びカメラリンク機器等のハードウェア、MicroTCA画像処理システムのハード及びソフトウェア(EM)、制御端末上で動作するグラフィカルユーザインタフェースについて主に報告する。
 
13:10 - 15:10 
MOP079
p.585
cERLのラスタリングシステム
Rastering system with interlock for the beam dump of cERL

○原田 健太郎,中村 典雄,帯名 崇,島田 美帆,宮島 司,本田 洋介,野上 隆史,谷本 育律,本田 融,高井 良太(KEK)
○Kentaro Harada, Norio Nakamura, Takashi Obina, Miho Shimada, Tsukasa Miyajima, Yosuke Honda, Takashi Nogami, Yasunori Tanimoto, Tohru Honda, Ryota Takai (KEK)
 
cERLでは減速後のビームは取り出してビームダンプで回収される。電子ビームが直接当たるダンプは円錐状の穴をあけた水冷の銅ブロックで、電子ビームを斜めに受けるように設計されているが、それでも大電流の場合、1カ所に継続して電子ビームが当たり続けると発熱の問題が生じる。そこで、電子ビームを縦横ともAC的に振ってビームダンプ全体または十分広い領域に均等に電子ビームが当たるようにする、ラスタリングシステムが必要である。ここでは、cERL用に開発したラスタリングシステムおよびそのインターロックについて 発表を行う。
 
13:10 - 15:10 
MOP080
p.589
エネルギースキャニング照射のためのビームQA
QA PROCEDURE FOR ENERGY SCANNING IRRADIATION AT NIRS-HIMAC

○橋崎 慎平(加速器エンジニアリング),古川 卓司,原 洋介,水島 康太,早乙女 直也,丹正 亮平,皿谷 有一(量子機構放医研),勝間田 匡,三好 智広,立川 裕士(加速器エンジニアリング),高田 栄一(量子機構放医研)
○Shinpei Hashizaki (AEC), Takuji Furukawa, Yousuke Hara, Kota Mizushima, Naoya Saotome, Ryohei Tansho, Yuichi Saraya (QST/NIRS), Masashi Katsumata, Tomohiro Miyoshi, Yuji Tachikawa (AEC), Eiichi Takada (QST/NIRS)
 
放医研では、2011年から新治療研究棟において、三次元スキャニング治療を行ってきた。これまでは、加速器の可変エネルギー運転とレンジシフタ(RSF)を組み合わせてビーム飛程を変化させる照射方式(ハイブリッド方式)を適用してきた。2015年秋より、さらなる高精度な治療のため、使用するエネルギーを11ステップから200ステップ以上に増やし、可変エネルギー運転のみで飛程を変えるエネルギースキャニング照射方式での治療を行っている。 日々の治療を安定して行うためには、定期的にビームに関するQuality Assurance(QA)を実施する必要がある。ビームQAにはビーム自体の健全性や照射装置の動作確認のために、日次・月次・半年毎に実施する項目が分かれているが、エネルギースキャニング照射方式による治療を開始するにあたり、従来実施していたQA内容では網羅できない項目があった。また、治療で使用するエネルギーステップが約20倍に増えたことから、QAに費やす時間が大幅に増加し、治療運用への支障が懸念された。そのため、従来のQAと同程度の作業時間と品質を確保しつつ、エネルギースキャニング照射方式に対応した新たなQAが必要となった。 本発表では、エネルギースキャニング方式への変更における、ビームに関するQAの紹介とその運用状況ついて報告する。
 
13:10 - 15:10 
MOP081
p.594
ビーム位置及び相対モーメント測定に於ける再帰的計算
Recursive Calculation on Beam position and Relative Moment Measurements

○柳田 謙一,鈴木 伸介,花木 博文(公益財団法人高輝度光科学研究センター)
○Kenichi Yanagida, Shinsuke Suzuki, Hirofumi Hanaki (Japan Synchrotron Radiation Research Institute)
 
ビーム位置モニタ(BPM)を使用した位置測定に於いて、測定ビーム位置を用いた高次多項式の補正を行う事によって、測定ビーム位置を実ビーム位置に近づける事が行われる。この補正では1回のみの再帰的計算を行っていると解釈出来る。2013年加速器学会年会に於いて我々は高次モーメントが測定ビーム位置に影響を与える事を示し、上記多項式補正は相対モーメントを無視(零と見做)した場合の事例である事を示した。また、2014年加速器学会年会では二次相対モーメントを正確に算出する為、五次までのモーメントを用いた補正を行った事を述べた。SPring-8線型加速器円形断面六電極BPMを使用した場合、測定されるモーメントは2つのビーム(重心)位置、2つの二次相対モーメント及び1つの三次相対モーメントである。これら5つのモーメントを算出する際、各々に五次までの補正が必要となるが、1回のみの再帰的計算では正確な高次相対モーメントが得られないことが判明し、その対策のため多数回の再帰的計算手法を確立し、適用した。多変数且つ連立の多数回再帰的計算は必ずしも収束するものではないが、各モーメント算出の数値シミュレーションを行うことで実用的な領域に於ける収束性を確認している。本年会では五次までの補正に於ける再帰的計算に関して、シュミレーション及び実ビームデータの両方からモーメントを算出、比較し、本手法が適切である事を示す。
 
13:10 - 15:10 
MOP082
p.599
高電流密度電子ビームに対する結晶スクリーンの性能評価
Performance test of scintillating screens for high current density electron beam

○宮原 房史,佐藤 政則,清宮 裕史,諏訪田 剛(高エネ研)
○Fusashi Miyahara, Masanori Satoh, Yuji Seimiya, Tsuyoshi Suwada (KEK)
 
KEK電子陽電子入射器ではSuperKEKBへのアップグレードにともない、電子ビームの電荷量がKEKB時代の5倍の5 nC、規格化エミッタンスは20 mm mrad 以下となる。これにともない既設のビーム診断系の性能向上が求められている。これまで、入射器ではビームのプロファイル測定にアルミナ蛍光板を用いてきたが、アルミナ蛍光板は蛍光板内での光の乱反射やミリ秒オーダーの非常に長い残光などが原因で分解能が悪化する問題がある。そこで分解能がよく、放射線耐性に優れた結晶スクリーンへの置き換えを検討している。近年、ビームプロファイル測定には主にYAG:Ceが用いられるが、電流密度が1.5 nC/mm^2で発光が飽和するという報告があるため、入射器の高電流密度(>20 nC/mm^2)で十分な性能を発揮できるか不明である。そこで、シンチレータの特性を考慮し、性能評価のためYAG:Ceの他にLYSO:Ce、 LSO:Ce、BGO、CsI:Tlを用意した。高電流密度の電子ビームを用いた各結晶の評価試験の結果を報告する。
 
13:10 - 15:10 
MOP083
p.603
RF-Deflectorを用いたRF-Gunにおける電子ビームの傾き角計測
Bunch Tilt Angle Measurement by Using RF Deflecting Cavity

○中里 佑介,西山 将大,佐々木 智則(早稲田大学理工学研究所),坂上 和之(早稲田大学高等研究所),鷲尾 方一(早稲田大学理工学研究所)
○Yusuke Nakazato, Masahiro Nishiyama, Tomonori Sasaki (Research Institute for Science and Engineering, Waseda University), Kazuyuki Sakaue (Waseda Institute for Advanced Study, Waseda University), Masakazu Washio (Research Institute for Science and Engineering, Waseda University)
 
早稲田大学では,フォトカソードを用いたRF-Gunによって高輝度・短パルス・低エミッタンス等の特徴を持つ高品質な電子ビームを生成している。生成した電子ビームは,レーザーコンプトン散乱による軟X線生成実験やパルスラジオリシス,コヒーレント放射を利用したテラヘルツイメージング実験などに応用している。電子ビームを応用するにあたり,その詳細な構造の理解は非常に重要であるといえる。特に縦方向の情報はそれぞれの応用において重要なパラメータであり,本研究室では電子ビームの縦方向測定を目的としてRF-Deflectorと呼ばれる装置を独自に設計・開発し,これまでに縦方向密度分布測定,縦方向位相空間分布測定を行ってきた。RF-Deflectorとは内部に電磁場が共振する空胴共振器であり,時間変化する磁場によって電子ビームの位置ごとに異なるローレンツ力を与え,偏向する装置である。この装置を使った実験を行う中で,偏向させる方向によって電子ビームのビームサイズが異なる現象が確認され,それが電子ビームの持つ傾きによるものであることが考えられた。そこで我々はRF-Deflectorを使用して電子ビームの持つ傾きの角度を測定した。本発表では様々なパラメータを変化させた際のビームの傾き計測結果,及び今後の課題について報告する。
 
13:10 - 15:10 
MOP084
p.606
電子線傾き制御によるコヒーレントテラヘルツ放射の生成
Coherent THz generation by using electron bunch tilting

○坂上 和之(早大高等研),西田 万里子,鷲尾 方一(早大理工研),平 義隆,黒田 隆之助(産総研),浦川 順治(高エネ研)
○Kazuyuki Sakaue (WiAS, Waseda Univ.), Mariko Nishida, Masakazu Washio (RISE, Waseda Univ.), Yoshitaka Taira, Ryunosuke Kuroda (AIST), Junji Urakawa (KEK)
 
チェレンコフ放射はその媒質の屈折率によって電子線とある一定の角度を持って放射される。長い媒質中を荷電粒子が進行する場合には各点においてチェレンコフ放射が生成されるが、異なる点から放出されたチェレンコフ放射は位置の違いによって決まる位相関係はあるものの、位相を合致させて増強されるわけではない。そこで我々は電子バンチに傾きを付与することによって各点において放射されるチェレンコフ放射の位相を合致させるコヒーレントチェレンコフ放射の開発を開始した。もともとバンチ長計測用に開発した高周波偏向空胴を用いて、電子線に傾きを付与し、テラヘルツ帯におけるコヒーレント光の生成を行った。その結果、1THz帯において、傾き付与によって約10倍の強度を得ることに成功した。本講演では、電子線傾きを用いたコヒーレント放射の原理、テラヘルツ放射生成試験の結果、今後の展望に関して報告する。
 
13:10 - 15:10 
MOP085
p.609
ニュースバル可視光モニターラインSR2の改造
Reformation of the visible light monitor line SR2 in NewsUBARU

○庄司 善彦(兵庫県立大学)
○Yoshihiko Shoji (University of Hyogo)
 
 ニュースバルの可視放射光ビームモニターラインSR2を改造した。SR2は、逆偏向電磁石と通常偏向電磁石を結ぶラインの延長上にあり、従来は遠隔操作ビデオレンズを付けたカメラで、光源点を視る単純な構造であった。今回の改造では、ラインの特殊性を生かすため、水平と垂直のプロファイルを別のイメージで観測するようにした。SR2は通常の加速器の直線部とは大きく違う特殊な光学パラメーターになっていて、上流の逆偏向電磁石エッジでは水平方向ベータ関数が大きく、下流の通常偏向電磁石エッジでは垂直方向ベータ関数が大きい。この特徴を生かすため、スプリットした可視光を別々にフオーカスさせ、それぞれのエッジのビームプロファイルを同時観測できるようにした。上流は水平ビームサイズ、下流は垂直ビームサイズを測定するプロファイルであり、カップリングによる傾きも確認できる。共通の遠隔操作NDフィルターに加え、上流ラインには水平偏光、下流ラインには垂直偏光フィルターを設置し、多少とも分離を改善した。加えて、真空内初段ミラーの熱変形を補償するために、焦点カメラを可動式にしている。ニュースバルではこういった装置改善用予算がほとんどなく、既存の余剰品を組み合わせることで改造を実現した。長波長では干渉したエッジ放射を期待できるが、今回の改造では考慮する余裕は無かったので、観測していない。
 
13:10 - 15:10 
MOP086
p.614
重粒子線治療におけるビームアライメント手法とその検証
Beam position alignment and its verification for therapeutic ion beams from synchrotron

○皿谷 有一(放射線医学総合研究所),竹下 英里(神奈川県立がんセンター),古川 卓司,原 洋介,水島 康太,早乙女 直也,丹正 亮平,白井 敏之,野田 耕司(放射線医学総合研究所)
○Yuichi Saraya (National Institutes of Radiological Sciences), Eri Takeshita (Kanagawa Cancer Center), Takuji Furukawa, Yousuke Hara, Kota Mizushima, Naoya Saotome, Ryohei Tansho, Toshiyuki Shirai, Kouji Noda (National Institutes of Radiological Sciences)
 
三次元スキャニング照射法ではビーム位置のずれが照射野のずれを引き起こすため、治療室内の基準軸(アイソセンター)とビーム位置を合わせることが重要である。そのため我々は簡便な調整方法を開発し、検証を行った。アイソセンターは金属球が埋め込まれたファントムで定義され、X線管球や治療台の座標軸はこのアイソセンターに対して合わせられる。ビーム位置は輸送ラインのコミッショニング時に磁石の中心を通るように位置調整されているが、これはアイソセンターと一致していない。我々の調整方法では最初に、ファントムより下流に設置された蛍光膜とCCDカメラでアイソセンターとビーム位置のずれを測定し、輸送ライン上に設置されたステアリング電磁石でビーム位置の調整を行う。次に、ビームを使用し、ファントムより直上流に設置されたMWPCの基準位置の決定を行う。このような調整と検証は、アイソセンターとビーム位置のずれが全てのエネルギーで±0.5 mm 以内になるまで繰り返される。我々は開発した調整方法を使用し、神奈川県立がんセンターの重粒子線治療装置において実験を行った。本講演ではその結果について発表を行う。
 
13:10 - 15:10 
MOP087
p.617
TIARA AVFサイクロトロンの位相バンチングの比較
Comparison of phase bunching in the TIARA AVF cyclotron

○宮脇 信正(量研機構 高崎),福田 光宏(阪大核物理センター),倉島 俊,柏木 啓次(量研機構 高崎)
○Nobumasa Miyawaki (QST Takasaki), Mitsuhiro Fukuda (RCNP, Osaka Univ.), Satoshi Kurashima, Hirotsugu Kashiwagi (QST Takasaki)
 
TIARA AVFサイクロトロンでは、マイクロビームやシングルパルスビーム形成等で必要とされる高強度で狭いエネルギー幅のビームを生成するための一つの方法として位相バンチングを検討してきた。位相バンチングが入射ビームの位相差に伴った最初の加速のエネルギー利得の差で位相差を縮小させることを幾何軌道解析モデルによって示し、サイクロトロンの内部のビーム位相分布の測定によって加速ハーモニックス(h=)2と3の加速条件で発生することを確認した。位相バンチングが発生するh=2の加速条件でサイクロトロンから取り出されたビームは、高い取出し効率や10-4台のエネルギー幅等の効果が得られたが、h=3の場合、取出し効率がh=2の半分以下であった。そこで、位相バンチング効果の差について明らかにするため、モデルによる計算とビーム位相及び電流の測定を行った。発表では、計算及び測定結果からh=2と3の位相バンチングの比較とその差の検討について報告する。
 
13:10 - 15:10 
MOP088
p.619
スリット-ハープ法による高速エミッタンス測定システムの開発
Development of a fast emittance measurement system with the slit-harp method

○柏木 啓次,宮脇 信正,倉島 俊(量研機構 高崎)
○Hirotsugu Kashiwagi, Nobumasa Miyawaki, Satoshi Kurashima (QST Takasaki)
 
量研機構高崎研AVFサイクロトロンでは、イオン源で生成したビームの損失を最小限にして加速するための入射ビーム調整のツールとして、サイクロトロンのアクセプタンスと入射ビームのエミッタンスを測定する装置をこれまで開発してきた。エミッタンスの測定に関しては、入射ビームラインの位置と角度を制限する2つのスリットで加速器に通すビーム位相平面領域を制限するアクセプタンス測定と同じ方式のダブルスリット法で行ってきた。エミッタンスの測定には、水平・鉛直の一方向につき通常5分程度、高精度な測定の場合はさらにその数倍の時間を要するためイオン源他の条件を変えて複数回測定する場合には多くの測定時間が必要となっていた。そこで、迅速にエミッタンスを評価するため、スリットとハープを用いたエミッタンスモニタを開発した。このモニタは、これまでと同様アクセプタンスとエミッタンスが同位置で測定できるようにするため、ビーム位置を制限するスリットはダブルスリット法と共通にし、新たに追加した48本のハープにより48座標のビームの角度成分の検出を同時に行う。発表では装置の詳細及び測定結果について報告する。
 
13:10 - 15:10 
MOP089
p.622
TIARAにおける蛍光体を用いた リアルタイムビーム分布計測システムの特性評価
Characterization of the real-time beam profile measurement system using fluorescent sheets at TIARA facility

○湯山 貴裕,百合 庸介,石坂 知久,石堀 郁夫,奥村 進(量研機構 高崎研)
○Takahiro Yuyama, Yosuke Yuri, Tomohisa Ishizaka, Ikuo Ishibori, Susumu Okumura (QST/Takasaki)
 
量子科学技術研究開発機構高崎量子応用研究所TIARAのAVFサイクロトロンでは、多重極電磁石を用いた大面積均一照射システムによる、均一ビーム形成技術の開発を進めている。この均一ビームを円滑に利用するため、ビーム形成中に横方向ビーム分布が評価可能な、蛍光体を用いたリアルタイムビーム分布計測システムを開発した。この計測システムを用いたビーム形成の信頼性を高めるために、10 MeV 陽子ビームと520 MeV アルゴンビームに関して、本システムを用いて計測し、その特性を評価したので報告する。 システムの評価を実施するにあたり、残光が短く発光量が多いGd2O2S:Tb ( DRZ:三菱化学製 )蛍光体を使用した。大面積均一照射により均一化したビームと、AVFサイクロトロンの入射ラインに設置されているパルス波を用いたビームチョッパーにより、フルエンス率は任意に調整可能である。この均一ビームによる発光を、本計測システムを用いて2次元画像として取得し、照射野に関する輝度データを解析することで、入射フルエンス率に対するpixelあたりの発光輝度値の特性を評価した。 これにより、陽子ビーム及び、アルゴンビーム共に線形応答性を持つフルエンス率領域を確認することが出来、重イオン、軽イオン問わず、実用に足る、計測の再現性及び利用可能なフルエンス領域を持つことが確認出来た。
 
13:10 - 15:10 
MOP090
p.626
表面プラズモン共鳴を介した電子バンチ長の非破壊計測の検討 (2)
Non-distractive electron bunch length measurement via the surface plasmon resonance 2

○岡安 雄一(高輝度研)
○Yuichi Okayasu (JASRI)
 
フェムト秒単一電子バンチについて、加速器真空系の外で放射線損傷を気にすることなく、非破壊・リアルタイムでバンチ長測定を実現する測定系の開発を行う。 具体的には、真空ダクトに設けたメタマテリアル媒質と電子バンチ起因のクーロン場で表面プラズモン共鳴 (SPR) を真空ダクト外に励起させ、この SPR を EO サンプリング (EOS) 等で計測する測定系を開発する。標的となる電子バンチ長は 30 fs (FWHM) 程度である。 基板は合成石英と金薄膜から成り、二者の接着層には Ni ストライクを採用する。昨年の加速器学会では、SPR を効率的に励起する基板構造の数値計算による最適化 (接着層・金薄膜の厚さ、金薄膜に施すパターン等) について報告した。その内容に基づき、実際にSPR 基板を京都大学ナノテクノロジーハブ拠点にて製作した。特に接着層において、Ni の採用実績は一般的ではないため、条件出し等の困難を伴った。平行して、SPR 基板の試験用チェンバーも設計・開発した。実際の電子ビーム線型加速器を使用した基板の実証試験は、加速器の増強工事が優先されたため実施されていない。 本学会では SPR 基板製作方法、発生した問題点と克服、反省点に重点を置き、本研究課題の進捗を報告する。 本研究は JSPS 科研費 15K13415 の助成を受けたものである。
 
加速器制御 (8月8日 コンベンションホール)
13:10 - 15:10 
MOP091
p.630
J-PARCハドロンビームライン用データアーカイブシステムの開発
Development of data archive system for J-PARC hadron beamline

○豊田 晃久,上利 恵三,青木 和也,家入 正治,岩崎 るり,加藤 洋二,森野 雄平,里 嘉典,澤田 真也,白壁 義久,高橋 仁,田中 万博,広瀬 恵理奈,皆川 道文,武藤 亮太郎,山野井 豊,渡辺 丈晃(KEK)
○Akihisa Toyoda, Keizo Agari, Kazuya Aoki, Masaharu Ieiri, Ruri Iwasaki, Yohji Kato, Yuhei Morino, Yoshinori Sato, Shinya Sawada, Yoshihisa Shirakabe, Hitoshi Takahashi, Kazuhiro Tanaka, Erina Hirose, Michifumi Minakawa, Ryotaro Muto, Yutaka Yamanoi, Hiroaki Watanabe (KEK)
 
J-PARCハドロンビームラインのデータアーカイブシステムとしては、2009年の運転開始以来Channel Archiverを使用してきた。だがこのChannel Archiverは2006年以来10年近くメンテナンスされていないため、次期システムへの移行が必要になっている。今回我々は新アーカイブシステムとしてCSS(Control System Studio)に付属するRDBアーカイバーを試験し、旧アーカイブシステムとの性能比較を行った。データ消費レートやサーバー負荷、高負荷での性能などの試験結果、および将来の展望等について発表する。
 
13:10 - 15:10 
MOP092
p.634
J-PARC Main Ringへの小型ファンレスサーバを用いたIOCの導入
Deployment of a tiny fanless server as IOC in J-PARC Main Ring

○山田 秀衛(KEK/J-PARC)
○Shuei Yamada (KEK/J-PARC)
 
J-PARC Main Ring (MR)の制御システムはEPICSを用いて構築されている。制御対象機器のフロントエンド計算機であるI/O Controller (IOC)のプラットフォームの主流は、2008年に加速器の運転を開始した当初からIntel CPUを搭載したVME Sinble Board Computer (SBC)であった。しかしながら、これらのVME SBCの大部分は制御対象機器との接続にEthernetを用いており、VME SBCである必要性は無い。 またその一方で、MR加速器の高度化に伴って制御対象機器の数とデータサイズが増加しており、制御室内のスペースを有効に活用にできること、CPUとメモリに余裕があることがIOCが求められるようになった。 MRでは次期IOCの候補として小型ファンレスサーバを用いることを検討し、試験的に導入した。その運用状況と見通しについて報告する。
 
13:10 - 15:10 
MOP093
p.637
J-PARC運転データアーカイバにおけるHBase/Hadoopのバージョンアップ対応及びZooKeeperを使ったデータ収集ツールの冗長化
Updating HBase/Hadoop in the J-PARC operation data archiver with making the data collection tool redundant by ZooKeeper

○池田 浩,菊澤 信宏(原子力機構),吉位 明伸(新日鉄住金ソリューションズ),加藤 裕子(原子力機構)
○Hiroshi Ikeda, Nobuhiro Kikuzawa (JAEA), Akinobu Yoshii (NSSOL), Yuko Kato (JAEA)
 
J-PARCのLINAC, RCSから得られる制御に必要な大量なデータは、現在PostgreSQLに格納しているが、これをHBaseに格納する計画を進めている。HBaseはいわゆるNoSQLと呼ばれるデータストアで、大量のデータをスケーラブルに扱うことが可能である。HBaseはHadoop上で構築され、両者ともZooKeeperを利用した冗長性の管理が行われている。本発表では、HBase/Hadoopのバージョンアップの対応、及び、データ収集ツールのZooKeeperを利用した冗長化について報告する。
 
13:10 - 15:10 
MOP094
p.641
J-PARC MR MPSにおけるビームアボートシステムのアップグレード
Upgrade Plan of Beam Abort System in J-PARC MR MPS

○木村 琢郎,佐藤 健一(高エネルギー加速器研究機構)
○Takuro Kimura, Kenichi Sato (KEK)
 
J-PARCのMain Ring(MR)では速い取り出し(FX)と遅い取り出し(SX)の2つの運転モードが存在する。 MRの機器のインターロックによりMachine Protection System(MPS)が発報した際、加速器は安全にビーム運転を停止し、ビームはスケジュールされたタイミングでアボートダンプに取り出されることにより安全性を担保している。これまでFXではMPSが発報した際、加速器の運転周期の中でスケジュールされたタイミングでビームアボートを行っていたが、ビーム運転に影響の大きい機器については即時アボートシステムの導入を計画している。一方のSXでは2015年の夏期シャットダウンにて遅い取り出しを中止し、スケジュールされたタイミングで残ったビームのアボートを行うSX Abortシステムの導入を行った。このSX Abortシステムはビーム運転にて有効性が示されたため、さらなるアップグレードを計画している。本稿では、加速器や実験施設の安全性をより向上させるために、2016年の夏期シャットダウン中に計画される、それぞれの運転モードに合わせたアボートシステムのアップグレードに関して報告する。
 
13:10 - 15:10 
MOP095
p.644
J-PARC MRのVME-bus計算機の10年運用経験と信頼度評価
J-PARC MR's Experiences of VME-bus Computers in the Last Decade

○上窪田 紀彦,山田 秀衛,佐藤 健一,山本 昇(高エネルギー加速器研究機構 J-PARCセンター),根本 弘幸(アクモス(株)),吉田 奨(関東情報サービス(株))
○Norihiko Kamikubota, Shuei Yamada, Kenichi Sato, Noboru Yamamoto (J-PARC Center, KEK and JAEA), Hiroyuki Nemoto (ACMOS Inc.), Susumu Yoshida (Kanto Information Service (KIS))
 
約10年前のJ-PARC建設期、J-PARC MRの制御システムを設計・構築するにあたり、高信頼で堅牢なfront-end computerとしてVME-bus計算機を選択した。2007年を中心に3機種・約90台が納品され、2008年のMRのfirst beamに貢献した。その後現在(2016年)に至るまで、MR運転用として大半を使用しつづけている。2006年に最初のMR運転用VME-bus計算機を導入して10年が経過したが、果たして最初の目論見どおり高信頼だっただろうか。実際のMR加速器運用では、約5年が経過した2011年から特徴的なMemory故障などが目立つようになった。この報告では10年の運用経験に基づくVME-bus計算機の故障傾向を紹介し、10年前の選択が正しかったかどうかの検討を試みる。
 
13:10 - 15:10 
MOP096
p.647
J-PARC 3MeVリニアック用制御システム開発
Development of a control system at a 3-MeV linac in J-PARC

○澤邊 祐希(三菱電機システムサービス株式会社),石山 達也,高橋 大輔,加藤 裕子,平野 耕一郎,武井 早憲,明午 伸一郎,菊澤 信宏,林 直樹(日本原子力研究開発機構 J-PARCセンター),鈴木 隆洋(三菱電機システムサービス株式会社)
○Yuki Sawabe (Mitsubishi Electric System & Service Co., Ltd), Tatsuya Ishiyama, Daisuke Takahashi, Yuko Kato, Koichiro Hirano, Hayanori Takei, Shin-ichiro Meigo, Nobuhiro Kikuzawa, Naoki Hayashi (J-PARC/JAEA), Takahiro Suzuki (Mitsubishi Electric System & Service Co., Ltd)
 
J-PARCでは新たに3MeVリニアックを構築して、ビームスクレーパ照射試験およびレーザ荷電変換試験を計画している。3MeVリニアックは、セシウム添加高周波駆動負水素イオン源(RFイオン源)から負水素イオンビームを取り出し、高周波四重極型リニアック(RFQ)で3MeVまでビームを加速する。3MeVリニアックを制御するには、加速器およびレーザから人への安全を確保する人的安全保護用インターロックシステム(PPS)、加速器構成機器の安全を確保する機器保護用インターロックシステム(MPS)、各機器の同期をとるタイミングステム、及びEPICSを用いた遠隔制御システムが重要となる。本発表では、これらの3MeVリニアック用制御システムの開発について報告する。
 
13:10 - 15:10 
MOP097
p.652
ZabbixによるSPring-8制御ネットワーク監視系の構築
Network management system for SPring-8 accelerator controls

○杉本 崇,石井 美保,辻谷 健一,上田 晃義(高輝度光科学研究センター)
○Takashi Sugimoto, Miho Ishii, Ken-ichi Tsujitani, Teruyoshi Ueda (JASRI)
 
SPring-8制御系ネットワークは加速器運転におけるデータ収集や機器制御のために欠かせないインフラである。SPring-8制御系のネットワーク機器数は310台に達する。ネットワーク機器の死活監視のため、これまでOpenView NNM、ProCurve Manager+等を運用してきた。しかしながら高価なライセンス費用やメーカー・バージョン依存のため、全ての機器を完全には管理できていなかった。近年、様々なネットワーク死活監視ソフトウェアがオープンソースで提供されている。それらの中から我々はZabbixを用いた監視系を新たに構築した。SPring-8で使用している複数のネットワーク機器メーカーに対応したテンプレートを作成することで、監視対象機器の追加を容易にした。また、マップ機能により接続系統と死活状態がネットワーク管理者以外にも視認可能となった。Zabbixによる監視系は2014年にSPring-8のオフィスネットワーク上でテンプレートの開発と運用を開始した。2015年夏期よりSPring-8制御系ネットワークに導入し、2016年5月時点で全174,000点を毎秒平均1,900点でデータ収集し、35,000点のトリガー条件を監視している。さらに2016年夏期にはSACLA制御系ネットワークへの導入を計画している。発表では監視系の構成、データ収集・監視パフォーマンスの現状と課題について報告予定である。
 
13:10 - 15:10 
MOP098
p.656
MADOCA-to-EPICS ゲートウェイの開発
Development of the MADOCA-to-EPICS Gateway

○清道 明男,増田 剛正(高輝度光科学研究センター)
○Akio Kiyomichi, Takemasa Masuda (JASRI/SPring-8)
 
SPring-8の基幹制御システムであるMADOCA 制御システムの機器制御レイヤーでEPICS準拠デバイスを容易に組み込めるようにMADOCA-to-EPICSゲートウェイを開発した。加速器向けの市販機器にはBPM信号処理システムのLibera Briliance+ のようにEPICS-IOCが組み込まれている機器がある。SPring-8 IIに向けてこれらEPICS準拠デバイスの評価試験をMADOCA 制御システムで行うための整備を行った。MADOCAの機器制御レイヤーではEquipment Manager(EM)と呼ばれるソフトウェアが動作しているが、対象機器ごとに制御用の関数群を用意するため導入にはある程度の労力と時間を必要とする。MADOCA-to-EPICSゲートウェイは簡便かつ迅速にMADOCAへの導入が実現できるようにするために、EPICSにおけるcaget, caput, camonitorコマンドに相当する処理をEMの汎用関数として整備した。EM構成ファイル内にChannel Access (CA) を行う関数とPV名を指定するだけで、新たな開発をすることなくEPICS対応デバイスを制御する汎用EMの構築を実現した。
 
13:10 - 15:10 
MOP099
p.660
RIBF制御系への統合のためのHyperECRイオン源制御システムアップグレード
Upgrade of HyperECR Ion Source Control System for System Integration at RIBF

西村 誠(住重加速器サービス),○内山 暁仁(理研仁科センター),大城 幸光(東大CNS)
Makoto Nishimura (SHI Accelerator Service Ltd.), ○Akito Uchiyama (RIKEN Nishina Center), Yukimitsu Ohshiro (CNS, University of Tokyo)
 
理研RIBFでは初段加速器の一つにAVFサイクロトロンがあり、ビーム生成のためにHyperECRイオン源が実装されている。その制御系は現場イオン源室に設置されたPCと各コントローラが直接RS-232Cやイーサネットで接続されたシステムでRIBF制御系とは完全に独立していた。加速器オペレーション中にHyperECRイオン源を調整する際はRIBF制御室からリモートデスクトップで現場PCにログインし制御していたが、クライアントシステムが異なる事から、例えばデータを同じ時系列で表示する事が困難といった、オペレーションする上での様々な問題点があった。一方RIBFではEPICS(Experimental Physics and Industrial Control System)を用いて制御系が構築されているが、 HyperECRイオン源は東大CNSが運営している事から、加速器側オペレーションの都合のみで一方的に制御手法をEPICSに変更するということは現実的ではない。よってコントローラを更新せずに、従来の制御手法を残したまま、EPICSでも制御可能なシステム設計が求められる。本発表では、HyperECRイオン源の制御コントローラ(MELSEC Aシリーズ, Xicom TWTA)のRIBF制御系との統合手法とオペレーション効率化のためのクライアントシステムについて述べる。
 
13:10 - 15:10 
MOP100
p.664
RIBF制御系高信頼化への死活監視システム実装の試み
An Attempt to Implement the Alive Monitoring System for Reliable EPICS-based RIBF Control System

○内山 暁仁,込山 美咲(理研仁科センター)
○Akito Uchiyama, Misaki Komiyama (RIKEN Nishina Center)
 
現在標準の制御モデルではオペレータインターフェースとデバイスインターフェースの間にフレームワーク(EPICS, MADOCA, TANGO等)の中間層を持たせる三層構造が一般的である。一方、RIBF制御系は主にEPICSを用いてシステム構築されているが、三層構造はトラブル時の見通しが悪い事がある。RIBF制御系ではネットワークベースのデバイスを用いる事が多いが、オペレータインターフェースから見て制御不能に陥った時、EPICS Input/Output Controller (IOC)が落ちているのか、ネットワークデバイスが不通になっているのか、それともネットワークデバイスのポートのみ閉じているのか、それら原因の特定を瞬時に判断する事は難しい。昨年、我々はEPICSスタートアップスクリプトファイルの構文解釈をする事でEPICSデータベース名, フィールド名、ネットワークデバイスのIPアドレス等を抜き出し、自動でSQLベースのデータベースに格納、管理するシステムを開発した。それらの情報を利用することによりRIBF制御システムに信頼性を持たせるため、EPICS IOC, Channel Accessプロトコル, ネットワークデバイスの死活監視システムの開発、運用を始めた。本会議ではそれらシステムの現在の状況を報告する。
 
ビームダイナミクス・加速器理論 (8月8日 コンベンションホール)
13:10 - 15:10 
MOP101
p.668
炭素シンクロトロン高周波加速空胴運転制御パターン決定のための粒子トラッキングシミュレーションによる炭素ビーム挙動解析
The analysis of carbon behavior with particle tracking for deciding operation pattern of radio-frequency accelerating cavity in a carbon synchrotron

○中島 裕人,えび名 風太郎((株)日立製作所 研究開発グループ エネルギーイノベーションセンタ)
○Yuto Nakashima, Futaro Ebina (Hitachi, Ltd., Research & Development Group, Center for Technology Innovation - Energy)
 
日立ではこれまでに、炭素線治療用シンクロトロンの設計を行ってきた[1]。現在、本シンクロトロンの大阪重粒子線がん治療施設(仮称)への設置に向けた、機器設計及び製作が進められている。本シンクロトロンの加速空胴へ印加する高周波電圧振幅の運転制御パターンとして、高加速効率でC6+ビームを最大430MeV/uまで加速可能なものが必要である。本シンクロトロンは、偏向電磁石の磁束密度の変化ΔBごとにパルスを発生させ、そのパルスに基づき加速周波数を離散的に更新する(Bクロック制御)。ΔBの大きさによっては加速効率の低下が懸念される。従って、Bクロック制御を模擬したビーム進行方向の粒子トラッキングシミュレーションを実施し、加速効率を見積もった。ΔBとしては、当社の従来の陽子シンクロトロンと同じ加速制御機器を用いた場合の最小値を用いた。結果、RFバケットへの粒子捕獲時に最大700V、加速時に最大2300Vを印加するパターンのもとで、最大430MeV/uのビームに対して加速効率95%以上となることを確認した。 [1]F. Noda, T. Yamada, K. Hiramoto, “炭素線治療用小型シンクロトロンの概念設計”, WELH03, Proc. of the 8th Annual Meeting of PASJ, (2011).
 
13:10 - 15:10 
MOP102
p.671
散乱体を利用した遅い取り出しビームのエミッタンス整合
Emittance matching of a slow extracted beam by the scatterer method

○藤本 哲也(加速器エンジニアリング),岩田 佳之(放医研),松葉 俊哉(広島大学),藤田 敬,佐藤 眞二,白井 敏之,野田 耕司(放医研)
○Tetsuya Fujimoto (AEC), Yoshiyuki Iwata (QST), Syunya Matsuba (Hiroshima University), Takashi Fujita, Shinji Sato, Toshiyuki Shirai, Koji Noda (QST)
 
放射線医学総合研究所では重粒子線がん治療の更なる高度化を目的として回転ガントリーを導入し、現在ビームコミッショニングを進めている。回転ガントリーコースではスキャニング照射法が適用され、430-48 MeV/uのカーボンビームが供給される。回転ガントリーでスキャニング照射を実現するためには回転角度に依らずアイソセンタースポット形状を円形に保つ必要があり、そのためにはガントリー回転部入口で水平、垂直のビーム条件を合わせることが重要である。しかしシンクロトロンからの遅い取り出しビームのエミッタンスは一般にx<yであり、また遅い取り出し法による水平方向ビームプロファイルはガウス分布でない。そこで、①高エネルギービーム輸送ライン中でエミッタンス整合を行う。②位相空間上で対称的な粒子分布にする。ことが回転ガントリーでは必要となる。これらの問題を同時に解消する方法として、散乱体を利用したエミッタンス整合法を採用した。これはイオンが散乱体を通過した時に生じる多重散乱を利用して水平、垂直のエミッタンスを合わせるものである。同時にシンクロトロン出射点からのフェーズアドバンスを調整することで水平方向プロファイルをガウス分布にすることが可能である。散乱体装置は回転構造とし、回転により散乱体実効厚を変えることで広いエネルギー範囲に対応できるように考えた。本発表では散乱体を使ったエミッタンス整合の試験結果について報告する。
 
13:10 - 15:10 
MOP103
p.675
シンクロトロン振動におけるドップラー効果の考察
Consideration of Doppler Effects in Synchrotron Oscillations

○神保 光一(京都大学エネルギー理工学研究所)
○Kouichi Jimbo (Institute of Advanced Energy, Kyoto U.)
 
シンクロベータートロン共鳴結合付近で観察されたhorizontal betatron tune jumpを説明するために惰行、シンクロトロン そして ベタートロン運動からなるハミルトニアンが導かれた [1]。惰行、 シンクロトロン そして ベタートロン運動からなるこのハミルトニアンは文献1の式(21)で与えられる。 このハミルトニアンから、文献1の式(26)で与えられシンクロトロン振動の運動方程式が得られる。ここでdispersionによる運動エネルギーの(rationalized) fractional deviation δc、及びシンクロトロン振動による運動エネルギーの (rationalized) fractional deviation δs は、δc , δs << 1、 を満たさなければならないが、一般にphase slip factor η は、1/-η >1、 となる。 この結果は矛盾を生じる。惰行運動が、1/-ηの項を通して、シンクロトロン運動に影響を与えると考えると、この矛盾は解決する。これまでは暗黙のうちにシンクロトロン振動は、軌道粒子を中心として進行方向に起きると予想されてきた。しかし今回の結果はこの予想とは異なる結論を導く。ここではこの結論を物理的に考察する為、ドップラー効果によるsynchrotron tuneの変化について議論する。 [1] K.Jimbo, Physical Review Special Topics - Accelerator and Beams 19, 010102 (2016).
 
13:10 - 15:10 
MOP104
p.678
シンクロトロンからの遅いビーム取出し法(QAR法)のスピルフィードバック制御に関する研究
Study on spill feedback control in slow beam extraction (QAR) from a synchrotron

○中西 哲也(日本大学生産工学)
○Tetsuya Nakanishi (College of Industrial Technology, Nihon University)
 
粒子線がん治療用シンクロトロンからの遅いビーム取出しにおいて、スポットスキャニング照射法への適用を目的に高周波ノックアウト装置(RFKO)と高速四極電磁石(FQ)を用いた方法を開発している。この方法は、FQでセパラトリクスを20%程度収縮させながらビームを取出し、必要量取り出した後にFQをOFFすることでセパラトリクスを元の大きさに戻し、RFKOで周回ビームを拡散し元のエミッタンスに増大し、次の必要なタイミングでFQをONとして取り出すことを繰り返す。3次共鳴を使う場合、RFKOの周波数帯を、n+1/3とn+2/3付近の狭周波数帯を10ほど含んだマルチバンドスペクトルを使うことで比較的一様な拡散ができ、更に各バンドの周波数帯の選び方で一回の取出しを全粒子数の1%以上取り出すことも可能である。しかし、周回ビームの強度分布はガウス分布であるため、一定のスピルを得るためには、FQ電源のスピルフィードバック制御が必要である。本発表では、ビームシミュレーションによるフィードバック制御の検討結果について報告する。また、取出し初期においてビーム強度を増加させるために、加速後にRFKOによりセパラトリクス中心部付近のビームを拡散させる方法の結果についても述べる。
 
13:10 - 15:10 
MOP106

二粒子対変換を用いた位相空間分解能のマクロ粒子数依存性解析の3次元系への拡張
Analysis of dependence of number of macro particles on resolution of phase space distribution for three dimensional particle distribution using particle pair transformation
○宮島 司(高エネ研)
○Tsukasa Miyajima (KEK)
 
加速器中の荷電粒子ビームの解析においては、計算機の能力が向上した現在でも、膨大な粒子数をそのまま扱うのは難しく、系の自由度を減らして解析することが必要となっている。系の自由度を減らして荷電粒子ビームを表現する方法として、幾つかの荷電粒子を一纏めにして質量電荷比を保存した新たな古典的な点電荷(マクロ粒子)の集まりとしてビームを表現する、マクロ粒子法が広く使われている。このときに重要となるのが、元のビームの性質が保たれる自由度の数はいくらなのかということである。この問いに対して、本研究では、マクロ粒子数を減らす操作を定式化するための新たな手法として、二粒子対変換(Particle Pair Transformation)を定義・導入し、これまでに1次元と2次元の荷電粒子分布に対して、ビームの運動状態の精度(位相空間の分解能)と系の自由度の数の関係を評価してきた。今回はこの二粒子対変換による解析を3次元荷電粒子系に適用し、粒子数と位相空間分布の分解能の解析を行っている。本発表では、3次元系に適用したときの結果について紹介する。
 
真空 (8月8日 コンベンションホール)
13:10 - 15:10 
MOP107
p.680
SuperKEKB陽電子ダンピングリングの真空システム
Vacuum System of Positron Damping Ring for SuperKEKB

○柴田 恭,末次 祐介,石橋 拓弥,白井 満,照井 真司,金澤 健一,久松 広美(KEK)
○Kyo Shibata, Yusuke Suetsugu, Takuya Ishibashi, Mitsuru Shirai, Shinji Terui, Ken-ichi Kanazawa, Hiromi Hisamatsu (KEK)
 
SuperKEKBにおいては、陽電子リングへの入射効率を向上するために、ダンピングリング(DR)が新たに建設される。DRは2つのアーク部(約110 m)と2つの直線部(約20 m)からなるレーストラック形の蓄積リングで、ビームエネルギーは1.1 GeV、最大蓄積電流は約70 mAである。アーク部では”Reverse-bend FODO”ラティスが採用されるため、リング一周あたりで最大約7.2 kWの放射光がリング外側にだけではなく内側にも照射される。そのため、光マスクと冷却水チャンネルがダクト両サイドに設置される。また、電子雲の発生と光マスクのインピーダンスを低減するため、ダクトの両サイドにはアンテチェンバーが設けられる。電子雲対策としては、更にグルーブ構造とTiNコーティングが用いられる。ダクト断面形状は、ビームチャンネル部の高さが24 mm、アンテチェンバーを含めた全幅が90 mmである。一方、直線部のダクト断面形状は正八角形(高さ、幅ともに46 mm)などであり、水冷も行われない。ビームパイプはアルミ合金製で、本数は約100本である。ビームパイプはTiNコーティングとベーキングが施された後に加速器トンネル内に設置される。排気はNEGポンプとイオンポンプによって行い、平均到達圧力の目標値は1e-5 Pa以下である。ビームパイプの製作とTiNコーティング及びベーキングは、2015年度末までにほぼ終了しており、2016年5月からはビームパイプの設置作業が行われている。
 
13:10 - 15:10 
MOP108
p.685
SAGA-LS蓄積リング真空ダクトの更新と到達真空度の調査
Vacuum condition of the beam duct after the replacement for installing the superconducting wiggler at SAGA-LS

○金安 達夫,高林 雄一,岩崎 能尊,江田 茂(九州シンクロトロン光研究センター)
○Tatsuo Kaneyasu, Yuichi Takabayashi, Yoshitaka Iwasaki, Shigeru Koda (SAGA-LS)
 
放射光施設SAGA Light Source (SAGA-LS)ではピーク磁場4 Tのハイブリッド3極型超伝導ウィグラーを2010年度から運用している.2015年の夏期シャットダウン中には住友電工ビームラインの光源として二台目の超伝導ウィグラー(LS5W)が設置された.ウィグラー二号機の設置準備として,2014年度末に蓄積リングのウィグラー用直線部および下流四極と偏向電磁石部の真空ダクトを更新した.真空ダクトの光焼き出しによるビーム寿命の改善傾向は一号機と二号機で良く一致しており,ダクト製作・設置から真空立ち上げに至るまで大きな問題はなかった.また両者ともビームドーズ1000 mA-h程度でユーザー運転に必要な300 mA蓄積が可能となった.しかしながらビーム寿命への影響は殆どないものの,直線部真空ダクトの圧力測定値が一号機のケースと比べて一桁高い状態が継続しており原因調査に取り組んだ.四重極質量分析器による残留ガス分析,制動放射ガンマ線の線量測定や環境磁場の影響調査を行い,直線部ダクトで発生した光電子が真空計による圧力測定に影響を及ぼすことが判明した.発表では各種調査の結果を報告し,ウィグラー一号機と二号機のケースで真空度の測定値に差異が生じた要因を検討する
 
電磁石と電源 (8月8日 コンベンションホール)
13:10 - 15:10 
MOP109
p.689
SPring-8-IIに向けた永久磁石型偏向磁石の開発
R&D of Permanent Dipole Magnet for SPring-8-II

○谷内 努,青木 毅(高輝度光科学研究センター),高野 史郎,深見 健司,渡部 貴宏(高輝度光科学研究センター/理研 放射光科学総合研究センター)
○Tsutomu Taniuchi, Tsuyoshi Aoki (JASRI), Shiro Takano, Kenji Fukami, Takahiro Watanabe (JASRI/RSC)
 
SPring-8の将来計画であるSPring-8-IIでは、永久磁石を用いた偏向磁石が検討されている。永久磁石を用いることで電源や冷却設備が不要となり、電力の削減、故障頻度の低減、無振動などの大きなメリットが得られる一方、温度変化による残留磁束密度の変動、隣接する機器への漏洩磁場、経時的及び放射線照射による磁力の低下(減磁)など、これら問題に対する評価・対策を十分検討しなければならない。本発表では、実機設計に向けた試作機の設計・製作及び測定結果と、減磁監視のための長期磁場強度モニタの検討等について報告する。
 
13:10 - 15:10 
MOP110
p.694
SPring-8におけるストリップライン型ブルームラインを用いたSiC半導体高速パルス電源の開発
Development of SiC solid-state fast pulse driver using stripline type Blumlein in SPring-8

○満田 史織,本井傳 晃央,小林 和生,小林 利明,佐々木 茂樹((公財)高輝度光科学研究センター),関根 則夫((株)関根電機製作所)
○Chikaori Mitsuda, Teruo Honiden, Kazuo Kobayashi, Toshiaki Kobayashi, Shigeki Sasaki (JASRI), Norio Sekine (Sekine Electric Works Co. Ltd)
 
SPring-8蓄積リングにおいて、高速キッカーによるバンチバイバンチ、ターンバイターンビーム制御を目指すためには、電源性能は40ns以下のパルス幅出力が可能な高速性能と、208kHzでの繰り返し出力が可能な高繰り返し性能を有する必要がある。また、我々のパルス電源の運用では、負荷近傍に電源を設置し電源・負荷間のインダクタンスを低減することで高速性能を追求することを目指しているため、電源の小型化が電源性能とともに重要な技術課題である。この高速性と高繰り返し性を同時に満たす高速パルス電源として、試験的にストリップラインとSiC半導体を組み合わせたブルームライン型高速パルス電源の試作機を開発した。試作機はSiC半導体スイッチモジュールを備えた6直列の2m長のブルームライン回路より構成される。ストリップライン型ブルームラインを採用することで、電源の小型化と出力インピーダンスの低減を可能にしている。このパルス電源を2.5uHのコイル負荷に直結し、2kVの入力電圧に対して158nsのパルス幅で2.0MWのパルス出力を得た。自然空冷条件下の120ppsの繰り返し出力で、0.14%の高い電流安定度、14.0kVの高い増幅電圧を得ることに成功した。
 
13:10 - 15:10 
MOP111
p.699
J-PARC RCS 入射バンプシステムの現状と将来計画
Present status and upgrade plane of the J-PARC RCS injection bump system

○高柳 智弘,植野 智晶,堀野 光喜,富樫 智人(J-PARC/JAEA),飛田 教光(NAT),山本 風海,金正 倫計(J-PARC/JAEA)
○Tomohiro Takayanagi, Tomoaki Ueno, Koki Horino, Tomohito Togashi (J-PARC/JAEA), Norimitsu Tobita (NAT), Kazami Yamamoto, Michikazu Kinsho (J-PARC/JAEA)
 
J-PARC 3GeVシンクロトロン(RCS)の入射バンプシステムは、2012年と2013年に、LINACの181MeVから400MeVへのアップグレードに合わせた電源の交換及び電源容量の増強を行った。水平シフトバンプ電源と水平ペイントバンプ電源1は新電源に変更し、水平ペイントバンプ電源2~4は、定格の電流を1.6倍、電圧を2倍に電源容量を増強するため、既設電源に対してチョッパ盤の追加及びアセンブリ間の配線変更を実施した。そして、2015年1月には、RCS所期性能である1MW相当のビーム加速に成功した。しかし、その後、RCSの加速器が安定したユーザー利用運転を継続していく中で、水平ペイントバンプ電源では、パルスショット毎の電流値の変動(定格の±1%以上)や、荷電変換入射による入射部の残留線量の増加が散見されるようになった。そのため、電流値の変動については、旧水平ペイントバンプ電源を用いたオフラインでの調査・対策を実施し、残留線量については、入射用水平シフトバンプ電磁石の形状変更による入射部遮蔽体の追加を計画している。本発表では、入射バンプシステムの現状と将来計画について報告する。
 
13:10 - 15:10 
MOP112
p.703
J-PARC RCS水平シフトバンプ電磁石の現状
Present status of the J-PARC RCS shift bump magnet

○堀野 光喜,高柳 智弘,植野 智晶(J-PARC/JAEA),飛田 教光(NAT),山本 風海,金正 倫計(J-PARC/JAEA)
○Koki Horino, Tomohiro Takayanagi, Tomoaki Ueno (J-PARC/JAEA), Norimitsu Tobita (NAT), Kazami Yamamoto, Michikazu Kinsho (J-PARC/JAEA)
 
J-PARC 3-GeVシンクロトロン(RCS)の水平シフトバンプ電磁石は、RCSで採用されている多重入射方式の荷電変換入射を行う為、周回ビームの軌道にバンプ軌道を生成し、入射ビームと周回ビームを合流させる重要な機器の一つである。 2014年2月に、LINACからの400MeV入射ビームによるユーザー利用運転がスタートした。その約1年後の2015年2月と3月に、水平シフトバンプ電磁石の銅帯コイルを固定しているコイルサポートボルトの脱落と、4台の電磁石を直列に接続している銅バーの水冷配管からの漏水のトラブルが発生した。トラブルの発生直後は、暫定対策で加速器の利用運転に対応し、その年の夏期メンテナンス期間に、恒久対策を実施した。恒久対策の実施後は、トラブル無く安定した運転を継続している。本発表では、水平シフトバンプ電磁石に発生したトラブルと恒久対策の内容、及び、その効果について報告する。
 
13:10 - 15:10 
MOP113
p.708
J-PARC RCSエネルギー増強のための主電磁石の検討
Conceptual Design of Main Magnets for the J-PARC RCS Energy Upgrade

○谷 教夫,渡辺 泰広,發知 英明,原田 寛之,山本 昌亘,金正 倫計(原子力機構 J-PARCセンター),五十嵐 進,佐藤 洋一,白形 政司,小関 忠(高エネ研)
○Norio Tani, Yasuhiro Watanabe, Hideaki Hotchi, Hiroyuki Harada, Masanobu Yamamoto, Michikazu Kinsho (J-PARC, JAEA), Susumu Igarashi, Yoichi Sato, Masashi Shirakata, Tadashi Koseki (KEK)
 
J-PARC MRでは、将来MW級のビーム運転を目指した調査が行われており、その一環としてRCS電磁石の検討が行われた。RCSは、MRに対して1MWのビームを出射することが可能である。この場合、MRでは1.3秒の繰り返し時間で1.3MWのビーム強度が得られる。しかし、RCSの出射エネルギー3GeVでは、空間電荷効果の影響でMR入射部でのビームロスが5%と大きい。3.4GeVでは、ビームロスが1%程度となりMRでのビーム受け入れが可能となる。 出射エネルギー3.4GeVの実現性を確認する為に、現状のRCS偏向電磁石と四極電磁石を用いて、出射エネルギーの検討を行った。偏向電磁石は、三次元磁場解析コードを用いて評価が行われた。その結果、電磁石は、3.4GeVでは7.4%の飽和が見られた。また、定格値は、直流電源及び交流電源の最大定格の16%及び6.2%を超えており、現状のシステムでは難しいことが判った。その為、偏向電磁石については、既存の建屋に収まることを前提として、3.4GeVの電磁石設計を行った。その結果、電源は直流電源の改造と交流電源の交換で実現可能となることが判った。四極電磁石は、磁場測定データを基に評価が行われた。その結果、電磁石・電源共に対応可能であることが判った。 本論文では、RCS電磁石の出射エネルギー増強における検討内容及びその結果見えてきた課題について報告する。
 
13:10 - 15:10 
MOP114
p.712
J-PARC主リング高繰返し化に向けた主電磁石電源用変換器ユニットの大電力試験
High Power Testing of Power Converter Unit of J-PARC MR Main Magnet Power Supply for High Repetition Rate Operation

○森田 裕一,栗本 佳典(高エネ研),佐川 隆(ユニバーサルエンジニアリング),下川 哲司,三浦 一喜(高エネ研)
○Yuichi Morita, Yoshinori Kurimoto (KEK), Ryu Sagawa (Universal Engineering), Tetsushi Shimogawa, Kazuki Miura (KEK)
 
J-PARC主リングではビームパワーを増強するために運転周期を現状の2.5秒から1.3秒へ速める。高繰返し化に伴って、電磁石電源の出力電圧の増加、及び電磁石の励磁エネルギーを1次側へ回生することによる系統の電力変動が問題となる。さらに、ビーム性能の向上のために出力電流の低リップル化が求められている。我々はこれらを解決可能な電源を開発し、現行電源と入れ替える計画である。出力電圧の増加に対しては、1700V耐圧の変換器を6直列にして十分な耐圧を得る。系統の電力変動に対しては、電源あたり最大で数Fのコンデンサバンクを用いて回生エネルギーを貯蔵する。低リップル化に対しては、変換器を直列多重し、出力フィルタでスイッチングリップルを十分除去できる程度まで等価スイッチング周波数を大きくする。当該電源では冗長性を考慮して全ての変換器が同一のユニットの組合せで構成される。大容量の受電設備や負荷を使わずにユニットの大電力試験を行う方法を考案し試作変換器を用いて~100kVAの試験を行った。この方法では2台の変換器を介して2つの50mFコンデンサバンクの間でエネルギーを交換することにより受電電力を小さく抑える。また、それぞれの変換器の出力電圧パターンを同期することで負荷の両端にかかる電圧を小さくする。本報告では開発中の電源の構成およびユニットの大電力試験の方法と結果を紹介する。
 
13:10 - 15:10 
MOP115
p.717
J-PARC主リング高繰り返し化における主電磁石磁場の評価
Evaluation of Magnetic Field of J-PARC MR Main Magnets with High Repetition Rate Operation

○内藤 大地,三浦 一喜,染谷 宏彦,五十嵐 進,栗本 佳典,下川 哲司,森田 裕一(高エネ研)
○Daichi Naito, Kazuki Miura, Hirohiko Someya, Susumu Igarashi, Yoshinori Kurimoto, Tetsushi Shimogawa, Yuichi Morita (KEK)
 
J-PARC加速器では主リングでの速い取り出しにおいて約400kWのビーム強度を達成している。一方で設計強度は750kWであり、ビームの加速・取り出しの高繰り返し化による高強度化を計画している。その際にはビームを偏向・収束させるための電磁石へ流す電流の時間変化を急峻にする必要がある。これによりビームダクト等に発生する渦電流が増加するが、それに伴い二つの 懸案事項が考えられる。一つ目は磁石の励磁が妨げられる効果が大きくなる事である。二つ目はエミッタンス増大の原因となる非線形共鳴を励起する多極磁場成分の影響である。本講演では高繰り返し化時に電磁石にかかる電流の見積もりを入力に用いて、電磁石磁場の時間応答をシミュレートした結果を報告する。またその結果を用いて現行の電磁石が高繰り返し化に対応可能かどうかの確認および、電磁石の励磁における問題点の洗い出しをまとめる。
 
13:10 - 15:10 
MOP116
p.720
J-PARC RCS ペイントバンプ電源の現状報告
Present status of the J-PARC RCS paint bump power supply

○植野 智晶,高柳 智弘,堀野 光喜(日本原子力研究開発機構 J-PARCセンター),飛田 教光(日本アドバンストテクノロジー株式会社),山本 風海,金正 倫計(日本原子力研究開発機構 J-PARCセンター)
○Tomoaki Ueno, Tomohiro Takayanagi, Koki Horino (J-PARC / JAEA), Norimitsu Tobita (NAT), Kazami Yamamoto, Michikazu Kinsho (J-PARC / JAEA)
 
J-PARCの3-GeVシンクロトン加速器(RCS)の入射バンプシステムのうち、水平・垂直のペイントバンプ電磁石は、Linacからの入射ビーム(H-)とRCSの周回ビーム(H+)を合流させ、大強度の陽子ビームを生成する重要な機器の一つである。ペイントバンプ電磁石用の電源は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)スイッチのアセンブリを多段多重の並列回路で構成し、スイッチング周波数648kHzで運転する。そして、出力電圧が定格の1.2kV以下であれば、出力電流の波形パターン形状を定格の±1%以下の精度で任意に形成して出力することを実現している。しかし、出力電流値のパルスショットごとの変化(フラツキ)が、±1%以上になる場合がある。出力電流値の変動1%は、ビーム軌道の変位量約1mmに相当するため、RCSの所期性能である1MW大強度ビーム運転時には、ビームロス増加の要因となる。そこで、電源の入力パターンである電流・電圧の指令値の生成クロックと、電源を構成するIGBTスイッチ全ての動作クロックを同期化する基板を製作し、ショット毎のフラツキに関する入力パターンのタイミングのズレと同期化の効果について調査試験を行った。本発表では、同期化システムの詳細、試験結果、その他、実機で生じている現在の問題について報告する。
 
13:10 - 15:10 
MOP117
p.725
J-PARC 3GeV RCS キッカー電磁石電源の現状
Current status of the kicker magnet power supply in J-PARC 3-GeV RCS

○富樫 智人,高柳 智弘,山本 風海,金正 倫計(日本原子力研究開発機構 J-PARCセンター)
○Tomohito Togashi, Tomohiro Takayanagi, Kazami Yamamoto, Michikazu Kinsho (J-PARC Center,JAEA)
 
大強度陽子加速器施設(J-PARC)の 3-GeV RCS(Rapid Cycling Synchrotron)では、3GeVに加速した大強度陽子ビームの取り出しにサイラトロンスイッチを採用したキッカー電磁石電源システムを利用している。本システムの電源は、使用開始からおよそ10年が経過しているが、定期的な保守点検や消耗品の交換を実施する事により現在も順調な稼働を継続している。また、サイラトロンの取り扱いについては長年の経験をもとにした維持管理手法の確立により高い稼働率を維持するとともに、寿命については平均で10,000時間を超える利用が可能な状況にまで改善されている。一方、消耗品については経年的に製造中止品が増加しており、代替え品の選定が懸案となっている。また、高圧機器の絶縁と冷却に使用しているシリコーン油についても耐電圧性能の劣化が進んでいる傾向があり、性能の回復方法や入れ替え手順などの検討が必要となってきている。本報告では、これまでの運転状況並びに保守点検結果を交えながらキッカー電磁石電源の現状について報告する。
 
13:10 - 15:10 
MOP118

次世代サイクロトロン技術のための大型高温超伝導磁石の開発
Development of Large-scale HTS Magnet for Next Generation Cyclotron Technology
○鎌倉 恵太,畑中 吉治,福田 光宏,依田 哲彦,森信 俊平,斎藤 高嶺,永山 啓一,田村 仁志,安田 裕介,島田 健司,原 周平,久米 世大(阪大RCNP),植田 浩史(岡大理)
○Keita Kamakura, Kichiji Hatanaka, Mitsuhiro Fukuda, Tetsuhiko Yorita, Shunpei Morinobu, Takane Saito, Keiichi Nagayama, Hitoshi Tamura, Yuusuke Yasuda, Kenzi Shimada, Shuhei Hara, Toshihiro Kume (RCNP, Osaka Univ.), Hiroshi Ueda (Okayama Univ.)
 
我々は、次世代のサイクロトロンとして、高温超伝導電磁石を用いた小型でハイパワー(高エネルギーかつ大電流)な分離セクター型サイクロトロンを提案している。高温超伝導サイクロトロンは、その安定性の高さと運転コストの低さから、加速器駆動未臨界炉(ADSR)や粒子線癌治療への応用が期待される一方で、様々な解決すべき課題を残して未だ実現に至っていない。その第一歩として大阪大学核物理研究センター(RCNP)サイクロトロン施設に、世界初となる高温超伝導サイクロトロンを、既存のK400リングサイクロトロンの入射器として開発・導入する計画が進められている。本計画は当施設におけるビームの大強度化に資するとともに、将来における次世代サイクロトロンの要素開発を行うものである。最も大きな課題となるのはメートル級の高温超伝導コイルの開発である。これまでRCNPでは、高温超伝導線材を用いた様々な電磁石の研究開発が行われてきた。現在、磁極長1メートルの高温超伝導ビームスイッチング磁石を製作し、性能評価を行っている。この磁石は2つの実験室間でのビームシェアリングのための迅速な励磁を目的としたスイッチング磁石であるとともに、分離セクター型サイクロトロンの高温超伝導化のための、大型電磁石のプロトタイプである。これまでの性能評価試験の結果に基づき、高温超伝導技術の大型磁石への適用可能性を議論する。
 
13:10 - 15:10 
MOP119
p.729
FFAG加速器に向けた高温超伝導モデルマグネットの3次元磁場測定
three- dimensional magnetic field measurements of a high Tc superconductor model magnet for FFAG accelerators

○吉本 政弘(原子力機構/J-PARCセンター),武藤 正文,栗山 靖敏,上杉 智教,石 禎浩,森 義治(京大炉),坂 洋輔,李 陽,曽我部 友輔,富永 直樹,雨宮 尚之(京大),小柳 圭,高山 茂貴,田﨑 賢司,折笠 朝文,石井 祐介,来栖 努(東芝),荻津 透(高エネ研)
○Masahiro Yoshimoto (JAEA/J-PARC), Masahumi Muto, Yasutoshi Kuriyama, Tomonori Uesugi, Yoshihiro Ishi, Yoshiharu Mori (KURRI), Yosuke Saka, Yang Li, Yusuke Sogabe, Naoki Tominaga, Naoyuki Amemiya (Kyoto Univ.), Kei Koyanagi, Shigeki Takayama, Kenji Tasaki, Tomofumi Orikasa, Yusuke Ishii, Tsutomu Kurusu (TOSHIBA), Toru Ogitsu (KEK)
 
JST戦略的イノベーション創出推進プログラム「高温超伝導を用いた高機能、高効率、小型加速器システムへの挑戦」(プロジェクトマネージャー:雨宮(京大))では、FFAG加速器への高温超伝導の適用を検討している。テープ形状のRE系高温超伝導線材を使用する場合、スパイラルセクタ型でかつ電流配置により磁場形状を形成するFFAGマグネットが、巻線技術として最も製作が困難である。そこで、この複雑な形状のマグネットに対する巻線技術の実証と発生磁場の検証を目的としたモデルマグネットを製作し、磁場評価の第1段階として3次元磁場マッピング測定を実施した。冷却過程におけるコイル変形の影響、超伝導状態による線材磁化の影響が磁場精度に与える影響を評価するために、①室温(300K)常伝導(0.5A)、②低温(120K)常伝導(0.5A)、③低温(4K)超伝導(10A)の3つの条件下での測定を実施した。モデルマグネットは実機用マグネットのスケールダウンしたもので、発生磁場は非数ガウスと非常に小さい。そのため、高感度かつ高精度での3次元磁場測定システムの開発と精密アライメントが必須である。また地磁気や周辺の磁化環境による影響を補正するバックグランド測定が重要となる。本発表では、高温超伝導モデルマグネットの3次元磁場測定と、高温超伝導マグネットの低温・超伝導状態における磁場精度の評価について報告する。
 
加速器応用・産業利用 (8月8日 コンベンションホール)
13:10 - 15:10 
MOP120
p.734
地球温暖化の原因は大地を流れる人工電磁ノイズのコモンモード電流である
Common-mode current of man-made electromagnetic noise on Earth's surface causes global warming

○佐藤 健次(放医研)
○Kenji Sato (NIRS/HIMAC)
 
「ノイズはシグナルを汚すだけでなく発熱他の不具合の原因である」ことに気付き、例えば、「わかってきたボーイング787型機バッテリーの発熱の謎」を論考してきた。しかし、コモンモードノイズに関しては、測定が困難であるうえ、解くべき基礎方程式が複雑であるため、計算できないのが実状で、悩みの種である。これに対して、電気回路の配置の対称性を高くすると、簡単化されて解くことができ、HIMACやJ-PARCでの実践のように、「対称3線回路」にすると、ノイズは千分の1程度に減る。その結果、ノイズによる発熱は百万分の1程度に減ると考えて良い。この場合、コモンモードノイズにより回路要素が発熱することを論じているが、最近、コモンモードノイズの電流は大地を流れ、大地を発熱させると同時に、この電流は、架空送電線の直下で測定されている交流磁場の大きさから算定できることに気付いた。この場合、大地の発熱で地中の水が気化されて大気中の水蒸気が増加し、水蒸気の温室効果によって気温上昇が起こる。従って、地球温暖化の原因は、人工的なコモンモードノイズであると考えられる。そこで、架空送電線直下での交流磁場の大きさを1μTとし、ノイズの周波数を5kHzとして、大地の発熱量を計算で求め、大気中の水蒸気の増加量から気温上昇を求めたところ、1年当たり0.00094℃の値を得た。これは、最新のIPCC報告の過去130年間の気温上昇0.85℃の14%であり、妥当である。
 
13:10 - 15:10 
MOP121
p.743
遅い取出し法のためのスピル中ビーム飛程変化測定
Time resolved range measurement for the slow beam extraction

○早乙女 直也,古川 卓司,水島 康太(放医研),竹下 英里(神奈川県立がんセンター),原 洋介,皿谷 有一,丹正 亮平,白井 敏之,野田 耕司(放医研)
○Naoya Saotome, Takuji Furukawa, Kota Mizushima (NIRS), Eri Takeshita (KCC), Yousuke Hara, Yuichi Saraya, Ryuohei Tansho, Toshiyuki Shirai, Koji Noda (NIRS)
 
ブラッグピーク位置を患部に合わせて照射を行う重粒子線治療では、ビーム飛程の精度が重要となる。放射線医学総合研究所等で使用されている遅い取出し法では、スピル中のベータトロンチューンシフトにより時間的に飛程が変化する可能性がある。そこで、シンチレータとCCDカメラを用いたシステムを使って飛程の時間変化を測定した。このシステムで取得した画像から、ビーム進行方向の輝度分布を作成し、その分布のディスタル領域の最大輝度の80%位置を飛程として定義した。本システムではおよそ170ms毎に測定が可能で、飛程測定精度は0.2mm程度である。複数ビーム強度での スピル中の飛程測定結果より、飛程変化は時間の関数ではなく、リング中の残留粒子数の関数であるということがわかった。本発表ではスピル中の飛程変化測定結果、特にクロマティシティー変化時の飛程変化、プレヒートによる飛程変化対策について報告する。
 
13:10 - 15:10 
MOP122
p.746
炭素線高速三次元スキャニング照射のための可変エネルギー運転の開発
Development of multiple-energy operation for scanned carbon-ion therapy with fast 3D irradiation

○水島 康太,古川 卓司,岩田 佳之,原 洋介,早乙女 直也,皿谷 有一,丹正 亮平,白井 敏之,野田 耕司(量子機構)
○Kota Mizushima, Takuji Furukawa, Yoshiyuki Iwata, Yousuke Hara, Naoya Saotome, Yuichi Saraya, Ryohei Tansho, Toshiyuki Shirai, Koji Noda (QST)
 
放射線医学総合研究所では、スキャニング照射法を用いた炭素線治療を2011年より行っている。放医研の現在の治療では、シンクロトロンによるエネルギー変更のみで飛程を制御し、三次元の線量分布を形成するエネルギースキャン方式を使用している。エネルギースキャン方式で治療を行う場合、1回の照射あたり平均的に40~50回ほどのビーム飛程変更を必要とするため、加速器でのエネルギー変更にかかる時間が治療照射時間に大きく影響する。そのため、シンクロトロンの新たな可変エネルギー運転方式を採用し、高速な三次元スキャニング照射の実現を目指してきた。この運転方式では、1回あたりのエネルギー変更を300 ms程度で実行でき、最大430 MeV/uから最小50 MeV/uまでの200種類以上のエネルギーを供給可能であるため、従来よりも短時間で三次元線量分布を形成することができる。本発表では、高速スキャニング照射に向けた可変エネルギー運転の導入のための試験で得られた結果を紹介するとともに、従来照射との比較について報告する。
 
13:10 - 15:10 
MOP123
p.749
炭素線治療のためのエネルギースキャニング照射のコミッショニング
Commissioning of the full energy scanning for carbon-ion therapy at NIRS-HIMAC

○原 洋介,古川 卓司,水島 康太,稲庭 拓,早乙女 直也,丹正 亮平,皿谷 有一,白井 敏之,野田 耕司(放医研)
○Yousuke Hara, Takuji Furukawa, Kota Mizushima, Taku Inaniwa, Naoya Saotome, Ryohei Tansho, Yuichi Saraya, Toshiyuki Shirai, Koji Noda (NIRS)
 
放医研では2011年より、加速器から取り出された細いペンシルビームを電磁石により側方方向に走査し、病巣形状に合わせて照射を行うスキャニング照射法を用いた治療を行っている。ビーム飛程の変更に関しては、病巣をビーム進行方向の各層に区分し、レンジシフタ挿入と加速器の可変エネルギー運転を組み合わせたハイブリッドスキャニング(HS)方式が適用され、これにより三次元形状の病巣への正確な照射が可能となっている。一方、HSの場合、レンジシフタによるビームの拡がりの影響があり、より高度な治療のためには可変エネルギー運転のみのエネルギースキャニング(ES)照射による治療が求められている。ES照射のためには、膨大な量のビームデータや測定、検証が必要となる。そこで、測定及び、治療に必要なビームデータ作成の簡便な方法を提案し、実際にデータ取得を行った。作成したビームデータを用いて、三次元線量分布検証を実施し、高精度で計算、測定が合うことを実証した。結果、2015年秋より、ESにより治療が開始された。本発表では、初期のビームデータ取得方法と測定装置の改良から三次元線量分布検証、治療運用に至るまでの報告を行う。
 
13:10 - 15:10 
MOP124
p.753
重粒子線スキャニング照射におけるイオン再結合補正法の検証
Experimental verification of gain drop due to general ion recombination for a carbon-ion pencil beam

○丹正 亮平,古川 卓司,原 洋介,水島 康太,早乙女 直也,皿谷 有一,白井 敏之,野田 耕司(放医研)
○Ryohei Tansho, Takuji Furukawa, Yousuke Hara, Kota Mizushima, Naoya Saotome, Yuichi Saraya, Toshiyuki Shirai, Koji Noda (NIRS)
 
重粒子線治療において、患者への投与線量の精度を担保するためには、電離箱線量計内での一般イオン再結合による利得損失を正確に補正する必要がある。この利得損失の大きさは、Boagの理論から計算できるが、Boagの理論は電離箱中で生成される電荷の空間分布を均一と仮定している。これに対して、スキャニング照射法を使った重粒子線治療においては、走査される1本のペンシルビームの強度分布が不均一であるために、この仮定の違いが補正の精度を悪化させる。本研究では、電離箱中の電荷分布を考慮した一般イオン再結合の補正計算法を提案し、治療ビームを使って実験的に検証した。本発表では、検証結果および本研究による補正法の有用性を示す。
 
13:10 - 15:10 
MOP125
p.758
放医研回転ガントリーのスキャニング照射装置コミッショニング
Commissioning of scanning system on rotating gantry at NIRS-HIMAC

○古川 卓司,原 洋介,水島 康太,早乙女 直也,丹正 亮平,皿谷 有一,岩田 佳之,白井 敏之,野田 耕司(放射線医学総合研究所)
○Takuji Furukawa, Yosuke Hara, Kota Mizushima, Nagoya Saotome, Ryohei Tansho, Yuchi Saraya, Yoshiyuki Iwata, Toshiyuki Shirai, Koji Noda (NIRS)
 
放医研では、新治療研究棟の建設し、2011年よりスキャニング照射装置を用いた炭素線治療を行っている。2015年に始まった呼吸同期スキャニング照射による治療を含め、これまでに1000名以上の治療が行われた。2室4ポートの固定照射室の整備後、回転ガントリー室の整備を2015年までに実施し、現在は治療に向けたビームコミッショニングを行っている。放医研の回転ガントリーでは、スキャニング電磁石の下流に大口径の偏向電磁石を用いているため、通常の固定照射室とは異なった補正が必要となる。測定結果に基づいたフィードフォワード制御により、スキャンされるビームの位置精度を0.5mm程度に抑制できている。また、新たに開発したデジタルスターショット装置を用い、ガントリー照射装置特有の照射角度の検証試験を行っている。本発表ではこれらの現状を報告する。
 
13:10 - 15:10 
MOP126
p.763
炭素線治療用超電導回転ガントリーのビームコミッショニング
Beam commissioning of superconducting rotating-gantry for carbon radiotherapy

○松葉 俊哉(広大放射光センター),岩田 佳之,野田 耕司,白井 敏之,藤田 敬,佐藤 眞二,古川 卓司,原 洋介,水島 康太,皿谷 有一,丹正 亮平,森 慎一郎(放医研),藤本 哲也(加速器エンジニアリング),荻津 透(高エネ研),雨宮 尚之(京大工),長本 義史,松田 晋也,折笠 朝史,高山 茂貴(東芝),鈴木 伸司(筑波大)
○Shunya Matsuba (HSRC), Yoshiyuki Iwata, Koji Noda, Toshiyuki Shirai, Takashi Fujita, Shinji Sato, Takuji Furukawa, Yosuke Hara, Kota Mizushima, Yuichi Saraya, Ryohei Tansho, Shinichiro Mori (NIRS), Tetsuya Fujimoto (AEC), Ogitsu Toru (KEK), Naoyuki Amemiya (KUEE), Yoshifumi Nagamoto, Shinya Matsuda, Tomofumi Orikasa, Shigeki Takayama (Toshiba), Shinji Suzuki (Tsukuba University)
 
放射線医学総合研究所に設置された超電導回転ガントリーは2015年9月からビームコミッショニングが続いている。ガントリーによって0-360度の任意方向から重粒子線照射が可能となり治療の高精度化が期待される。コミッショニングの目標はビーム形状が円形で、エネルギーごとに決まっている目標ビームサイズを大きく外れずに滑らかに変化し、ガントリーの回転においても形状、ビームサイズが大きく変化しないこと等があげられる。 コミッショニングに先立って超電導電磁石の磁場測定が行われおおむね設計通りであることが確認されたが、2極励磁中に予期しない4極成分が見られた。ビーム光学設計においてこれらの効果をあらかじめ取り込んだ上で電磁石電流を決定し、またビーム形状を見てフリンジ場の影響を考慮することで、トラッキング計算と近い結果が得られるようになった。ガントリー角度やエネルギーの変化に対しても4極1-2台の微調整で許容範囲内の形状に収まり再現性も十分であった。本報告ではビームコミッショニングの詳細やトラッキング計算について紹介する。
 
13:10 - 15:10 
MOP127

電子加速器を用いた薄膜のパルスラジオリシス
Pulse radiolysis of films by using electron accelerators
○近藤 孝文,神戸 正雄,大島 明博,菅 晃一,楊 金峰,吉田 陽一(阪大産研)
○Takafumi Kondoh, Masao Gohdo, Akihiro Oshima, Koichi Kan, Jinfeng Yang, Yoichi Yoshida (ISIR, Osaka Univ.)
 
放射線、特に電子線を用いた材料の改質や、グラフト重合による機能化、次世代レジスト薄膜における潜像形成は、薄膜や材料の表面・界面で起きる放射線化学反応を基にしている。従って、実際に使用しているレジスト薄膜や、フィルム材料における放射線化学反応を直接観測することができれば、非常に有用であるが、高エネルギー電子線と薄膜の相互作用は小さいので、非常に困難である。そこで、本研究では、薄膜を用いた場合の電子線パルスラジオリシスについての幾つかの試みを報告する。①フォトカソード高周波電子加速器を用いた高エネルギー電子線を照射する場合、電子ビームを強く収束しのビーム径を小さくすることで電子の面密度の増倍を図り、高時間分解能の過渡吸収ダイナミクスを測定可能にする。②大強度熱電子銃加速器を用いた高エネルギー電子線を用いた場合では、電荷量を大きくすることで、活性種濃度の増倍を図って過渡吸収を測定する。③低エネルギー(250keV)電子線照射装置を用いると材料中での飛程が短くなり、エネルギー付与が大きくすることができ、電子あたりの活性種の発生数を増倍することで定常光吸収による測定を可能にする。これら種々の薄膜のパルスラジオリシスを準備・検討しており、発表では実験結果を含めて報告する。
 
13:10 - 15:10 
MOP128
p.767
InGaP太陽電池における100 keV以下の電子線照射による欠陥の生成
Generation of defects by irradiation with less than 100 keV electron in InGaP solar cells

○奥野 泰希,奥田 修一,秋吉 優史,岡 喬(阪府大),川北 史郎,今泉 充,艸分 宏昌(宇宙開発機構),リー カンファ,山口 真史(豊田工大)
○Yasuki Okuno, Shuichi Okuda, Masafumi Akiyoshi, Takashi Oka (OPU), Shirou Kawakita, Mitsuru Imaizumi, Hiroaki Kusawake (JAXA), Kan-hua Lee, Masafumi Yamaguchi (TTI)
 
InGaP太陽電池は、100 keV以下の電子線照射によって欠陥生成が起きないと考えられている。しかしながら70 keVの電子線を照射すると、非放射再結合が増加することから欠陥の生成が示唆されていた。本研究では、70 keV電子線を照射されたInGaP太陽電池にDLTS測定を行うことによって、欠陥が70 keV電子線照射によって生成されることを確認する。70 keV 電子線を照射されたInGaP太陽電池にDLTS測定を行うことにより得たスペクトルより270 K付近においてスペクトルにピークが観測された。270 K付近にみられるピークの欠陥の活性化エネルギーをアレニウスプロットから求めた結果よりDLTSで見られた270 K付近のピークの活性化エネルギーは0.54 eV±0.02 eVであることが明らかになった。 先行研究において270 K付近にピークを持つ活性化エネルギーが 約0.55 eVの欠陥はH2と呼ばれ、InGaP中のリンのはじき出し由来の欠陥であるとされている。今まで100 keV以下の電子線照射では、欠陥がほとんど生成されないと予測されていたが、70 keV電子線照射によってH2欠陥が確認されたことから、100 keV以下の電子線照射でリンのはじき出し由来の欠陥が生成されることが明らかになった。
 
13:10 - 15:10 
MOP129
p.771
1MeVイオン加速器によるPIXE分析システムの開発と教育への適用
Development of PIXE system with 1-MeV ion accelerator for educational purpose

○宮丸 広幸,安達 脩,谷口 良一,奥田 修一(大阪府大)
○Hiroyuki Miyamaru, Osamu Adachi, Ryoichi Taniguchi, Shuichi Okuda (OPU)
 
大阪府立大学では環境分析を目的に小型の1MeVイオン加速器を用いたPIXE分析システムの開発を進めている。本システムではPIXE法を用いて鉱物など固体試料表面の組成分析とその元素マッピングが可能である。このイオン加速器はディスクトロン型の高電圧発生機構のため小型であり、条件を満たすことから放射線管理区域ではなく通常建屋内にて利用できる。このことは本システムを加速器教育に活用する上で大きなメリットとなっている。現在、本加速器を研究目的だけなく、加速器関連技術の初学者である大学院生への実習として活用すべく整備を進めている。本加速器の分析感度はやや低いものの、軽元素の分析に適している。現在は直径およそ100ミクロン程度のビーム径の調整が可能である。また、ビデオカメラを設置することによって真空チェンバーの窓ガラス越しに試料表面を観察しつつ、移動ステージにてビーム照射位置を調整できる。イオン加速器の運転実習としてイオンビームのフォーカスと、高電圧電極による走査が可能になるよう整備している。イオンビーム形状の観察にはプラスチックシンチレーターを用いることでフォーカス中のビーム形状の観察が容易となり、視覚的効果からも実習成果の向上が期待できる。本システムの特徴について測定例を用いつつ紹介する。
 
13:10 - 15:10 
MOP130
p.774
水棲微生物処理のためのパルス大強度相対論的電子ビームの螺旋状標的を用いた水中への侵入深さ計測
Measurement of penetration depth into water using helical target of Pulsed Intense Relativistic Electron Beam for aquatic microorganism treatment

○庄司 健太,皆川 勇(長岡技術科学大学),今田 剛(新潟工科大学),梅村 将太,阿蘇 司(富山高等専門学校),高橋 一匡,佐々木 徹,菊池 崇志,原田 信弘(長岡技術科学大学)
○Kenta Shoji, Isamu Minagawa (Nagaoka University of Technology), Go Imada (Niigata Institute of Technology), Shota Umemura, Tsukasa Aso (National Institute of Technology, Toyama College), Kazumasa Takahashi, Toru Sasaki, Takashi Kikuchi, Nobuhiro Harada (Nagaoka University of Technology)
 
生物本来の移動能力を超えて,人為によって意図的又は非意図的に国内や国外の他の地域から移動してきた水棲微生物等の外来種が,在来生物の捕食等の被害を及ぼしている.対策として,パルス大強度相対論的電子ビーム(PIREB)を用いた水処理方法が検討されている.本研究では,水棲微生物へ影響を与えるPIREBの水中への侵入深さを,螺旋状標的を用いて計測し明らかにする.水中へのPIREB侵入深さは,照射による螺旋状標的の変色の位置とフィルム線量計を用いた線量測定より評価した.PIREB発生装置は長岡技術科学大学に設置されているETIGO-IIIを用いた.PIREBは,チタン箔を通過し大気側に引き出され,人工海水で満たされた容器内に設置した螺旋状標的へ照射される.標的の表面側にはCTA線量フィルム(富士フィルム FTR-125)を深さ毎に貼り付けた.照射後の螺旋状標的を確認したところ,2,4,6,8MeVでそれぞれ0.6,5.7,8.9,14.4mmの深さまで変色していることを確認できた.一方で,線量測定結果から,線量は深くなる毎に低くなるが,ある一定の値へ収束することが分かった.これはPIREBにより発生した制動X線が,電子が侵入していない領域にも進入するためと考えられる.以上の線量測定結果より,ETIGO-IIIから照射されるPIREBの水中への侵入深さは最大20.4mmとなり, PIREBによる水棲微生物へ影響を与えることのできる範囲と考えられる.
 
13:10 - 15:10 
MOP131
p.777
イミダクロプリド水溶液へのパルス大強度相対論的電子ビーム照射の影響
Irradiation Effect to Imidacloprid Solution with Pulsed Intense Relativistic Electron Beam

○林 直也,古澤 雅史,菊池 崇志,原田 信弘,佐々木 徹,高橋 一匡(長岡技術科学大学),今田 剛(新潟工科大学),森脇 洋(信州大学)
○Naoya Hayashi, Masahumi Furusawa, Takashi Kikuchi, Nobuhiro Harada, Toru Sasaki, Kazumasa Takahashi (nagaoka university of technology), Go Imada (niigata institute of technology), Hiroshi Moriwaki (shinshu university)
 
排水や排ガス、排煙に含まれる難分解性有機汚染物質による環境汚染が問題となっている。これらの汚染物質の処理技術として電子ビーム処理による研究が行われてきた。それらの汚染物質の中で近年、ネオニコチノイド系農薬が問題となっている。ネオニコチノイド系農薬とは、その高浸透性と残留性から、世界で広く使われている農薬であるが、蜂に代表される非標的毒性が問題となっている。本研究の目的は、パルス大強度相対論的電子ビーム(PIREB)照射による難分解性有機汚染物質処理効果に着目し、その処理効果を検討することである。PIREBは大電流、高電流密度の電子ビームで、先行研究により塗料として使用されているコンゴーレッドや排煙に含まれるNOx、産業廃棄物に含まれるホルムアルデヒドへの処理効果が確認されている。PIREB発生装置は、長岡技科大に設置されているETIGO-Ⅲを用いた。照射するPIREBは、最大加速電圧6MVで加速され、最大ビーム電流1kAである。厚さ40μmのチタン箔を通して、大気中に設置された照射容器へと照射される。難分解性有機汚染物質の試料には、ネオニコチノイド系農薬イミダクロプリドを用いた。PIREB照射後の試料は、液体クロマトグラフィー質量分析法(LC/MS)を用いて分析を行った。10mg/Lの溶液に対して複数回のPIREB照射を行った結果、分子量124の有機化合物が生成されることが分かった。
 
13:10 - 15:10 
MOP132
p.780
陽子線加速器駆動理研小型中性子源RANS及びRANS2計画
The RIKEN Accelerator-driven compact Neutron source (RANS) and RANS2 project

○小林 知洋,大竹 淑恵,若林 泰生,池田 義雅,栁町 信三,竹谷 篤,橋口 孝夫,髙村 正人,須長 秀行,池田 裕二郎(理研 光量子工学研究領域),林崎 規託(東工大 先導原子力研究所)
○Tomohiro Kobayashi, Yoshie Otake, Yasuo Wakabayashi, Yoshimasa Ikeda, Shinzo Yanagimachi, Atsushi Taketani, Takao Hashiguchi, Masato Takamura, Hideyuki Sunaga, Yujiro Ikeda (RAP, RIKEN), Noriyosu Hayashizaki (Laboratory for Advanced Nuclear Energy, Tokyo Tech)
 
理研では現場で役に立つ中性子源開発に取り組んでおり、7MeV陽子線線形加速器とBeターゲットによる理研小型中性子源システムRANSは稼働3年目となる。これまで陽子線の短パルス化などに取り組み、最高平均電流100μA、パルス幅10-180μs、繰返し周波数10-200Hzで利用可能となっている。イメージングや回折実験を利用した産業応用、核反応を利用した放射化分析・即発ガンマ線分析、高速中性子による大型構造物非破壊観察実験等が進行中である。RANSでは最高エネルギー約5MeVの発生中性子の一部を減速し、高速中性子と熱中性子を同時に得ている。新たに設計を行ったBe薄膜ターゲットは稼働開始から現在まで損傷なく使用を継続中である。 現在、更なる小型軽量化を目指した2.49MeV陽子線線形加速器およびLiターゲットを利用したRANS2の立上げを開始した。高速中性子を用いたイメージング技術開発が主たる目的である。RANS2のターゲットステーションはガンマ線遮蔽材の大幅な減量が可能で、重量はRANS(20t)の1/20以下を見込んでいる。加速器の小型化も含めてシステム全体の大幅な軽量化を実現し、可搬型へ向けた実証実験を行う計画である。 本発表では、現在までのRANSの成果に加え、新たなRANS2 計画について紹介する。
 
加速器土木・放射線防護 (8月8日 コンベンションホール)
13:10 - 15:10 
MOP133
p.783
電磁石測定基準点校正のための固有振動数ワイヤアライメントシステム
Eigenfrequency Wire Alignment System for Magnet Fiducialization

○張 超,満田 史織((公財)高輝度光科学研究センター),鍛治本 和幸(SPring-8 Service Co. Ltd)
○Chao Zhang, Chikaori Mitsuda (JASRI), Kazuyuki Kajimoto (SES)
 
The magnets of the SPring-8 storage ring have critical alignment tolerances. And, in the phase of magnetic field measurement, the positions of the fiducial points on magnets needed to be precisely calibrated relative to magnetic center. We have been used the laser CCD-camera system for the magnetic measurement device. Recently, in renew this device, an eigenfrequency wire alignment system (eWAS) is introduced in view of followings. It is easy to make continuous measurement to record the positional change due to the variation of magnet current. The measurement is less influenced by environments such as room temperature or airflow. And, it measures a group of fiducial points simultaneously. The system in developing is composed of 4 WPS sensors imbedded in balls, a carbon wire with supports, and a vibration measurement device. Aim of this alignment system is to calibrate the magnet fiducials with an accuracy of 10 &#61549;m.
 
13:10 - 15:10 
MOP134
p.786
放射線損傷予測の高精度化と高効率化-フィルム校正関数と画像解析ソフトの選択-
Improvement of accuracy and efficiency for radiation damage prediction - Selection of the film calibration function and image analysis software

○成山 展照((公財)高輝度光科学研究センター)
○Nobuteru Nariyama (JASRI)
 
加速器マシン収納部内はビームロス等により2次的に発生する放射線が、機器内の半導体や高分子材料等に損傷を与える。汎用的な材料については、損傷を引き起こす線量レベルがCo-60γ線を用いた一連の照射試験によりデータベース化されており、加速器定常運転時の線量率が得られれば、損傷により機能を失う時期を予測することができる。測定は、位置情報も得られるフィルムが有用である。SPring-8では、高線量用のガフクロミックフィルムが今まで用いられてきたが、SPring-8 IIでは6GeV運転が想定され、またSACLAでの利用など、数Gy以下に感度を持つ低線量用フィルムの利用が増えてきた。それとともに、低線量解析における校正関数を定期的に整備する必要が出てきた。また、改良著しい画像ソフトを適宜読み取りシステムに取り入れていくことにより、情報をより効率的に取得することができるようになる。本研究では、フィルム読み取りの高精度化及び効率化を目的に、最適な校正関数の検討とガフクロミックフィルムに使用可能な画像解析ソフト(FilmQA Pro, Origin Pro, MATLAB)をカラーマップ、プロファイル等の出力に関して相互に比較したので、報告する。
 
13:10 - 15:10 
MOP135
p.790
ワイヤセンサーと連通管を用いた4mの直線基準とそのステージ
Linear reference stage of 4m using wire sensors and HLS

○松井 佐久夫(理研),安積 則義((公財)高輝度光科学研究センター),木内 淳,甲斐 智也(スプリングエイトサービス株式会社)
○Sakuo Matsui (RIKEN), Noriyoshi Azumi (JASRI), Jun Kiuchi, Tomoya Kai (SPring-8 Service Co., Ltd.)
 
 加速器機器の据付アライメント精度として数mで10μm程度が要求される場合、可能な機器を用いるがその校正が重要である。レーザートラッカーも通常の校正は行うが、長期間に及ぶ場合、独立な基準による校正は信頼性を向上させる。又、校正だけでなく新規開発のレーザー+カメラシステムの評価にも活用できる。  大きな3次元測定器は所有していないので4mのレール上のステージをずれ±10μm程度まで調整後実験を行った。  直線からのずれ測定にはオートコリメーターがよく用いられるがロ-リングによる水平変位は測定できない、レーザー干渉計では平行な水平ずれとヨーイングが分離できない、など一長一短があった。又、一時的には正確に測定できても、温度等変化する中で4mで10μm以下の安定を保つのは難しい。そこで測量機器のターゲットを移動ステージに載せ、同時にステージの位置は金属ワイヤと2次元センサーにより測定した。垂れ量は片方の連通管(HLS)をステージ上に設置し補正した。ワイヤはBeCu製Φ0.2mmで、キンクの有無は1本に2個の2次元センサーを40cmずらして設置しチェックした。2mmのワイヤをぶらさげ、センサーの応答も測定した。アライメントに多用されるカーボンのワイヤは軽く、垂れは少ないが撚り線のせいかこれまで見落としていた10ミクロン程度の変動が認められ基準用には使用できなかった。測量機器の評価結果を報告する。
 
13:10 - 15:10 
MOP136
p.795
ILC施設設計の現状
Current Status of ILC Facilities Design

○宮原 正信,山本 明(高エネルギー加速器研究機構)
○Masanobu Miyahara, Akira Yamamoto (KEK)
 
国際リニアコライダー計画(ILC)は、2013年に発刊された技術設計書Technical Design Report(TDR)に基づき、現在、アジアサイトでの建設を目指し基本計画の再検討が行われている。特に、主加速器となるメインライナック(ML)やBDS(Beam delivery Service)等の主要なビームトンネルの断面計画の見直し、及び超伝導加速空洞のためのヘリウム冷却設備(Cryogenics)のレイアウト変更に対応した施設計画の見直しなどが精力的に展開されている。また、山岳サイトにおける地下空間へのアクセス施設の最適化を図るためのプログラム"Tunnnel Optimization Tool(TOT)" の開発が、CERNとKEKの共同により実施されている。本編では、これらのILC施設計画に関する国際設計チームの成果と最新の活動状況について報告する。
 
13:10 - 15:10 
MOP137
p.799
基盤強震観測網KiK-netで得られたILC北上候補サイト周辺の地震動の地表・地下比較
Comparison of earthquake motion between earth's surface and underground observed by strong-motion seismograph networks (KiK-net) around ILC Kitakami candidate site

○関根 一郎(戸田建設(株)),早野 仁司(高エネルギー加速器研究機構),吉岡 正和(東北大学),山下 了(東京大学),佐貫 智行(東北大学),汐見 勝彦(防災科学技術研究所)
○Ichiro Sekine (Toda Corporation), Hitoshi Hayano (KEK), Masakazu Yoshioka (Tohoku University), Satoru Yamashita (Tokyo University), Tomoyuki Sanuki (Tohoku University), Katsuhiko Shiomi (NIED)
 
国際リニアコライダー(ILC)は日本への立地が期待されているが、環太平洋造山帯に位置する我が国では地震の影響がILCの建設や運転に問題にならないことを海外へも示していく必要がある。地震の影響については,地下は地震に強いことが経験的に広く知られているが、地表と地下の地震動を比較した事例は少なく、城山発電所、釜石鉱山、瑞浪超深地層研究所など、限られた事例しかないのが実情である。国立研究開発法人防災科学技術研究所では、阪神・淡路大震災の後、全国に地震観測網を配備した。強震観測網KiK-netでは地表と主に地下約-100mに加速度型強震計を設置しており、ILC北上候補サイト周辺にも多くの観測点が整備されている。本報告では、東日本大震災の他、一ノ関市、奥州市、気仙沼市で震度5弱以上を観測した主要な地震を対象に、ILC北上候補サイト周辺の観測点や北上山地の花崗岩類、堆積岩類に設置された観測点で、地表および地下約-100mに設置された地震計によって得られた最大加速度を比較した。その結果、地下では地表に比較して最大加速度が概ね1/5程度であり、花崗岩類では堆積岩類よりも地下では小さな最大加速度を示すことを明らかになった。
 
13:10 - 15:10 
MOP138
p.803
ILC誘致を円滑に推進するためのAAA・CIVIL部会における検討(その2)
Study on civil-related works by AAA・CIVIL subcommittee to smoothly host ILC(No.2)

○武内 邦文(大林組),大西 有三(関西大学),吉岡 正和(東北大学・岩手大学),関根 一郎(戸田建設),河上 清和(五洋建設),濱嶋 博文(大成建設),福田 和寛(清水建設),下河内 隆文(竹中工務店),川端 康夫(飛島建設),大山 寛夫(鹿島建設),平井 秀樹(前田建設工業)
○Kunifumi Takeuchi (Obayashi Corporation), Yuzo Ohnishi (Kansai University), Masakazu Yoshioka (Tohoku University・Iwate University), Ichiro Sekine (Toda Corporation), Kiyokazu Kawakami (Penta-Ocean Construction Co.,Ltd.), Hirofumi Hamajima (Taisei Corporation), Kazuhiro Fukuda (Shimizu Corporation), Takafumi Shimogochi (Takenaka Corporation), Yasuo Kawabata (Tobishima Construction), Hiroo Ohyama (Kajima Corporation), Hideki Hirai (Maeda Construction)
 
先端加速器科学技術推進協議会(AAA)とは,最先端の加速器開発による科学技術の飛躍を目指して設立された産官学の連携組織で,主として国際リニアコライダー(ILC)の日本誘致に向けて,2014年12月にCIVIL部会を設置した.昨年度の報告では,ILC施設建設上の重要課題を調査するWG1,建設マネジメントを調査するWG2,まちづくりを調査するWG3,および,先行類似施設等を調査するWG4に分かれ活動を行った進捗状況概要を報告した.本報告では,平成27年度の活動成果として,重要事項WG1ではILC候補地である北上山地を現地視察調査した結果を踏まえて,ト ンネルの戦略的な地質調査,および水文・水利用に関し調査した.マネジメントWG2では,最近の多様化しつつある公共工事の入札契約方式(復興まちづくりCMR方式、ECI入札契約、FIDIC契約約款)の内容調査、およびトンネル等地下構造物の維持管理実績として,鉄道トンネル・道路トンネル・電力施設・加速器施設の調査を実施した.そして,まちづくりWG3 では,ベンチャーインキュベーションの事例調査(神奈川サイエンスパ ーク)を踏まえて,まちづくりとしての排熱利用,交通問題,そして既存施設の利用について調査した.今後は,これらの成果等を適宜とりまとめて公表し,日本正式誘致に向けた活動に対して,協議会という民間の立場からの支援や提言等をしていく予定である.
 
ハドロン加速器 (8月9日 コンベンションホール)
13:10 - 15:10 
TUP001
p.808
J-PARC MR における大強度ビーム取り出し時の空胴電圧変動
Cavity voltage variation at beam extraction in the J-PARC MR

○田村 文彦,吉井 正人,大森 千広,山本 昌亘,野村 昌弘,島田 太平,長谷川 豪志,原 圭吾(J-PARCセンター)
○Fumihiko Tamura, Masahito Yoshii, Chihiro Ohmori, Masahobu Yamamoto, Masahiro Nomura, Taihei Shimada, Katsushi Hasegawa, Keigo Hara (J-PARC center)
 
J-PARC MR は現在、ニュートリノ実験に約390kW の大強度陽子ビームを 供給している。ビームはキッカー電磁石を用いた速い取り出しにより取り出されるが、 ビームの取り出し直後に20マイクロ秒程度の短時間空胴電圧が跳ね上がることがわかった。 これは、RFフィードフォワード法によるビームローディング補償信号が、ビーム取り出し後も 系の遅延時間だけ出続けることが原因である。MR では高い加速電圧を発生させるために、 金属磁性体空胴を採用しているが、Q 値が 22 と低いために、ビーム負荷の急激な変動に 対して 10マイクロ秒程度の応答時間で反応してしまう。ビーム強度の増加につれ、 電圧の跳ね上がりが増加傾向にあり、この電圧の跳ね上がりは共振用の真空コンデンサの寿命に 関連があると考えられるため、対策が必要である。 MR の LLRF システムにおいては、サムアンプによりドライブ信号と フィードフォワード信号を合成しており、サムアンプには出力インヒビットのための 高速半導体スイッチが内蔵されている。インヒビット入力にビーム取り出しに合わせたタイミングで ゲートを入力することで、ドライブ信号およびフィードフォワード信号を抑止し、真空管の 出力を急に減少させることで、空胴電圧の跳ね上がりを減らすことができた。 本発表では、跳ね上がりの抑止の結果およびビームローディングの解析について示す。
 
13:10 - 15:10 
TUP002
p.811
J-PARC MRにおける金属磁性体FT3Lコアを使用した高周波加速空胴の開発状況
Status report of development of RF cavities with FT3L MA cores in J- PARC MR

○原 圭吾,大森 千広,長谷川 豪志,吉井 正人(高エネ研 J-PARC),島田 太平,田村 文彦,野村 昌弘,山本 昌亘(原子力機構 J-PARC)
○Keigo Hara, Chihiro Ohmori, Katsushi Hasegawa, Masahito Yoshii (KEK J-PARC), Taihei Shimada, Tamura Fumihiko, Masahiro Nomura, Masahobu Yamamoto (JAEA J-PARC)
 
J-PARC (Japan Proton Accelerator Research Complex) Main Ring (MR) では、運転の繰り返し周期を高繰り返し化することによりビームパワーを増強する計画が進められている。 高繰り返し化に伴いRF空胴に対して現在の電圧よりも高い電圧の発生が求められており、従来の磁性体コア(FT3M)に比べ高いシャントインピーダンスを有するFT3Lコアを用いた空胴の開発と量産を行っている。 2014年から新しい空胴へと置き換えはじめ現在までに9台のうち5台のFT3L空胴が据えつけられ運転実績を重ねている。 2016年夏には残り4台の空胴を設置し、すべての空胴がFT3L空胴となる。 本発表では、安定なビーム供給を維持するためのこれまでの課題や新型空胴の現状と今後の予定について報告する。
 
13:10 - 15:10 
TUP003
p.814
照射損傷(ブリスタリング)の遠方からの顕微鏡観察 -レーザー反射顕微鏡法-
Long distant microscope observation of radiation damage(blistering) -Laser Reflection Microscope-

○栗原 俊一,小林 仁,杉村 高志(高エ研),平野 耕一郎(原科研)
○Toshikazu Kurihara, Hitoshi Kobayashi, Takashi Sugimura (KEK), Koichiro Hirano (JAEA)
 
照射損傷の問題は加速器の構成要素の各部分に観察される問題である。加速管、スクレーパー、モニター、そして標的と特に陽子加速器、イオン加速器では憂慮される問題である。 われわれは、実際の加速器でのその場観察を究極の目標として、加速器で使用される様々な物質の照射損傷、特にブリスタリングの観察を続け、光源としてレーザーを用い、その反射光からの情報により遠方で加速器の動作中のその場観察を行える方法を検討した。 観察により得たブリスタリングの生成過程とともに、この観察方法の原理、ならびに適用限界を報告する。
 
13:10 - 15:10 
TUP004

4ビームIH-RFQ線形加速器の設計
Design of four-beam IH-RFQ linear accelerator
○池田 翔太,村田 亜希(東工大院),林崎 規託(東工大研究院)
○Shota Ikeda, Aki Murata (Tokyo Tech), Noriyosu Hayashizaki (IIR, Tokyo Tech)
 
東京工業大学では、4ビームIH-RFQ線形加速器の開発をおこなっている。この加速器は、低エネルギー大強度重イオンビームを加速するため、空間電荷効果が許容できる強度のビームを複数並列に加速後、ファネリングにより統合する機構になっている。4ビームIH-RFQ線形加速器の原理実証機の開発として、3次元電磁場解析ソフトウェアCST MW STUDIOを用いた電磁場解析をおこない、空洞損失、共振周波数などの高周波特性を評価することで、ステム電極、センタープレート、サイドシェルの設計をおこなった。また、高周波発熱により生じる熱応力をCST MPHYSICS STUDIOにより解析し、その結果から加速空洞の冷却水路を検討した。これらの設計結果と進捗状況について報告する。
 
13:10 - 15:10 
TUP005
p.817
RCNPにおけるサイクロトロン入射部およびBT系の開発
Developments of Injection of Cyclotrons and Beam Transport at RCNP

○依田 哲彦,福田 光宏,畑中 吉治,安田 裕介,島田 健司,鎌倉 恵太,斉藤 高嶺,田村 仁志,森信 俊平(阪大RCNP)
○Tetsuhiko Yorita, Mitsuhiro Fukuda, Kichiji Hatanaka, Yusuke Yasuda, Kenji Shimada, Keita Kamakura, Takane Saito, Hitoshi Tamura, Shunpei Morinobu (RCNP, Osaka Univ.)
 
中高エネルギーのイオンビームの大強度化は、陽子ビームにより生成される中性子やミューオンや、重イオンにより生成されるRIビーム等、2次ビームへの需要の高まりに伴い、非常に重要なテーマである。 阪大RCNPサイクロトロン施設はAVFサイクロトロン及びリングサイクロトロンのカスケードで構成されているが、このイオンビーム大強度化を目指して、それぞれのサイクロトロンの入射効率の向上、及びビーム輸送系の効率の向上を目的とした、改良・開発を行った。AVFサイクロトロンの中心軸入射ラインではビーム透過効率向上のため、既存の磁石列に1台グレーザーを追加することでこの問題の解決を図った。また、この軸入射ラインには既に1台バンチャーが設置されているが、近年需要の多いXeなどの重イオンに対しては電圧が十分ではなかったためもう1台充放電型バンチャーを追加することにより、特に重イオンのバンチングに対応した。この新設バンチャーはテストの結果、軽イオンに対しても有効であることが分かった。更に、リングサイクロトロンの入射効率向上を目指して、入射ライン上のバッフルスリットの開口を拡げ、入射軌道の自由度を高めるということも行った。その結果、リングサイクロトロンの透過効率の向上が図られた。ただし、この透過効率は2台のサイクロトロン間のビーム輸送の状況にも依存性が見られた。講演では、これらの開発状況の詳細について発表する。
 
13:10 - 15:10 
TUP006
p.820
NIRS-930サイクロトロンの取り出しエネルギーについて
Measurement of beam energy at NIRS-930 cyclotron.

○北條 悟,片桐 健,中尾 政夫,杉浦 彰則,涌井 崇志,野田 章,野田 耕司(放医研)
○Satoru Hojo, Ken Katagiri, Masao Nakao, Akinori Sugiura, Takashi Wakui, Akira Noda, Koji Noda (NIRS)
 
放射線医学総合研究所では、NIRS-930サイクロトロンを用いて、標的アイソトープ治療の研究開発を行っている。その標的アイソトープ治療用の放射性核種の生産においては、例えば、34 MeV 4He++ 20μAのような比較的高いビーム電流での提供が行われている。これらの放射性核種において安定した生産量を得るためには、ビームのエネルギーが重要なパラメーターの一つとなっている。 そのため、NIRS-930サイクロトロンから取り出されたビームのエネルギーをTOF法により測定した結果と、取り出されるビームのエネルギーの調整についての検討を行ったので、これらについて報告を行う。
 
13:10 - 15:10 
TUP007
p.823
サイクロトロンNIRS-930における共鳴によるビームロスを避けるためのシミュレーション研究
Simulation study to avoid the beam loss caused by resonance at cyclotron NIRS-930

○中尾 政夫,北條 悟,片桐 健,杉浦 彰則,野田 章,宮原 信幸,涌井 崇志,野田 耕司(放医研),後藤 彰(理研)
○Masao Nakao, Satoru Hojo, Ken Katagiri, Akinori Sugiura, Akira Noda, Nobuyuki Miyahara, Takashi Wakui, Koji Noda (NIRS), Akira Goto (RIKEN)
 
放医研のAVFサイクロトロンNIRS-930 (Thomson-CSF, Kb=110 MeV, Kf=90 MeV)において、今後のRI生産などの目的に必要となるビームの大強度化、高品質化に向けて、最適な運転パラメータを調査するためにSNOPプログラム*を用いてビームのシミュレーションを行っている。SNOPは3次元電場・磁場データとしてOPERA-3d**によって計算された値を利用している。また、PIC法を用いて空間電荷効果を考慮に入れた多数の粒子のシミュレーションを行うことも可能である。 AVFサイクロトロンにおいて、鉛直方向のチューンνz=0.5の共鳴条件近傍で粒子の鉛直方向の振動が増大してビームロスが起きる可能性がある。シミュレーションによって、ビームバンチ中の加速位相がずれている粒子は、加速位相の合っている粒子に比べて共鳴が起こりやすく、デフレクターのセプタム電極の上下に衝突してビームロスすることが明らかになった。ビーム強度を上げる際にバンチの位相幅も増加すると、共鳴が原因のビームロスも増える。これを避けるための磁場の作成などの方法について報告する。 * V. L. Smirnov, Physics of Particles and Nuclei 46 pp. 940-955 (2015) ** OPERA-3D, Cobham plc http://www.cobham.com/
 
13:10 - 15:10 
TUP008
p.826
不安定核炭素11イオンビームの生成とそのHIMACによる加速スキームの構築
CREATION OF 11C+ ION BEAM FOR FURTHER ACCELERATION WITH HIMAC

○野田 章,片桐 健,北條 悟,中尾 政夫,杉浦 彰則,鈴木 和年,涌井 崇志,野田 耕司(放医研),グリーザー マンフレッド(マックスプランク原子核研)
○Akira Noda, Ken Katagiri, Satoru Hojo, Masao Nakao, Akinori Sugiura, Kazutoshi Suzuki, Takashi Wakui, Koji Noda (NIRS), Manfred Grieser (MPI-K)
 
放医研ではHIMACによる重粒子線によるがん治療の治療患者数が1000人/年に近づき、国内の他の医療機関での設置も進んで重粒子線がん治療装置の小型化とそれによる普及も進展しつつある。併せて重粒子がん治療の高度化に向けて、照射位置をリアルタイムで観測するためのオープンPET の開発も進められてきた。その実用化に向けて放射性の11Cイオンビームを運動量拡がりが大きく、強度も限られているProjectile Fragment方式からTarget Fragment方式に切り替えて、ISOL(Isotope Separator On Line)スキームが追及されてきた。11Cイオンビームの生成はサイクロトロンからの陽子ビームを用いて行い、それを1価イオン源に導き、質量分析ののちチャージブリーダーで多価イオン生成を行って線形加速器での加速の後にHIMACで更なる加速を行う方式を追求している。これまでにNIRS930のC3ビームコースに垂直ビーム照射系の設置を行い、11C+イオンの生成を行い1価イオン源に導く装置の建設が進められてきた。その性能評価の遂行と並行して、こうした蓄積をベースとした下流のマスアナライザー及びチャージブリーダーの設計・製作を推進し、入射器LINACを介してのHIMACでの加速を目指したい。
 
LLRF (8月9日 コンベンションホール)
13:10 - 15:10 
TUP009
p.829
STF2加速器での低電力RF制御系の開発
Development of Low-level RF Control System for STF2 at KEK

○松本 利広,明本 光生,荒川 大,片桐 広明,チュウ ファン,三浦 孝子,道園 真一郎,矢野 喜治(高エネ研),ウィボウ バスキ シギット(総研大)
○Toshihiro Matsumoto, Mitsuo Akemoto, Dai Arakawa, Hiroaki Katagiri, Feng Qiu, Takako Miura, Shinichiro Michizono, Yoshiharu Yano (KEK), Sigit Basuki Wibowo (SOKENDAI)
 
KEKのSTF(超伝導RF試験施設)では、ILC(国際リニアコライダー)建設に向けた試験施設としてSTF2加速器の構築を進めている。このSTF2加速器では、CM1とCM2aクライオモジュールにある8台の超伝導空洞を1台のMBK(マルチビームクライストロン)で励振、加速電場の振幅・位相をベクターサムフィードバックにより制御する構成をとる。 この2016年10月から開始となる8台の空洞による大電力試験に向けて、低電力RF制御系の構築中である。その際、開発中の14台の16ビットADC、2台の16ビットDAC、FPGA (Zynq)のデジタル信号処理ボードを用いて加速空洞のフィードバック制御をする準備を進めている。 ILCのTDR(技術報告書)では、高周波系は1台のMBKで39台の空洞を励振、フィードバック制御で運転を行う。この高周波系は全長50mを超えるため、複数台のRF検出器で空洞信号を測定し、各空洞の振幅・位相データを中心となる制御器へ送り、最終的なフィードバック制御を行う構成となる。2016年10月からのSTF2の大電力試験において、複数台のデジタル信号処理ボードを用いたフィードバック制御を行うべく準備をしている。 本報告では、STF2加速器の低電力系について報告を行う。
 
13:10 - 15:10 
TUP010
p.832
SACLAとSPring-8蓄積リングの高周波基準信号の同期システム
Synchronization system between two master oscillators of SACLA and SPring-8 Storage Ring

○大島 隆,細田 直康,小林 和生,松原 伸一(高輝度光科学研究センター),前坂 比呂和(理研)
○Takashi Ohshima, Naoyasu Hosoda, Kazuo Kobayashi, Shinichi Matsubara (JASRI), Hirokazu Maesaka (RIKEN)
 
SPring-8の次期計画SPring-8-IIでは、入射ビームに低エミッタンスが要求されるため、SACLAを入射器とする予定である。この計画の準備段階として、また、消費電力抑制を目的として、XFELマシンであるSACLAを現在の蓄積リング(SR)への入射器として前倒しして使用するための準備を進めている。2つの加速器のマスターオシレータの発振周波数には入射に許される実用的な時間内に同期を取ることが可能となる適切な有理数の関係が無い為、SRから入射要求がある場合にのみ、SACLAのマスターオシレータの位相を動かしてSRと同期させる。このシステムでは、入射要求のタイミングで2つの高周波基準信号を分周した信号の位相差を検出し、SACLAのマスターオシレータにFM変調を加え、1/60秒内にビーム出射のタイミングをSRのターゲットバケットに同期させる。我々はこのシステムの原理検証装置を製作した。この装置を使ったテストでは同期タイミングのジッタは短時間の計測において8ps p-pであった。この値はSPring-8-IIでの蓄積ビームのバンチ長と同程度であり、ジッタとして許容範囲内であると考える。今後、このシステムを用いてSR入射と高いXFEL品質の維持が実現できるかどうかの確認試験などを行う予定である。
 
13:10 - 15:10 
TUP011
p.836
SuperKEKBビームコミッショニングにおけるLLRF制御システムの稼働状況
Operation Status of LLRF Control System for SuperKEKB Commissioning

○小林 鉄也,赤井 和憲,海老原 清一,小田切 淳一,可部 農志,中西 功太,西脇 みちる,吉本 伸一(高エネ研)
○Tetsuya Kobayashi, Kazunori Akai, Kiyokazu Ebihara, Jun-ichi Odagiri, Atsushi Kabe, Kota Nakanishi, Michiru Nishiwaki, Shin-ichi Yoshimoto (KEK)
 
SuperKEKBのビームコミッショニングが2016年2月から開始され、RF加速を行うと無事にビームが周回・蓄積した。その後、ビーム電流を徐々に上げながら加速器調整を順調に進め、電子・陽電子それぞれのリングの蓄積電流は600mA以上に達した。 RFシステムは両リング併せて約30のクライストロンステーションで構成され、そのうち9ステーションは近年のデジタル技術を用いて開発された新LLRF制御システムを適用している。これらの新LLRFシステムは期待通りに機能し、大きな問題はなくコミッショニングの進行に貢献している。残りの新システムではないステーションにつていは、KEKB運転時の従来システムをそのまま用いている。これら従来システムも大きな問題はなく、KEKBでの実績通りに機能している。 本稿では、コミッショニング開始から現在までに行った調整や、トラブル対処など、RF制御に関する状況を報告する。 
 
13:10 - 15:10 
TUP012
p.841
SuperKEKBにおける加速モードに起因する結合バンチ不安定性抑制ダンパーの開発
Development of a Coupled Bunch Instability Damper Caused by the Acceleration Mode for SuperKEKB

○廣澤 航輝(総研大),赤井 和憲,絵面 栄二,小林 鉄也,吉本 伸一(高エネ研)
○Kouki Hirosawa (SOKENDAI), Kazunori Akai, Eizi Ezura, Tetsuya Kobayashi, Shin-ichi Yoshimoto (KEK)
 
SuperKEKBはKEKBより大電流かつ低エミッタンスの加速器で、今年2月からビームコミッショニングが開始された。 加速空洞における加速モードに起因する結合バンチ不安定性は、低電力高周波(LLRF)制御システムに不安定性抑制のためのフィードバックシステムを組み込むことで抑制することができる。 結合バンチ不安定性は加速空洞のインピーダンスに依存しており、KEKBではデジタルフィルターを通してフィードバックをかけることで縦方向シンクロトロン振動のモード ( μ= -1 モード)を抑制するインピーダンスダンパーが用いられていた。 それに対してSuperKEKBのデザインビーム電流では、-1 モードに加えて -2 ,-3 モードの不安定性を引き起こす可能性があり、今回新たに-1 ,-2 ,-3モードの不安定性を抑制するためのインピーダンスダンパーを開発した。 本発表ではKEKBで用いられていた既存のダンパーの評価と今回新たに開発したダンパーの特性を報告する。
 
高周波加速空胴 (8月9日 コンベンションホール)
13:10 - 15:10 
TUP013
p.846
高輝度光源に向けたバンチ伸張方法の検討
Feasibility study on the bunch lengthening for high brightness synchrotron ring with sub-nm emittance

○山本 尚人,高橋 毅,坂中 章悟(KEK)
○Naoto Yamamoto, Takeshi Takahashi, Shogo Sakanaka (KEK)
 
(Hybrid) Multi bend Achromat ラティス を利用した3GeV放射光リングについてバンチ伸張方法を検討している。KEKで現在検討中の3GeVリング(KEK-LS)では約130pmradの自然エミッタンスが期待されているが、蓄積電流値が大きくなるとバンチ内ビーム散乱が深刻となり、蓄積電流値0.5Aの場合には約300pmradにまで劣化してしまう。このような影響を抑え、高電流蓄積状態でも低いエミッタンスと十分なビーム寿命を実現するため、我々は高調波空洞の導入を計画している。加速電圧にその数倍の周波数を持つ高周波電圧を加えることで、シンクロナス位相付近での電圧変化を緩和することができ、結果としてバンチ伸張効果が期待できる。しかし、バンチトレイン間に空きバケットを設けるなどして過渡的なビーム負荷が存在する場合、バケット位置に応じて空洞から与えられる高周波の状態が変化してしまい、十分なバンチ伸張効果が得られなかったりバンチ形状に歪みが生じてしまう。このため、高調波空洞の導入には過渡的ビーム負荷への対策がキーポイントとなる。 本検討ではまず、主加速空洞を500MHzかつ加速・高調波空洞を常伝導方式とした場合について、数値シミュレーションを用い過渡的ビーム負荷の影響を見積もった。
 
13:10 - 15:10 
TUP014
p.851
超伝導薄膜の特性測定
Characteristics Measurements on Sc Thin Foil

○岩下 芳久,頓宮 拓,不破 康裕(京大 化研),佐伯 学行,久保 毅幸(KEK)
○Yoshihisa Iwashita, Hiromu Tongu, Yasuhiro Fuwa (Kyoto U. ICR), Takayuki Saeki, Takayuki Kubo (KEK)
 
直流では原理的に抵抗損失のない超伝導も交流では無損失ではないが、常伝導のそれよりは圧倒的に低損失であるため高電界を必要とする加速管に用いられ始めている。高電界発生時にはそれに伴う磁場が壁面に発生し、空洞壁面を構成する超伝導素材の臨界磁場で発生電界強度が制限される。超伝導でも電流や磁場は数nm程度の表面にしか存在しないこともあり、表層をその程度の厚さの超伝導薄膜で覆うことにより、基層への空洞内高周波磁場の直接暴露を避けることが出来る。現在は、加工性の点から純金属中最も転移温度が高いニオブが空胴素材として使われているが、被覆する超伝導薄膜には基層より臨界磁場の大きい素材を使う必要があり、候補としてNbN,Nb3Snなどが考えられている。また、Nb上に絶縁層を介する方がより高電界が望めるという理論もあり、それらの成膜技術が重要である。このため、試作後の超伝導薄膜の特性測定を行う必要である。交流磁場が臨界磁場を超えると磁束が超伝導材に侵入する事を利用し、ここでは、比較的低周波の交流磁場を小型コイルにより超伝導状態の面上に印加し、コイルの励起電圧の3次高調波成分の観測から臨界磁場を測定する事を考えている。このシステムの説明を行う。
 
13:10 - 15:10 
TUP016
p.853
KEKの電子陽電子入射器に30年以上用いられてきた加速管の内面検査と高電界特性
Surface Inspection and High Gradient Performance of S-Band Accelerator Tubes used for 20-30 Years at KEK

○肥後 寿泰,矢野 喜治,峠 暢一(高エネルギー加速器研究機構),鈴木 和彦,牛本 信二(三菱電機システムサービス)
○Toshiyasu Higo, Yoshiharu Yano, Nobukazu Toge (KEK), Kazuhiko Suzuki, Shinji Ushimoto (Mitsubishi-Electric System Service)
 
KEKの電子陽電子入射器では、Sバンドの2m加速管を30年以上用いて運転を継続してきている。最近ではこれらの加速管は、電界放出電子の問題や放電頻発の問題を抱えていることが認識されてきている。現在これらの加速管の内面検査を始めて高電界特性との関連を調査し、今後の安定運転への知見を得る必要があると考えている。ある放電頻発していた加速管の内部は、製造当初の金属光沢は全くなく暗灰色を呈していた。また殆ど全ての加速管に関して、そのカプラーセルの電界均一性回復用のへこみ構造にこれまでも認識されてきた黒色の焼けのパターンがプリントされていることもわかる。更に、アイリスに顕著なスクラッチ様の傷があるもの、放電痕のあるもの、等が見うけられる。調査対象と調査方法は限られているが、本稿ではその結果を基に、これまでの入射器の運転での履歴をふまえて、加速管内部の状況と高電界特性を比較検討する。
 
13:10 - 15:10 
TUP017
p.858
ミューオン線型加速器APF方式IH-DTLデザイン
Inter-digital H-mode drift-tube linac design with alternative phase focusing for muon linac

○大谷 将士(高エネ研),長谷川 和男,林崎 規託(JAEA),岩下 芳久(京大),岩田 佳之(NIRS),北村 遼(東大),近藤 恭弘(JAEA),三部 勉(高エネ研),齊藤 直人(J-PARC),吉田 光宏(高エネ研)
○Masashi Otani (KEK IPNS), Kazuo Hasegawa, Noriyosu Hayashizaki (JAEA), Yoshihisa Iwashita (Kyoto Univ.), Yoshiyuki Iwata (NIRS), Ryo Kitamura (Tokyo Univ.), Yasuhiro Kondo (JAEA), Tsutomu Mibe (KEK), Naohito Saito (J-PARC), Mitsuhiro Yoshida (KEK)
 
We have developed an IH-DTL design with an APF scheme for a muon linac, in order to measure the g-2 and EDM of muons at the J-PARC. The IH-DTL accelerates muons from beta=v/c=0.08 to 0.28 at an operational frequency of 324 MHz. The phase array for the APF scheme is optimized with the analytical calculation of the beam dynamics. Then the IH cavity is designed based on the optimized phase array, with which the RF fields are calculated. Finally the beam dynamics in the calculated fields are evaluated with the numerical calculations. The output beam emittances are calculated as 0.315π and 0.195π mm mrad in the horizontal and vertical directions, respectively, which satisfies the experimental requirement. The detail of the design procedures and results are explained in this poster.
 
13:10 - 15:10 
TUP018
p.863
20KにおけるCバンド加速管の大電力RF試験
High-Power Test of C-band Accelerating Structure with a High-Q factor at 20 K

○飯野 晃弘(総研大),山口 誠哉,新富 孝和,肥後 寿泰,舟橋 義聖,松本 修二,道園 真一郎(高エネ研),遠藤 克己((株)トヤマ),上野 健治(三菱商事テクノス(株))
○Akihiro Iino (Sokendai), Seiya Yamaguchi, Takakazu Shintomi, Toshiyasu Higo, Yoshisato Funahashi, Shuji Matsumoto, Shinichiro Michizono (KEK), Joe Endo (TOYAMA CO.Ltd), Kenji Ueno (Mitsubishi Corporation Technos CO.Ltd)
 
現在、クライオ電子リニアックを基盤とするコンパクト空間干渉性X線(PXR)源の開発が高エネルギー加速器研究機構、株式会社トヤマ及び日本大学を中心として行われている。本加速器では装置の小型化を図り、PXF照射に使用された電子ビームのエネルギーを減速管で5MeV(加速管の入射ビームエネルギー)まで下げ、放射線量を低減するシステムが採用される。本システムを小型かつ効率的に実現するためには高いQ値を持つ加減速管が必要である。本開発では、加速管母材には残留抵抗比の高い高純度銅材(純度:6N8)を用い、かつ加速管接合には拡散接合を用いた。このように製作したCバンド加速管を20K程度の低温で運転する。本報告では、このCバンド加速管について20Kにおける低電力試験及び大電力試験の試験結果ついて報告する。
 
13:10 - 15:10 
TUP019
p.867
STF2クライオモジュールの大電力RF試験
High Power RF tests of STF2 Cryomodule

○今田 信一,浅野 峰行,柳町 太亮,山田 浩気(日本アドバンストテクノロジー),岡田 昭和(ケーバック),宍戸 寿郎,山本 康史,加古 永治(KEK)
○Shin-ichi Imada, Mineyuki Asano, Taisuke Yanagimachi, Hiroki Yamada (NAT), Terukazu Okada (K-vac), Toshio Shishido, Yasuchika Yamamoto, Eiji Kako (KEK)
 
KEK-STFにSTF-2計画として超伝導空洞8台を収納したクライオモジュールCM1及び超伝導空洞4台を収納したCM2が建設された。これら12台の超伝導空洞を内蔵するSTF2クライオモジュールについて大電力RF試験を行い、それぞれの空洞性能について到達できる最大加速電界(Eacc,max)、放射線量(x-ray)を測定した。本発表では、これらの試験結果及びたて測定における結果との性能比較について報告する。
 
13:10 - 15:10 
TUP020
p.872
STF2クライオモジュールにおけるインプットカップラーのRFコンディショニング
RF Conditioning of Input Couplers in STF2 Cyomodule

○柳町 太亮,浅野 峰行,今田 信一,山田 浩気(日本アドバンストテクノロジー),岡田 昭和(ケーバック),宍戸 寿郎,山本 康史,加古 永治(KEK)
○Taisuke Yanagimachi, Mineyuki Asano, Shin-ichi Imada, Hiroki Yamada (NAT), Terukazu Okada (K-vac), Toshio Shishido, Yasuchika Yamamoto, Eiji Kako (KEK)
 
KEK-STFにSTF-2計画として8台の9セル超伝導空洞を内蔵するクライオモジュール(CM1)と4台の9セル超伝導空洞を内蔵するクライオモジュール(CM2a)が建設され、その冷却試験および大電力RF試験が行われた。本報告では、CM1、CM2aに取り付けた12台のインプットカップラーについて、通常冷却前の室温状態で実施するRFコンディショニングの結果について述べる。
 
13:10 - 15:10 
TUP021
p.876
IHEP-03空洞の空洞性能測定
Cavity performance tests of IHEP-03 9-cell cavity

○浅野 峰行,今田 信一,柳町 太亮,山田 浩気(日本アドバンストテクノロジー),岡田 昭和(ケーバック),宍戸 寿郎,梅森 健成,加古 永治(KEK),Zhao Tongxian(IHEP-Beijing)
○Mineyuki Asano, Shin-ichi Imada, Taisuke Yanagimachi, Hiroki Yamada (NAT), Terukazu Okada (K-vac), Toshio Shishido, Kensei Umemori, Eiji Kako (KEK), Tongxian Zhao (IHEP-Beijing)
 
IHEP (Institute of High Energy Physics, Chinese academy of sciences)で製造されたTESLA-like型9セル超伝導空洞(IHEP-03)について、低温での空洞性能を確認するたて測定がKEKで行われた。IHEPでの空洞内面の検査結果において、各セルの溶接ビードに多数の欠陥が確認されたためにKEKに送る前に空洞内面のバレル研磨処理が行われた。その後KEKにおいて、内面検査、電解研磨、アニール、プリチューニングなどの測定前準備作業が一通り実施された。本発表では、主にIHEP-03空洞の内面検査とたて測定の結果について報告する。
 
13:10 - 15:10 
TUP022
p.880
cERL入射器クライオモジュールにおける空洞性能の回復
Recovery of cavity performance in cERL injector cryomodule

○山田 浩気,浅野 峰行,今田 信一,柳町 太亮(日本アドバンストテクノロジー),岡田 昭和(ケーバック),許斐 太郎,加古 永治(KEK)
○Hiroki Yamada, Mineyuki Asano, Shin-ichi Imada, Taisuke Yanagimachi (NAT), Terukazu Okada (K-vac), Taro Konomi, Eiji Kako (KEK)
 
KEKのコンパクトエネルギー回収型ライナック(cERL)において、入射器クライオモジュールに収納されている3台の2セル超伝導空洞について、長期ビーム運転中に発生したフィールドエミッションに起因するX線の急激な増加による空洞性能の劣化現象、および、大電力RFパルスエージングによる空洞性能の回復について述べる。
 
13:10 - 15:10 
TUP023
p.885
C形導波管の高周波特性
RF Property of C-Shape Waveguide

○沢村 勝(量研機構)
○Masaru Sawamura (QST)
 
C形導波管は矩形導波管を丸めることにより同軸管のような構造をしているおり、内軸と外軸が仕切板で結合しているため、内軸を効率よく冷却することができる。また遮断周波数を持つため、入出力が同軸のハイパスフィルタを容易に構成することができる。このC形導波管の遮断周波数特性や入出力のマッチングなどの高周波特性について報告する。
 
13:10 - 15:10 
TUP024
p.889
超伝導スポーク空洞のプレス成型試験
Press Forming Test of Superconducting Spoke Cavity

○沢村 勝,羽島 良一(量研機構),佐伯 学行,久保 毅幸(高エネ研/総研大),岩下 芳久,頓宮 拓,鉾之原 久雄(京大)
○Masaru Sawamura, Ryoichi Hajima (QST), Takayuki Saeki, Takayuki Kubo (KEK/SOUKENDAI), Yoshihisa Iwashita, Hiromu Tongu, Hisao Hokonohara (Kyoto University)
 
ERLとレーザーコンプトン散乱を用いた光源のための電子ビーム加速器の開発を行っている。スポーク空洞の利点を生かせば、ERL 加速器の小型化が期待できるため、LCS-γ/X線源を産業・学術分野に利用していくための小型加速器の候補として超伝導スポーク空洞の開発を進めている。高周波特性を最適化したスポーク空洞は形状が複雑であるため、プレス加工工程を含めた金型の設計・製作を行い、ハーフスポークのプレス成型試験を行った。スポーク空洞製作の現状について報告する。
 
13:10 - 15:10 
TUP025
p.893
高次モード測定によるcERL入射器超伝導空洞の設置位置誤差の評価
Estimation of Alignment Error by measuring Higher-Order-Mode of Injector Superconducting Cavity at cERL

○本田 洋介,許斐 太郎,帯名 崇,梅森 健成,阪井 寛志,加古 永治,宮島 司(高エ研)
○Yosuke Honda, Taro Konomi, Takashi Obina, Kensei Umemori, Hiroshi Sakai, Eiji Kako, Tsukasa Miyajima (KEK)
 
低エミッタンス電子銃で生成したビームを性能悪化させることなく加速し輸送することは、線形加速器型の光源において極めて重要である。このために、ビーム軌道が加速空洞の電場中心に一致するように調整するのが理想的である。cERLの入射器加速空洞は3台の2セル超伝導空洞で構成されており、それぞれの空洞には高次モード(HOM)カップラが備えられている。多数のHOMのうちダイポールモードは空洞中心に節を持つので、これを検出することでビーム位置と実際の電場中心の相対的な位置関係が評価できる。ビームの応答から、3台の加速空洞の設置状態の直線性について評価を行った。
 
13:10 - 15:10 
TUP026
p.896
ニオブ製9セル加速空洞縦型電解研磨用の空洞温調システム開発
Development of Cavity Temperature Control System for Nb 9-cell Cavity Vertical Electro-polishing

○仁井 啓介,Chouhan Vijay,井田 義明,石見 清隆,山口 隆宣(マルイ鍍金工業株式会社),早野 仁司,加藤 茂樹,文珠四郎 秀昭,佐伯 学行,沢辺 元明(高エネルギー加速器研究機構)
○Keisuke Nii, Vijay Chouhan, Yoshiaki Ida, Kiyotaka Ishimi, Takanori Yamaguchi (Marui Galvanizing Co., Ltd), Hitoshi Hayano, Shigeki Kato, Hideaki Monjushiro, Takayuki Saeki, Motoaki Sawabe (High Energy Accelerator Research Organization (KEK))
 
マルイ鍍金工業では、高エネルギー加速器研究機構(KEK)と共同で国際リニアコライダー(ILC)をはじめとする超伝導加速器向けニオブ製加速空洞の縦型電解研磨(VEP)技術と設備の開発を行っている。そしてこれまでに、ニオブ9セル加速空洞用のVEP設備を自社開発、製造しVEP実験を行ってきた。これまでの実験ではVEP中に空洞の温度が30℃以上にまで上がってしまい、研磨品質の低下を招くという問題が発生した。今回この課題を解決する為VEP中の9セル空洞を水冷するシステムを開発し、空洞温度の確認とVEP実験を行った。結果、VEP中の9セル空洞温度をニオブの電解研磨(EP)に最適な20℃近辺に保つことができた。またVEP後の内面状態を観察し、研磨品質が向上していることを確認した。
 
13:10 - 15:10 
TUP027
p.899
ニオブ製1セル加速空洞縦型電解研磨用「ニンジャ」カソードの改善と研磨均一性の向上
Improvement of “Ninja” Cathode for Nb 1-cell Cavity Vertical Electro-polishing and Progress of Polishing Uniformity

○仁井 啓介,Chouhan Vijay,井田 義明,石見 清隆,山口 隆宣(マルイ鍍金工業株式会社),早野 仁司,加藤 茂樹,文珠四郎 秀昭,佐伯 学行,沢辺 元明(高エネルギー加速器研究機構)
○Keisuke Nii, Vijay Chouhan, Yoshiaki Ida, Kiyotaka Ishimi, Takanori Yamaguchi (Marui Galvanizing Co., Ltd), Hitoshi Hayano, Shigeki Kato, Hideaki Monjushiro, Takayuki Saeki, Motoaki Sawabe (High Energy Accelerator Research Organization (KEK))
 
マルイ鍍金工業では、高エネルギー加速器研究機構(KEK)と共同でニオブ製超伝導加速空洞の縦型電解研磨(VEP)技術、設備の開発を行っている。これまでに、VEP用の独自構造カソード “i-cathode Ninja”(Ninja) の開発、作製と1セル空洞VEP実験を行ってきた。これまでの実験では、Ninjaの羽根部分の材質を金属、樹脂と変えてVEPを行ったが、均一性の高い研磨表面と研磨量の両立が出来ていなかった。今回この課題を解決する為、樹脂と金属を最適な形状にて組み合わせた羽根を持つNinjaを作製しVEP実験を行った。結果、研磨表面と研磨量の両方で高い均一性を実現する事が出来た。
 
高周波源 (8月9日 コンベンションホール)
13:10 - 15:10 
TUP028
p.903
SPring8 1GeV線型加速器の電子銃及びクライストロンモジュレータの改良
Improvement of gun and Klystron Modulator at the Spring-8 1GeV Linac

○小林 利明,安積 隆夫,鈴木 伸介,花木 博文((公財)高輝度光科学研究センター)
○Toshiaki Kobayashi, Takao Asaka, Shinsuke Suzuki, Hirohumi Hanaki (JASRI/SPring8)
 
SPring8線型加速器では電子銃モジュレータ用のサイラトロンからIGBTを用いた半導体スイッチ(25kV,2000A)を開発している。この半導体スイッチの予備試験の試験結果を発表する予定である。クライストロンモジュレータに関しては、現状の報告とクライストロンモジュレータ(13台)の安定化の一環として、L-4888C サイラトロンのキープアライブ電流を一定にするようにサイラトロンリザーバ電圧を自動調整する回路を試作、またクライストロンヒータ電源を安定化するため交流電源も試作した。それらの結果等についても報告を行う。
 
13:10 - 15:10 
TUP029
p.906
UHF大電力クライストロンの出力素子のインピーダンス整合解
Impedance-matching Solutions for Output Devices of High Power UHF Klystron

○竹内 保直(KEK加速器)
○Yasunao Takeuchi (KEK Accelerator)
 
加速器用UHF帯大電力クライストロンの出力素子として、チョーク構造を持つ同軸平板型高周波窓と、ドアノブ型同軸導波管変換器の組合せが比較的よく採用されている。これらの素子の設計初期段階では、数多く存在するインピーダンス整合解から適当な解を選択することが必要である。この論文では、1987年頃にKEKで設計された、クライストロン用のドアノブ型同軸導波管変換器と、チョーク構造を持つ同軸平板型高周波窓のそれぞれのインンピーダンス整合解を取り上げる。ドアノブ型変換器については、実際に採用された整合解の選択手順を、スミス図表を用いて説明する。チョーク型高周波窓については、採用されたインピーダンス整合解をスミス図表上のインピーダンス軌跡で表し、より一般的に、多数存在する他の整合解と比較して議論する。
 
13:10 - 15:10 
TUP030

永久磁石集束クライストロンのビームシミュレーション
Simulation of Klystron Beam Focusing by Permanent Magnet
○不破 康裕,岩下 芳久,頓宮 拓(京大化研)
○Yasuhiro Fuwa, Yoshihisa Iwashita, Hiromu Tongu (Kyoto U., ICR)
 
加速器の高周波源システムの省エネ化と高信頼化を目指して、永久磁石を用いたクライストロンビーム集束システムを開発している。異方性フェライトを用いて製作した集束システム試作機によるクライストロン出力試験の結果をシミュレーションとの比較で、評価中である。本発表では、永久磁石集束システムを用いた場合のクライストロン内部のビーム挙動を数値計算により明らかにして、より高効率な集束システムとするための改善案を提案する。
 
13:10 - 15:10 
TUP031
p.911
704MHzパルスクライストロンの開発
Development of a 704 MHz Pulsed Klystron

○浦方 弘人,菊地 里紗,手塚 勝彦,林 健一,大久保 良久(東芝電子管デバイス株式会社)
○Hiroto Urakata, Risa Kikuchi, Katsuhiko Tetsuka, Kenichi Hayashi, Yoshihisa Okubo (Toshiba Electron Tubes & Devices Co., Ltd.)
 
東芝電子管デバイス株式会社では、欧州核破砕中性子源(ESS)計画のミディアムベータセクション加速器空胴に用いられるRF源のプロトタイプ管向けに周波数704MHz、出力1.5MWのパルスクライストロンを開発した。ハイベータセクションへの対応も含め、加速器空胴への投入電力は225kW ~1.1MWが予定されていることから、本クライストロンの開発目標は出力1.5MW、1.2MW、600kWの各動作点ともに効率60%以上を満たすこととした。良好な効率を得るためには、動作点に合わせた相互作用部設計とする必要があるが、通常の設計手法では、いずれかの動作点を対象に最適化すると他の動作点での動作効率が低下する。クライストロン初号管では、複数の動作点に対応するため、動作点に応じてビームパラメータの特性を 外部から調整を行なうとともに、動作点の違いに対し動作効率に対する影響の少ない相互作用部パラメータで且つ出力空胴インピーダンスが調整可能な設計とした。動作試験の結果、各出力とも目標の効率に達していることを確認した。本報告では、このクライストロン初号管の設計と動作試験結果について述べる。
 
13:10 - 15:10 
TUP032
p.914
SPring-8蓄積リングクライストロン用90kV直流高圧電源の更新
Renewal of the 90 kV DC Power Supply for the Klystron of the SPring-8 Storage Ring

○惠郷 博文,石井 美保,大橋 裕二,小林 和生,近藤 力,佐々木 茂樹,高嶋 武雄,熊谷 教孝(高輝度光科学研究センター),福井 達(理化学研究所),勝部 貴光(スプリングエイトサービス(株)),齋藤 寛典,溝田 樹容子((株)東芝),今野 修二,山崎 長治(東芝三菱電機産業システム(株))
○Hiroyasu Ego, Miho Ishii, Yuji Ohashi, Kazuo Kobayashi, Chikara Kondo, Shigeki Sasaki, Takeo Takashima, Noritaka Kumagai (JASRI), Toru Fukui (RIKEN), Takamitsu Katsube (SES), Hironori Saito, Kiyoko Mizota (TOSHIBA), Shuji Konno, Choji Yamazaki (TMEIC)
 
SPring-8蓄積リングでは508.58MHzで共振する定在波型空胴を32台用いて16 MVビーム加速を行っている。これらの空胴の大電力高周波源として東芝製クライストロンE3732(定格出力1.2MW)を5台使用している。このクライストロンを駆動するためサイリスタ式90kV直流高圧電源を用いてきた。約20年間の大電力運転によって構成部品の寿命超過、老朽化等による動作不良が発生するようになったため、高圧電源の更新を行った。今回製作した電源はサイリスタ式ではなく12相全波整流方式で、6.6kV-VCB付受電盤、3タップ電圧切換整流変圧器、直流高圧盤、80kV変調アノード電源、ヒータ電源から構成される。受電電圧の調整と安定化に用いられる誘導電圧調整器(IVR)は、誤動作を引き起こすノイズ源となることが多いため、設置していない。運転に必要な700~900kWの電力調整と安定化は変調アノード電源とローレベルRF機器のフィードバックにより行っている。また、20年間の蓄積リングRF運転でクライストロン短絡現象は一度も発生しなかったため、短絡時の保護に用いられるクローバ回路の設置も省いた。本発表では、この高圧電源の設計、製作及び大電力出力運転の状況について報告する。
 
13:10 - 15:10 
TUP033
p.919
KEK 電子陽電子入射器における大電力高周波源の運転保守(Ⅱ)
Operation and Maintenance Activity of High-Power RF System in KEK Electron-Positron Linac(Ⅱ)

○東福 知之,今井 康雄,馬場 昌夫,熊野 宏樹,諸富 哲夫(三菱電機システムサービス(株)),荒川 大,片桐 広明,川村 真人,設楽 哲夫,竹中 たてる,中島 啓光,中尾 克巳,福田 茂樹,本間 博幸,松本 利広,松本 修二,松下 英樹,三浦 孝子,道園 真一郎,矢野 喜治,QIU Feng,明本 光生(高エネルギー加速器研究機構)
○Tomoyuki Toufuku, Yasuo Imai, Masao Baba, Hiroki Kumano, Tetsuo Morotomi (Mitsubishi Electric System & Service Co.,Ltd.), Dai Arakawa, Hiroaki Katagiri, Masato Kawamura, Tetsuo Shidara, Tateru Takenaka, Hiromitsu Nakajima, Katsumi Nakao, Shigeki Fukuda, Hiroyuki Honma, Toshihiro Matsumoto, Shuji Matsumoto, Hideki Matsushita, Takako Miura, Shinichiro Michizono, Yoshiharu Yano, Feng Qiu, Mitsuo Akemoto (KEK)
 
KEK電子陽電子入射器では、高周波源として 59 台の大電力クライストロンを使用している。 2011年より SuperKEKB へのアップグレード作業が開始され、58台の高周波源は 2つのリングへの入射で必要な24台(入射器下流部)のみ連続運転が行われ、残り34台(入射器上流部)はアップグレード作業やビームスタディの為に不定期な運転が行われてきた。 2014年頃からビームスタディの増加に伴い、入射器上流部の運転時間も増加してきたが、2016年2月の SuperKEKB 入射(Phase 1)がはじまると同時に全 58台の連続運転が開始された。 現在設置しているクライストロンの平均運転時間は約57,000時間である。2015年度はクライストロン管内放電や C-band ユニットを S-band ユニットへ変更などにより 3台の交換を行なった。 現在設置しているサイラトロンの平均運転時間は約28,000時間である。2015年度はリザーバー電流低下等により4台の交換を行なった。 本稿ではクライストロン,サイラトロンなどに関する統計及び大電力高周波源に関する不具合事例と運転保守について報告する。
 
13:10 - 15:10 
TUP034
p.923
KEKにおけるILCクライストロン用チョッパ型マルクス電源の現状
Present Status of Chopper-type Marx modulator for ILC Klystron at KEK

○中島 啓光,川村 真人,明本 光生(高エネルギー加速器研究機構),江 偉華,鈴木 隆太郎,林 拓実,佐々木 尋章(長岡技術科学大学),徳地 明,澤村 陽(パルスパワー技術研究所)
○Hiromitsu Nakajima, Masato Kawamura, Mitsuo Akemoto (KEK), Weihua Jiang, Ryutaro Suzuki, Takumi Hayashi, Hirofumi Sasaki (Nagaoka University of Technology), Akira Tokuchi, Yo Sawamura (Pulsed Power Japan Laboratory Ltd.)
 
国際リニアコライダー(ILC)では、RF源として10MWのマルチビームクライストロンが使用される予定となっており、ピーク電圧-120kV、ピーク電流140A、パルス幅1.7ms、パルス平坦度1%(p-p)、繰り返し5ppsのパルス電源が必要となる。高エネルギー加速器研究機構(KEK)では、10MWマルチビームクライストロン用の電源として、長岡技術科学大学及びパルスパワー技術研究所との共同研究でチョッパ型マルクス電源の開発を行っている。チョッパ型マルクス電源は、-120kVの出力を得るために20ユニットで構成されている。各ユニットは、チョッパ回路とマルクス回路を組み合わせた-1.6kV出力のマルクスセル4段と制御基板によって構成されており、各マルクスセルをPWM制御することで、出力電圧-6.4kV、パルス幅1.7msのフラットなパルス電圧を出力する。KEKでは、現在、昨年度納品されたチョッパ型マルクス電源の各種パラメータ調整のためにダミー抵抗を使用した試験を行っており、今後は、クライストロンを負荷とした試験も予定している。
 
13:10 - 15:10 
TUP035
p.928
ILC用MARX電源の最適化
Optimization of the MARX generator for the international Linear Collider

○鈴木 隆太郎,林 拓実,佐々木 尋章,江 偉華(長岡技術科学大学),徳地 明,澤村 陽(パルスパワー技術研究所),明本 光生,中島 啓光,川村 真人(高エネルギー加速器研究機構(KEK))
○Ryutaro Suzuki, Takumi Hayashi, Hirofumi Sasaki, Jiang Weihua (Nagaoka University of Technology), Akira Tokuchi, You Sawamura (Pulsed Power Japan Laboratory Ltd.), Mitsuo Akemoto, Hiromitsu Nakajima, Masato Kawamura (High Energy Accelerator Research Organization)
 
現在、世界最大の加速器ILC(International Linear Collider)が開発・研究されている。ILC用のマルチビームクライストロンには、-120kV(±0.5%),140A,1.65ms,5ppsという長パルスの電源が要求されている。さらには電源の高信頼性、小型化、軽量化、低コスト化が求められている。コンデンサやトランスのみでこの仕様を実現しようとすると、かなり大きなLやCが必要となってしまう。そこで半導体素子を用いたMARX回路にチョッパ回路と位相制御を組み合わせた、チョッパ型MARX電源が提案されている。 -1.6kV出力のマルクスセルを4段重畳して1ユニットとし出力-6.4kVを得る。最終的には20ユニットを重畳して目標値-120kVを達成する。前回の加速器学会では、基板1枚の回路効率を改善するために、フィルタRCの定数やスイッチング素子の最適化について発表した。その後、それら素子の最適値を決定し、20ユニットの製作を行い、試験を行っている。現在は、より実機に近い検証をするために、主回路用の高周波トランスの浮遊容量、筐体の浮遊容量などの出力波形に対する影響をシミュレーションおよび実測波形で確認している。そして、出力波形のリプルを最適にするための条件を理論・実験の両面から検証を行っている。今回はその検証結果について報告する。
 
13:10 - 15:10 
TUP036
p.932
ILC用マルクス電源の複数段ユニットにおける定電圧制御
Constant voltage control for a multi stage unit of a Marx generator for the ILC

○林 拓実,鈴木 隆太郎,佐々木 尋章,江 偉華(長岡技大),徳地 明,澤村 陽(パルスパワー技術研究所),明本 光生,中島 啓光,川村 真人(高エネルギー加速器研究機構)
○Takumi Hayashi, Ryutaro Suzuki, Hirofumi Sasaki, Jiang Weihua (NUT), Akira Tokuchi, Yo Sawamura (PPJ), Mitsuo Akemoto, Hiromitsu Nakajima, Masato Kawamura (KEK)
 
現在ILC(International Linear Collider)計画用のマルチビームクライストロン用電源開発を行っている。この電源に求められるのは、-120kV(±0.5%),140A,1.7ms,5ppsという高出力かつ長パルスの出力、さらに電源の小型化、低コスト化、高信頼性などが要求されている。我々はこれらの要求を満たす電源としてチョッパ型マルクス電源の開発を行っている。 マルクス回路は構成上高圧の電位が浮いている回路である。ここで重要となる技術的課題として、高圧側で電位が浮いている主回路への給電及び主回路の充電電圧の制御が挙げられる。そこで我々は高周波トランスを用いて絶縁を確保した。また高圧側で電圧判定をし、光ファイバーで地上側のインバータを制御することで主回路の定電圧制御を行った。本発表では単独ユニット及び複数段ユニットを重畳した場合の充電電圧の制御結果について報告する。
 
13:10 - 15:10 
TUP037
p.936
STF2加速器におけるRF電力分配系
RF Power Distribution System for STF2 at KEK

○江木 昌史,明本 光生,荒川 大,片桐 広明,竹中 たてる,中島 啓光,福田 茂樹,松下 英樹,松本 利広,三浦 孝子,道園 真一郎(KEK),石本 和也,沼田 直人,花香 宣彦,安 和彦(NAT)
○Masato Egi, Mitsuo Akemoto, Dai Arakawa, Hiroaki Katagiri, Tateru Takenaka, Hiromitsu Nakajima, Shigeki Fukuda, Hideki Matsushita, Toshihiro Matsumoto, Takako Miura, Shinichiro Michizono (KEK), Kazuya Ishimoto, Naoto Numata, Nobuhiko Hanaka, Kazuhiko Yasu (NAT)
 
STFは国際リニアコライダー(ILC)計画の実証試験を行うために、STF2加速器の建設を2013年4月から開始、CM1クライオモジュール(超伝導空洞8台)とCM2aクライオモジュール(超伝導空洞4台)をインストール、2015年10月~12月には個々の空洞コンディショニングを行った。2016年10月~11月には、加速電界30MV/m以上であった8台の空洞による大電力試験を実施、次年度以降にビーム加速試験を行う予定である。 ILCでは、クライオモジュールに可変ハイブリット、移相器、アイソレータと導波管により構成されるRF立体回路(LPDS: Local Power Distribution System)を配置、各空洞へのRF電力量やその位相をリモートで調整して供給する。STF2では、技術報告書(TDR)に準拠したLPDSを構築した。現在、LPDS周辺のインフラ整備とRF特性の確認作業が並行している。本稿ではLPDSの概要を紹介すると共にSTF2加速器のビーム運転試験に向けた準備状況について報告する。
 
粒子源 (8月9日 コンベンションホール)
13:10 - 15:10 
TUP038
p.940
J-PARCイオン源の現状
Status of the J-PARC Ion Source

○大越 清紀,池上 清,高木 昭,浅野 博之,上野 昭,柴田 崇統,南茂 今朝雄,神藤 勝啓,小栗 英知(J-PARCセンター)
○Kiyonori Ohkoshi, Kiyoshi Ikegami, Akira Takagi, Hiroyuki Asano, Akira Ueno, Takanori Shibata, Kesao Nanmo, Katsuhiro Shinto, Hidetomo Oguri (J-PARC Center)
 
J-PARCリニアックのセシウム添加高周波駆動型(RF)負水素イオン源は、2014年10月から運転を行っている。昨年、本学会で報告した良質アンテナの選別やアンテナダメージを軽減する立上げ方法に効果があり、ここ一年間はアンテナ破損によるビーム停止は発生していない。利用運転では、ピーク電流を33mAから45mAに増加させたが、特に故障もなく1,080時間の連続運転に成功している。ビーム電流値の安定度は、フィードバックシステムにより、低エネルギービーム輸送系(LEBT)にて±2%以内に維持できている。本発表では、RF負水素イオン源の最近1年間の運転実績及びトラブルの報告の他、イオン源テストスタンドの整備状況についても報告する。
 
13:10 - 15:10 
TUP039
p.944
J-PARCハドロン施設における標的監視用ヘリウムガス循環装置の構築
Construction of the helium-gas circulation system for monitoring target soundness at J-PARC Hadron Facility

○渡邉 丈晃,上利 恵三,青木 和也,家入 正治,岩崎 るり,加藤 洋二,里 嘉典,澤田 真也,高橋 俊行,高橋 仁,田中 万博,豊田 晃久(KEK),野海 博之(RCNP),萩原 雅之,広瀬 恵里菜,皆川 道文,武藤 亮太郎,森野 雄平,山野井 豊(KEK)
○Hiroaki Watanabe, Keizo Agari, Kazuya Aoki, Masaharu Ieiri, Ruri Iwasaki, Yohji Katoh, Yoshinori Sato, Shin'ya Sawada, Toshiyuki Takahashi, Hitoshi Takahashi, Kazuhiro Tanaka, Akihisa Toyoda (KEK), Hiroyuki Noumi (RCNP), Masayuki Hagiwara, Erina Hirose, Michifumi Minakawa, Ryotaro Muto, Yuhei Morino, Yutaka Yamanoi (KEK)
 
現在ハドロン実験施設では2次粒子生成標的として1次陽子ビーム強度50kWに対応した金製の標的を使用している。ビーム照射に伴い金標的中には放射線物質が蓄積することとなり、標的が破損した場合は放射性物質が放出されることとなる。そこで、標的の健全性を監視する目的で、標的を収納している気密容器中に不活性ガス(ヘリウムガス)を封入し、そのガスを循環させてガス中の放射性物質濃度を監視するシステムの構築を行った。ここでは、主にヘリウムガス循環装置の設計概要および実際の運用状況などについて報告を行う。
 
13:10 - 15:10 
TUP040

J-PARC/MLFミュオン標的のスクレーパ交換
A replacement of a scraper for muon production taeget at J-PARC/MLF
○的場 史朗,牧村 俊助,河村 成肇(KEK),田部 正人(シーケル),松澤 行洋(NAT),小林 庸男,三宅 康博,藤森 寛,池戸 豊,幸田 章宏,小嶋 健児,中村 惇平,下村 浩一郎,ストラッサ― パトリック,門野 良典(KEK)
○Shiro Matoba, Shunsuke Makimura, Naritoshi Kawamura (KEK), Masato Tabe (Seekel), Yukihiro Matsuzawa (NAT), Yasuo Kobayashi,, Yasuhiro Miyake, Hiroshi Fujimori, Yutaka Ikedo, Akihiro Kouda, Kenji Kojima, Jumpei Nakamura, Koichiro Shimomura, Strasser Patrick, Ryosuke Kadono (KEK)
 
J-PARC/MLFでは、3 GeV陽子シンクロトロンから中性子水銀標的までの間のビームライン上にミュオン生成用の回転グラファイト標的が設置されている。ミュオン標的の後方には、散乱ビームや二次粒子を受け止めビーム成形を行うためのスクレーパが設置されている。スクレーパにはビーム散乱成分を測定するためのハローモニターが設置されているが、このハローモニターのカバーがミュオン生成回転標的からの輻射熱によって加熱され、スクレーパ前面に設置された熱電対によるスクレーパ本体の温度計測が適切に行われていない問題があった。(ビームパワー300 kWで設計値35 ℃、実測値75 ℃)。そこで、2015年夏季メンテナンス期間に、スクレーパの交換作業を行った。新スクレーパではハローモニターを取り付けず、前面の熱電対もミュオン回転標的からの輻射を直接受けない構造とした。 交換作業はキャスクを用いて遠隔操作によって行われ、使用済みスクレーパの残留放射線量は表面より70mm離れた位置で1.5 Sv/hであった。交換後の新スクレーパにおけるビームパワー500 kWの運転では、熱電対による実測値は42℃と設計値と近く、適切に温度が計測されていることを確認された。現在は200 kWによる利用運転を継続しており、2014年に導入した回転標的と共に順調に稼働している。ハローモニタを取り外せばスクレーパ予備機として使用可能なので、遠隔操作で取り外す事を計画している。
 
13:10 - 15:10 
TUP041
p.949
J-PARCハドロンビームライン用回転円板型標的の開発
Development of rotating-disk target for J-PARC Hadron beamline

○岩崎 るり,上利 恵三,青木 和也,家入 正治,加藤 洋二,里 嘉典,澤田 真也,高橋 仁,田中 万博,豊田 晃久,広瀬 恵理奈,皆川 道文,武藤 亮太郎,森野 雄平,山野井 豊,渡邉 丈晃(KEK素粒子原子核研究所)
○Ruri Iwasaki, Keizo Agari, Kazuya Aoki, Masaharu Ieiri, Yohji Katoh, Yoshinori Sato, Shin'ya Sawada, Hitoshi Takahashi, Kazuhiro Tanaka, Akihisa Toyoda, Erina Hirose, Michifumi Minakawa, Ryotaro Muto, Yuhei Morino, Yutaka Yamanoi, Hiroaki Watanabe (Institute of Particle and Nuclear Studies, KEK)
 
現在、J-PARCハドロン実験施設では2次粒子生成標的として1次陽子ビーム強度100kW以上の大強度ビームに対応した回転円板型標的の開発を進めている。 これは、円板形状の標的を回転させることにより熱負荷を円周方向に分散させることで、より大強度のビームを受けられるようにするものである。 回転円板の冷却方法として、ヘリウムガスを吹き付けることによる直接冷却式を検討している。 この方法は、直接水冷式と比べると冷却能力(熱伝達率)は落ちるが、トリチウムなどの放射性物質や硝酸といった腐食性物質の発生量が少ない点で有利となる。 しかし、熱伝達率は理論的な算出は困難であるため実験による計測が必要となる。 そこで、冷却能力を評価するための実機形状を模擬した装置を構築し、データの測定を進めている。 本発表では、回転標的システムの概念設計及び回転円板における熱伝達率の測定結果について報告する。
 
13:10 - 15:10 
TUP043
p.954
普及型がん治療装置用新小型ECRイオン源開発のための基礎実験
BASIC EXPERIMENT FOR DEVELOPMENT OF NEW COMPACT ECR ION SOURCE

○髙橋 勝之,福島 恵太,鈴木 太久,佐々野 利信,白石 直浩,髙杉 亘,川島 祐洋(加速器エンジニアリング株式会社),野田 悦夫,岩田 佳之,村松 正幸,関口 雅行,北川 敦志(放射線医学総合研究所),村田 裕彦,高橋 伸明(住友重機械工業株式会社)
○Katsuyuki Takahashi, Keita Fukushima, Taku Suzuki, Toshinobu Sasano, Tadahiro Shiraishi, Wataru Takasugi, Masahiro Kawashima (AEC), Etsuo Noda, Yoshiyuki Iwata, Masayuki Muramatsu, Masayuki Sekiguchi, Atsushi Kitagawa (NIRS), Hirohiko Murata, Nobuaki Takahashi (SHI)
 
放射線医学総合研究所では、2004年から重粒子線がん治療装置の小型化・低コスト化の研究が行なわれた。現在では群馬、佐賀、神奈川の3か所において実機が製作され治療運用されている。これらの治療施設で使用されているイオン源は、装置の小型化・低コスト化のために、永久磁石だけで閉じ込め磁場を形成するECR型イオン源(Keiシリーズ)である。Keiシリーズで採用されている磁場は、既存の10 GHz ECRイオン源の実験において、C4+が多く得られた時の値となっている。今後は入射器の運用コスト削減のため、5価、6価のようなさらに多価の炭素イオンを生成可能なイオン源が求められる。6価の場合は同じ質量電荷比1/2の窒素や酸素のような他核種が混入する可能性がある。したがって、治療用として供給するのであればC5+イオン生成が現実的と考えられる。普及型を考える場合は電源や冷却水の維持などの運用コスト削減のため、永久磁石で閉じ込め磁場を形成するのが望ましい。しかしながら、永久磁石は固定磁場のためC5+が最も多く得られる磁場構造を決定する必要がある。 今回はC5+が最も多く得られる磁場構造を探すために既存の18 GHz ECRイオン源で実験を行った。実験は導入するガスをCH4とした時とCO2とした時で周波数依存性、ミラー磁場依存性、パワー依存性をそれぞれ調査した。ここでは実験結果とそれを元に検討した新規イオン源の仕様について報告する。
 
13:10 - 15:10 
TUP044
p.957
小型ECRイオン源におけるガスミキシング法による多価イオンの強度増強実験
IMPROVEMENT OF HIGHLY CHARGED ION PRODUCTION WITH GAS MIXING METHOD AT KEI3

○村松 正幸(放射線医学総合研究所),髙橋 勝之,鈴木 太久,福島 恵太(加速器エンジニアリング),高橋 伸明(住友重機),岩田 佳之,北川 敦志(放射線医学総合研究所)
○Masayuki Muramatsu (NIRS), Katsuyuki Takahashi, Taku Suzuki, Keita Fukushima (AEC), Nobuaki Takahashi (SHI), Yoshiyuki Iwata, Atsushi Kitagawa (NIRS)
 
現在、世界的に粒子線治療施設の建設が予定されている。それらの計画の中では炭素以外のイオンを加速し、研究などに用いることが計画されている。たとえば、H3+, 3He+, 11B4+のようなイオンを利用する要求がある。これらの要求を達成するために、様々なイオンの供給を行えるECRイオン源(Kei3)の開発を行なっている。Kei3は、既存の炭素線がん治療装置用の小型ECRイオン源と同様の閉じ込め磁場を採用しているため、C4+に近いイオンを生成することが可能となる。Kei3ではこれまでに、ヘリウム、炭素、窒素、酸素、ネオンイオンの生成を行ってきた。これまでに得られた最大ビーム強度は、He2+: 1950euA、C4+: 565euA、N5+: 185euA 、O6+: 99euA 、Ne7+: 13.8euAである。酸素までは要求値を満たしているが、Ne7+は要求値を満たしていない。窒素、酸素、ネオンの調整には、ガスミキシング法を使用している。ガスミキシング法は多価イオンのビーム強度増強のための手法で、目的のイオンより軽いガスを導入することによって、目的のイオンの温度を下げ閉じ込め時間を長くする効果がある。窒素、酸素ではヘリウムガスをミキシングガスとして使用している。ネオンでは、ヘリウムより酸素を使用したときに効果が大きかった。今回はこれら以外のガスを用いてネオンの多価イオンの増強を図る。
 
13:10 - 15:10 
TUP045
p.959
二成分モデルによるCsK2Sbフォトカソードの耐久性についての研究
A Study of Robustness of CsK2Sb Photo-cathode With Two Component Model

○栗木 雅夫,横田 温貴,浦野 正洋,郭 磊(広島大学先端研),根岸 健太郎(岩手大学),清宮 裕史(KEK加速器)
○Masao Kuriki, Atsutaka Yokota, Masahiro Urano, Lei Guo (AdSM, Hiroshima U. ), Kentaro Negishi (Iwate U. ), Yuji Seimiya (KEK, Accelerator Lab.)
 
CsK2Sbマルチアルカリカソードは高い量子効率、緑色励起、高い耐久性などの特長を持ち、低エミッタンス大電流、すなわち高輝度電子源として有望である。広島大学では高エネルギー加速器研究機構、量子科学技術研究開発機構、名古屋大学、分子科学研究所などと共同して、マルチアルカリカソードの生成試験、その最適化などの研究を進めてきた。その結果、1500時間を超える高い1/e寿命を確認し、その高い耐久性を確認した。一方で、ビーム引き出しにともなう耐久性については、レーザー出力が限られていたことにより、時間1/e寿命による劣化に比べて有意に大きな変化を観測することができずに正確な評価に課題を残していた。今回、大強度レーザーによるビーム引き出し試験を行い、従来の時間による寿命に加えて、ビーム引き出しによる耐久性についても評価をおこなった。カソードの量子効率が時間による1/e寿命と、引き出し電荷密度による1/e寿命の二つの成分により変化するという、二成分モデルを仮定し、解析を行った。その結果について発表する。
 
13:10 - 15:10 
TUP046
p.963
CsK2Sbフォトカソード性能とその化学状態についての研究
A Study of CsK2Sb Photo-cathode Performance and Its Chemical State

○栗木 雅夫,浦野 正洋(広島大学先端研),根岸 健太郎(岩手大学),清宮 裕史,許斐 太郎(KEK加速器)
○Masao Kuriki, Masahiro Urano (AdSM, Hiroshima U. ), Kentaro Negishi (Iwate U. ), Yuji Seimiya, Taro Konomi (KEK, Accelerator Lab. )
 
CsK2Sbマルチアルカリカソードは高い量子効率、緑色励起、高い耐久性などの特長を持ち、低エミッタンス大電流、すなわち高輝度電子源として有望である。広島大学では高エネルギー加速器研究機構、量子科学技術研究開発機構、名古屋大学、分子科学研究所などと共同して、マルチアルカリカソードの生成試験、その最適化などの研究を進めてきた。CsK2Sbマルチアルカリカソードは光電子増倍管のカソードとして実績を有し、1990年代には加速器による大電流電子ビーム生成の実績もあるが、加速器用電子源として蒸着生成のための最適条件はいまだ明らかとなっていない。本発表では、岡崎の分子研BL2Bビームラインにおいて行った、生成したCsK2Sbサンプルについて取得したUPSによるスペクトラム分析結果について、主に量子効率と、化学状態についての関係について報告する。
 
13:10 - 15:10 
TUP047
p.968
NEA-GaN系スピン偏極電子源の実現可能性の追求
Search for feasibility of the NEA-GaN type spin polarized electron source

○宮内 智寛(名大院工),山本 尚人,金 秀光(KEK),真野 篤志,保坂 将人,持箸 晃,高嶋 圭史(名大SRセンター),加藤 政博(UVSOR)
○Tomohiro Miyauchi (Graduate School of Engineering, Nagoya University), Naoto Yamamoto, Xiuguang Jin (High Energy Accelerator Research Organization, KEK), Atsushi Mano, Masahito Hosaka, Akira Mochihashi, Yoshifumi Takashima (Synchrotron Radiation Research Center, Nagoya University), Masahiro Katoh (UVSOR Facility, Institute for Molecular Science)
 
我々は、次世代加速器への応用を目指して、フォトカソードを用いたスピン偏極電子源の開発を行っている。スピン偏極電子源の開発では、90%以上の高い偏極度を維持しつつ量子効率を向上させることが目標の一つである。 スピン偏極度と量子効率の両立には、超格子層の膜厚を増加させる手段は非常に有用である。近年、歪み補償型超格子構造を持ったGaAs系半導体を用いることで従来の数倍の厚さの活性層を持つ電子源の作製が可能となり、スピン偏極度92%・量子効率1.6%を同一のサンプルで達成している。 しかし同時に、我々の行った実験データの解析では、GaAs系歪み補償超格子構造の電子源における、スピン偏極度と量子効率のこれ以上の向上は理論的に困難であることが示唆されている。 そこで我々はGaN系半導体を用いた電子源の開発に着手した。立方晶系GaNは、GaAsの物性値と比較して、従来よりも高い値でスピン偏極度と量子効率を両立できることが見込まれる。GaN系フォトカソードに関する研究は前例が乏しいため、本研究では物性値や過去の解析結果などを参考にその実現可能性について考察している。また、立方晶系GaNは入手が困難である為、本研究では入手が容易な六方晶系GaNの電子源サンプルを用いて実験的にもその実現可能性を追求している。 本発表ではGaN系スピン偏極電子源の実現可能性について述べると同時に、六方晶系GaNの電子源サンプルの実験データについても報告する。
 
13:10 - 15:10 
TUP048
p.973
背面照射における透過光型スピン偏極電子源のパルス応答性測定(Ⅱ)
Measurement of pulse response with transmission-type spin-polarized photocathodes by backside-radiation (Ⅱ)

○山口 健太(名大院工),山本 尚人,金 秀光(KEK),真野 篤志,保坂 将人,持箸 晃,高嶋 圭史(名大SRセンター),加藤 政博(UVSOR)
○Kenta Yamaguchi (Graduate School of Engineering, Nagoya University), Naoto Yamamoto, Xiuguang Jin (High Energy Accelerator Research Organization KEK), Atsushi Mano, Masahito Hosaka, Akira Mochihashi, Yoshifumi Takashima (Synchrotron Radiation Research Center, Nagoya University), Masahiro Katoh (UVSOR, Institute for Molecular Science)
 
NEA-GaAs電子源はⅢ-Ⅴ族半導体を利用した光励起偏極機構と負の電子親和性表面による電子放出機構を備えたフォトカソードである。我々は近年、透過光型のNEA-GaAs電子源を開発し、電子源背面からの励起光照射による電子ビーム取り出しを可能とした。励起光の背面照射はレーザーポインティングの不安定性によるエミッタンス劣化抑制、電子ビームと励起光用光学系の干渉抑制など様々な利点を有し、低エミッタンス電子ビームの生成を可能にしている。本電子源は現在、92%のスピン偏極度と1.6%の量子効率を実現し、高輝度な電子ビーム生成が可能となっている。 NEA-GaAs電子源は上記の特徴を利用し、SPLEEMをはじめとする表面電子顕微鏡や次世代の素粒子実験施設での応用が期待されている。これらの応用に向け、電子源開発の次なる段階として透過光型電子源のパルス応答性を評価し、ピコ秒スケールのバンチ長を有する電子ビームの実現可能性を確かめる必要がある。そこで我々は透過光型電子源に特化したパルス応答性測定システムの開発を行い、応答性劣化の原因と考えられる電子ビームテール構造の定量化を目指している。 本研究では現在、背面照射型20kV電子銃とRF偏向空洞を用いた測定システムの開発と並行して、様々な条件(量子効率、電子源の膜厚など)における電子ビームのパルス応答性を測定している。本発表では構築した測定装置の概要を述べ、その計測結果について報告する。
 
13:10 - 15:10 
TUP049
p.978
レーザーイオン源用静電アナライザー電極の製作
Design of electrostatic analyzer electrodes for laser ion source

○山田 圭介,柏木 啓次(量研機構 高崎)
○Keisuke Yamada, Hirotsugu Kashiwagi (QST Takasaki)
 
量研機構TIARAイオン注入装置は、新機能材料創製及び半導体や光学素子の開発に使用されており、様々なイオン種の高強度イオンビームが求められる。現状では、フリーマン型イオン源を用いているが、金属や希土類元素の一部等の高融点元素は、高い蒸気圧を得ることが困難で実験に必要なビーム電流量を得ることができていない。 一方、レーザーイオン源はレーザーを固体ターゲットに集光照射することによって、あらゆる固体元素の高強度イオンビーム生成が可能である。そこで、我々はイオン注入装置用の新たなイオン源として、様々な元素の1価、2価の低価数ビームを発生するレーザーイオン源の開発を行っている。 本開発はレーザーイオン源、生成イオン電流を計測するファラデーカップ、及び価数分布を測定する静電アナライザーで構成されるテストベンチを用いて行っている。価数分布測定はプラズマを静電アナライザーに導き、電極間の電場によってプラズマ中のイオンのみを下流に通すことで行われるが、温度が低く低速なイオンの分析には既設の高温・高速プラズマ分析用の電極(軌道半径 150mm)ではプラズマからイオンのみを分離するための十分な電場が印加できない。そこで、既設チェンバーに設置可能かつ印加電圧を高くするため、軌道半径を小さくした静電アナライザー電極(軌道半径 50mm)の設計・製作を行った。本報告では、静電アナライザーの設計及び性能試験結果について報告する。
 
13:10 - 15:10 
TUP050
p.981
フラーレン負イオン源の開発
Development of a negative fullerene ion source

○山田 圭介,千葉 敦也,横山 彰人,鳴海 一雅,齋藤 勇一(量研機構 高崎)
○Keisuke Yamada, Atsuya Chiba, Akihito Yokoyama, Kazumasa Narumi, Yuichi Saitoh (QST Takasaki)
 
量研機構TIARAタンデム加速器ではMeV級エネルギーのフラーレン(C60)イオンの高強度化のために、負イオン源の開発を行っている。 従来、C60負イオンの生成は既存のセシウムスパッタイオン源(SNICSⅡ)で行われてきたが、得られるビーム強度は、平均50pA程度と低いことに加え時間と共に減少するという問題があった。近年では、SNICSⅡのスパッタロッドを小型オーブンロッドに置き換えた、電子付着方式による負イオン生成方を開発し、従来の1,000倍のビーム強度を得ることに成功している。 我々は更なるビーム強度増大及びビーム安定度向上を目的として、電子付着方式の専用イオン源の開発を進めている。これまでに、負イオン生成試験用のイオン源の製作を行った。本イオン源はイオン生成チェンバー、試料昇華用オーブン及び電子供給源によって構成される。また、2種類の電子供給源を用意し、最適な電子エネルギーや供給量等の探索を可能とした。本イオン源を、質量電磁石を備えたテストベンチに設置し、負イオン生成試験を行った。本発表では、製作したイオン源の構造及びC60負イオン生成試験の結果について報告する。
 
レーザー (8月9日 コンベンションホール)
13:10 - 15:10 
TUP051
p.983
レーザー荷電変換入射実現に向けた高出力レーザー蓄積リング
Laser storage ring with high power for realization of laser stripping injection

○原田 寛之,サハ プラナブ クマル,加藤 新一,金正 倫計(J-PARC, 原子力機構),山根 功,入江 吉郎(高エネ研)
○Hiroyuki Harada, Pranab Kumar Saha, Shinichi Kato, Michikazu Kinsho (J-PARC, JAEA), Isao Yamane, Yoshiro Irie (KEK)
 
大強度陽子加速器では、線形加速器で加速された負水素イオンの2つの電子を円形加速器の入射点に設置された荷電変換用炭素膜にて剥ぎ取り、陽子へと変換しながら多周回にわたり入射することで、大強度陽子ビームを形成している。この入射手法は、大強度の陽子ビームを生成できる反面、周回する陽子ビームが膜への衝突を繰り返すことで、ビーム自身が散乱され制御不能なビーム損失が原理的に発生する。加えて、大強度出力ではビームの衝突時の熱や衝撃による膜の破壊が生じる。大強度陽子ビームの出力や運転効率は、空間電荷効果やビーム不安定性による主要なビーム損失以外にもこのビーム損失による残留線量や膜の寿命によっても制限される。そのため、さらなる大強度出力には炭素膜を用いた荷電変換入射に代わる新たな入射手法が必須となる。J-PARC 3GeVシンクロトロンでの設計出力を超える大強度化に向けて、レーザーにて電子剥離を行う「レーザー荷電変換入射」を新たに考案し研究開発を進めている。入射パルス長0.5msに324MHzで入射されるビームへのレーザー照射には既存のレーザーの2桁以上の出力が必要となる。この大きな課題を克服すべく、レーザーを再利用する形で連続的にビームへの照射を可能とする「高出力レーザー蓄積リング」の開発を目指している。本発表では、レーザー荷電変換入射の概要を紹介し、開発を行う高出力レーザー蓄積リングを説明する。
 
13:10 - 15:10 
TUP052
p.987
J-PARC 3MeVリニアックにおけるレーザ荷電変換試験の結果(速報)
Preliminary Results of the Laser Charge Exchange Test using the 3-MeV Linac in J-PARC

○武井 早憲,平野 耕一郎,堤 和昌,千代 悦司,三浦 昭彦,近藤 恭弘,森下 卓俊,小栗 英知,明午 伸一郎(原子力機構、J-PARCセンター)
○Hayanori Takei, Koichiro Hirano, Kazuyoshi Tsutsumi, Etsuji Chishiro, Akihiko Miura, Yasuhiro Kondo, Takatoshi Morishita, Hidetomo Oguri, Shin-ichiro Meigo (J-PARC/JAEA)
 
日本原子力研究開発機構では、J-PARCリニアックによって400 MeVに加速された250 kWの陽子(負水素イオン)ビームを用いて、加速器駆動核変換システム(ADS)による長寿命放射性核種の核変換技術に関する基礎的な実験を行うために、核変換実験施設の建設を計画している。施設は、核燃料を用いて原子炉物理の基礎実験を行う臨界実験装置と陽子ビーム導入機構を設置した核変換物理実験施設と、陽子ビームによる材料照射など行うADSターゲット試験施設の2施設から構成されている。核変換物理実験施設では臨界集合体の最高熱出力(500 W)に対応する最大10 W程度の水素イオンビームが必要になるため、負水素イオンビーム(250 kW)にYAGレーザ光(波長1,064nm)を照射し、短パルスビームを取り出すレーザ荷電変換を導入する予定である。レーザ荷電変換技術の導入にあたり、荷電変換された水素イオンビームの強度やその安定性を評価することは、臨界集合体の熱出力を一定に保つために必要不可欠である。そこで、新たに構築した3MeVリニアックを用いて、水素イオンビーム強度などを測定するレーザ荷電変換試験を計画している。3MeVリニアック出射部の偏向電磁石内にレーザ衝突点を設け、負水素イオンビームにYAGレーザ光を照射し、荷電変換により小電流ビームを取り出す。本報告では、レーザ荷電変換試験の概要及びその測定結果について説明する。
 
13:10 - 15:10 
TUP053
p.992
非相対論的エネルギー領域でのレーザー駆動誘電体加速
Laser-driven dialectic accelerator for non-relativistic electrons

○小山 和義(高エネ研、東大工),Chen Zhaofu,岡元 勇人,上坂 充(東大工),吉田 光宏(高エネ研)
○Kazuyoshi Koyama (KEK, U.Tokyo), Zhaofu Chen, Hayato Okamoto, Mitsuru Uesaka (U.Tokyo), Mitsuhiro Yoshida (KEK)
 
レーザー駆動誘電体加速器は非相対論的電子を加速する場合、加速電界と電子の速度の同期条件を満たすために、加速電界には誘電体構造の空間周波数の基本波の波長を短くするか高次高調波成分を用いる。そのために、平均加速勾配は相対論的電子に対する加速勾配の1/100~1/1000にしかならない。我々は、入射電子のエネルギー、レーザー入射配位、格子定数の違いによる加速勾配の変化を、FDTDコード(Meep)を使って調べて非相対論的電子の加速にとって最適な条件を探るとともに実証実験の準備を進めている。また、レーザーの磁界成分による電子の軌道の振動とドリフトをCSTコードによって計算した。非対称誘電体構造(片側だけの透過型回折格子)の場合に最大約1mradの変位が認められる。詳細は本講演会の別の講演(Chen氏)。 石英を用いて試作した回折格子のSEM像及びAFM像からは、材料の構造による精度の違いが認められ、ガラス構造の場合に良好な精度での加工が可能であることがわかった。
 
13:10 - 15:10 
TUP054
p.995
SuperKEKB入射器におけるRF電子銃用レーザー安定性と出力エネルギーの高性能化
Improvements of Stable and High Output Energy Laser System for RF-Gun at SuperKEKB Injector

○張 叡,周 翔宇,夏井 拓也,吉田 光宏,小川 雄二郎(高エ研)
○Rui Zhang, Xiangyu Zhou, Takuya Natsui, Mitsuhiro Yoshida, Yujiro Ogawa (KEK)
 
In order to achieve high charge and low emittance electron beam as well as positron beam in SuperKEKB, we have been making improvements in thin disk laser part for RF-gun. By use of gold tin soldering, Yb:YAG thin disk and copper plate composite is available to realize efficient removal of waste heat. More than 3 nC electron charge has been generated successfully under 5 Hz laser operation. For final aim 50 Hz laser operation, further improvements should be taken for controlling thermomechanical distortions in thin disk laser part. Heat sink with high quality has been adopted and investigated in place of the former copper plate. By soldering the Yb:YAG thin disk on the heat sink directly, more excellent thermal management can be achieved as to reduce thermal lens effect. Besides, residual stress introduced by soldering becomes weaker than that of former design. In addition, laser operation at low temperature has been investigated by use of the new soldering composite. The design with high gain which is realized by a small size vacuum chamber possesses flexibility for pump arrangement and seed laser injection.
 
13:10 - 15:10 
TUP055
p.1000
オートコリレーションによるピコ秒光陰極励起用UVレーザのパルス長測定
Pulse Duration Measurement of Pico-second UV Photocathode Driving Laser by Autocorrelation Technique

○全 炳俊,中嶋 隆,紀井 俊輝,増田 開,大垣 英明(京大エネ研)
○Heishun Zen, Takashi Nakajima, Toshiteru Kii, Kai Masuda, Hideaki Ohgaki (IAE, Kyoto Univ.)
 
近年、光陰極高周波電子銃は高輝度電子ビーム発生に広く用いられるようになってきており、京都大学エネルギー理工学研究所でも既存4.5空胴高周波電子銃中のLaB6陰極にUVレーザ(波長266 nm)を照射し、光電子放出により電子を供給する事で、中赤外自由電子レーザの高性能化を達成している。また、1.6空胴高周波電子銃中の銅陰極にUVレーザを照射し、発生させた電子ビームを用いて、小型THz光源の開発を進めている。光陰極励起に使用されるUVレーザのパルス長は発生した電子ビームの特性を大きく左右する重要なパラメータである。従来、ストリークカメラがその測定に用いられてきたが、非常に高価であり、扱いも容易でない事から、今回、サファイア基板中での非線形吸収を用いたオートコリレータを構築し、パルス長の測定を行った。測定されたパルス長は約18 ps-FWHMであり、モードロックNd:YVO4レーザ発振器の仕様値である7.5 ps-FWHMに比べて倍以上長い値であった。今後、パルス長伸長の理由についての詳細な測定・検討を行い、これも合わせて報告する予定である。
 
電子加速器 (8月9日 コンベンションホール)
13:10 - 15:10 
TUP056
p.1004
Test Experiment of Three dimensional spiral injection scheme for g - 2/EDM experiment
○Muhammad Abdul Rehman (Sokendai), Hiromi Iinuma, Satoshi Ohsawa, Hisayoshi Nakayama, Hiromi Hisamatsu (KEK)
 
The 3-D spiral injection scheme is a brand-new idea and currently under development at KEK Tsukuba campus as a one of important test experiments of the muon g-2/EDM experiment at J-PARC. Establishment and demonstration of feasibility will be a significant achievement in accelerator technology. The test experiment is utilizing 116keV DC electron gun and 100 Gauss solenoidal magnet for the storage of electron beam in 0.115m radius orbit. We have performed the simulation of the storage solenoidal magnet in OPERA and CST-EM, the field measurement results are in acceptable agreement with experimental values. Fluorescence screen monitors are used to perceive electron beam. We have successfully transported DC electron beam from a gun to one step behind from the storage chamber through a dipole magnet. We are now under trial operation for a stable storage. We will also present a visible-light 3-D trajectory by ionized nitrogen gas in the storage chamber. Future prospects towards the g-2/EDM experiment at J-PARC are also discussed.
 
13:10 - 15:10 
TUP057
p.1008
光ファイバビームロスモニタとワイヤスキャナ-2
OPTICAL FIBER BEAM LOSS MONITOR AND WIRE SCANNER-2

○矢野 喜治,福田 茂樹,道園 真一郎,明本 光生(高エ研)
○Yoshiharu Yano, Shigeki Fukuda, Shinichiro Michizono, Mitsuo Akemoto (KEK)
 
高エネルギー加速器研究機構ではSuperKEKBの運転も始まり電子陽電子入射器にはこれまでより詳細かつ安定なビームを供給する事が要求されている。入射器ではそれらを実現するために様々な準備作業を進めている。ビーム源である電子銃はHER用にエミッタンスの小さなビームを作るRF電子銃、LER用には大強度の安定なビームを作る熱電子銃を採用する事になった。ビームラインの1階をRF電子銃のライン、2階を熱電子銃のラインとし2階建て構造にし下流で合成する方式を取った。新しいビームラインを構築し最初にビームを通す時、ビームラインの各パラメーターが決まるまではビームダクトの何処でビームロスが発生し、何処までビームが来ているかを知ることは非常に重要である。電子銃直後のAセクタに光ファイバを布設し立上げ時のビームロスの様子を観測した。またアーク部及び陽電子ターゲットの前後である1セクタと2セクタにビームロスモニタを布設しビームロスを観測した。また、既設のワイヤスキャナ用センサーを光電子増倍管(PMT)と光ファイバを入れ替えるためにシミュレーションと最適な設置場所の調査を行った。ここでは昨年に続き光ファイバを使ったビームロスモニタとワイヤスキャナについて報告する。
 
13:10 - 15:10 
TUP058
p.1012
干渉計と光伝導アンテナを用いたフェムト秒電子ビーム計測
Measurement of femtosecond electron beam using interferometer and photoconductive antenna

○菅 晃一,楊 金峰,近藤 孝文,神戸 正雄,野澤 一太,吉田 陽一(阪大産研)
○Koichi Kan, Jinfeng Yang, Takafumi Kondoh, Masao Gohdo, Itta Nozawa, Yoichi Yoshida (ISIR, Osaka Univ.)
 
阪大産研では、レーザーフォトカソード RF 電子銃ライナックを導入し、高時間分解能パルスラジオリシスの開発を行っている。これまでに、パルスラジオリシスの時間分解能を向上するために、加速管による電子ビームエネルギー変調・アクロマティックアークによる磁気パルス圧縮を行い、フェムト秒電子ビームを発生してきた。そこで、本研究では、電子ビームのコヒーレント遷移放射を、それぞれ、マイケルソン干渉計により周波数領域測定を、光伝導アンテナにより時間領域測定の測定を行う。当日は、それぞれの手法による測定結果を報告する予定である。
 
13:10 - 15:10 
TUP059
p.1016
フォトカソードRF電子銃ライナックを用いた超短パルス電子バンチ発生の研究
Study of the ultra-short electron bunch generation by a laser photo-cathode RF gun linac

○野澤 一太,菅 晃一,楊 金峰,近藤 孝文,神戸 正雄,吉田 陽一(阪大産研)
○Itta Nozawa, Koichi Kan, Jinfeng Yang, Takafumi Kondoh, Masao Gohdo, Yoichi Yoshida (ISIR)
 
阪大産研では、レーザーフォトカソードRF電子銃ライナックを用いた、超短パルス電子ビーム発生・計測の研究を行っている。本研究では、ビームトラッキングシミュレーションを用いて短パルス電子ビーム発生条件の検討を行った。当日は、シミュレーション結果と電子ビーム発生・計測実験の現状について詳細を報告する。
 
13:10 - 15:10 
TUP060
p.1019
パルスマグネット架台のモーター駆動制御
Motor-driven Control of Support Structure for Pulse Magnets

○牛本 信二(三菱電機システムサービス(株)),榎本 嘉範,肥後 寿泰(高エネルギー加速器研究機構)
○Shinji Ushimoto (Mitsubishi Electric System & Service Co. Ltd.), Yoshinori Enomoto, Toshiyasu Higo (KEK)
 
KEKB 入射器は、異なるエネルギーの電子又は陽電子を要求する4つのリングのどれか一つに、20ms 毎に選別して供給する必要がある。特に SuperKEKB に向けた高度化に於いて、ビームをパルス毎に最適な条件で輸送するため、ダンピングリングより下流側では主にパルスマグネットに置き換える準備を進めている。これに求められる低エミッタンスビームの輸送には、磁石に σ~0.1mm 級の高いアライメント精度が要求されている。 置き換え場所にあるこれまで使用してきた架台の多くは、上下流の加速ユニット架台間に橋掛けした状態で設置されており、両側の架台と機械的に連結することでアライメントを実現していた。この方式では磁石架台の独立調整が不可であり、要求される高精度なアライメントの実現・維持が困難であった。 新たに開発をおこなっている架台では、パルスマグネット(四重極電磁石 QD/QF、ステアリング用偏向電磁石 X/Y) 4台を同一架台上で精密にアライメントして固定する。その架台をビームライン上で微調整し、高精度のアライメントを実現する。 架台の支持および調整機構にはスクリュージャッキを使用した。このジャッキはウォームギアで駆動され、重量物でも低トルクで動かすことができる。またモーターを取り付けることで、遠隔制御によるアクティブアライメントが実現できる。 本報告ではパルスマグネット架台の位置制御機構の詳細と動作試験結果について紹介する。
 
13:10 - 15:10 
TUP061
p.1023
テーブルトップ電子加速器に用いるCバンド加速空洞の開発
DEVELOPMENT OF A C-BAND TABLE-TOP ACCELERATOR

○豊川 弘之,藤原 健(産総研),金田 健一,中西 康介,田辺 英二(株式会社エーイーティー),山本 昌志(株式会社アキュセラ),井上 彬,夏井 拓也,吉田 光宏(KEK 総研大)
○Hiroyuki Toyokawa, Takeshi Fujiwara (AIST), Kenichi Kaneta, Kousuke Nakanishi, Eiji Tanabe (AET Inc.), Masashi Yamamoto (Accuthera Inc.), Akira Inoue, Takuya Natsui, Mitsuhiro Yoshida (KEK-Sokendai)
 
小型・軽量なテーブルトップCバンド電子加速器を開発したので報告する。近年、道路橋やトンネルなどの社会インフラの劣化診断を迅速に行うための先端技術開発の必要性が高まっている。我々は900 keV小型電子加速器ベースのX線源を開発し、後方散乱X線を用いた非破壊検査手法について研究を開始したところである。本手法はX線の利点である高精細画像と、電磁波レーダーの利点である片側アクセシビリティの簡便性を併せ持ち、現場で簡便にコンクリート内部を可視化可能であると期待されている。 本稿では、最大ピーク出力600 kWのCバンド帯域(5.3 GHz)マグネトロンを用いた小型電子加速器に用いる加速管の設計・製作、および高周波特性を評価した結果について報告する。また、実際に電子加速を行い、発生したX線を用いた画像取得実験を行った結果についても報告する。
 
13:10 - 15:10 
TUP062
p.1027
コンパクトERLにおけるバンチ圧縮のオプティクス
Beam optics for bunch compression at the compact ERL

○島田 美帆,宮島 司,中村 典雄,本田 洋介,上田 明,帯名 崇,高井 良太,原田 健太郎(高エネ研)
○Miho Shimada, Tsukasa Miyajima, Norio Nakamura, Yosuke Honda, Akira Ueda, Takashi Obina, Ryota Takai, Kentaro Harada (KEK)
 
バンチ圧縮はEUV FELには欠かせないものであり、ビームスタディが必要とされている。そこで、ほぼ相似のレイアウトであるコンパクトERLに新しく6極電磁石をインストールし、バンチ圧縮を実施した。主加速空洞をオフクレストで加速し、進行方向に勾配を与え、R56がnon zeroであるアークを通してバンチ長を調整する。CTRのテラヘルツ検出器をアークの出口に設置し、強度が最大になるようにオプティクスを最適化する。いくつかの加速位相でそれぞれR56や6極電磁石を調整し、分散関数の測定を行った。そして、加速位相8度のケースでエネルギー回収を実施し、最大50uAで運転を行った。このビームスタディの結果をシミュレーションと比較した。シミュレーションはできる限り実際の運転パラメータ・手順を再現し、電子銃からダンプまでStart-to-end simulationを行った。
 
13:10 - 15:10 
TUP063

コンパクトERLにおけるエミッタンスおよびオプティクス測定
Emittance and optics measurements at the compact ERL commissioning
○島田 美帆,高井 良太,宮島 司,中村 典雄,本田 洋介,帯名 崇,上田 明(高エネ研)
○Miho Shimada, Ryota Takai, Tsukasa Miyajima, Norio Nakamura, Yosuke Honda, Takashi Obina, Akira Ueda (KEK)
 
コンパクトERLの大きな課題のひとつが低エミッタンスかつ大電流のビームの輸送であり、エミッタンスおよびオプティクスの評価は重要である。2016年2月から3月にかけて、様々な状態でビームスタディを行ってきた。空間電荷効果によるエミッタンス増加を抑えるためにオプティクスを最適化する他、1mAの大電流運転を達成するため、コリメータで効率よくハローを落とすためのオプティクスでビーム輸送を行った。さらに490kV電子銃電圧でのビーム運転も実施している。これらのビームを評価するため、Q scan methodによるエミッタンス測定を行った。また、並行して実施した周回部のオプティクス測定についても合わせて報告する。
 
13:10 - 15:10 
TUP064

cERLコミッショニング運転における軌道調整とビーム光学関数調整
Orbit correction and optics tuning in cERL commissioning
○宮島 司,島田 美帆,本田 洋介,高井 良太,帯名 崇(高エネ研),永井 良治(量研機構),路川 徹也(東日技研)
○Tsukasa Miyajima, Miho Shimada, Yosuke Honda, Ryota Takai, Takashi Obina (KEK), Ryoji Nagai (QST), Tetsuya Michikawa (e-JAPAN IT Co., Ltd.)
 
cERL (compact ERL)はエネルギー回収型線形加速器(ERL)の実証機として、2013年から運転を開始し、段階的に平均ビーム電流を増加(2013年1 μA、2014年10 μA 、2015年100 μA )させるとともに、低エミッタンスを実証するための調整を行ってきた。2016年2月から3月の運転期間は、最大ビーム電流を1 mAに引き上げ、次の平均ビーム電流10 mA運転を見据えた低ビーム損失の輸送条件を実証すること、エミッタンス増大を抑制すること、バンチ圧縮を実証することを主要な目的としてビーム運転を行った。これらを実現するために、今回のビーム運転では、低エネルギー区間の軌道調整法の改良、入射器超伝導空洞内の軌道調整の改良、BPMを用いた軌道補正の導入、ビーム光学関数のマッチング箇所の追加、水平・垂直方向分散関数の補正を新たに導入した。これらの結果、以前より高い精度で設計条件に近い輸送条件を確立することができ、平均10 mA運転可能な状態までビーム損失を低減することができた。また、空間電荷効果が顕著に現れてくるピーク電流10 mA相当の運転(バンチ電荷7.7 pC)においても、以前の運転条件よりもエミッタンスを低減することができた。本発表では、新たに導入したビーム調整方法とその結果について報告する。
 
13:10 - 15:10 
TUP065
p.1031
KEK小型電子加速器におけるマルチバンチ電子ビーム生成の改善
Improvement of multi bunch electron beam generation at Laser Undulator Compact X-ray source(LUCX)

○福田 将史,荒木 栄,浦川 順治,照沼 信浩,本田 洋介(高エ研),坂上 和之(早大高等研),鷲尾 方一(早大理工研)
○Masafumi Fukuda, Sakae Araki, Junji Urakawa, Nobuhiro Terunuma, Yosuke Honda (KEK), Kazuyuki Sakaue (WIAS, Waseda Univ.), Masakazu Washio (RISE, Waseda Univ.)
 
KEK小型電子加速器(LUCX)では、光・量子融合連携研究開発プログラムの「小型高輝度X線源イメージング基盤技術開発」において、レーザーコンプトン散乱を利用した小型X線源の開発をしており、マルチバンチ電子ビーム生成、レーザー共振器の開発、X線生成およびX線イメージング試験を行っている。ここでは、電子ビームをフォトカソードRF電子銃で生成後、加速管で最大30MeVまで加速し、光共振器に蓄積したレーザーパルスと衝突させ、10~15keVのX線を生成する。 現在、24MeV, 1000bunches/pulse, 600nC(0.6nC/bunch)の電子ビームでレーザーコンプトン散乱によるX線生成の調整を行っているが、パルス内でのX線生成の不均一とパルス内でのバンチ電荷の不均一という問題がある。前者は、Gun出口でのバンチ毎のエネルギー差による集束力の差が原因で、パルス内で衝突点でのビームサイズが違っているためと推測している。マルチバンチ電子ビームを加速する際のビームローディングは、RFを加速空洞に満たす過渡期に電子ビームを通過させる⊿T法と入射RFパルスの振幅変調で補正している。この振幅変調をGunにも適用し衝突状態の改善を図っている。後者は、電子ビーム生成用のレーザーに起因しており、レーザー増幅方法の最適化による調整を続けている。この発表では、このマルチバンチビーム生成の改善やX線実験の現状について報告する。
 
光源加速器 (8月9日 コンベンションホール)
13:10 - 15:10 
TUP066
p.1035
極短周期アンジュレータの開発III
Development of very short period undulators III

○山本 樹(高エネ機構・放射光)
○Shigeru Yamamoto (KEK-PF)
 
低いエネルギーの光源加速器において,低次のアンジュレータ放射を用いつつ,より高いエネルギーの放射の実用化を目指して,“極短周期” アンジュレータのための研究開発を行っている。 本研究では周期長4mmを目標に設定し,幅20mm x 厚さ2mm x 長さ100mm(25周期)の板状のNdFeB製板に,周期的交番磁気回路を高精度・高強度で書き込む方式の開発を行ってきた。着磁後に対向させた一対の磁石板の間の隙間(磁石ギャップ)にアンジュレータ磁場を生成することができる。現在1.6mmの狭小ギャップに約4kGの極短周期磁場(周期長4mm)を生成することが可能になった。実測磁場に基づく評価は,この磁場からの放射光が優れた輝度特性を持つことを示している。 周期長4mmについては磁石素材の改善によって,より長尺の152mmの板状磁石(38周期: 幅,厚さは同上)の利用が可能になった。しかし,板状素材の製造工程上の制約のために,この長さを大幅に超える素材の製造は困難である。したがって,数100mmを超える長尺のアンジュレータ磁場を生成するためには,複数の磁石板を長手方向に接続する方法の開発が重要な課題になる。このために行った着磁方式・着磁ヘッドの最適化と,得られた成果について報告する。 さらに、周期長2mm程度の短周期を目指した着磁法開発,現在計画している,実在電子ビームを用いた(放射および極短周期アンジュレータの)評価実験の可能性について触れたい。
 
13:10 - 15:10 
TUP067
p.1040
発振型自由電子レーザーの飽和についての考察
Consideration about the saturation for oscillator type free electron lasers

○川瀬 啓悟(広大放射光)
○Keigo Kawase (HSRC, Hiroshima Univ. )
 
発振型自由電子レーザー(FEL)は連続した電子バンチ列がアンジュレータと光共振器から構成されるFEL装置で光と相互作用し、光強度を増幅する。光強度が小さい領域(小信号領域)では指数関数的に光は増幅されるが、強度が強くなると飽和し、場合によっては電子ビームへエネルギーを与えるようにもなる。そこで通常、小信号領域から飽和領域において一定である電子の初期状態を、光増幅が進むにつれて変化させることによる飽和の回避可能性を検討し、可能である場合には、実験的に必要な電子ビームパラメータの制御が実施可能かどうかを調査している。本発表では、この発振型FELの増幅における飽和の回避可能性の考察についての現状を報告する。
 
13:10 - 15:10 
TUP068
p.1044
日大LEBRA-PXRビームラインにおけるTHz波-X線ビーム重畳システムの開発
DEVELOPMENT OF THE SYSTEM SUPERPOSING THZ-WAVES ONTO AN X-RAY BEAM AT THE LEBRA-PXR BEAMLINE

○早川 恭史,早川 建,中尾 圭佐,野上 杏子,境 武志(日大LEBRA),清 紀弘(産総研),田中 俊成(日大LEBRA)
○Yasushi Hayakawa, Ken Hayakawa, Keisuke Nakao, Kyoko Nogami, Takeshi Sakai (LEBRA, Nihin Univ.), Norihiro Sei (AIST), Toshinari Tanaka (LEBRA, Nihin Univ.)
 
日本大学電子線利用研究施設(LEBRA)ではパラメトリックX線放射(PXR)を放射原とするX線原を運用し,ユーザ利用実験にX線ビームを供給している.このPXRビームラインに設置されていたプロファイルモニタ用のターゲット挿入機構を流用し,金属箔をターゲットとした場合に発生する,THz領域のコヒーレント遷移放射(CTR)の特性研究を実施してきた.これまでのところ,0.3-2THzの周波数領域でマクロパルスあたり1mJ近い放射エネルギーを観測しており,THz光源として十分な強度が得られることが分かった.THz波の利用実験を容易にするため,既存のPXRビームラインを利用してTHzビームを加速器本体室から常時立ち入り可能な実験ホールへ取り出すシステムの開発に着手した.PXRビームを用いたX線利用実験との両立を考慮して,THz波をX線ビームに重畳して輸送するし,THz波とX線の同時利用を可能にするという方針で設計を進めた.THz波とX線の重畳にはベリリウム基板の平面鏡を用いることにし,既存の真空槽の天板の改造することでミラー系の挿入・退避システムを実装することにした.本システムの設計・製作は完了しており,既にPXRビームラインに組み込まれている.システムの概要および試験した結果について報告する.
 
13:10 - 15:10 
TUP069
p.1049
EUV-FEL用入射器のビーム光学関数のマッチング
Optics matching of EUV-FEL injector

○布袋 貴大(総研大),宮島 司(高エネ研)
○Takahiro Hotei (SOKENDAI), Tsukasa Miyajima (KEK)
 
半導体製造はリソグラフィーと呼ばれる露光技術によってなされているが、次世代リソグラフィー技術として、極端紫外線(EUV)リソグラフィーの開発が進められており、その光源には最終的に10kWという高い出力が要求される。この要求を満たすEUV光源として、エネルギー回収型線形加速器(Energy Recovery Linac:ERL)と自由電子レーザー(Free Electron Laser:FEL)を組み合わせたEUV-FEL光源が有力な候補の一つになっている。高エネルギー加速器研究機構(KEK)では、ERL実証機として開発した小型ERL(compact ERL:cERL)でのビーム試験を通して、そのEUV-FEL光源開発のための技術開発を着実に進めている。これまでのEUV-FEL用の入射器設計では、cERLで実証してきた性能を基にして、低いエミッタンスと短いバンチ長を実現するための輸送条件の最適化を行ってきた。今回は入射器から生成された電子ビームを加速・エネルギー回収を行う周回部へ接続するために、ビーム光学関数のマッチングを行った。マッチングでは、接続区間の四極電磁石だけでなく、入射器内のソレノイドの強さ、バンチャー空洞の電圧・位相、入射器空洞の電圧・位相の最適化も行い、低エミッタンス・短バンチとビーム光学関数のマッチング条件を両立する輸送条件の探索を行った。本発表では、マッチングの結果、及びそれを基にしたEUV-FEL光源の設計について報告する。
 
13:10 - 15:10 
TUP070
p.1053
共鳴遷移放射によるEUV光源の検討
Study of transition radiation EUV source

○天野 壮,竹内 雅耶,宮本 修治(兵庫県大高度研)
○Sho Amano, Masaya Takeuchi, Shuji Miyamoto (LASTI, Univ. of Hyogo)
 
次世代半導体製造技術であるEUVL(Extreme Ultraviolet Lithography)用露光光源として13.5nm (92eV)を放射する大出力(~250W)レーザープラズマ光源の開発が進められている。一方、EUVLに用いるマスク欠陥検査用光源としては、低出力でもコヒーレントな光源が望まれる。そこで我々は、小型加速器を用いた共鳴遷移放射で、比較的簡便にこれが出来ないかと考えた。 遷移放射とは、異なる誘電率を持つ媒質の境界を電子が通過する時に光を放射する現象である。複数枚の薄膜からの遷移放射を干渉、共鳴させる事によってコヒーレント光となり、これを共鳴遷移放射と呼ぶ。 今回、兵庫県立大学ニュースバル放射光施設内にある小型電子線形加速器LEENA(電子エネルギー15MeV、マクロパルス電流100mA)を用いたEUV共鳴遷移放射の検討を行った。真空中にBe箔を複数枚並べた多層膜を設置し、電子ビームを入射する。その時に発生するEUV光13.5 nm±1%の出力を、Be箔の吸収を考慮して計算し、最適パラメータ(箔の枚数、箔の厚さ、箔間距離)を求めた。その結果、枚数6枚、厚さ0.25μm、箔間距離10.6μmで最大出力17mWとなった。角度分布・スペクトル分布なども含め、EUV放射特性について報告する。
 
13:10 - 15:10 
TUP071
p.1056
蓄積リング自由電子レーザーによる高平均出力EUV光発生の検討
A Study of High Average Power EUV Free Electron Laser on the Storage Ring

○宮本 修治,橋本 智,木下 博雄(兵庫県立大高度研),田中 隆次,矢橋 牧名,石川 哲也(理研SPring-8センター)
○Shuji Miyamoto, Satoshi Hashimoto, Hiroo Kinoshita (LASTI, Univ. Hyogo), Takasi Tanaka, Makina Yahashi, Tetsuya Ishikawa (RIKEN SPring-8 Center)
 
 ニュースバル放射光施設では、極端紫外光リソグラフィー(EUVL)による次世代半導体製造の技術開発として、EUVL光学系実証、レジスト試験、マスク検査法の開発とともに、レーザープラズマ光源の研究も実施してきた。現在、EUVL実用化に向けて、EUV光源のパワーが最大の問題となっている。これの解決策として、加速器光源の研究開発が各所で検討されている。最近、上海のチームが、蓄積リング-シードFEL光源で、PEHG(Phase-merging Enhanced Harmonic Generation) を用いた高出力EUV光発生可能性の提案をした[1]。この、PEHG- FELの成立性を検討し、ニュースバル放射光施設で実証試験を実施するための構成と、その可能性に関して報告する。 [1] C.Feng, B.Jiang, Z.Qi, H.Deng, and Z.Zhao, "Storage ring based PEHG FEL for EUV lithography", OSA meeting, High-Brightness Sources and Light-Driven Interactions (EUV, HILAS, MICS) (2016).
 
13:10 - 15:10 
TUP072
p.1060
Tuneable quasi-monochromatic coherent THz radiation source development
○Alexander Aryshev, Yosuke Honda (High Energy Accelerator Research Org.), Konstantin Lekomtsev (John Adams Institute at Royal Holloway, University of London), Gennadiy Naumenko, Alexander Potylitsyn (Tomsk Polytechnic University), Mikhail Shevelev (High Energy Accelerator Research Org.), Leonid Sukhih (Tomsk Polytechnic University), Nobuhiro Terunuma, Junji Urakawa (High Energy Accelerator Research Org.)
 
The motivation for developing an intensive THz source at KEK LUCX is coming from the growing interest to THz radiation from various scientific communities worldwide including chemistry, biology, genetics and many more. High gradient photo-cathode RF gun and few tens of femto-second laser system is used to generate a pre-bunched electron beam of a few hundred femto-seconds. We have started to investigate the production of the intense radiation beams in the range of 0.1-5 THz based on Coherent Smith-Purcell Radiation (CSPR) in “super-radiant” regime on a 8 MeV and 30 MeV electron beam at KEK LUCX accelerator respectively. CSPR is generated when a charged particle moves in the vicinity of a periodical pattern or grating. The grating type and period can be chosen to make quasi-monochromatic CSPR spectrum. When radiation wavelength is comparable to or longer than the bunch length it become coherent and even more it enters a “super-radiant” regime if micro-bunch spacing became comparable with radiation wavelength which is comparable to the grating period. In this report the status of the experiment, CSPR basic properties and electron beam characterization will be presented.
 
13:10 - 15:10 
TUP073
p.1063
HMBA型3GeV放射光源における抵抗性インピーダンスの影響
Impact of Resistive-Wall Impedance on a 3-GeV Light Source of HMBA lattice

○中村 典雄(高エネ研)
○Norio Nakamura (KEK)
 
HMBA(Hybrid Multi-Bend Achromat)ラティスを用いた3GeV極低エミッタンス放射光源の設計研究が行われている[1]。この光源はHMBA ラティス20セルで構成され、自然エミッタンス130pm&#183;radを持つとともに、各セルに挿入光源用の長直線部と短直線部を持つことで最大40本のビームラインを建設することが可能である。挿入光源の最小ギャップはできる限り小さいことが利用可能な光子エネルギーの観点から望ましいが、抵抗性インピーダンスが大きくなるので、それによる発熱やビーム不安定性に考慮する必要がある。ここでは、挿入光源の最小ギャップによる抵抗性インピーダンスによって生じる発熱と多バンチビーム不安定性を評価した結果を報告する。ただし、挿入光源の真空チェンバーあるいは磁石列カバーシート(真空封止の場合)の内壁は銅製と仮定し、他のビームパイプの影響は無視した。 参考文献:[1] 原田他、短直線部のあるHMBA型3GeV放射光源の設計、本学会報告。
 
13:10 - 15:10 
TUP074
p.1068
ERLを用いた高出力EUV-FEL光源のシミュレーション研究
Simulation Study of An High-Power ERL-Based EUV-FEL Light Source

○中村 典雄,宮島 司,加藤 龍好(高エネ研)
○Norio Nakamura, Tsukasa Miyajima, Ryukou Kato (KEK)
 
近年、高出力のEUV(13.5nm)光源が半導体リソグラフィの次世代光源として、エネルギー回収型リニアック(ERL)を用いた高出力で低放射線のEUV-FEL光源が注目されている。KEKやQSTを中心とした研究者グループは、10kW級の出力を目標としてERLを用いたEUV-FEL光源の設計検討を日本の企業と共同で進めている[1,2]。ここでは、電子銃からFEL発振後のエネルギー回収までを含むEUV-FEL光源の電子ビームに関するStart-to-End(S2E)シミュレーション・スタディについて報告する。 参考文献:[1] N. Nakamura et al., MOPCTH10, Proc. of ERL2015, June 7-12, Stony Brook, NY, USA, pp.4-9 (2015); N. Nakamura et al., P42, 2015 EUVL Workshop, June 15-19, Maui, HI, USA. [2] 宮島他, 第12回に本加速器学会プロシーディングス、敦賀、2015年、pp.247-250
 
ビーム診断・ビーム制御 (8月9日 コンベンションホール)
13:10 - 15:10 
TUP075
p.1072
ペッパーポット型エミッタンス測定器を用いた理研AVFサイクロトロン入射系の解析
Analysis of the beam injection system of RIKEN AVF cyclotron by using pepper-pot emittance monitor

○小高 康照,大城 幸光,山口 英斉,今井 伸明(原子核科学研究センター),武藤 英(諏訪東京理科大学),加瀬 昌之,長友 傑,後藤 彰,大西 純一(理研仁科センター),畑中 吉治(阪大核物理研究センター),下浦 享(原子核科学研究センター)
○Yasuteru Kotaka, Yukimitsu Oshiro, Hidetoshi Yamaguchi, Nobuaki Imai (CNS), Hideshi Muto (Tokyo University of Science, SUWA), Masayuki Kase, Takashi Nagatomo, Akira Goto, Jyun-ichi Ohnishi (RIKEN Nishina center), Kichiji Hatanaka (RCNP), Susumu Shimoura (CNS)
 
東京大学原子核科学研究センターと理研仁科加速器研究センターが進めている理研AVFサイクロトロンの高度化の一つとして、AVFサイ クロトロンに入射するビームの入射率の向上に取り組んでいる。現在の平均入射率は19%であり、これを改善する事によりビーム量の増強を目指している。そのためにビームエミッタンスを測定し、その測定値を用いてビーム軌道解析を行い、最終的にビーム輸送系を最適化する計画である。この入射ビーム輸送系にはソレノイドコイルを収束要素として使用しているため、軌道解析には四次元エミッタンスが不可欠である。このため四次元エミッタンスが測定可能なペッパーポット型エミッタンス測定器を開発し、その測定結果を用いてビーム軌道解析を行っている。 この解析結果を、他のビーム診断器の測定値と比較することにより評価しており、その進捗状況を報告する。
 
13:10 - 15:10 
TUP076
p.1076
J-PARC MR用DCCTの性能評価
Present performance of a DCCT for J-PARC MR

○佐藤 健一郎,外山 毅,手島 昌己(KEK/J-PARC)
○Kenichirou Satou, Takeshi Toyama, Masaki Tejima (KEK/J-PARC)
 
Direct Current Current-Transformer(DCCT)はMRのビーム強度を高精度に測定するモニタであるが、その出力波形の変動を測定することにより、ビームロスパワーの絶対値を測定できる。現在、測定されるビームロスパワーと、4極電磁石毎に設置されたBLMから得られるビームロス分布から、ビーム調整が行われている。本DCCTは、測定精度1%以内を目指して設計されているが、DCCTのステップレスポンスを補正することにより、信号追従性と精度が向上し、精度が0.1%程度に改善できることが報告されている。本発表ではステップレスポンス補正の実装方法と、実際に得られる性能を報告する。
 
13:10 - 15:10 
TUP077
p.1081
J-PARC MR におけるエキサイタのキック角のビームによる校正
The Kick Angle Calibration of the Exciter in the J-PARC MR

○外山 毅,岡田 雅之(KEK/J-PARC)
○Takeshi Toyama, Masashi Okada (KEK/J-PARC)
 
J-PARC MRでは、横方向のチューン測定、バンチ毎フィードバック、イントラバンチ・フィードバック、および遅い取出しのスピル・リプル改善のための”Transverse RF”用にストリップライン・キッカーを使用している(慣習によりエキサイタと呼ぶ)。2電極で構成され逆相のRFパワーをそれぞれに入力し、水平または垂直方向にキックを行っている。最近はさらに同相RFパワーを入力することにより4極キックを発生させビーム応答試験を行っている。これらのオペレーションには、キック角が重要な量となっている。これまでは設計計算のみを使っていたが、今回、ビームをバースト状の正弦波で2極キックしてビーム応答をBPMにより測定し、2極キック角を導出し、設計計算とほぼ同程度の結果を得た。
 
13:10 - 15:10 
TUP078
p.1086
J-PARC RCS ビーム運転のための様々な機器の時系列監視
The time series monitoring of various equipments for the beam operation of J-PARC RCS

○畠山 衆一郎,山本 風海(JAEA J-PARCセンター)
○Shuichiro Hatakeyama, Kazami Yamamoto (JAEA J-PARC Center)
 
J-PARC 3GeVシンクロトロン(RCS)は、400MeV線形加速器(LINAC)から入射されたビームを3GeVまで加速し、速い繰り返し周期(25 Hz)で物質生命科学実験施設(MLF)および主リングシンクロトロン(MR)にビームを振り分けながら供給する。J-PARCではハドロン実験施設の事故以降、安全面を強化しており、機器が不調を来したときのビーム損失、及びそれに伴う環境への影響などを時系列で即時に総合的に判断する必要性が求められた。そこで本発表では、ビーム利用運転時のRCSの様々な機器からのデータ(ビーム電流、ビームロス、ビーム閉軌道の歪み、エリア内の放射線強度、ビームダンプ温度、冷却水流量・温度、荷電変換効率、ビームダクト真空圧力)を集約し時系列で表示するアプリケーションソフトウェアの開発について述べ、運用時のデータ例を提示し、その考察を述べる。
 
13:10 - 15:10 
TUP079
p.1089
J-PARC RCSにおける大強度ビームプロファイル測定に向けたIPMの改良
Improvement of the IPM for the high-intensity beam profile measurement in the J-PARC RCS

○加藤 新一,原田 寛之,畠山 衆一郎,川瀬 雅人,山本 風海,金正 倫計(原子力機構)
○Shinichi Kato, Hiroyuki Harada, Shuichiro Hatakeyama, Masato Kawase, Kazami Yamamoto, Michikazu Kinsho (JAEA/J-PARC)
 
J-PARC RCSでは、リング内を周回している陽子ビームの1次元横方向分布を非破壊に測定するために、残留ガスプロファイルモニタ(IPM)が導入されている。IPMは主に、外部電場生成用分割電極と検出部で構成される。ビームがIPMを通過すると、残留ガスがイオン化される。このイオン化されたガスを横方向の外部電場で検出部まで輸送し、検出信号を再構成することで分布を測定している。このようにIPMでは、イオン化ガスを用いて横方向分布の射影を行うため、外部電場の均一性が重要である。そのため、電場ポテンシャルの最適化などの改良を継続して行ってきた。その結果、IPMは低強度で行うビーム調整において必須の測定装置となっている。しかし、出力の増加に伴ってノイズが増加するため、100 kWを超えるような大強度ビームでは検出信号がノイズに埋もれて分布測定が出来ないという問題があった。そこで、大強度ビーム分布測定に向けてこのノイズの原因探索と対策の検討を行った。IPMの構造と大電流ビームを模擬したシミュレーションを行い、ノイズの原因がビーム起因の電場であることを特定した。また、この結果を元にビーム起因の電場を遮蔽する分割電極部品を設計した。本発表では、大強度時のノイズに関するシミュレーションと測定結果の比較と、2016年8月に導入を予定しているIPMの改良について報告する。
 
13:10 - 15:10 
TUP080
p.1094
J-PARCリニアック バンチシェイプモニタの位相分解能測定
Phase resolution measurement for the Bunch Shape Monitor at J-PARC Linac

○宮尾 智章,丸田 朋史,劉 勇(高エネルギー加速器研究機構),三浦 昭彦(日本原子力研究開発機構)
○Tomoaki Miyao, Tomofumi Maruta, Yong Liu (KEK, J-PARC), Akihiko Miura (JAEA, J-PARC)
 
J-PARCリニアックでは加速周波数が324MHzから972MHzにジャンプする区間があり、J-PARCでは、位相方向のビーム診断にバンチシェイプモニタを使用している。そこで、ビームを用いて位相分解能測定を行い、設計が1.0°に対して位相分解能を1.8°と算出した。本発表では実ビームによるバンチシェイプモニタの位相分可能測定とその結果について報告する。
 
13:10 - 15:10 
TUP081
p.1097
J-PARC RCSリングコリメータ故障によるビーム損失局所化への影響
An influence of ring-collimator malfunction on beam loss localization in the J-PARC RCS

○吉本 政弘,竹田 修,原田 寛之,山本 風海,金正 倫計(原子力機構/J-PARCセンター)
○Masahiro Yoshimoto, Osamu Takeda, Hiroyuki Harada, Kazami Yamamoto, Michikazu Kinsho (JAEA/J-PARC)
 
J-PARC 3GeV RCSでは世界最高レベルの1MW大強度ビームを実現するために、ビーム損失を局所化して他機器の放射化を抑制するリングコリメータシステムを設置している。RCSのリングコリメータシステムは散乱体1台と吸収体5台で構成されており、これまでのビーム調整の成果と合わせて、コリメータ部以外に大きな放射化を機器に生じさることなく500kWビーム出力までの利用運転の実績を持つことが出来た。しかし、2016年4月にリングコリメータの吸収体5で駆動部破損に伴う真空リークが発生し、取り外しての加速器運転を余儀なくされた。そこで、まず粒子トラッキング計算によりコリメータ下流部で新たなビーム損失が発生しても現状での利用運転の強度では許容可能であることを事前に確認した。次にリング全周におけるビーム損失の変化をビーム損失モニタの測定結果から問題ないことを確認して、加速器運転を再開した。今回からRCS全周にわたる残留線量の詳細分布測定を実施し、合わせて短期メンテナンスに伴うビーム停止毎に継続的に測定することで加速器運転状況に伴う線量分布の推移も調査した。この結果からより詳細なビーム損失の構造を把握することが出来た。 本発表では、リングコリメータ吸収体5を取り外したことによるビーム損失局所化への影響を報告する。また詳細な残留線量分布測定の結果からリングコリメータの調整方法に対する課題についても議論する。
 
13:10 - 15:10 
TUP082
p.1102
J-PARC LINAC負水素イオンビーム用マルチレーザワイヤプロファイルモニタの開発
Multi-Laser-Wire Diagnostic for the Beam Profile Measurement of Negative Hydrogen Ion Beam in the J-PARC LINAC

○三浦 昭彦,吉本 政弘,岡部 晃大(日本原子力研究開発機構 J-PARCセンター),山根 功(高エネルギー加速器研究機構 J-PARCセンター)
○Akihiko Miura, Masahiro Yoshimoto, Kota Okabe (J-PARC Center, JAEA), Isao Yamane (J-PARC Center, KEK)
 
J-PARC LINACでは、負水素イオンビームを400MeVまで加速し、下流のシンクロトロン(RCS)に供給している。また将来計画として、ビーム振り分けシステムを導入し、核変換実験施設にも供給することが計画されている。大強度陽子加速器においてビーム損失を抑制するためのビーム調整は非常に重要であり、そのための重要な測定機器の一つがビームプロファイルモニタである。現在、タングステン製のワイヤによるプロファイルモニタを使用しているが、ワイヤの熱的耐久性の観点から大強度ビームでは使用できない。そこで、大強度でも使用できるビーム非破壊型のレーザワイヤ法に着目した。負水素イオンの1つの電子のイオン化ポテンシャルは0.75eVと低いため、可視光域のレーザ光をドップラーシフトさせ、容易にイオン化に適した波長を作成することができ、レーザワイヤ法の現実的なシステムを形成できる。これに加えて、径の異なる一対の凹面鏡を対面させ、鏡間に複数のレーザーの光路(レーザーワイヤ)を形成する新たな手法を検討した。レーザー光のビームウエストを同一直線状に並ぶように光学設計することで、負水素イオンビームの進行方向にレーザー光路の面を平行に配置し、マルチレーザーワイヤの様なビーム計測が可能となる。本発表では、マルチレーザーワイヤをプロファイルモニタに適用する原理と、ビーム計測のためのシステムについて報告する。
 
13:10 - 15:10 
TUP083
p.1107
KEK入射部用カットディスク型RFディフレクターの設計
Design of cut disc structure type RF-deflector for KEK-LINAC

○井上 彬(総研大),夏井 拓也,吉田 光宏(高エネ研)
○Akira Inoue (SOKENDAI), Takuya Natsui, Mitsuhiro Yoshida (KEK)
 
高エネルギー加速器研究機構(KEK)では次世代e-/e+コライダーSuperKEKBの開発が進んでいる。SuperKEKBでは従来のKEKBの40倍のルミノシティの実現を目指しており、そのために電子陽電子入射器でも入射ビームの改良が求められている。我々は高電荷で低エミッタンスという条件を満たすビームを生成するため、新しくフォトカソードRF電子銃を開発している。このRF電子銃で生成するビームのスライスエミッタンス測定にはRF電子ディフレクターを用いる方法がある。そこで、カットディスク型を採用した多セルRFディフレクターを開発している。RFディフレクターの多セル化ではセル結合が問題となる。従来の多セルRFディフレクターでは多くがビーム軸上でセル結合させているが、RFディフレクターで使用する共振モードはビーム軸上に電場がないため結合が弱いという問題がある。そこで、加速空洞のために考案されたカットディスク型をRFディフレクターに採用した。カットディスク型では結合セルにある結合孔のため容易に大きい結合度を得ることができる。
 
13:10 - 15:10 
TUP084
p.1111
6MVタンデム型静電加速器におけるビーム輸送設定条件の検討
Consideration on Setup Condition of the Beam Transport System for the 6 MV Tandem Electrostatic Accelerator

○黒尾 奈未,笹 公和,細谷 青児,松中 哲也(筑波大学)
○Nami Kuroo, Kimikazu Sasa, Seiji Hosoya, Tetsuya Matsunaka (University of Tsukuba)
 
筑波大学研究基盤総合センター応用加速器部門には、2016年4月から稼働を開始 した6 MVタンデム型静電加速器があり、物理学、工学、化学などの基礎分野の他 にも様々な研究分野において利用されている。加速電圧は1 MVから6 MVの範囲で 1 KV単位で可変であり、5台のイオン源と12本のビームラインを有している。多 種類のイオンを広範囲のエネルギー幅で加速可能であることに加えて、ビームラ インが複数あるため、ビーム輸送の条件設定が複雑化している。その為、ビーム 輸送の設定パラメータの最適値を予め計算しておくことが、迅速なビーム供給に おいて必要となってくる。本研究では、6 MVタンデム型静電加速器におけるビー ム輸送の最適パラメータ設定値について検討を行ったので、その結果を報告する。
 
13:10 - 15:10 
TUP085
p.1115
LFCカメラ用チェレンコフラジエーターのビーム試験
Beam test of aerogel as Cherenkov radiator for LFC camera

○南部 健一,柏木 茂,日出 富士雄,武藤 俊哉,長澤 育郎,髙橋 健,齊藤 寛峻,阿部 太郎,齊藤 悠樹,濱 広幸(東北大学電子光理学研究センター)
○Kenichi Nanbu, Shigeru Kashiwagi, Fujio Hinode, Toshiya Muto, Ikuro Nagasawa, Ken Takahashi, Hirotoshi Saito, Taro Abe, Yuki Saito, Hiroyuki Hama (Research Center for Electron Photon Science, Tohoku University)
 
東北大学電子光理学研究センターでは、チェレンコフ光の放射角度と電子の速度の間の強い相関関係を利用し、ストリークカメラと組み合わせることで電子ビームの縦方向位相空間分布の直接測定を行うLiner Focal Cherenkov ring (LFC) カメラの研究開発を進めている。今回、試験加速器(t-ACTS)の入射部にLFCカメラを設置し、電子銃から引き出された電子ビームを用いて、チェレンコフラジエーターの評価などを行ったので報告する。
 
13:10 - 15:10 
TUP086
p.1118
ダイヤモンド・ヒートシンクを用いたパルス・モード計測型光位置モニタの設計と試作機の評価
Design and Prototype of Pulse-by-pulse X-ray Beam Position Monitor using Diamond Heat Sink

○青柳 秀樹,高橋 直((公財)高輝度光科学研究センター)
○Hideki Aoyagi, Sunao Takahashi (JASRI)
 
放射光をパルス毎に計測することを目指した光位置モニタの開発を進めている。このモニタは、SPring-8で開発したストリップライン型光電面を用いた検出素子の技術を取り採り入れたもので、挿入光源ビームラインの高い熱負荷に曝される環境下で使用できるように、ダイヤモンドをヒートシンクとして用いた耐熱構造をしている。本モニタの伝熱特性を評価するために、水冷ブロックと一体化したヒートシンク・ホルダーとダイヤモンドヒートシンクの評価試験を実施した。
 
13:10 - 15:10 
TUP087
p.1122
あいちSRにおける入射時ビーム変動の高速観測と評価
High-speed observation and evaluation of the beam fluctuation at injection timing in Aichi SR

○山村 光平(名大院工),高嶋 圭史,保坂 将人,持箸 晃,真野 篤志(名大SRセンター),山本 尚人(KEK),加藤 政博(UVSOR)
○Kouhei Yamamura (Graduate School of Engineering, Nagoya University), Yoshifumi Takashima, Masahito Hosaka, Akira Mochihashi, Atsushi Mano (Synchrotron Radiation Research Center, Nagoya University), Naoto Yamamoto (High Energy Accelerator Research Organization, KEK), Masahiro Katoh (UVSOR Facility, Institute for Molecular Science)
 
あいちSRの加速器は、50MeVの直線加速器と1.2GeVの ブースターシンクロトロンが1.2GeVの電子蓄積リング(周長72m)の内側に配置された構成になっている。 平成25年3月の稼動開始時よりトップアップ運転を行っており、入射の周期は1Hzである。 現在、入射の際に4台のキッカー電磁石により発生するバンプ軌道(リング半周程度)を利用した方法をとっている。しかしこの方法は、大きな軌道変動によりバンプ軌道内に存在するビームラインで放射光が取り出せない。この対策として、我々はキッカー電磁石の代わりにパルス六極電磁石(PSM)を用いることで、蓄積ビームに影響を与えない入射方法の実現を目標として、準備を進めてきた。 2015年11月にPSMを導入し、現在は試験運転中である。本研究では入射時のPSM励磁による蓄積ビームへの影響を、BPM信号解析と高速ゲートカメラによるビームプロファイル測定により調べた。PSMの磁場発生直後の蓄積ビームの位相空間上での位置および形状を測定した結果、蓄積ビームがPSM磁場によりキックされ、重心振動を始めることと、ビームの水平方向広がりが最大で4.0mm程度に大きくなっていることが分かった。これらの実験結果と計算による予測値の比較を行うことで、入射時蓄積ビーム変動を理論的に解明し、その解消とPSM入射の実現を目指す。本発表では、入射直後の蓄積ビームの位相空間上位置と水平方向広がり、および計算値との比較について報告する。
 
13:10 - 15:10 
TUP088
p.1127
高温超伝導SQUIDビーム電流モニターの高感度・小型化
Sensitivity improvement and miniaturization of HTc-SQUID beam current monitor

○渡邉 環,福西 暢尚(理研),稲森 聡,今 康一(ティーイーピー株式会社)
○Tamaki Watanabe, Nobuhisa Fukunishi (RIKEN), Satoru Inamori, Kouichi Kon (TEP Corporation)
 
理研仁科加速器研究センターにおいて、重イオンビームのDC電流を、非破壊で高感度に測定するために、脳磁や心磁の測定に利用される超伝導量子干渉素子SQUID (Superconducting Quantum Interference Device)を応用した、ビーム電流モニター(SQUIDモニター)の開発を行ってきた。既に完成したプロトタイプSQUIDモニターを、RIビームファクトリーのビームラインにインストールし、現在、サイクロトロンで加速されたウランなどの重イオンビームの電流測定を行っている。本研究では、臨界温度の高い高温超電導体を用い、冷凍機によって冷却を行っているため、装置はコンパクトになり、ランニングコストの大幅な低減が可能となった。このプロトタイプより、さらに高感度・小型化することを目的として、新しい方式による開発を開始した。高感度・小型化を実現するためには、1.高温超伝導電流センサー、2.高温超伝導SQUID、3.高透磁率マグネティックコア、の開発が必要である。特に、高温超伝導電流センサーの製作に於いては、銀基盤上にビスマス系の高温超伝導体(Bi2212)を溶融法によって形成する。今回の学会においては、SQUIDモニターの高感度・小型化を実現するための検討結果と、現在の開発状況について報告をする。
 
加速器制御 (8月9日 コンベンションホール)
13:10 - 15:10 
TUP089
p.1134
EPICSを用いたSuperKEKB最終集束系超伝導磁石システムビームライン磁場測定制御ソフトウェアの開発
Development of magnetic field measurement control software system of superconducting quadrupole magnets for final focus of SuperKEKB using EPICS

○浅野 和哉(関東情報サービス(株)),岩崎 昌子,大内 徳人,有本 靖,王 旭東(高エネルギー加速器研究機構)
○Kazuya Asano (Kanto Information Service Co.,Ltd.), Masako Iwasaki, Norihito Ohuchi, Yasushi Arimoto, Xudong Wang (KEK)
 
高エネルギー加速器研究機構(KEK)では、KEKB電子・陽電子ビーム衝突型加速器を用いたBファクトリー実験が行われてきた。現在、KEKB加速器の更なる高輝度化を目的として、SuperKEKB加速器の建設が進められており、2016年2月より試験運転されている。 SuperKEKB加速器では、KEKB加速器で記録した世界最高の電子・陽電子衝突頻度を約40倍に高めることを目標としている。この高輝度化において、SuperKEKB加速器の心臓部である電子・陽電子ビーム衝突部のビーム最終収束用超伝導電磁石システムのデザインを更新し、新規に超伝導電磁石を製作する。そこで我々は、EPICSを用いた最終集束系超伝導磁石システムビームライン磁場測定制御ソフトウェアを開発した。ユーザーインターフェースにはControl System Studio(CSS)を用いている。本システムでは磁場測定用プローブの位置設定及び測定、電磁石電源の電流値設定及び測定、測定磁場データ収集までを自動で行うことができる。これらの詳細について報告する。
 
13:10 - 15:10 
TUP090
p.1137
SuperKEKBにおける真空制御ソフトウェアの現状
Present status of vacuum control software system for SuperKEKB

○芳藤 直樹(東日本技術研究所),中村 達郎,小田切 淳一,石橋 拓弥,照井 真司(高エネルギー加速器研究機構)
○Naoki Yoshifuji (e-JAPAN IT Co.,Ltd.), Tatsuro Nakamura, Jun-ichi Odagiri, Takuya Ishibashi, Shinji Terui (KEK)
 
SuperKEKBではメインリング建設が完了しコミッショニングが開始した。真空制御に関するシステムは、KEKBでは主にVMEやCAMACを使用していたが、機器の入手簡易性や信頼性を向上させるため、SuperKEKBではFA-M3コントローラとcompactRIO及びサーバ計算機を採用した。実装しているシステムは、EPICSをベースとしたアプリケーションと、ラダーによるインターロックで構築されている。主なコントロール機器として、GateValve、VacuumSwitch、イオンポンプ電源、NonEvaporableGetterポンプ活性化電源、圧力計、温度計、冷却水流量計がある。また、これらに加えて、コリメータ、残留ガス分析計なども合わせて実装されている。真空制御で使用しているEPICSレコードは、リング全体で58,215点になり、EPICSシーケンサは177つ動作しているが、CPUやメモリ使用率に問題は無く安定して動作している。コミッショニング運転が進むにつれ、制御方法の修正やパラメータ変更などは度々発生しているが、現在は安定して動作している。本稿では運転中に得られた成果や発生した問題点を踏まえた真空制御のソフトウェアの現状を報告する。
 
13:10 - 15:10 
TUP091
p.1142
SuperKEKBにおけるCSS Archiver及びChannel Archiverの現状
Present status of CSS Archiver and Channel Archiver at SuperKEKB

○廣瀬 雅哉(関東情報サービス(株)),岩崎 昌子,帯名 崇,佐々木 信哉,中村 達郎(高エネルギー加速器研究機構),中村 卓也(三菱電機システムサービス(株))
○Masaya Hirose (Kanto Information Service Co.,Ltd.), Masako Iwasaki, Takashi Obina, Shinya Sasaki, Tatsuro Nakamura (KEK), Takuya Nakamura (Mitsubishi Electric System & Service Co.,Ltd.)
 
KEKB加速器運転時には、加速器に関する各種データのアーカイブシステムとしてKEKBLogを運用していた。SuperKEKB加速器ではKEKBLogに加え、CSS Archiver及びChannel Archiverを新たに導入し、2016 年2月の試験運転開始に併せて運用を開始した。アーカイブ対象としているレコードは約15.5万件にも及ぶ。CSS Archiver及びChannel ArchiverはKEK内でも利用されており、双方の有用性や欠点などは既に挙げられている。そこで我々は、CSS Archiver及びChannel Archiverを併せて運用し、大規模データを安定かつ高速にユーザへ提供できるよう、phase-1では様々な試験・改良を行ってきた。本稿では、CSS Archiver及びChannel Archiverの導入・運用状況、phase-2に向けての改良点について報告する。
 
13:10 - 15:10 
TUP092
p.1146
SuperKEKB phase-Iにおける入射運転制御システム
Injection Control System for the SuperKEKB Phase-I Operation

○梶 裕志,古川 和朗,宮原 房史,中村 達郎,佐藤 政則(高エネルギー加速器研究機構),飯塚 祐一,芳藤 直樹(東日本技術研究所),工藤 拓弥,草野 史郎(三菱電機システムサービス),廣瀬 雅哉(関東情報サービス)
○Hiroshi Kaji, Kazuro Furukawa, Fusashi Miyahara, Tatsuro Nakamura, Masanori Satoh (KEK), Yuichi Iitsuka, Naoki Yoshifuji (EJIT), Takuya Kudou, Shiro Kusano (MELSC), Masaya Hirose (KIS)
 
SuperKEKB加速器は本年2月より試験運転、そしてマシンコミッショニング運転が開始された。入射器LINACの入射動作の制御は、イベントタイミングシステムを用いており、これにより入射器の動作パラメータと動作タイミングの両方の制御を行っている。現在運用中のイベントタイミングシステムはSuperKEKBの複雑な入射制御を実現するため、昨年夏までにアップグレードされたものであり、本年初頭からの入射器運転によりその有用性と安定性が十分に証明されている。2つのメインリング加速器へは、本概要執筆時で243Ah(電子リング)と304Ah(陽電子リング)のビーム供給に成功しており、またバンチ間の電流値を均一に保つための入射バケット選択システムも問題なく動作している。 このように入射運転制御システムはSuperKEKB phase Iの運転に大きく貢献をしている。 本講演では成功裡に実現したEvent Timing Systemによる入射運転の制御について紹介し、phase II運転に向けた展望を述べる。
 
13:10 - 15:10 
TUP093
p.1150
SuperKEKBにおけるデータアーカイブの読み出し高速化
Improvement of Data Archive Reading Speed for SuperKEKB

○森田 昭夫(高エネ研)
○Akio Morita (KEK)
 
SuperKEKBでは、運転に関わる各種パラメータをKEKBLogと呼ばれる独自のデータアーカイビングシステムに記録している。この記録は、障害発生時の原因調査や運転状況を可視化するトレンドグラフ等に幅広く利用されており、その読み出し速度は運転システムの利便性に大きな影響を与えている。今回、アーカイビングシステムと読み出し系の間にフラッシュストレージを用いたキャッシュ階層を導入することで、読み出し速度を大きく改善することに成功したので、これを報告する。
 
13:10 - 15:10 
TUP094
p.1154
SuperKEKBのための電磁石電源制御システムの改造
Upgrade of the Magnet Power Supply Control System for SuperKEKB

○中村 達郎,秋山 篤美,小田切 淳一,佐々木 信哉(高エネ研),青山 知寛,藤田 誠,中村 卓也,吉井 兼治(三菱電機システムサービス株式会社),芳藤 直樹(東日本技術研究所)
○Tatsuro Nakamura, Atsuyoshi Akiyama, Jun-ichi Odagiri, Shinya Sasaki (KEK), Tomohiro Aoyama, Makoto Fujita, Takuya Nakamura, Kenzi Yoshii (Mitsubishi Electric System & Service Co., Ltd.), Naoki Yoshifuji (e-JAPAN IT Co., Ltd.)
 
SuperKEKB加速器の電磁石電源の遠隔制御システムは、KEKB加速器のシステムをベースに開発を行なって来た。KEKB加速器ではVMEベースの制御計算機と電磁石電源とを結ぶフィールドバスとしてARCNETを採用した。マイクロプロセッサを搭載したPower Supply Interface Controller Module (PSICM)と呼ぶモジュールを電源に内蔵させる事で、簡単にARCNETに接続できるようにすると共に、高度な制御機能の組み込みを実現している。SuperKEKBでは改良版のPSICMを開発し、ARCNETの通信速度の高速化を図るとともに、高分解能DACを搭載した電磁石電源にも対応すべく32ビットデータを扱えるように拡張した。SuperKEKBではKEKBと比べ、DACのビット数や多種多様なインターロック情報の扱いなど、電源のバリエーションが大幅に増えたことも特徴である。これらを統一的に扱うため制御ソフトウェアにも様々な改良を加えている。ここではこれら制御システムの改造を概観するとともにSuperKEKB Phase-1運転での動作状況を報告する。
 
13:10 - 15:10 
TUP095
p.1159
SuperKEKBのCSSアラームシステム運用状況
Operation Status of CSS Alarm System for SuperKEKB

○中村 卓也(三菱電機システムサービス(株)),岩崎 昌子,帯名 崇,佐々木 信哉(高エネルギー加速器研究機構),浅野 和哉(関東情報サービス)
○Takuya Nakamura (Mitsubishi Electric System & Service Co.,Ltd.), Masako Iwasaki, Takashi Obina, Shinya Sasaki (KEK), Kazuya Asano (KIS)
 
2016年2月より、SuperKEKB加速器の運転が開始された。 SuperKEKBでは、KEKBでの電子・陽電子衝突頻度を約40倍高めることを目指しており、このような高輝度加速器の運転下において、安定して動作可能なアラームシステムの構築が重要である。 我々は、SuperKEKBの運転開始前よりControl System Studio(CSS)を利用したアラームシステムの動作試験、およびその性能評価を行い、その後SuperKEKBで運用するよう整備を行った。 実際にSuperKEKBの運転が開始されると、加速器の運転状況に応じて、アラームの監視設定の変更の要望や、アラーム情報の閲覧ツールの変更の要望などが寄せられた。 また、実際に運用を開始してから判明した問題点などもあり、対策を検討する必要もあった。 こういった要望への対応や問題点への対策を順次行っていき、加速器の運転状況に則したアラームシステムを運用するよう整備を進めている。 本件では、SuperKEKBでのCSSアラームシステムの運用状況について報告する。
 
13:10 - 15:10 
TUP096
p.1163
光陰極の2次元高解像度QE分布測定装置の開発
Development of high resolution QE map acquisition system for photo-injector

○亀田 吉郎(東日技研),山本 将博,帯名 崇,金 秀光,宮島 司(高エネ研),西森 信行(量子科学技術研究開発機構)
○Yoshiro Kameta (e-JAPAN IT Co., Ltd.), Masahiro Yamamoto, Takashi Obina, Xiuguang Jin, Tsukasa Miyajima (KEK), Nobuyuki Nishimori (QST)
 
光陰極の量子効率(QE)についてその詳細な2次元分布を知ることは、発生するビームの初期分布を知るあるいは制御する上で重要である。またQE分布測定は光陰極薄膜の作製後の評価や、様々な要因によって起こる光陰極の劣化の分析にも活用できる。ここでは、cERL電子源のカソード準備装置でQE分布測定を行えるようその装置の開発について述べる。開発目標として、構成機器は入手が容易でかつ小型であり、0.1mm程度の空間分解能で素早くスキャンできることとした。 装置/制御についてだが、光学系では安価なレーザーモジュール、ミラーとレンズが各1枚とフィルターで構成され、照射レーザーの位置制御は2台のアクチュエータで行う。検出系では真空中に簡易なコレクタ電極を設置して汎用DC電源で電極に数十ボルトの正電位を印可することで光電子を収集しデジタルマルチメータで測定する。一般的な光陰極のサイズは10mm相当あり、周囲を含め全域を0.1mm間隔で測定すると測定点は1万点を超え、全ての測定点で位置制御と情報取得を行う方法では非常に時間がかかる。そこで制御では、アクチュエータの特性を考慮しつつ、レーザーを一定速度でスキャンさせながら一定間隔でデータを計測しバッファする方法を採用した。 これらを踏まえ、目標とする空間分解能でかつ10分程度でQE分布を得られる装置を開発した。本発表では、装置に関する詳細および実際の測定で得られたQE分布の結果について報告する。
 
ビームダイナミクス・加速器理論 (8月9日 コンベンションホール)
13:10 - 15:10 
TUP097
p.1168
SPring-8蓄積リングのオフモーメンタム粒子の運動とモーメンタムアクセプタンスについて
Off-Momentum Particle Motion and Momentum Acceptance at the SPring-8 Storage Ring

○高雄 勝,早乙女 光一,下崎 義人((公財)高輝度光科学研究センター)
○Masaru Takao, Koichi Soutome, Yoshito Shimosaki (JASRI)
 
高輝度放射光リングなど低エミッタンス電子蓄積リングでは、バンチ内電子電子散乱即ちTouschek散乱がビーム寿命に対して支配的な影響を与える。元来、Touschek散乱では衝突によりエネルギー交換した電子がRFバケットから溢れて失われるのであるが、オフモーメンタム粒子にとってはディスパージョンが中心軌道であるため、これを中心にモーメンタム偏差に応じた振幅で振動するので、モーメンタムアクセプタンスは横方向の力学によっても制限を受ける。 SPring-8蓄積リングは、44 double bend unit cellと30 mの長直線部4箇所からなり、蓄積リングの安定性は長直線部(上下流のマッチングセルを含む)のオンモーメンタム粒子に対する位相整合とオフモーメンタム粒子に対する局所クロマティシティ補正で確保されている。後者は、マッチングセルの収束6極電磁石を調整することで行われるが、これによりモーメンタムアクセプタンスはRFバケットで決まるアクセプタンスまで広げられている。Touschek散乱(オフモーメンタム)粒子の運動のトラッキング解析により、モーメンタム偏差が6極電磁石で決まる閾値を超えると運動はstochasticな様相を示すようになり、振動振幅は増幅してビーム損失に至るなど、アクセプタンスの境界領域ではstochastic現象が重要な役割を果たしていることが理解できる。
 
13:10 - 15:10 
TUP098
p.1173
SPring-8蓄積リングにおける非線形オプティクス設計
Designs of nonlinear optics for the SPring-8 storage ring

○下崎 義人(高輝度光科学研究センター)
○Yoshito Shimosaki (JASRI)
 
SPring-8の次期計画であるSPring-8-IIにおいてオフモーメンタム方向に安定領域を広げるために、線形クロマティシティ、非線形共鳴、非線形分散関数、振幅依存チューンシフト、及び非線形クロマティシティを連立的に補正するアルゴリズムを開発した[1]。これを現在のSPring-8実機に適用し、理論と実験の両面から検証したので、詳細について報告する予定。 [1] 下崎義人、「SPring-8-IIの非線形オプティクス設計」、第12回日本加速器学会年会、WEP025.
 
13:10 - 15:10 
TUP099
p.1178
RFKO装置におけるインピーダンストランスフォーマーに関する研究‐ITの周波数特性についての検討‐
Study on impedance transformer in RFKO system - Consideration of the frequency characteristics of the IT -

○西原 亮輔(日本大)
○Ryosuke Nishihara (Nihon Univ.)
 
重粒子線がん治療において効果的なビーム照射法としてスポットスキャニング法がある。この照射法を行うにはシンクロトロンからのビーム取り出しの高速制御が必要であり、それに適したビーム取り出し法としてQAR法を提案している。QAR法はパルス四極電磁石と高周波ノックアウト(RFKO)装置を用いてビームを取り出す方法である。RFKO装置はRFKO電極、インピーダンストランスフォーマー(IT)、All Pass Network(APN)で構成されており、平行平板(RFKO電極)に高周波電界を与えて周回粒子に力を加えることで拡散させる装置である。周波数帯は1~17MHzを必要とする。RFKOに高電圧を印加するためには一般に高周波電源とRFKOの間にインピーダンス整合と昇圧のための高周波用のITが用いられる。本研究は変換比率が9:1以上のITを目標としている。現段階において、変換比率を上げると入力電圧、出力電圧共に低下するという問題がある。これまでの研究において、ITのインダクタンスLを大きくすることで低周波側での改善は見られたが、高周波側での改善には至っていない。現在、MATHEMATICAを用いた等価回路解析により高周波側で特性が劣化する原因を調べるとともにITの試作を行い、実験的にも改善策を検討している。本発表では、これらの実験、計算結果について報告する。
 
13:10 - 15:10 
TUP101
p.1181
高出力ERL-FELにおけるRF安定性
RF stability in a high-power ERL-FEL

○羽島 良一(量研機構、高エネ機構)
○Ryoichi Hajima (QST, KEK)
 
エネルギー回収型リニアックは、低エミッタンスかつ短パルスの電子ビームを大電流を加速できる。この性質を利用した高出力自由電子レーザーが、ジェファーソン研究所、原子力機構にてすでに実証され、さらに、この技術の延長として次世代半導体リソグラフィのための高出力EUV-FELが提案されている。これらの高出力FELでは、FELの発振に伴って生じるアンジュレータ下流での電子ビームのエネルギー変化が無視できない。このエネルギー変化は、減速ビームの位相と電流の変動となり、エネルギー回収におけるRF収支の擾乱となり得る。本発表では、線形モデルによるRF収支の解析を示し、エネルギー回収を安定に動作するための条件を述べる。
 
13:10 - 15:10 
TUP102
p.1186
加速器パラメータ最適化のためのGUIツール開発
Development of a accelerator simulation gui tool for the parameters optimizations

○永井 良治(量研機構),宮島 司(高エネ機構)
○Ryoji Nagai (QST), Tsukasa Miyajima (KEK)
 
加速器の設計・開発・運転サポートに用いられている様々なシミュレーションコードがあるが、これらを用いたパラメータの最適化には、各研究者が独自のスクリプトを組などして行っており、効率的かつ簡便な環境はこれまで、提供されてこなかった。そこで、パラメータの最適化を効率的に行うためのに、最適化のための入力ファイル作成から、パラメータ最適化、結果の表示までを行うツールとして、開発を進めているGUIツールについて報告する。
 
真空 (8月9日 コンベンションホール)
13:10 - 15:10 
TUP103
p.1189
J-PARC MRのコリメータ・ジョーの開発
Development of Collimator Jaw of J-PARC MR

○魚田 雅彦,堀 洋一郎,白形 政司(高エネ研)
○Masahiko Uota, Yoichiro Hori, Masashi Shirakata (KEK)
 
J-PARC主リングシンクロトロンのビーム整形用コリメータのジョーを主眼にコリメータダクトの開発に関して報告する。当初の設計は、3台中1台目の先端で角度散乱させ位相がほぼπ及び2π後方の2・3台目にてハローを回収する散乱-回収型で、ジョーの材質としてはタンタルを用い、ビームダクトのチタンへHIP接合し、ジョーを内包したダクト全体を外側のシールドごと横移動機構で水平及び垂直の2方向に変位させるものであった。真空ダクトは入口出口フランジを固定しジョーダクトとの間には2段ベローズによって横変位を吸収させていた。ビーム増強に伴う放射化などの実績から、2012年度にはハローの回収方法として1-pass型へ変更するため1台目を第2世代コリメータ2台へ変更した。さらに2013年度には初期の2台目の場所等に、ジョーの材質をタングステンとしビームの形状に合わせた第3世代となる4台を増強し7台態勢となったが、残念ながら2014年夏にダクトで真空リークが発生し2012年の状態に戻すことになった。2015年には最初の2台目の位置に、移動方向にヨーとピッチを加えた4軸移動機構を持つ2台の第4世代型をインストールし計5台で現在に至っている。第4世代型はコリメータダクトと横ずれベローズはフランジで切り別パーツとしている。ジョーの構造、製造に関してこれまでのまとめ及び今後の発展について発表する予定である。
 
13:10 - 15:10 
TUP104
p.1193
ビームラインにおけるキッカー電磁石エリアの真空性能向上
Vacuum improvement for kicker magnet area in accelerator beam line

○神谷 潤一郎,柳橋 亨,荻原 徳男,金正 倫計(日本原子力研究開発機構)
○Junichiro Kamiya, Toru Yanagibashi, Norio Ogiwara, Michikazu Kinsho (Japan Atomic Energy Agency)
 
真空容器内の構造物を脱ガスする一般的手法は、真空容器の大気側に設置したヒーターで真空容器を加熱し、容器からのふく射や伝導で構造物を昇温することである。しかし加速器のビームラインでは、真空容器の熱膨張が周辺機器へ負荷を及ぼすこと等の理由で、この手法がとれない場合がある。真空容器を加熱することなく、内部構造物のみを昇温することができればそのような問題は解決できる。そのために,ヒーターを真空容器内部へ導入し,熱源と真空容器の間を熱遮蔽し、熱流量を構造物へ向ければよい。J-PARC 3GeVシンクロトロンのビーム出射用キッカー電磁石は、そのような手法を用いて脱ガスを行いたい真空内装置の一つである。我々は、キッカー電磁石をビームラインに設置した状態で脱ガスするために、熱源を真空容器内に導入する手法の試験を行った。結果、複数枚の熱遮蔽板を用いることで、真空容器の温度上昇を抑えた上で、キッカー電磁石を昇温・脱ガスできることを実証した。現在実機へのインストールの準備中である。発表では実証試験の結果、実機に適用するヒーター及び反射板の設計について述べる。さらにビームラインのキッカー電磁石エリアの排気速度増加と合わせて、同エリアの真空向上についての報告を行う。
 
13:10 - 15:10 
TUP105
p.1197
SuperKEKB真空システムのコミッショニング
Commissioning of the SuperKEKB Vacuum System

○末次 祐介,柴田 恭,石橋 拓弥,白井 満,照井 真司,金澤 健一,久松 広美(KEK)
○Yusuke Suetsugu, Kyo Shibata, Takuya Ishibashi, Mitsuru Shirai, Shinji Terui, Ken-ichi Kanazawa, Hiromi Hisamatsu (KEK)
 
SuperKEKBは、5年以上にわたる建設を終え、2016年2月からコミッショニングを開始した。真空システムは4 GeV陽電子リングの約90%、7GeV電子リングの約20%のビームパイプや真空コンポーネントが新規のものに置き換えられた。2月のビーム運転開始以来、蓄積ビーム電流は徐々に増え、5月中旬までに陽電子リング、電子リングには、それぞれ、745 mA、685 mAが蓄積された。積分ビーム電流(ビームドーズ)は、それぞれ、約350 Ah、約300Ahである。真空システムではこれまで大きな問題を生じず、順調に稼働している。新たに導入された制御システムも問題なく働いている。KEKB時に開発された新しい構造や機能を持つベローズチェンバー、フランジ、コリメータ等の温度も問題ない。今回のビーム運転の大きな目的の一つは、ビームパイプの真空焼き(放射光によるビームパイプ表面からの脱ガス)であるが、単位電流あたりの圧力上昇はビームドーズ増加とともに順調に下がっている。ビーム運転時の残留ガスはNEGを主ポンプとるす排気系では典型的な分圧となっている。陽電子リングではビームパイプ内の電子密度も測定しており、新規ビームパイプのアンテチェンバー構造やTiNコーティングの電子密度低減効果も見え始めている。ここでは、コミッショニング中に得られた成果や発生した問題などを報告する。
 
電磁石と電源 (8月9日 コンベンションホール)
13:10 - 15:10 
TUP106
p.1200
SuperKEKB主リング電磁石システムの運転報告
Report of Magnet System for SuperKEKB

○植木 竜一,大澤 康伸,増澤 美佳(KEK)
○Ryuichi Ueki, Yasunobu Ohsawa, Mika Masuzawa (KEK)
 
SuperKEKB加速器は2016年2月に試運転(Phase I)を開始した。主リング電磁石システムはKEKB時に比べて、ウィグラー電磁石の増設、陽電子リングの偏向電磁石全数の入れ替え、衝突点両側の電磁石レイアウトの変更等大幅な改造が行われたが予定通り建設が終了した。また、これらの変更に対応して電磁石に電流を供給するための電源システムや磁石を冷却するための冷却水配管の増設も並行して行われた。SuperKEKB電磁石システムは1700台を越える水冷式電磁石、及び800台以上に及ぶ空冷式電磁石から成り立つ規模の大きなものである。このような大規模なシステムを、電源システムの立ち上げや冷却水配管作業との干渉を考慮しつつ、限られた労力で限られた時間内に立ち上げることは決して容易なことではない。幸いにもビーム運転に重大な支障となるトラブルは5月現在発生してないが、冷却水インターロックによるビームアボートは数件発生している。本発表では電磁石システムの立ち上げについてまとめると共に、運転中に発生したトラブルについてその内容、原因の推定、対策について報告する。
 
13:10 - 15:10 
TUP107
p.1204
J-PARC-MRアップグレードのための新しい速い取り出し用低磁場セプタム電磁石の開発
The development of a new First Extraction Septum Magnet for Upgrading of J-PARC MR

○芝田 達伸(KEK),川口 祐介,中村 健太(ニチコン草津),石井 恒次,杉本 拓也,松本 教之,松本 浩(KEK),Fan Kuanjun(HUST)
○Tatsunobu Shibata (KEK), Yusuke Kawaguchi, Kenta Nakamura (Nichicon), Koji Ishii, Takuya Sugimoto, Noriyuki Matsumoto, Hiroshi Matsumoto (KEK), Kuanjun Fan (HUST)
 
J-PARC-MRの速い取り出し用ビームパワーの目標値は750kWである。そのため繰返し周期を1.3秒(1Hz化)にする必要がありMR用出射電磁石の改修が進行中である。本発表ではその内の低磁場セプタム電磁石のアップグレードについて報告する。現行機の低磁場セプタム電磁石は電流型セプタム電磁石であるためセプタムコイルを使用している。しかしコイル振動によるセプタムコイル表面の絶縁耐久性が近年心配されている。他にもビーム強度増強に伴い大きくなるビームハロー部のビーム損失量を軽減するために現行機よりも大きなアパーチャーの電磁石が必要になる。更に周回軌道上への漏れ磁場も磁極間磁場の10^-3程度と決して小さくはない。大強度化のため新しい低磁場セプタム電磁石と電源を開発した。新しい低磁場セプタム電磁石には誘導型渦電流タイプ、通称Eddyカレント型と呼ぶ電磁石を採用した。Eddyカレント型にセプタムコイルはなく、薄いセプタム板で発生する渦電流を使って漏れ磁場分を消失させる事ができる。セプタムコイルがないため絶縁耐久性の心配はなく、漏れ磁場も10^-4台を期待している。2014年に1台目のEddyセプタム電磁石と電源を構築した。2014年のPASJでは磁極内磁場と漏れ磁場測定結果について報告した。その後は電源調整や長時間の安定性試験等を行っている。2016年には2台目のEddyセプタムを製作した。本発表では電源調整の現状や最新の磁場測定結果について報告する。
 
13:10 - 15:10 
TUP108
p.1209
J-PARCメインリング 入射補正キッカー電磁石のアップグレード
Upgrade of Compensation Kicker Magnet for J-PARC Main Ring

○杉本 拓也,石井 恒次,芝田 達伸,松本 浩(KEK),Fan Kuanjun(中国華中科技大学)
○Takuya Sugimoto, Koji Ishii, Tatsunobu Shibata, Hiroshi Matsumoto (KEK), Kuanjun Fan (HUST, China)
 
J-PARC加速器メインリングでは、2台のセプタム電磁石と4台の集中定数型キッカー電磁石を用いて、上流のRCS加速器から供給される3GeVの陽子ビームを計8バンチ入射している。2013年に実施した補正回路の導入により、入射キッカー電磁石のパルス波形の立ち上がり時間は、350nsから190nsにまで改善した。これにより、RF加速空洞に2倍高調波を重畳して、バンチ長をビーム軸方向に最大400nsにまで伸ばす事が可能となった。しかしながら、連続する2つの反射波により、複数の周回バンチが蹴られ、入射ビームロスの主な原因となっていた。これらの軌道を補正するためには、短時間に2つのパルス磁場を生成する事が必要であった。2015年の加速器学会(THOM01)において報告したシステムでは、1台のキッカー電磁石に対し、ダイオードで整流した2台のパルス電源の出力を供給して、2つのパルス磁場を生成しようとした。しかしながら、ダイオード部での反射波の影響により、意図したパルスを形成出来なかった。よって、今回は2台の電磁石 (集中定数型、磁極長470mm、最大積分磁場6.1e-3Tm)に対し、2つのパルス電源を接続する事で、2つのパルス磁場を生成する事にした。2016年1月にトンネル内(入射キッカー電磁石の下流約80m)に電磁石を設置した。本発表では電磁石のデザインとサーチコイルによる磁場測定、ワイヤーによるインピーダンス測定、陽子ビームを用いた性能評価について報告する。
 
13:10 - 15:10 
TUP109
p.1214
J-PARCハドロン実験施設における一次ビームライン分岐部電磁石のメンテナンスシナリオ
A Remote Handling Magnet System in a branch region of a new primary beam line at the J-PARC Hadron Facility

○広瀬 恵理奈,上利 恵三,青木 和也,家入 正治,岩崎 るり,加藤 洋二,里 嘉典,澤田 真也,高橋 仁,田中 万博,豊田 晃久,皆川 道文,武藤 亮太郎,森野 雄平,山野井 豊,渡辺 丈晃(KEK)
○Erina Hirose, Keizo Agari, Kazuya Aoki, Masaharu Ieiri, Ruri Iwasaki, Yohji Kato, Yoshinori Sato, Shinya Sawada, Hitoshi Takahashi, Kazuhiro Tanaka, Akihisa Toyoda, Michifumi Minakawa, Ryotaro Muto, Yuhei Morino, Yutaka Yamanoi, Hiroaki Watanabe (KEK)
 
ハドロン実験施設では、high-p/COMETビームラインと呼ばれる、 新しい一次ビームライン(Bライン)が現在建設中である。 スイッチヤードにはBライン用の電磁石が約20台既にインストール された。high-p/COMETビームラインは、既存の一次ビームライン であるAラインから、1台のランバートソン磁石と2台のセプタム 磁石により5°の角度で取り出される。このセプタム電磁石より 下流の電磁石は、将来的に放射化が予想される上に、Aライン とBラインが非常に近接している。本件では、この分岐部直下流 部分の電磁石のメンテナンスシナリオについて報告する。
 
13:10 - 15:10 
TUP110
p.1219
J-PARCハドロン実験施設における電磁石用電源制御システムの開発
Development of Power Supply Control System for J-PARC Hadron Experimental Facility

○上利 恵三,里 嘉典,豊田 晃久,森野 雄平(高エネルギー加速器研究機構)
○Keizo Agari, Yoshinori Sato, Akihisa Toyoda, Yuhei Morino (KEK)
 
J-PARCハドロン実験施設では加速器から取り出された陽子ビームを常伝導電磁石で偏向・収束・拡散させ、二次粒子生成標的やビームダンプまで導いている。現在ハドロン実験施設内で電磁石用電源は1次陽子ビームラインで42台、2次粒子ビームラインで40台以上の直流電源を使用してビーム運転を行っている。これらの電源とその制御システムは電源の電流・電圧値の超過、電源盤内温度、扉開などのインターロック信号、電源のON/OFF、電流・電圧値、電磁石の極性・状態などを通信し、安全に電磁石へ通電し遠隔操作している。 現在のハドロン実験施設は2005年までビーム運転したKEK12GeV-PSのカウンターホールの電源制御システムを使用しており、老朽化が問題となっている。またハドロン実験施設の2次粒子ビームラインは物理実験によりビームラインの形状、構成が頻繁に変更し、電源や電磁石は設置場所、電流・電圧値、極性なども変更する。上記より電源制御システムの追加や更新も必要になるため、新しい電磁石用電源制御システムの開発を行っている。この電源制御システムはProgrammable Logic Controller (PLC)で構成され、インターロック信号や電源のON/OFF、電流・電圧値などの情報はPLC内部でEPICSレコードが作成され、制御室などで画面表示用に使用される。今回はJ-PARCハドロン実験施設における電磁石用電源制御システムの開発状況について報告する。
 
13:10 - 15:10 
TUP111
p.1222
PF-AR用新キッカー及びセプタム電磁石の磁場測定
Magnetic Field Measurements of the new kicker and septum magnets for PF-Advanced ring

○上田 明,浅岡 聖二,本田 融,長橋 進也,中村 典雄,野上 隆史,高木 宏之,内山 隆司(高エネルギー加速器研究機構)
○Akira Ueda, Seiji Asaoka, Tohru Honda, Shinya Nagahashi, Norio Nakamura, Takashi Nogami, Hiroyuki Takaki, Takashi Uchiyama (KEK)
 
2016年の夏から改造が始まるPF-AR直接入射路の工事に伴い、新たに6.5GeV対応のキッカー及びセプタム電磁石が設置される。 この新規のセプタム電磁石は、AR直接入射路最終段に2台設置され、キッカー電磁石は蓄積リングの新入射点近くに3台設置される。 キッカー及びセプタム電磁石は、どちらもパルス動作をし、最大繰返しは5pulse per secondである。セプタム電磁石はパルス幅100μsec、最大電流8000Aであり、これにより6.5GeVの電子ビームを3°偏向する。これらは渦電流シールドを持つパッシブタイプの構造を持ち、入射点側のセプタムIIは、セプタム開口部からの漏れ磁場の影響を防ぐために、セプタム板を40mm延長している。キッカー電磁石は、パルス幅2.4μsec、最大電流3500Aである。これにより蓄積電子を1.6mrad偏向し3台を使用してパルスバンプを構成する。キッカー電磁石は、フェライトコアを持つウィンドウーフレーム型の電磁石であり、セラミックスダクトの外側に設置されている。 ここでは、これら新規に製作されたキッカー及びセプタム電磁石の磁場測定の結果を報告する。
 
13:10 - 15:10 
TUP112
p.1227
カルマンフィルターによる励磁電流安定度の評価
Kalman Filter Estimation on Current Stability of Magnet

○尾崎 俊幸(高エネルギー加速器研究機構)
○Toshiyuki Ozaki (KEK)
 
PF-ARの運転時には、電磁石電源の電流値がモニターされ、デジタルデータとして記録される。 そのモニターケーブルには、大電源からのノイズが入りこみ、精度を低くしている。 そこでノイズと真値を分離するために時系列解析を行った。 電流変動のトレンドを調べるために、カルマンフィルターの平滑化の方法を用いた。
 
13:10 - 15:10 
TUP113
p.1230
J-PARCミュオン科学実験施設D-Line用超伝導輸送ソレノイドの設計・製作
Design and Manufacture of Superconducting Transport Solenoid for D-Line at J-PARC Muon Science Facility

○田中 靖之,仙波 智行,中島 翔太郎,萩原 好晃,木戸 修一(日立製作所),佐々木 憲一,下村 浩一郎,河村 成肇,ストラッサー パトリック,槙田 康博,大畠 洋克,黒澤 宣之,三宅 康博(高エネルギー加速器研究機構)
○Yasuyuki Tanaka, Tomoyuki Semba, Shotaro Nakajima, Yoshiaki Hagiwara, Shuichi Kido (Hitachi, Ltd.), Ken-ichi Sasaki, Koichiro Shimomura, Naritoshi Kawamura, Patrick Strasser, Yasuhiro Makida, Hirokatsu Ohhata, Noriyuki Kurosawa, Yasuhiro Miyake (KEK)
 
高エネルギー加速器研究機構(KEK)ではJ-PARCミュオン科学実験施設(MUSE)を2008年より運営している。4つのミュオンビームラインのうち、汎用ミュオンビームライン(D-Line)では超伝導ソレノイドを用いて、運動量レンジが数MeV/cから120MeV/cの正・負ミュオンビーム(高速/崩壊ミュオン)と高強度の30MeV/c正ミュオンビーム(低速/表面ミュオン)を様々な科学プログラムへ供用してきた。D-Lineは他のJ-PARC施設と同様に東日本大震災により重大な被害を受け、超伝導輸送ソレノイドを再製する必要が生じた。新たに設計・製作したソレノイドの設計諸元を以下に示す。ソレノイド長:6m、ウォームボア径:0.2m、中心磁場:3.5T、定格電流415A、超伝導線:NbTi/Cu、クエンチ保護方式:クエンチバックヒータ。全長6mのソレノイドは12個の長さ0.5mコイルを直列接続する構成とした。ソレノイド全体はヘリウム冷凍機より供給される超臨界ヘリウム強制流により間接冷却され、電流リードを含めたシールド系全体についてもガスヘリウム強制流により間接冷却される。本報では新たに製作したD-Line用超伝導輸送ソレノイドの設計及び製作プロセス、完成後の常温磁場測定について報告する。
 
13:10 - 15:10 
TUP114
p.1233
あいちSRにおける永久磁石を用いた偏向磁石の開発
Development of permanent dipole magnet for Aichi SR storage ring

○福江 修平(名古屋大学大学院),高嶋 圭史,保坂 将人,持箸 晃,真野 篤志(名古屋大学SR研究センター),庄司 善彦(兵庫県立大学),加藤 政博,林 憲志(分子科学研究所 UVSOR)
○Shuhei Fukue (Nagoya University), Yoshihumi Takashima, Masato Hosaka, Akira Mochihashi, Atsushi Mano (NUSR), Yoshihiko Shoji (University of Hyogo), Masahiro Katoh, Kenji Hayashi (UVSOR)
 
我々は、あいちSR蓄積リングへの導入を目指して、永久磁石を用いた偏向磁石の開発を行っている。従来の偏向電磁石に代わる省エネ・低コストである新たな偏向磁石を開発し、次世代加速器への応用を目的としている。 永久磁石を用いた偏向磁石は、電力を要さないことに加えて、付帯設備が不要なため、コンパクトであることやメンテナンス減といった点も見込まれ、従来の電磁石に比べて導入する利点は大きい。 本研究では、永久磁石の中でも良好な磁気特性を有するネオジム磁石を用いることとした。偏向磁石は放射光発生源のためC型のヨーク(ギャップ50 mm)であり、さらに既存の電磁石に置き換えられるよう空間的制限を考慮する必要がある。そのヨーク内にネオジム磁石を配置することで得られる電子軌道上の磁力が要求値 (磁束密度1.4 T , 有効範囲±30 mm) を満たす形状を模索した。 手法は、磁場解析ソフトを用いて二次元及び三次元の磁場シミュレーションをおこなった。ヨーク内に永久磁石を配置した様々な偏向磁石の形状についてシミュレーションを繰り返し、電子軌道上の磁束密度とその有効範囲を定量的に評価した。 本発表では、要求値を満たすに至るまでの永久磁石を用いた偏向磁石の設計及び現在検討中の試作品の評価方法について報告する。
 
13:10 - 15:10 
TUP116
p.1237
貫通溝内の発熱を考慮した電力線敷設設計
Heat control design of the power cable wiring.

○荒木田 是夫(KEK Linac)
○Yoshio Arakida (Linac div., Acc. lab., KEK)
 
KEK-B の電子陽電子加速器の陽電子発生部に置いて、陽電子直後の 収束は加速管の他に周囲にソレノイドコイルを置き磁場が併用される。 これらソレノイドコイルの励磁電流は地上のクライストロンギャラリ-より2.5mの貫通溝を通り地下加速器室の磁石に供給される。 ソレノイドコイルの励磁は直流低圧である。 直流低圧で電流の 多い場合の課題は電線の発熱であり、本件においては放熱の余裕が 少ない床貫通溝内が懸念された。 本稿は発熱を抑えた電力線の配線設計手順と運転時の温度測定結果を 報告する。
 
加速器応用・産業利用 (8月9日 コンベンションホール)
13:10 - 15:10 
TUP117
p.1240
中性子反射率法を用いた金属磁性体コア防水膜の性能評価
Study of waterproof thin-layers for the magnetic alloy core by neutron reflectivity

新関 智丈,永山 紗智子,長谷川 良雄(アート科学),吉井 正人(KEK),下村 昭夫(下村漆器店),佐原 雅恵,宮田 登,○阿久津 和宏(CROSS)
Tomotake Niizeki, Sachiko Nagayama, Yoshio Hasegawa (ART KAGAKU), Masato Yoshii (KEK), Akio Shimomura (Shimomurashikkiten Co., Ltd.), Masae Sahara, Noboru Miyata, ○Kazuhiro Akutsu (CROSS)
 
J-PARCメインリングの加速器空胴に用いられる金属磁性体カットコアは、J-PARC陽子加速システム性能を飛躍的に高めるための重要な役割を担っている。本磁性体コアは水冷方式により冷却されているため、perhydropolysilazane (PHPS) 表面シリカコーティングによる防錆加工を施し、腐食劣化を抑制している。PHPSは簡易かつ効率的にコーティング膜を形成できる優れた材料であるが、そのコーティング膜の構造と防水性能に関する詳細は明らかとなっていない。本研究では、シリコン基板上にPHPS及び疎水性Me-PHPSのコーティング膜を作成し、そのコーティング膜に対する水の浸透状態を中性子反射率法により調べることで、その防水メカニズムを考察した。 中性子反射率の測定は、J-PARC/MLF BL17に設置された偏極中性子反射率計「写楽」で行った。中性子反射率データ解析の結果、PHPS膜の場合は表面から40nmの深さまで水が浸透するが、Me-PHPS膜の場合は表面から15 nm程度の深さまでしか水が浸透していないことが明らかとなった。どちらも表面で水の浸入を防いでいるが、疎水性メチル基を有するMe-PHPSはより防水効果が高いことが示された。発表では、中性子反射率解析結果の詳細について示しながら、その防水性能と構造の関係について詳しく議論する。
 
13:10 - 15:10 
TUP118
p.1244
iBNCT用線形加速器のビームコミッショニング
Beam commissioning of the linac for iBNCT

○内藤 富士雄,穴見 昌三,池上 清,魚田 雅彦,帯名 崇,川村 真人,栗原 俊一,小林 仁,佐藤 吉博,柴田 崇統,嶋本 眞幸,高木 昭,高崎 栄一,チウ フェン,方 志高,二ツ川 健太,堀 洋一郎,本田 洋介,丸田 朋史,三浦 太一,三浦 孝子,宮島 司,劉 勇(KEK),三浦 昭彦(JAEA),大西 貴博,熊田 博明,田中 進(筑波大),大場 俊幸,名倉 信明(NAT),大内 利勝(ATOX)
○Fujio Naito, Shozo Anami, Kiyoshi Ikegami, Masahiko Uota, Takashi Obina, Masato Kawamura, Toshikazu Kurihara, Hitoshi Kobayashi, Yoshihiro Sato, Takanori Shibata, Masayuki Shimamoto, Akira Takagi, Eiichi Takasaki, Feng Qui, Zhigao Fang, Kenta Futatsukawa, Yoichiro Hori, Yosuke Honda, Tomofumi Maruta, Taichi Miura, Takako Miura, Tsukasa Miyajima, You Liu (KEK), Akihiko Miura (JAEA), Takahiro Onishi, Hiroaki Kumada, Susumu Tanaka (Univ. of Tsukuba), Toshiyuki Oba, Nobuaki Nagura (NAT), Toshikatsu Ouchi (ATOX)
 
いばらき中性子医療研究センターのホウ素中性子捕獲療法(iBNCT)システムは線形加速器で加速された8MeVの陽子をBe標的に照射し、中性子を発生させる。この線形加速器システムはイオン源、RFQ、DTL、ビーム輸送系と標的で構成されている。このシステムによる中性子の発生は2015年末に確認されているが、その後システムの安定性とビーム強度を共に高めるため多くの改修を施した。そして本格的なビームコミッショニングを2016年5月中旬から開始する。その作業の進展状況と結果を報告する。
 
13:10 - 15:10 
TUP119
p.1247
MOS-FETsベースのLTDを用いた両極性パルス発生器の開発
A development of a bipolar pulse generator using MOS-FETs based LTD.

○黄瀬 圭祐,徳地 明(PPJ),江 偉華(長岡技術科学大学)
○Keisuke Kise, Akira Tokuchi (PPJ), Weihua Jiang (Nagaoka university of technology)
 
現在、LTD(Linear Transformer Drivers)をベースにした、パルス電源の開発を行っている。 本発表は最大出力電圧が1kVのLTD基板を正のパルス発生に15段、負のパルス発生に15段を使用し、出力電圧±10kVp、パルス幅300ns、繰り返し1kHzを実現した、両極性パルス発生器の開発に関するものである。
 
13:10 - 15:10 
TUP120
p.1250
UVSOR-IIIにおける逆コンプトン散乱ビームライン開発とNRF-CTへの応用
Laser Compton Back-Scattering Gamma-ray Beamline and Its Application to NRF-CT

○大垣 英明,紀井 俊輝,全 炳俊(京都大学エネルギー理工学研究所),大東 出(京都大学エネルギー理工学研究所(現在 日本アドバンテストテクノロジー株式会社)),豊川 弘之,平 義孝(産業技術総合研究所),早川 岳人,静間 俊行(量子科学技術研究開発機構),加藤 政博,山崎 潤一郎(分子科学研究所)
○Hideaki Ohgaki, Toshiteru Kii, Heishun Zen (Institute of Advanced Energy, Kyoto University), Izuru Daito (Institute of Advanced Energy, Kyoto University (present Nippon Advanced Technology Co.,Ltd.)), Hiroyuki Toyokawa, Yoshitaka Taira (National Institute of Advanced Industrial Science and Technology), Takehito Hayakawa, Toshiyuki Shizuma (National Institutes for Quantum and Radiological Science and Technology), Masahiro Katoh, Jun-ichiro Yamazaki (Insititute for Molecular Science)
 
三次元同位体分布計測の基礎研究を行う目的で、分子研UVSOR-IIIにおいて、蓄積リングを周回する高エネルギー電子と大強度レーザーとを用いたレーザー逆コンプトン散乱ガンマ線のビームラインを建設している。レーザーには1.94μmのファイバーレーザーと、UVSORの定常運転モードである750MeV、300mAの電子ビームを用いて、最大エネルギー5.4MeV、コリメータ無しでのガンマ線収量1x10^7photons/sを得ている。このガンマ線を用いて手始めに2次元の同位体分布をNRFの吸収法を用いて2次元CT画像の取得を試みた。CT用のサンプルターゲットには鉛、アルミニウム、ステンレススチールのロッドを5x5のマトリックスに組み、これを透過してくるガンマ線を鉛ブロックのWitness Targetにて光核共鳴散乱(NRF)を起こさせて208-Pbの同定を行った。本会ではビームラインの概要と諸元について報告をおこなうとともに、NRF-CT画像取得結果について報告を行う。
 
13:10 - 15:10 
TUP121
p.1254
高速、高電圧パルス電源の開発
Development of a very short and high voltage pulse power supply

○内藤 孝(高エネルギー加速器研究機構),福田 憲司(産業技術総合研究所),岩室 憲幸(筑波大学),徳地 明((株)パルスパワー技術研究所)
○Takashi Naito (KEK), Kenji Fukuda (AIST), Noriyuki Iwamuro (Tsukuba Univ.), Akira Tokuchi (PPJ)
 
近来、高電圧、超短パルスを用いた加速器の可能性が検討されている。 高電圧、超短パルスを用いることによって、DCやRFに比較して放電に対して大きく有利になり高電界を印加出来るようになる。これを加速電圧として用いることにより効率のいい加速または低エミッタンス電子ビーム生成など多くの改善が期待される。 パルス幅がナノ秒で10kVを超えるパルス電源は、従来はスパークギャップなどでしか実現することが出来なかった。スパークギャップは放電動作の不安定さから加速器で用いる精度ではない。近来、半導体によってこのレベルのパルスを生成する技術が進み、加速器に用いる可能性が議論されている。 我々はSIC半導体を用いた高電圧、超短パルス電源の開発を行い、加速器に用いることを目指している。現在までに6kV, 120A, 立ち上がり5ns, パルス幅10nsが実現出来ており、さらに高速化をめざしている。
 
13:10 - 15:10 
TUP122
p.1257
粒子線治療のための変調型スパイラルスキャニングシステムの開発研究
Development of Modulated Spiral Scanning System for Particle Therapy

○原 周平,福田 光宏(阪大 RCNP),小泉 雅彦(阪大 医学系研究科 保健学科),高階 正彰(阪大 医学系研究科 保健学科),隅田 伊織(阪大 医学系研究科),村上 秀明,北森 秀希(阪大 歯学部附属病院),坂田 愛美,岸上 祐加子(阪大 医学系研究科 保健学科),Koay Huiwen,畑中 吉治,依田 哲彦(阪大 RCNP),島田 健司(株式会社 CICS),森信 俊平,齋藤 高嶺,田村 仁志,安田 裕介,鎌倉 恵太,久米 世大,山野下 莉那(阪大 RCNP)
○Shuhei Hara, Mitsuhiro Fukuda (RCNP,Osaka University), Masahiko Koizumi, Masaaki Takasina (Department of Medical Physics & Engineering,Graduate School of Medicine and Health Science,Osaka University), Iori Sumida (Osaka University Graduate School of Medicine), Shumei Murakami, Hideki Kitamori (Osaka University Dental Hospital), Manami Sakata, Yukako Kishigami (Department of Medical Physics & Engineering,Graduate School of Medicine and Health Science,Osaka University), Huiwen Koay, Kichiji Hatanaka, Tetsuhiko Yorita (RCNP,Osaka University), Kenzi Shimada (CICS Inc.), Shunpei Morinobu, Takene Saitou, Hitoshi Tamura, Yuusuke Yasuda, Keita Kamakura, Toshihiro Kume, Rina Yamanoshita (RCNP,Osaka University)
 
粒子線治療における照射法において、現在までブロードビーム法が最も一般的に採用されてきた。しかしながら、中性子などの二次放射線の発生することやビーム効率が悪いという欠点があり、次世代照射法であるスキャニング照射法に移行しつつある。スキャニング照射法では加速器から出たビームをがん病巣を塗りつぶしていくように直接照射するので、ブロードビーム法の欠点を解決することができる。スキャニング照射法には、スポットスキャニングやラインスキャニング、ラスタースキャニングといった種類があるが、これらはその走査軌道に起因して、腫瘍端部での正常組織への線量はみだしが懸念される。そこで我々はこの問題を解決する照射法として、スパイラルスキャニングを提案する。スパイラルスキャニングの特徴として、①ペンシルビームを用いて腫瘍輪郭と相似な形状に沿って渦状に連続照射していくため、腫瘍端部での正常組織へのはみだしを最小限に抑えることができる、②スパイラル走査軌道の中心を腫瘍の動きに合わせて移動させることで、呼吸同期追従型の照射が容易にできる、ということが挙げられる。スパイラルスキャニングの実用に向けて、まずは基礎研究として、ビーム偏向装置とビーム制御システムの開発を行い、実際に医療用ライナックで加速された5MeVの電子ビームを用いた照射試験を行った。本発表では、得られた結果と今後の展望について報告する。
 
13:10 - 15:10 
TUP123

LLFP 核種核変換処理法に関する加速器ベースの大強度冷・熱中性子源の設計
Design of an accelerator-driven system of a high-intensity cold and thermal neutron for transmutation of long-lived fission products
○久米 世大,福田 光宏,土岐 博,関 亮一,畑中 吉治,依田 哲彦,島田 健司,安田 裕介,森信 俊平,齋藤 高嶺,田村 仁志,鎌倉 恵太,原 周平,Koay Huiwen,山野下 莉那(阪大 RCNP)
○Toshihiro Kume, Mitsuhiro Fukuda, Hiroshi Toki, Ryoichi Seki, Kichiji Hatanaka, Tetsuhiko Yorita, Kenzi Shimada, Yusuke Yasuda, Shunpei Morinobu, Takene Saitou, Hitoshi Tamura, Keita Kamakura, Shuhei Hara, Huiwen Koay, Rina Yamanoshita (RCNP, Osaka University)
 
原子力発電所の使用済み燃料を再処理した際に発生する高レベル放射性廃棄物の処理・処分が社会的問題になっており、次世代への負担を軽減するためにその方法の開発が求められている。本研究では高レベル放射性廃棄物のうち処理法の確立していない LLFP (長寿命核分裂生成物)の 4核種 (Pd-107, Cs-135, Se-79, Zr-93) を対象とした新しい核変換処理法の開発を目指す。複数の加速器を並列化して得られる大強度陽子ビームを重元素ターゲットに照射し、核破砕反応により大強度の中性子束を発生させる。ターゲットの周りには重水などの減速材を配置し、数 barn を超える大きな中性子捕獲反応断面積が得られる冷・熱中性子束を効率よく生成する。そのため、安定性・信頼性に優れる小型高温超伝導加速器群と大強度冷・熱中性子源の概念設計を行い、中性子捕獲反応による核変換量の最大化を目指す。本発表では冷・熱中性子源の構造・サイズを最適化するため、粒子輸送計算コードPHITSを用いたシミュレーション計算を実施し、LLFP核種の核変換率の評価を行った。
 
13:10 - 15:10 
TUP124
p.1262
パルスラジオリシスシステム高度化のためのファイバーレーザーの開発
Development of a Fiber Laser for Improving the Pulse Radiolysis System

○齊藤 悠太郎,添田 雄史,鷲尾 方一(早稲田大学),坂上 和之(早稲田大学高等研究所),保坂 勇志(早稲田大学)
○Yutaro Saito, Yushi Soeta, Masakazu Washio, Kazuyuki Sakaue, Yuji Hosaka (Waseda uni)
 
物質に放射線を照射するとラジカル、イオン、励起状態など中間活性種と呼ばれる短寿命で反応性が高い物質が生成される。中間活性種はその後周囲の物質などと反応する。このときの主な化学反応は初期過程における中間活性種によって決定する。つまり、反応初期過程における中間活性種の挙動を知ることはその後の放射線化学反応の理解・制御において重要である。パルスラジオリシスとは電子線パルスを用いることにより中間活性種の挙動を測定する方法であり、早稲田大学ではこのパルスラジオリシス法を採用している。放射線源には早稲田大学で所有しているフォトカソード高周波電子銃を用いている。現在はパルスラジオリシス高度化に向けた分析光の開発としてSC(Super Continuum)光の開発を目的とし研究を行っている。 早稲田大学ではYbファイバーレーザーとPCF(Photonic Crystal Fiber)を用いたSC光の開発を行ってきた。しかし、可視光領域における安定な分析光の実現には至っていない。そこで昨年度、分析光源として新たにErファイバーレーザー発振器を作成した。現状では発振の確認、非線形結晶を用いた二次高調波の発生、それを用いたns領域での水和電子の測定に成功している。本発表では可視光領域におけるSC光生成及びps領域における測定に向けた発振器の改良、測定高度化のためのパルスラジオリシスシステムの改良、水和電子の線量率効果の影響の分析等の研究状況に関して報告する。
 
13:10 - 15:10 
TUP125
p.1265
収束電子線を用いた断面プロファイル計測システムの開発
Development of the cross-sectional profile measurement system using a focused electron beam

○高橋 孝,五十嵐 大裕,太田 昇吾(早稲田大学理工学術院総合研究所),坂上 和之(早稲田大学高等研究所),遠藤 彰,鷲尾 方一(早稲田大学理工学術院総合研究所)
○Takashi Takahashi, Daisuke Igarashi, Shougo Ota (Reseach Institute for Science and Engineering, Waseda University), Kazuyuki Sakaue (Waseda Institute for Advanced Study, Waseda University), Akira Endo, Masakazu Washio (Reseach Institute for Science and Engineering, Waseda University)
 
近年高強度レーザーの利用が様々な分野で行われている。例えば次世代の半導体露光装置として研究されているEUV(Extreme Ultraviolet)露光装置にはEUV光発生に高強度レーザーをSnの液滴に照射しプラズマを発生させるLPP(Laser Produced Plasma)法が用いられている。この高強度レーザーの収束点での断面プロファイルはLPP法において重要であるが、レーザーの強度が高すぎるためプロファイラなどを用いた既存の計測方法では計測機器が破損してしまうなどの問題が生じる。 そこで本研究室ではフォトカソードRF電子銃から得られる収束電子線を用いた逆コンプトン散乱による高強度レーザーの直接プロファイル計測法を提唱した。逆コンプトン散乱光量は相互作用している領域の電子ビームの電荷量とレーザーの光子数に比例するので、十分に収束された電子ビームでレーザーをスキャンすれば散乱光分布からレーザーの1次元プロファイルを得ることができる。この1次元プロファイルをあらゆる角度から取得し、CT(Computed Tomography)画像再構成法を用いれば2次元のレーザープロファイルも得ることができる。本講演ではレーザーの代わりに金属ワイヤを用いて行った予備実験と実際に高強度レーザーを用いて行った逆コンプトン散乱実験についての実験結果、さらに今後の展望について報告する。
 
13:10 - 15:10 
TUP127
p.1269
高エネルギーX線源を用いた橋梁健全性評価の研究
Structural Analysis and Evaluation of Bridge using High Energy X-ray Source

○竹内 大智,矢野 亮太,上坂 充(東京大学原子力国際専攻),田中 泰司(東京大学生産技術研究所),高橋 佑弥(東京大学社会基盤学専攻),土橋 克弘,橋本 英子(東京大学),草野 譲一(アキュセラ),大島 義信(土木研究所)
○Hiroaki Takeuchi, Ryota Yano, Mitsuru Uesaka (The University of Tokyo/Dept.NEM), Yasushi Tanaka (The University of Tokyo/IIS), Yuya Takahashi (The University of Tokyo/Civil Engineering), Katsuhiro Dobashi, Eiko Hashimoto (The University of Tokyo), Joichi Kusano (Accuthela), Yoshinobu Oshima (PWRI)
 
高度経済成長期に急速に普及した橋梁などの社会インフラであるが、老朽化が深刻視されており、正確な健全性評価システムの開発の需要が高まっている。そのため、我々は高エネルギーX線を用いた非破壊検査による健全性評価システムの開発を目指している。 2015年3月、950keV X-band Linac X線源による透視検査を土木研究所にて行い、橋梁供試体内に存在するグラウト未充填箇所の検出に成功した。また、グラウト検出の際に求められる充填度合いを正確に評価するため、グラウト充填状況評価における評価精度向上に向けたグラウト充填度の異なる供試体を用いた実験を行った。 また、昨年度から行っている妙高大橋におけるX線透視検査の結果を用いた3次元有限要素法における構造解析を行い、妙高大橋の健全性評価を行った。健全性評価の結果を元に、解体工法の検討を行った。
 
13:10 - 15:10 
TUP128

産業用コンパクト中性子源のための小型陽子加速器システムの設計
Design of a downsized proton accelerator system for an industrial compact neutron source
○林崎 規託(東工大研究院),池田 翔太,村田 亜希(東工大院)
○Noriyosu Hayashizaki (IIR, Tokyo Tech), Shota Ikeda, Aki Murata (Tokyo Tech)
 
産業界が導入しやすいエントリータイプのコンパクト中性子源の実用化を目指して,陽子線ベースの加速器駆動型中性子源に用いられる高周波四重極(RFQ)線形加速器システムの小型化開発に,装置不要時の廃棄処分方法も考慮しながら取り組んでいる。その開発コンセプトと,これまでの設計結果について報告する。
 
13:10 - 15:10 
TUP129
p.1272
社会インフラ水分検出用可搬型線形加速器駆動中性子源の開発
Development of Mobile Linac-driven Neutron Source for Moisture Inspection of Societal Infrastructures

○ベレデ ジャンミシェル(東大原子力国際),三津谷 有貴(東大原子力専攻),關 義親(JAEA J-PARCセンター),上坂 充(東大原子力専攻)
○Jean-michel Bereder (Department of Nuclear Engineering and Management , , Graduate School of Engineering, The University of Tokyo), Yuki Mitsuya (Nuclear Professional School, Graduate School of Engineering, The University of Tokyo), Yoshichika Seki (JAEA J-PARC Center), Mitsuru Uesaka (Nuclear Professional School, Graduate School of Engineering, The University of Tokyo)
 
The existing non-destructive inspection method using high energy X-ray for societal infrastructures is aimed to detect the inner flaw in concrete structure and iron rods. In addition to the conventional method, we are now developing an innovative inspection system using mobile compact linac driven neutron source to perform neutron backscatter moisture detection method to measure moisture distribution in concrete structure, in order to estimate the corrosion probability distribution of iron rods. Beryllium, having the lowest threshold energy for (gamma, n) reaction, forms the neutron source system combined with our mobile electron linac driven bremsstrahlung X-ray source. The cubic shape beryllium target is surrounded by a boric acid resin layer for neutron ray shield, and a lead layer for gamma/X ray shield. The experiment of moisture detection of concrete structure was conducted using the newly developed mobile linac driven neutron source. 50 g of water under an asphalt sample taken from a real deteriorated bridge of thickness of 7 cm was detected with 1 sigma of confidence level, and the significance level increased to 3 sigma by reducing the background noise.
 
13:10 - 15:10 
TUP130
p.1277
ガフクロミックフィルムの低エネルギーイオンビーム強度分布計測への適用
Application of a Gafchromic film to the intensity distribution measurement of low-energy ion beams

○百合 庸介,鳴海 一雅,湯山 貴裕(量研機構高崎研)
○Yosuke Yuri, Kazumasa Narumi, Takahiro Yuyama (QST/Takasaki)
 
フィルム線量計の一種である、ガフクロミックフィルム(Ashland Inc.)は、元来X線やγ線による放射線治療の品質保証に用いられるとともに、数100MeV/uの高エネルギーイオンビームによる粒子線治療における線量分布計測にも利用されている。一方で、高い空間分解能で簡便な計測が行えるという利点から、1~10MeV/uオーダーのイオンビームの2次元強度分布計測等にも用いられており、加速器技術として利用が拡大している。本研究では、表面保護膜がなく感受層が剥き出しのガフクロミックフィルムHD-V2に着目し、より低いエネルギーのイオンビームへの適用可能性を検討した。そこで、量研機構高崎研のイオン照射研究施設TIARAのサイクロトロン、タンデム加速器、イオン注入装置において、27MeV/uから1.5keV/uの広いエネルギー範囲のイオンビームをHD-V2フィルムへ照射し、その着色応答特性を調べた。その結果、10keV/uオーダーまでのイオン照射によって実用上有意な吸光度変化が生じることが分かった。さらに、HD-V2フィルムが、そのような低エネルギーイオンビームの2次元照射野分布計測に利用できることを実証した。
 
加速器土木・放射線防護 (8月9日 コンベンションホール)
13:10 - 15:10 
TUP131
p.1281
熱収縮による波長の変化を用いた極低温用光ファイバ温度計の開発
R&D of optical fiber thermometer for very low temperature

○清水 洋孝,小島 裕二,仲井 浩孝,中西 功太,原 和文,本間 輝也(KEK)
○Hirotaka Shimizu, Yuji Kojima, Hirotaka Nakai, Kota Nakanishi, Kazufumi Hara, Teruya Honma (KEK)
 
SuperKEKBやcERL及びSTFは、超伝導加速方式を利用した加速器施設であり、その運転には、液体状態のヘリウムや窒素を含む、大量の冷媒を使用する冷凍サイクルを連続的且つ安定的に制御・運用する事が必要である。この目的を達成する為には、サイクルの各段階における冷媒の温度を正しく測定して、制御に反映させる必要があるが、通常使われている様な測温体を用いた場合では、測定点を増やす事に伴う費用の増加や、断熱シールド内へ金属製の信号線を持ち込む事による熱侵入の問題が生じる。これらの問題を克服する事を目的として進めている、超流動ヘリウム環境の様な極低温領域でも使用出来る光ファイバーを用いた温度計の開発について、現在KEKにおいて行っている実験の報告を行う。
 
13:10 - 15:10 
TUP132
p.1285
HLSでモニターしたSuperKEKB衝突点近傍床レベル変動
TUNNEL LEVEL VARIATION IN THE SUPERKEKB INTERACTION REGION MONITORED BY HLS

○川本 崇,増澤 美佳,安達 利一(KEK)
○Takashi Kawamoto, Mika Masuzawa, Toshikazu Adachi (KEK)
 
SuperKEKB加速器では、前身のKEKB加速器の40倍のルミノシティを目指すため、ビーム衝突点の垂直方向ビームサイズを50~60nmに絞る必要があるが、加速器トンネルのレベル変動はこのような極小ビームサイズでの衝突性能に大きな影響を及ぼす。SuperKEKB加速器トンネルに於ては、その建設時から南アーク部の約500m区間にHLS(Hydrostatic Levelling System)を設置し、トンネルレベルの変動を見てきたが、この衝突点近傍でもレベル変動を観測するため、新たに衝突点を挟む200m区間にHLSを設置し観測を始めた。設置から現在に至るまでの約10ヶ月間で、関東・東北豪雨の影響、衝突点近傍に設置されたコンクリートシールドの影響など、いくつかの興味深い観測結果が得られている。ここではSuperKEKB建設時、及び、この2月から開始したコミッショニング時に得られたHLSのデータについて報告する。
 
13:10 - 15:10 
TUP133
p.1288
KEK電子陽電子入射器陽電子生成部の放射線遮蔽
Radiation Shield for the Positron Target of KEKB Injector LINAC

○松本 修二(高エネ研加速器研究施設),岩瀬 広(高エネ研放射線科学センター),柿原 和久,紙谷 琢哉(高エネ研加速器研究施設),佐波 俊哉(高エネ研放射線科学センター),肥後 寿泰,山岡 広(高エネ研加速器研究施設)
○Shuji Matsumoto (KEK Accelerator Lab.), Hiroshi Iwase (KEK Radiation Science Center), Kazuhisa Kakihara, Takuya Kamitani (KEK Accelerator Lab.), Toshiya Sanami (KEK Radiation Science Center), Toshiyasu Higo, Hiroshi Yamaoka (KEK Accelerator Lab.)
 
Super KEKB計画のための、入射器陽電子ターゲットおよび捕獲部の加速器トンネル内の鉄遮蔽体について報告する。当面の陽電子運転に必要な遮蔽構造体を2014年度に設置し、設置後の陽電子運転で、遮蔽性能の評価を行なった。その結果を踏まえて、本格的な陽電子運転に対応するための遮蔽体の最終的な形状の検討を行ない、既存遮蔽体への遮蔽体追加という形で設計をまとめ、2015年度内にそれら追加遮蔽体の製造と設置を行なった。陽電子の定格運転仕様の遮蔽体が完成した。
 
13:10 - 15:10 
TUP134
p.1291
KEKB入射器における遅いトンネル床面変動の動的観測 (II)
Dynamical Observation of Slow Tunnel Floor Motion at the KEKB Injector Linac (II)

○諏訪田 剛,榎本 嘉範,柿原 和久,三川 勝彦,肥後 寿泰(高エ研加速器)
○Tsuyoshi Suwada, Yoshinori Enomoto, Kazuhisa Kakihara, Katsuhiko Mikawa, Toshiyasu Higo (KEK, Acc. Lab.)
 
長基線レーザーアライメントシステムの開発は2009年度より開始され2013年3月に終了した. これまで、加速ユニットの変位を継続して測定してきたが、その変位が時間とともに大きくなっていることが明らかになった. 本現象の主要因は地面の動的変動と考えられるが、地面変動と一口に言っても外気温、日照、気圧、地下水の変位、海洋潮汐、波浪等々様々な要因が寄与する. 地面変動を通して入射器建屋が変形し、さらにトンネルの床面変動を通して入射器全体が変位するという極めて複雑な過程が動的に作用する. 現在の静的な計測システムではこの動的変位を追跡するのは困難である. このような経緯から計算機制御による動的変位計測システムを導入することにした. 遠隔制御が可能なレーザー光軸変位センサー(自動センサー)2台を入射器の500m長直線部中央に建屋継目を挟んだ上下流の床面に設置し、2015年1月から加速ユニットの動的変位の観測を本格的に開始した. その後、2015年9月、新規に自動センサー8台を導入し合計10台の自動センサーを入射器全長に沿って分散配置した. その後計算機によるデータ収集システムの構築を経て2016年1月から加速ユニットの動的変位の計測を本格的に開始した. 本学会では、2016年1-6月まで約半年間に及ぶ入射器トンネルの床面変動の連続観測、特に500m長に渡る床面の動的変動とその解析結果について報告する.
 
13:10 - 15:10 
TUP135
p.1296
KEKB入射線形加速器トンネル床変動の測定(3)
Measurement of floor movement in the KEKB injector LINAC tunnel (3)

○田中 窓香,肥後 寿泰,諏訪田 剛,柿原 和久,榎本 嘉範(KEK),牛本 信二,水川 義和(三菱電機システムサービス株式会社)
○Madoka Tanaka, Toshiyasu Higo, Tsuyoshi Suwada, Kazuhisa Kakihara, Yoshinori Enomoto (KEK), Shinji Ushimoto, Yoshikazu Mizukawa (Mitsubishi Electric System & Service Co., Ltd.)
 
KEKB電子陽電子入射器のビームラインがあるトンネルの床は、地上部や地下環境と連動し、気象条件によっても変動していることがわかっている。特に、トンネル内に複数ヶ所ある建屋結合部付近に著しい変動が見られる。SuperKEKBへのアップグレードでは、エミッタンス保存のために、全長約600 mのビームラインにわたってグローバルでσ=0.3 mm、ローカルでσ=0.1 mmの精度のアライメントが要求される。この高精度アライメントを実現するため、基線となるレーザー光軸位置を加速ユニット架台に取り付けられた四分割型シリコンフォトダイオードで検出するシステムを導入している。このシステムを用いて、2014年には初期のアライメントを実施し、その後1~数ヶ月毎に位置測定を行っている。この測定の結果、1年間で建屋結合部において数mmの変動が見られることを確認した。この動きの詳細を知るため、建屋結合部にダイヤルゲージを設置し、2つの建屋の相対運動の測定を行っている。その結果、最大で40 um程度の日変動が観察され、ビームラインのアライメントに大きな影響を及ぼさないことがわかった一方、500 um程度の年周期の変動が見られた。この変動量はビーム運転に影響を及ぼすと考えられる。また、2015年から測定箇所を増やした結果も併せて報告する。
 
13:10 - 15:10 
TUP136
p.1300
測位センサネットワークシステムの放射線環境下(J-PARC)における耐久性の検証報告
Report of the radiation damage study of the positioning sensor network system in high radiation environment(in J-PARC)

○川端 康夫,松田 浩朗,松元 和伸(飛島建設株式会社),田頭 茂明(関西大学),石井 恒次(高エネルギー加速器研究機構),吉岡 正和(東北大学・岩手大学)
○Yasuo Kawabata, Hiroaki Matsuda, Kazunobu Matsumoto (TOBISHIMA CORPORATION), Shigeaki Tagashira (Kansai univ.), Koji Ishii (KEK), Yoshioka Masakazu (Tohoku Univ. Iwate Univ.)
 
 筆者らは,長大トンネルのILCにおいて施設内の研究者の位置情報,滞在時間および緊急時の双方向情報伝達等を実現するために,測位センサネットワークによる双方向通信と同時測位を実現する安定性・信頼性の高い位置管理システムの開発を進めてきた。既に位置管理システムは実用レベルにあるが,今後の課題として,機器運転時における電波ノイズの通信精度への影響,測位センサ基地局の放射線に対する耐久性を検証する必要がある。2015年度は、現在稼働中であるJ-PARCのMR加速器トンネル内に通信機器を持ち込み、高放射線環境下での装置及び通信状況への影響を調査した。ビーム運転時には最大で約100Gy/month程度の放射線量(中性子・陽子・ガンマ線等)が照射される場所を選んで設置している。運転開始後、ビーム調整期間中のわずか2~5日後、放射線量で0.1Gy以下で測位センサ基地局が故障することが判明した。一方で運転開始前の夏期メンテナンス期間中での残留放射線(主にガンマ線)照射試験では1.6Gyまで照射しても異常は見られず、ビーム無しで機器稼働させたドライ運転状態でも異常は観測されなかった。ILCではガンマ線が主になるため、コバルト60を線源とした民間のガンマ線照射施設に測位センサ基地局を持ち込み、1000Gy程度までの照射試験を追加で実施した。本編ではこれらの実験結果について報告をする。
 
13:10 - 15:10 
TUP137
p.1305
SPring-8 蓄積リングのレベル測量の改良
A level survey improvement for SPring-8 storage ring

○岡安 雄一,木村 洋昭,張 超(高輝度研),松井 佐久夫(理研播磨)
○Yuichi Okayasu, Hiroaki Kimura, Chao Zhang (JASRI), Sakuo Matsui (RIKEN)
 
SPring-8 蓄積リングにて 1997 年の供用開始以来、毎年加速器構成機器のレベル測量を実施している。周長約 1.5 km の蓄積リングは 48 セルで構成されている。このうちレベル測量では、各セル3つの共通架台両端に設置された四極電磁石天面の測量点 6 点、一周で約 280 点のレベルを計測している。 しかし、各セル 6 点を順次計測した場合では、環閉合差(一周計測して、開始点に戻った時の高さの差)が 4 - 6 mm にもなってしまい、離れた場所の高さを比べられなかった。 2014 年より、レベル測量の改良を計った。概要は、1) 各セル1点 (約30m 間隔) の測定で全周を計測、2) 予め校正された 2 台の標尺を使用して、各点で独立に2 回計測、3) 2 回の計測差が 0.1 mm 以上であれば再測定、4) 測定しない残りの各セル5点はレーザートラッカーのデータを使用、というものである。レーザートラッカーのデータは、レベル測量結果にウェートをかけた 3D ネットワーク解析から解析的に算出・評価を行っている。結果、環閉合差は 0.3 mm 以下と一桁以上改善され、作業日数も 1 週間から 3 日に短縮した。
 
革新的加速器技術(の提案) (8月8,9日 コンベンションホール)
13:10 - 15:10 
IPP001
p.1309
コサイン・シータ型セプタム電磁石とその超伝導応用について
Truncated iron-yoked cosine-theta septum magnet and design studies with superconducting technology

○杉田 圭,フィッシャー エクバート(ドイツ・重イオン研究所 GSI)
○Kei Sugita, Egbert Fischer (GSI Helmholtzzentrum fuer Schwerionenforschung)
 
一般に加速器の入射・取り出し部ではC型の鉄ヨークを用いたセプタム電磁石が採用されている.従って,このような電磁石を鉄ヨークが飽和するほどの高磁場(~2 T)で用いることは,漏れ磁場などの問題から困難である.一方,円形加速器では2 Tを超える電磁石には,超伝導電磁石としてコサインシータ型が採用されている.そこでコサインシータ型を取り入れた,2 Tを超えるセプタム電磁石デザインを考案した.電磁場シミュレーションでは,超伝導技術により2 Tを大幅に超えるセプタム電磁石の実現可能性が示されている.今後,技術的な開発を経て,CERNの将来計画であるFCCや医療用超伝導加速器などで用いられることが期待される.本発表では,設計の原理と,超伝導技術を採用した設計について議論する.
 
13:10 - 15:10 
IPP002
p.1313
チューンに依存しない線型、非線形および結合共鳴の生成
Tune Free Linear, Non-linear and Coupling Resonance Excitation

○中村 剛(高輝度光科学研究センター)
○Takeshi Nakamura (JASRI)
 
蓄積リングにおける共鳴は、通常、ベータトロンチューンやシンクロトロンチューンがある一定の条件を満たす際に発生する。但し、線型共鳴ではAC駆動のキッカーによるチューンによらない整数共鳴の励起が用いられており(RFKO法)、KEKではAC4極磁石による半整数共鳴励起が試験された。また、最近、AC励起源によるチューンによらない線型の結合共鳴が著者により提案された[1,2]。これに対して、ビームの入出射などに応用されている非線形共鳴についてはこれまでチューンを共鳴条件に設定し、かつラティス構成要素を励起源とすることにより励起されてきたが、これらについても励起源をAC駆動とすることにより、チューンによらずに励起する方法を提案する。この手法では、励起源をラティス要素から独立させることができるので、その強度や時間依存性を自由に設定することが可能となる。また、3次や4次共鳴、および水平・垂直結合などの異なる共鳴を同時に励起することが可能となる。これらはたとえば入射の垂直方向の空間への拡張などの可能性をもたらす。このような手法についての議論いただければ幸いである。 [1]中村剛、日本物理学会第68回年次大会 (2013)、[2] 第10回加速器学会年会(2013)
 
施設現状報告ポスター (8月8,9日 コンベンションホール)
13:10 - 15:10 
FSP001
p.1316
HIMAC加速器の現状報告
Present status of HIMAC

○片桐 健,岩田 佳之,佐藤 眞二,皿谷 有一,白井 敏之,高田 栄一,原 洋介,古川 卓司,村松 正幸,水島 康太,野田 耕司(放医研),川島 祐洋,小林 千広,本多 保男(加速器エンジニアリング)
○Ken Katagiri, Yoshiyuki Iwata, Shinji Sato, Yuichi Saraya, Toshiyuki Shirai, Eiichi Takada, Yousuke Hara, Takuji Furukawa, Masayuki Muramatsu, Kota Mizushima, Koji Noda (NIRS), Masahiro Kawashima, Chihiro Kobayashi, Yasuo Honda (AEC)
 
放射線医学総合研究所でのHIMAC加速器による重粒子線がん治療は,1994年の開始から今年で22年目を迎え,9000人以上もの患者に治療が適用されてきた.これまでの拡大ビーム法による治療に加えて,複雑な腫瘍形状や治療期間中における腫瘍患部の形状・大きさの変化に柔軟な対応が可能となる3次元スキャニング照射法による治療が2011年5月に開始された.この3次元スキャニング照射法のさらなる高精度化を目指して,シンクロトロンの202段階可変エネルギー運転法とそれを用いた高速エネルギースキャニング照射法が昨年度開始された.また,呼吸位相に合わせて腫瘍に重ね塗りを行う呼吸同期スキャニング照射法も今年開始された.さらに,これまでに開発が進められてきた超伝導回転ガントリーのコミッショニングが現在進められている.本発表ではこれらのR&Dの概要を紹介すると共に,運用の現状を報告する.
 
13:10 - 15:10 
FSP002

HIMAC維持管理の品質モニタリング (2015年度)
Reliability Monitoring for HIMAC Maintenance (2015 FY)
○福田 茂一,猪口 宏洋,奥村 克己,岩田 佳之(量子機構放医研),小林 千広,本多 保男(加速器エンジニアリング)
○Shigekazu Fukuda, Hiromi Inokuchi, Katsumi Okumura, Yoshiyuki Iwata (QST/NIRS), Chihiro Kobayashi, Yasuo Honda (AEC)
 
医療用重粒子加速器HIMACは、長年にわたる運転や整備による知識や経験などの蓄積があり、結果として故障による粒子線(ビーム)の供給中断や治療中断などが少ない高品質の稼働を維持している。装置の整備は、各々の製造会社(メーカー)の推奨による部品の交換や点検に従うが、メーカーの推奨する方法は一般的な環境を想定したもので振動・温度や運転時間など使用条件により部品の寿命や故障の発生は大きく異なってくる。 従って、高稼働率を維持するには、実際の使用条件に即した経験による実績(経験値)も重要となってくる。 HIMACでは運転中に発生する故障などの実績を定量的にモニターするために、品質指標を設定して装置全体の状態を把握している。実績のトレンドから異常を早期に察知し、データの分析、原因の究明、必要なら対策を講じるなどPDCA(Plan-Do-Check-Action)サイクルを進めることが大切である。HIMACの整備においてPDCAサイクルによる取り組みは、効率的で最適な整備を行うこととなりコスト削減に寄与するものである。 2015年度の実績のトレンドから、各品質指標の目的(設定の狙い)や各指標から得られる具体的な情報などについて紹介する。
 
13:10 - 15:10 
FSP003
p.1321
放医研サイクロトロン(NIRS-930, HM-18)の現状報告
Status Report of NIRS-930 and HM-18 Cyclotron at NIRS

○杉浦 彰則,北條 悟,片桐 健,中尾 政夫,野田 章,涌井 崇志(量研機構放医研),岡田 高典,髙橋 勇一,青山 功武,井 博志(加速器エンジニアリング),野田 耕司(量研機構放医研)
○Akinori Sugiura, Satoru Hojo, Ken Katagiri, Masao Nakao, Akira Noda, Takashi Wakui (QST NIRS), Takanori Okada, Yuichi Takahashi, Isamu Aoyama, Hiroshi Ii (AEC), Koji Noda (QST NIRS)
 
量子科学技術研究開発機構放射線医学総合研究所のサイクロトロン施設には、NIRS-930(K=110)とHM-18(K=20)のサイクロトロンが設置されている。 NIRS-930は、放射性薬剤の研究開発を中心に、荷電粒子の核破砕反応測定、陽子線治療の高度化のための基盤研究、放射線生物学の基礎実験、放射線検出器の開発、耐放射線性評価試験等に対して使われている。平成27年度は1707時間が利用された。特に放射性薬剤の研究開発では放射線内用療法の研究開発のため211Atを製造する割合がさらに多くなった。加えて治療薬の製造にはより高いビーム強度が求められていることから、その製造に使われる34 MeV, Heや24 MeV, H2のビーム強度アップのための調整運転が行われている。他に、27 MeV, Heや144 MeV, Cの提供が新規に行われた。また、老朽化対策としてマグネチックチャンネル用電源の交換やデフレクターの更新等を行った。 HM-18は放射性薬剤の製造及び研究開発専用に使われている。18 MeV, 陽子及び9 MeV, 重陽子を供給可能であり、11Cや18F、15O等を用いた放射性薬剤の製造及び研究開発に利用されている。平成27年度は1554時間が利用された。 本報告では、サイクロトロン施設の利用状況、加速器のR&D、故障事例について述べる。
 
13:10 - 15:10 
FSP004
p.1325
群馬大学重粒子線医学センターの現状報告
Present Status of Gunma University Heavy Ion Medical Center

○想田 光,菊池 遥(群大重医セ),藤本 哲也(加速器エンジニアリング),遊佐 顕,田代 睦,島田 博文,松村 彰彦,久保田 佳樹,金井 達明,取越 正己(群大重医セ)
○Hikaru Souda, Haruka Kikuchi (GHMC), Tetsuya Fujimoto (AEC), Ken Yusa, Mutsumi Tashiro, Hirofumi Shimada, Akihiko Matsumura, Yoshiki Kubota, Tatsuaki Kanai, Masami Torikoshi (GHMC)
 
群馬大学重粒子線医学センターでは、普及型炭素線治療装置による最大400MeV/uの炭素ビームを用いて2010年3月から癌患者に対する治療照射を行い、2016年4月までに累計2021名の治療を遂行した。2015年6月には、厚生労働省から先進医療の安全性点検に関する要請に基づき、2週間の集中的な点検期間において、加速器系電源の動作試験・インターロック試験などの点検を行った。治療装置の運転状況は、1日単位で治療が停止するようなトラブルはなく、概ね順調に稼働している。加速器系の不具合としては、2015年前半から全エネルギーで徐々にシンクロトロンでの捕獲効率が低下し、荷電変換薄膜の交換を行い強度を回復した。取り外した薄膜の使用期間は1年9ヶ月と短かったため、今後て定期的な点検を予定している。また、2014年度以降放電が増加したイオン源について磁場の局所的低下が測定されたため、2016年3月に予備機であるテストスタンドの永久磁石と交換を行った。RF印加時以外のベース電流はやや高いものの、交換後2ヶ月は特に放電の増加なく運転できている。実験運用については、2015年8月には140MeV/uモノピークでの生物実験照射を実用化した。また140,290,400MeV/uでのRF knock outによる取り出しの試験を行い、出射中のエネルギー・ビーム位置変動を抑え、リップルを低減したビームの出射に成功した。リップルの大きさは、平均電流に対する標準偏差で評価して57%から24%まで低減できた。
 
13:10 - 15:10 
FSP005
p.1328
神奈川県立がんセンターにおける重粒子線治療の現状
Progress Report of Carbon Therapy in KCC

○竹下 英里,蓑原 伸一,草野 陽介,山田 聰(神奈川県立がんセンター),古川 卓司,水島 康太,原 洋介,早乙女 直也,丹正 亮平,皿谷 有一,野田 耕司(放射線医学総合研究所)
○Eri Takeshita, Shinichi Minohara, Yohsuke Kusano, Satoru Yamada (Kanagawa Cancer Center), Takuji Furukawa, Kota Mzushima, Yousuke Hara, Naoya Saotome, Ryohei Tansho, Yuichi Saraya, Koji Noda (National Institute of Radiological Sciences)
 
神奈川県立がんセンター(KCC)では2005年に重粒子線治療装置の導入が決定し、約10年後の2014年10月に重粒子線治療施設(i-ROCK)が竣工を迎えた。i-ROCKはKCC病院棟に隣接しており、光子線治療を含め外科的切除や化学療法を交えた、患者毎に最適かつ総合的ながん治療を提供する場として県内外から注目を集めている。2015年12月には臨床試験としての治療を開始し、翌2016年2月からは先進医療での治療照射を始めた。現在までに約40例の前立腺がん治療を行うとともに、2016年4月から新たに保険適用となった骨軟部腫瘍に対する治療もつい先日から開始した。現在は、治療室2(水平/垂直コース)および治療室1(水平コース)を用いて治療を行っているが、残る治療室3および治療室4についても来年度初頭の稼働を目指し装置コミッショニングを実施中である。肺や肝臓などの呼吸性移動をともなう部位については、患者の呼吸波形に同期して照射する、いわゆる呼吸同期照射を採用する。呼吸同期照射では、呼吸波形の取得手法や、治療計画時にその動き量をマージンとしていかに考慮するかなど、さまざまなシステムを含んだ総合的なコミッショニングが必要となる。本会では、これらコミッショニング結果を示すとともに施設の現状報告を行う。
 
13:10 - 15:10 
FSP006
p.1332
若狭湾エネルギー研究センターシンクロトロンの現状
Present Status of the Synchrotron of the Wakasa Wan Energy Research Center

○栗田 哲郎,羽鳥 聡,林 豊,山田 裕章,小田桐 哲也,廣戸 慎,清水 雅也,山口 文良,淀瀬 雅夫,長崎 真也,和田 一人,辻 宏和(若狭湾エネルギー研究センター)
○Tetsuro Kurita, Satoshi Hatori, Yutaka Hayashi, Hiroaki Yamada, Tetsuya Odagiri, Shin Hiroto, Masaya Shimizu, Fumiyoshi Yamaguchi, Masao Yodose, Shinya Nagasaki, Kazuto Wada, Hirokazu Tsuji (WERC)
 
若狭湾エネルギー研究センター加速器施設(W-MAST)は、タンデム加速器および、それを入射器としたシンクロトロンによって、広範囲のエネルギーのイオンビーム(陽子 : 数MeV-200MeV; He, C : 数 MeV- 55MeV/u)を様々な実験に供給している。 シンクロトロンからのビームは、材料/生物への照射実験に利用されている。 2015年度は、5月から2016年3月まで運転をおこなった。 入射器であるタンデム加速器のターミナル電圧が定格まで上がらないという問題があり、低い入射エネルギーでの運転をしいられたが、ほぼ計画通り実験にビームを供給できた。 近年、加速高周波に重畳する位相ノイズが原因のダイポール振動が問題になっている。 その対策および加速高周波制御系の整備状況を報告する。
 
13:10 - 15:10 
FSP007
p.1336
理研重イオンリニアックの現状報告
Present Status of RILAC

山内 啓資(住重加速器サービス株式会社),○池沢 英二(理研仁科加速器研究センター),大木 智則,小山田 和幸,田村 匡史,遊佐 陽,金子 健太(住重加速器サービス株式会社),渡邉 裕,加瀬 昌之,上垣外 修一(理研仁科加速器研究センター)
Hiromoto Yamauchi (SHI Accelerator Service,Ltd.), ○Eiji Ikezawa (RIKEN Nishina Center), Tomonori Ohki, Kazuyuki Oyamada, Masashi Tamura, Akira Yusa, Kenta Kaneko (SHI Accelerator Service,Ltd.), Yutaka Watanabe, Masayuki Kase, Osamu Kamigaito (RIKEN Nishina Center)
 
理研仁科加速器研究センターの理研重イオンリニアック(RILAC)は主加速器のRILAC、18GHz-ECRイオン源、前段入射器のFC-RFQ、ブースターのCSMで構成されている。 1981年に単独運転での各種実験へのビーム供与を開始した。この加速器は、これまでに様々な改良をするとともに、老朽化対策を実施し、36年目となる今日まで、この加速器を最上の状態に維持し続けて、様々なビームを実験に供与している。 単独運転としては、主として超重元素探索関連の実験が2002年からに行われ、2012年8月には、この実験において113番元素の3例目の合成に成功した。 入射運転としては、後段の理研リングサイクロトロン(RRC)のための入射器としての運転を1986年から行っている。また、理研RIビームファクトリー(RIBF)の複合加速器ための入射器としての運転を2006年から行っている。 老朽化対策として段階的に高周波励振器、電磁石電源、真空ポンプ、及び冷却水ポンプなどを更新した。さらに今後も継続して行う必要がある。高周波共振器の不具合個所には修理が非常に難しい微小な真空漏れ箇所や冷却水配管の劣化箇所もあり、これらは応急的な修理をしてきたが、根本的な修理が必要な時期に差し掛かっている。 本発表ではこの加速器のこの1年間における現状報告として、入射及び単独の運転状況、保守作業、及び故障状況、また、老朽化対策ついて報告する。
 
13:10 - 15:10 
FSP008
p.1339
理研RIBFにおけるリングサイクロトロンの運転報告
Status report of the operation of the RIBF ring cyclotrons

矢冨 一慎,福澤 聖児,濱仲 誠,石川 盛,小林 清志,小山 亮,仲村 武志,西田 稔,西村 誠,柴田 順翔,月居 憲俊(住重加速器サービス),○須田 健嗣,段塚 知志,藤巻 正樹,藤縄 雅,福西 暢尚,長谷部 裕雄,日暮 祥英,池沢 英二,今尾 浩士,加瀬 昌之,上垣外 修一,木寺 正憲,込山 美咲,熊谷 桂子,真家 武士,長瀬 誠,長友 傑,中川 孝秀,中村 仁音,大西 純一,奥野 広樹,大関 和貴,坂本 成彦,内山 暁仁,渡部 秀,渡邉 環,渡邉 裕,山田 一成,山澤 秀行(理研仁科センター)
Kazuyoshi Yadomi, Seiji Fukuzawa, Makoto Hamanaka, Shigeru Ishikawa, Kiyoshi Kobayashi, Ryo Koyama, Takeshi Nakamura, Minoru Nishida, Makoto Nishimura, Junsho Shibata, Noritoshi Tsukiori (SHI Accelerator Service Ltd.), ○Kenji Suda, Tomoyuki Dantsuka, Masaki Fujimaki, Tadashi Fujinawa, Nobuhisa Fukunishi, Hiroo Hasebe, Yoshihide Higurashi, Eiji Ikezawa, Hiroshi Imao, Masayuki Kase, Osamu Kamigaito, Masanori Kidera, Misaki Komiyama, Keiko Kumagai, Takeshi Maie, Makoto Nagase, Takashi Nagatomo, Takahide Nakagawa, Masato Nakamura, Jun-ichi Ohnishi, Hiroki Okuno, Kazutaka Ozeki, Naruhiko Sakamoto, Akito Uchiyama, Shu Watanabe, Tamaki Watanabe, Yutaka Watanabe, Kazunari Yamada, Hideyuki Yamasawa (RIKEN Nishina Center)
 
理研RIBFにおける4台のリングサイクロトロン (RRC、fRC、IRC、SRC) について、2015年8月から2016年7月までの運転状況を報告する。ビーム強度の増強、および供給の安定化に向けて、改造、調整、保守に取り組んでいる。本稿ではこれまでの加速ビームの実績、当該期間の運転時間と調整時間の統計、また発生した故障とその対処等について報告する。
 
13:10 - 15:10 
FSP009
p.1344
理研AVFサイクロトロン運転の現状報告
Status report on operation of RIKEN AVF cyclotron

石川 盛,小林 清志,小山 亮,柴田 順翔,月居 憲俊,仲村 武志,西田 稔,西村 誠,濱仲 誠,福澤 聖児,矢冨 一慎(住重加速器サービス),内山 暁仁,○大関 和貴,大西 純一,奥野 広樹,加瀬 昌之,上垣外 修一,熊谷 桂子,込山 美咲,坂本 成彦,須田 健嗣,中川 孝秀,長瀬 誠,長友 傑,福西 暢尚,藤巻 正樹,真家 武士,山田 一成,渡邉 環,渡邉 裕(理研仁科センター),大城 幸光,小高 康照,山家 捷一(東京大学原子核研究センター)
Shigeru Ishikawa, Kiyoshi Kobayashi, Ryo Koyama, Junsho Shibata, Noritoshi Tsukiori, Takeshi Nakamura, Minoru Nishida, Makoto Nishimura, Makoto Hamanaka, Seiji Fukuzawa, Kazuyoshi Yadomi (SHI Accelerator Service Ltd.), Akito Uchiyama, ○Kazutaka Ozeki, Jun-ichi Ohnishi, Hiroki Okuno, Masayuki Kase, Osamu Kamigaito, Keiko Kumagai, Misaki Komiyama, Naruhiko Sakamoto, Kenji Suda, Takahide Nakagawa, Makoto Nagase, Takashi Nagatomo, Nobuhisa Fukunishi, Masaki Fujimaki, Takeshi Maie, Kazunari Yamada, Tamaki Watanabe, Yutaka Watanabe (RIKEN Nishina Center), Yukimitsu Ohshiro, Yasuteru Kotaka, Shoichi Yamaka (Center for Nuclear Study, University of Tokyo)
 
2015年8月から2016年7月までの理研AVFサイクロトロンの運転及び保守について報告する。理研AVFサイクロトロンは、理研リングサイクロトロン(RRC)の入射器として、また東京大学原子核科学研究センターのCRIBやRI製造のため単独の加速器として使用され、年間の運転時間は3000時間を超える。本報告では加速された核種、エネルギー、供給先などの内訳やトラブル、修理状況について述べる。また制御系更新の状況や単独運転時のエネルギー測定についても報告する。
 
13:10 - 15:10 
FSP010

RCNPサイクロトロン施設の現状
Present Status of the RCNP Cyclotron Facility
○福田 光宏,畑中 吉治,依田 哲彦(阪大RCNP),植田 浩史(岡山大自然科学研究科),齋藤 高嶺,田村 仁志,永山 啓一,安田 裕介,島田 健司,鎌倉 恵太,森信 俊平,久米 世大,原 周平,山野下 莉奈,Koay HuiWen(阪大RCNP)
○Mitsuhiro Fukuda, Kichiji Hatanaka, Tetsuhiko Yorita (RCNP, Osaka University), Hiroshi Ueda (Okayama University), Takane Saito, Hitoshi Tamura, Keiichi Nagayama, Yusuke Yasuda, Kenji Shimada, Keita Kamakura, Shunpei Morinobu, Toshihiro Kume, Shuhei Hara, Rina Yamanoshita, Heiwen Koay (RCNP, Osaka University)
 
RCNPサイクロトロン施設は、K140AVFサイクロトロンとそれを入射器とするK400リングサイクロトロンから構成される。AVFサイクロトロンは、核化学・核医学用RI生成に利用されているだけでなく、不安定核ビーム生成や学生実験などにもビームを供給している。リングサイクロトロンでは、陽子、重陽子、4Heなどの軽イオンビームの供給が半数以上を占め、超高分解能スペクトロメータGrand-RAIDENと組み合わせた精密原子核実験や準単色中性子実験などに利用されている。さらに最近では、ミューオン源MuSICが整備されたことにより、連続ミューオンビームを用いた共同利用実験も始まった。H27年度の運転時間は約4600時間に及び、その内、陽子(非偏極)の供給が47%、偏極陽子が12%、重陽子が10%、4Heが9%、重イオンが22%であった。 Bi系の高温超伝導線材を用いた高温超伝導偏向電磁石の開発においては、磁場測定や励磁試験等を順次進めている。イオン源開発においても、超電導ECRイオン源やECR陽子源の引出電極部に改良を加え、安定したビームを供給できるようになっただけでなく、入射ビームのリアルタイム・エミッタンス測定を可能にするペッパーポット式のエミッタンスモニターの開発も進んでいる。また、核医学用RI生成や核燃料廃棄物から出てくるLLFP核種の核変換を目指した小型加速器の概念検討も進展している。 本発表では、RCNPサイクロトロン施設の現状と開発状況等について報告する。
 
13:10 - 15:10 
FSP011
p.1348
京都大学原子炉実験所FFAG加速器施設現状報告
Status Report on FFAG accelerator complex at KURRI

○栗山 靖敏,石 禎浩,上杉 智教,阪本 雅昭,武藤 正文,森 義治(京大炉),堀田 有哉(京大工)
○Yasutoshi Kuriyama, Yoshihiro Ishi, Tomonori Uesugi, Masaaki Sakamoto, Masayuki Muto, Yoshiharu Mori (KURRI), Yuya Horita (Kyoto Univ.)
 
京都大学原子炉実験所では、FFAG加速器からの100MeVおよび150MeVの陽子ビームを用いて、 加速器駆動未臨界システム(ADS)実験、金属材料への陽子ビーム照射実験、放射性・非放射性のエアロゾルを含む化学種定量のための空気チェンバーへ照射実験、BNCTの基礎研究のための生体ラットへのビーム照射実験等が行われている。現在は昨年10月に発生した線形加速器(RFQ)の不具合への対処を行っているため、ユーザーへのビーム供給は停止しているが、今年度中には、再稼働が予定されている京都大学臨界集合体実験装置(KUCA)と結合したADS実験を3年ぶりに再開する予定である。本発表では、これらの現状とアップグレード計画についての報告を行う。
 
13:10 - 15:10 
FSP012
p.1351
京大炉電子線型加速器(KURRI-LINAC)の現状
Status of KURRI-LINAC

○阿部 尚也,高橋 俊晴,堀 順一,窪田 卓見,阪本 雅昭,高見 清(京都大学原子炉実験所)
○Naoya Abe, Toshiharu Takahashi, Jun-ichi Hori, Takumi Kubota, Masaaki Sakamoto, Kiyoshi Takami (KURRI)
 
京大炉電子線型加速器の2015年度の運転時間は、2014年度を上回る2,271.3時間であった。利用線種は中性子が35%を超えて最も多く、電子線が30%超で続き、X線16%、放射光15%の順であった。利用形態としては、放射線損傷とイメージングを含んだ放射線計測がほぼ同じ時間(24%)利用されており、RI製造・放射化分析、放射光源、核データが15%前後で続く。また、大学院教育としての利用もあり、多種多様な利用が行われている。 一方、トラブルが冷却水周りで多く発生した。フロースイッチや流量計からの漏水が相次ぎ、緊急措置を施して対応していたが、2016年1月からの長期停止期間を受け、加速器室内の冷却配管部品の大半及び配管の一部を更新した。また、モデュレータ周りの冷却水配管からの漏水も発生しており、圧着ソケットによる対策を行ったが、ソケットが適応できない全周からの漏水にも使用したために、その箇所が完全に抜けて大量の漏水が発生する事象が発生した。ハンダ溶接による対応を行ったが、配管の全面的更新が望ましい。 また改造関係では、モデュレータ過電流に伴うブレーカー断の対策と12m測定室不燃化工事を行った。前者では、平滑リアクトル変更と、インターロック回路の短縮によって達成した。後者では、2016年1月から一ヶ月半のマシン停止期間を設け、鋼板鉄骨造りの建屋にして達成した。
 
13:10 - 15:10 
FSP013
p.1355
京都大学中赤外自由電子レーザの現状
Present Status of Mid-Infrared Free Electron Laser at Kyoto University

○全 炳俊,守田 健一,桂山 翼,Suphakul Sikharin,Torgasin Konstantin,紀井 俊輝,増田 開,大垣 英明(京大エネ研)
○Heishun Zen, Kenichi Morita, Tsubasa Katsurayama, Sikharin Suphakul, Konstantin Torgasin, Toshiteru Kii, Kai Masuda, Hideaki Ohgaki (IAE, Kyoto Univ.)
 
京都大学エネルギー理工学研究所では、エネルギー材料研究への応用を主な対象とし、S-band高周波電子銃を電子源とした小型で経済的な中赤外自由電子レーザ(KU-FEL)を開発し、中赤外波長可変レーザの発生とその利用研究を行っている。本報告では、KU-FEL加速器システムの現状、将来計画について報告する。
 
13:10 - 15:10 
FSP014
p.1359
大阪府大放射線研究センターにおける加速器とその利用研究の現状
Status of the accelerators and their application researches in Radiation Research Center, OPU

○奥田 修一,宮丸 広幸,谷口 良一,秋吉 優史,小嶋 崇夫(大阪府大)
○Shuichi Okuda, Hiroyuki Miyamaru, Rhoichi Taniguchi, Masafumi Akiyoshi, Takao Kojima (Osaka Prefect. Univ.)
 
大阪府立大学(OPU)地域連携研究機構の放射線研究センターには、電子・イオン加速器があり、学内共同利用施設であると共に、学外の研究者によっても多目的に利用されている。15 MeV Sバンド電子ライナックでは、独自ビームの応用による新しい分析法の開発研究などが行われている。600 keVコッククロフト・ウォルトン電子加速器では、JAXAとの共同研究で人工衛星用太陽電池の照射試験が行われ、比較的低エネルギーでの劣化現象が新たに明らかになった。これらの加速器は、設置後40年以上経過しており、維持が困難であるが、さまざまな基礎研究に適合した汎用の利用条件は、日本でも非常に限られている。1 MeVディスクトロンイオン加速器は、譲渡されたものを整備し、RBS、PIXEなどの基礎的な分析実験を行うことができるようになった。これらの加速器は、2016年度KEK大学等連携支援事業の支援を受け、実践的な大学院教育のために整備されている。また、放射線知識普及活動や人材育成事業にも活用されている。2013年度に大学院工学研究科に新設された「量子放射線系専攻」に所属する学生のうち約3分の1が加速器に関連する研究を行っている。
 
13:10 - 15:10 
FSP015
p.1361
九州大学加速器・ビーム応用科学センターの現状報告2016
STATUS REPORT OF CENTER FOR ACCELERATOR AND BEAM APPLIED SCIENCE OF KYUSHU UNIVERSITY IN 2016

○米村 祐次郎,有馬 秀彦,池田 伸夫,石橋 健二,魚住 裕介,執行 信寛(九大工),野呂 哲夫,森田 浩介,寺西 高,若狭 智嗣,藤田 訓裕,坂口 聡志,岩村 龍典(九大理),中山 久義,高木 昭(高エネ研),森 義治(京大)
○Yujiro Yonemura, Hidehiko Arima, Nobuo Ikeda, Kenji Ishibashi, Yusuke Uozumi, Nobuhiro Shigyo (Faculty of Engineering, Kyushu University), Tetsuo Noro, Kosuke Morita, Takashi Teranishi, Tomotsugu Wakasa, Kunihiro Fujita, Satoshi Sakaguchi, Tatsunori Iwamura (Faculty of Science, Kyushu University), Hisayoshi Nakayama, Akira Takagi (KEK), Yoshiharu Mori (Kyoto University)
 
九州大学加速器・ビーム応用科学センターでは、FFAG加速器と8 MVタンデム静電型加速器を利用した加速器施設の整備が進められている。タンデム加速器・実験棟では大型散乱槽ビームラインとAMSビームラインが整備され、昨年7月から研究・教育での利用が行われている。ただし、建設期の事情でビー ム強度が1nAに制限されているため、本格的な利用は今年度に変更申請を行った後になる。FFAG加速器棟では、高エネルギー加速器研究機構から移設譲渡された電磁石等を利用し、取出しビーム輸送ラインの建設が行われている。本発表では、FFAG加速器とタンデム加速器の現在の整備状況について報告する。
 
13:10 - 15:10 
FSP016
p.1364
東大ライナック・レーザー施設報告2016
Status report of Linac/Laser Facility of University of Tokyo in 2016

○上坂 充,山下 真一,上田 徹,土橋 克広,三津谷 有貴,橋本 英子,小山 和義(東大・原子力専攻),矢野 亮太,大槻 祥平,四宮 権一,岡元 勇人(東 大・原子力国際専攻),草野 譲一,田辺 英二(㈱アキュセラ),吉田 光宏,夏井 拓也(高エネ研)
○Mitsuru Uesaka, Shinichi Yamashita, Toru Ueda, Katsuhiro Dobashi, Mitsuya Yuki, Eiko Hashimoto, Kazuyoshi Koyama (UTokyo, Nuclear Professional School), Ryota Yano, Shohei Otsuki, Kenichi Shinomiya, Hayato Okamoto (UTokyo, Dept. of NEM), Joichi Kusano, Eiji Tanabe (Acucela Inc.), Mitsuhiro Yoshida, Takuya Natsui (KEK)
 
Sバンドツインライナック・レーザー同期システムについては、フォトカソードRFガン用Erファイバーレーザードライバは安定に稼働しており、高時間分解 放射線化学実験に供されている。放射線生物分析用オンチップYbファイバーレーザー駆動誘電体加速器(電子・イオン)を開発中 である。オシレーター・増幅器の製作に成功し、今後は固体増幅とともに波長変換を行いフォトカソード電子 源の試験と誘電体加速の実証を行う。 卓上1MeVイオン加速システムのためのファイバーレーザースイッチ誘電体Blumlein回路積層型高電圧発生装置の実証試 験を行った。 950keVXバンドライナックX線システムを用いて、妙高大橋での実橋による非破壊検査試験を行った。また、加速器運転に不慣れな人でも運転が 用意となるよう、操作システムの大幅改良を行った。3.95MeVシステムでは、橋梁に対する部分角度CT技術開発のデータ収集及び産業インフラ関連の大型構造 部品の非破壊検査実証試験を行っている。また、3.95MeVシステムのX線をベリリウムに照射することで中性子の発生が期待でき、この中性子による橋梁床板内の水分の存在判定の原理実証実験を進めている。
 
13:10 - 15:10 
FSP017
p.1368
日大LEBRA電子線形加速器とTHz光源開発の現状
Status of Electron Linac and THz Source Development at LEBRA in Nihon University

○野上 杏子,早川 建,田中 俊成,早川 恭史,境 武志,佐藤 勇(日大量科研),清 紀弘,小川 博嗣(産総研),榎本 收志,大澤 哲,福田 茂樹,設楽 哲夫,古川 和朗,道園 真一郎,土屋 公央,吉田 光宏,山本 樹(高エネ研)
○Kyoko Nogami, Ken Hayakawa, Toshinari Tanaka, Yasushi Hayakawa, Takeshi Sakai, Isamu Sato (LEBRA, Nihon University), Norihiro Sei, Hiroshi Ogawa (AIST), Atsushi Enomoto, Satoshi Ohsawa, Shigeki Fukuda, Tetsuo Shidara, Kazuro Furukawa, Shinichiro Michizono, Kimichika Tsuchiya, Mitsuhiro Yoshida, Shigeru Yamamoto (KEK)
 
2015年度において日本大学電子線利用研究施設(LEBRA)の125MeV電子リニアックは172日稼動し、自由電子レーザー(FEL)、パラメトリックX線(PXR)、THz光発生を目的に約645時間の電子ビーム加速を行った。例年より稼働実績が減少しており、これは集束電磁石用電源やクーリングタワー用ポンプの故障により、1ヶ月程度加速器運転ができなかったことが原因である。また近年、クライストロン1号機RF出力窓での放電が頻発しているため、パルス幅20μsで電子ビーム加速が困難になっている。利用実験を優先するためパルス幅を短く(~15μs)して、FELユーザー実験に対応している。さらに、2010年から産業技術総合研究所と共同で進めてきたTHz光源開発では、FELラインで発生するTHz光に加え、PXRラインで発生するTHz光も詳しい特性を調べ、ユーザー利用に対応できるようにPXR発生装置下流のチェンバーを改良し取り出しのための専用ラインを整備した。
 
13:10 - 15:10 
FSP018
p.1371
シャットダウンから10年経過したKEK-PS施設の温湿度管理
Management of temperature and humidity of KEK-PS which has been shut down since 2005.

○田中 伸晃(KEK)
○Nobuaki Tanaka (KEK)
 
KEK-PS(12GeV 陽子シンクロトロン)は2005年12月、共同利用実験向けの運転を終了した。PSは、加速器研究施設が管理する加速器部分の「加速器PS」と、素粒子原子核研究所が管理する実験施設部分の「素核研PS」から構成される。これらは現在も放射線管理の対象である。 PSの空調設備は温湿度調整が停止され送風運転のみとなったが、その後、施設内の湿度上昇が確認された。 実験が終了した施設であるが、引き続き人が入域するため、良好な作業環境の維持と、土木構造体、加速器を構成する電磁石等を良好な状態に保つために、適正な温湿度管理が求められる。 加速器PSには「リニアックとメインリング」に、素核研PSには実験室の「北カウンターホール」と、ビームラインの「EP1とEP1下流部」に除湿機器が整備された。これと並行し、湿度低下に有効と考えた「外気導入の調整」を実施した。 その結果、素核研PSの温湿度データからは明らかな湿度低下が確認された。 このように素核研PSは、施設を良好な状態に維持することを可能とした。 本稿では長期間停止状態の加速器施設をいかに維持するか、その中心である温湿度管理技術について報告する。
 
13:10 - 15:10 
FSP019
p.1376
先端加速器試験施設(ATF)の現状
Status Report of the Accelerator Test Facility

○照沼 信浩,久保 浄,黒田 茂,奥木 敏行,内藤 孝,荒木 栄,福田 将史,森川 祐,田内 利明(KEK)
○Nobuhiro Terunuma, Kiyoshi Kubo, Shigeru Kuroda, Toshiyuki Okugi, Takashi Naito, Sakae Araki, Masafumi Fukuda, Yu Morikawa, Toshiaki Tauchi (KEK)
 
ATFではMoUに基づく国際コラボレーション体制の下、国際リニアコライダー(ILC)で必要とされるビーム計測・制御技術の開発を進めている。特にILCの衝突ビームに必要な技術開発を狙い、ILC最終収束系の試験施設であるATF2ビームラインを利用した研究が精力的に行われている。ここでの研究には大きな2つの目標がある。一つは垂直方向37nmの極小ビームの実現であり、ILCでの衝突ビームサイズ6nmを実現するための技術開発となる。もう一つは、この極小ビームの位置を、ナノメートルレベルで制御し安定化させることであり、ILC衝突点での電子ビームと陽電子ビームの衝突を維持する技術開発である。 現在までの技術開発の結果、ATF2仮想衝突点において40nm相当の極小ビームを実現している。今後は、レーザー干渉縞を用いたビームサイズモニターの高度化、高次磁場成分の評価、wake field対策などを追求しつつ、目標値の達成と十分な安定性と再現性の確立を目指す。ナノメートルレベルでのビーム位置制御については、応答速度140nsで位置ジッターを1/5程度まで低減できることを確認しており、フィードバック回路の開発はほぼ完了している状態にある。ナノメートルの安定化をATF2で測定するためには、数nm分解能のCavity BPM開発が必要であり、現在、信号処理系の高度化を進めている。これらATFでの研究開発の現状を報告する。
 
13:10 - 15:10 
FSP020
p.1381
KEK電子陽電子入射器の現状
Present Status of the KEK Electron/Positron Injector Linac

○横山 和枝,明本 光生,荒川 大,荒木田 是夫,飯田 直子,池田 光男,岩瀬 広,榎本 收志,榎本 嘉範,大沢 哲,大西 幸喜,小川 雄二郎,柿原 和久,風間 慎吾,梶 裕志,片桐 広明,紙谷 琢哉,菊池 光男,小磯 晴代,Qiu Feng,佐武 いつか,佐藤 政則,佐藤 大輔,設楽 哲夫,周 翔宇,白川 明広,末武 聖明,杉本 寛,諏訪田 剛,清宮 裕史,田中 窓香,多和田 正文,張 叡,峠 暢一,中尾 克巳,中島 啓光,夏井 拓也,肥後 寿泰,福田 茂樹,船越 義裕,古川 和朗,本間 博幸,松下 英樹,松本 修二,松本 利広,三浦 孝子,三川 勝彦,道園 真一郎,三増 俊弘,宮原 房史,森 隆志,森田 昭夫,矢野 喜治,吉田 光宏(高エネルギー加速器研究機構)
○Kazue Yokoyama, Mitsuo Akemoto, Dai Arakawa, Yoshio Arakida, Naoko Iida, Mitsuo Ikeda, Hiroshi Iwase, Atsushi Enomoto, Yoshinori Enomoto, Satoshi Ohsawa, Yukiyoshi Ohnishi, Yujiro Ogawa, Kazuhisa Kakihara, Shingo Kazama, Hiroshi Kaji, Hiroaki Katagiri, Takuya Kamitani, Mitsuo Kikuchi, Haruyo Koiso, Qiu Feng, Itsuka Satake, Masanori Satoh, Daisuke Satoh, Tetsuo Shidara, Xiangyu Zhou, Akihiro Shirakawa, Masaaki Suetake, Hiroshi Sugimoto, Tsuyoshi Suwada, Yuji Seimiya, Madoka Tanaka, Masafumi Tawada, Rui Zhang, Nobukazu Toge, Katsumi Nakao, Hiromitsu Nakajima, Takuya Natsui, Toshiyasu Higo, Shigeki Fukuda, Yoshihiro Funakoshi, Kazuro Furukawa, Hiroyuki Honma, Hideki Matsushita, Shuji Matsumoto, Toshihiro Matsumoto, Takako Miura, Katsuhiko Mikawa, Shinichiro Michizono, Toshihiro Mimashi, Fusashi Miyahara, Takashi Mori, Akio Morita, Yoshiharu Yano, Mitsuhiro Yoshida (KEK)
 
2016年2月からSuperKEKBの試運転が開始し、KEK電子陽電子入射器では、現在、4つのリングへのビーム入射を行っている。放射光施設PF、PF-ARへの入射は下流側3セクターのDC電子銃から定時入射を、SuperKEKBのHER、LER2つのリングへは、最上流部DC電子銃から交互の入射をし、2015年度は計5296時間の運転を行った。一方、下流側3セクターのDC電子銃を使用して放射光施設へのビーム供給運転を続けながら、上流側ではSuperKEKBに向けて機器のアップグレードを進めており、電子・陽電子ビームの性能向上を目的とした試験も行っている。RF電子銃及びレーザーの開発を行いながら、KEKBリングへの入射が可能になるように最上流部A1ユニット部を2階建て構造にし、上段にDC電子銃を復旧させ、2015年6月から下段の新型RF電子銃と併用できるようになった。また、低エミッタンスの陽電子ビームを実現するために、2017年度にはダンピングリングへの入射も開始される予定である。5つのリングへの安定なビームの同時入射を実現するために、電磁石のパルス化や高精度データ収集、高速RF制御、タイミングシステム、高精度アライメントなど、多様な開発を進めている。本学会では,現状報告と開発状況について述べる。
 
13:10 - 15:10 
FSP021
p.1386
KEK放射光源加速器PFリングとPF-ARの現状
Present status of PF ring and PF-AR at KEK

○小林 幸則(KEK 加速器研究施設)
○Yukinori Kobayashi (KEK Accelerator Laboratory)
 
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構(KEK)の放射光科学研究施設(フォトンファクトリー:PF)は、1982 年から今日まで33 年の長きにわたり大学共同利用を中心にした運営を行い、物質科学および生命科学を中心にした基礎科学の発展に貢献してきた。現在では、2.5GeV PFリングと6.5 GeV PFアドバンストリング(PF-AR)の2つの放射光専用リングを運転し、年間3,500 人を超えるユーザーに対して紫外線からX線までの放射光を供給している。PFリングでは、高輝度化改造により低エミッタンス化が実現し性能が向上した後、挿入光源増強計画により短周期アンジュレータの4台の新設が完了するとともに、90年代前半に製造されたアンジュレータの更新が進んできている。PF-ARにおいては、高度化改造によりビーム寿命が大幅に改善し、フルエネルギー入射を目指した直接入射路増強計画が進行している。本年会では、最近のPFリングとPF-ARの運転状況と更新計画について報告する。
 
13:10 - 15:10 
FSP022

ニュースバル放射光施設の現状
Present Status of NewSUBARU Synchrotron Light Facility
○宮本 修治,庄司 善彦,橋本 智,天野 壯(兵庫県立大高度研),竹内 裕嗣,森里 邦彦,濱田 洋輔,大熊 春夫,後藤 俊治(高輝度センタ ー)
○Shuji Miyamoto, Yoshihiko Shoji, Satoshi Hashimoto, Sho Amano (LASTI, Univ. Hyogo), Hirosi Takeuchi, Kunihiko Morisato, Yousuke Hamada, Haruo Ohkuma, Syunji Goto (JASRI)
 
ニュースバル放射光施設は、SPring-8電子線形加速器からの電子を入射し、1GeV / 300mAでのTopUpモード運転、および350mAまで電子入射後1.5GeVへ加速して、蓄積モード運転をしている。年間約2200時間運転し、1500時間程度のビームライン利用運転を行ってる。放射光の利用には、9本のビームラインが 稼働中で、材料分析、軟X線ナノ加工、バイオチップやナノマイクロデバイス製作、ガンマ線ビーム光源などに利用されている。放射光供用開始から、15年を経た老朽化対策のため、 機器の順次更新、補修を実施している。 電子エネルギー変更を要求する利用実験からの要請で、LCSガンマ線による蓄積電子エネルギー計測を実施し、0.5GeVから1.5GeVのエネルギー範囲で高精度(<0.1%)な計測ができている。また、ユーザーの時間分解計測のために、電子バンチの新しいフィリングに対応する予定である。
 
13:10 - 15:10 
FSP023
p.1391
あいちSR光源加速器の現状
Present status of accelerators of Aichi Synchrotron Radiation Center

○真野 篤志,高嶋 圭史,保坂 将人,持箸 晃,石田 孝司(名大SRセンター),加藤 政博(分子研UVSOR),山本 尚人(KEK),竹田 美和(あいちSR)
○Atsushi Mano, Yoshifumi Takashima, Masahito Hosaka, Akira Mochihashi, Takashi Ishida (Nagoya University), Masahiro Katoh (UVSOR), Naoto Yamamoto (KEK), Yoshikazu Takeda (AichiSR)
 
あいちシンクロトロン光センター(あいちSR)は、愛知県の科学技術政策である「知の拠点あいち」計画における中核施設として、中部地区を中心とする産学官の協力によって整備されてきた。運営は公益財団法人科学技術交流財団が行い、加速器や放射光ビームラインなどに対する技術的な支援を、名古屋大学を中心とする大学連合が行っている。 加速器は、50 MeV直線加速器、1.2 GeVブースターシンクロトロン、1.2 GeV蓄積リングから成っている。蓄積リングは周長72 mで一部の偏向電磁石に超伝導電磁石を使用しているという特徴がある。超伝導偏向電磁石の利用により、産業利用でニーズの多い硬X線の利用が可能となっている。 あいちSRでは2013年3月26日の共用開始以降、順調に利用者が増加し、2015年度のユーザー利用率は共用ビームライン(7本)の過半数では95%を超え、全共用ビームライン総合でも80%を超えた。 2015年度に行われた加速器の主な更新としてはトップアップ入射時の蓄積ビーム振動を抑制するパルス六極電磁石入射システムの設置がある。 また、順調な運転ができていた2014年度に比べ、2015年度は直線加速器電子銃用100kV絶縁トランスのトラッキング放電損傷等、重大なトラブルが数件発生した。 本発表では、あいちSRの光源加速器の現状と施設の詳細について報告する。
 
13:10 - 15:10 
FSP024
p.1395
UVSOR-Ⅲの現状 2016
Status of UVSOR-III in 2016

林 憲志,○藤本 將輝,ミリアン ナジメ,山崎 潤一郎,手島 史綱,加藤 政博(分子研UVSOR)
Kenji Hayashi, ○Masaki Fujimoto, Najmeh Mirian, Jun-ichiro Yamazaki, Fumitsuna Teshima, Masahiro Katoh (UVSOR)
 
自然科学研究機構分子科学研究所の放射光源リングUVSORは2016年度で33年目の運転に入った。2012年に2度目の高度化改造を行いUVSOR-Ⅲと命名された。電子エネルギー750MeV、エミッタンス17nm-rad、アンジュレータ6基を配備し、15本のビームラインが稼働している。年間約40週の運転の内36週がユーザー運転であり、毎週火・水曜日は各12時間、木曜日~金曜日は連続36時間の放射光利用が可能で、電流値300mAでのトップアップ運転を行っている。今年度春期シャットダウンでは線型加速器からブースターシンクロトロンにビームを入射するパルス電磁石の電源および電子蓄積リングの高周波加速空胴用高周波増幅器を老朽化対策として更新した。最近の加速器トラブルとして、シンクロトロンの四極電磁石コイルおよび電子蓄積リングの多極電磁石コイルからの冷却水漏れが発生した。経年劣化が原因であり当面の対策を講じた。光源開発としては、光渦、レーザーコンプトンガンマ線発生、コヒーレントテラヘルツエッジ放射や共振器型自由電子レーザーなどの研究が可能な専用ビームラインの建設を進めているところである。
 
13:10 - 15:10 
FSP025
p.1398
広島大学放射光科学研究センターの現状
Present status of Hiroshima synchrotron radiation center

○松葉 俊哉,後藤 公徳,川瀬 啓吾(広大放射光センター)
○Shunya Matsuba, Kiminori Goto, Keigo Kawase (HSRC)
 
広島大学放射光科学研究センターは、紫外線~軟X線域の放射光を利用した固体物理学を中心とする物質科学研究推進、人材育成のため1996年に設立された。2002年より全国共同利用施設となり2010年より共同利用、共同研究拠点として認定され、昨年で20周年を迎えるに至った。近年では施設の老朽化に伴うトラブルも散見されるようになり昨年度は水漏れしたビームダンパーの再度の交換作業が行われたため、調整運転が1か月延長された。そのため、ユーザータイムは1338時間であり、2011年以前の水準には届いていないが回復傾向にある。
 
13:10 - 15:10 
FSP026
p.1402
東北大学電子光理学研究センター加速器施設の現状
Status of accelerator facility in Research Center for Electron Photon Science, Tohoku University

○日出 富士雄,柏木 茂,柴崎 義信,高橋 健,長澤 育郎,南部 健一,武藤 俊哉,濱 広幸(東北大電子光)
○Fujio Hinode, Shigeru Kashiwagi, Yoshinobu Shibasaki, Ken Takahashi, Ikuro Nagasawa, Kenichi Nanbu, Toshiya Muto, Hiroyuki Hama (ELPH, Tohoku Univ.)
 
東北大学電子光理学研究センターでは全国共同利用・共同研究拠点として、1.3 GeV ブースター蓄積(BST)リングからの高エネルギーガンマ線生成を用いたクォーク・ハドロン核物理の研究をはじめ、60 MeV大強度電子線形加速器によるRI製造や放射核化学の研究、さらには50 MeV試験加速器 (t-ACTS) における超短パルス電子ビームの生成とこれによるコヒーレントテラヘルツ光源の開発研究などが進められている。現在の運転の状況や今後の予定などについて報告する予定である。
 
13:10 - 15:10 
FSP027
p.1405
IFMIF/EVEDA原型加速器の現状
Status of IFMIF/EVEDA Prototype Accelerator

○春日井 敦,坂本 慶司,近藤 恵太郎,前原 直,一宮 亮,新屋 貴浩,杉本 昌義(量研機構/六ヶ所),ナスター ホアン,奥村 義和(IFMIF/EVEDA事業チーム),ハイディンガー ローランド,カラ フィリップ(F4E)
○Atsushi Kasugai, Keishi Sakamoto, Keitaro Condo, Sunao Maebara, Ryo Ichimiya, Takahiro Shinya, Masayoshi Sugimoto (QST/Rokkasho), Juan Knaster, Yoshikazu Okumura (IFMIF/EVEDA PT), Roland Heidinger, Philippe Cara (F4E)
 
核融合エネルギーの実現に向けた日欧共同プロジェクトである幅広いアプローチ活動のもとで、国際核融合材料照射施設(IFMIF)の工学設計・工学実証活動(EVEDA)が2007年から実施されている。IFMIF は、核融合炉に用いられる構造材料,機能材料の開発のために、核融合炉に匹敵する大強度の中性子を発生し,候補材料への照射試験を行う施設であって、線形加速器で加速した40MeV/250mA/CW の重陽子ビームを液体リチウムターゲットに照射し、最大20dpa/年以上の高い中性子照射場を作る施設である。 IFMIF の工学実証における最大の課題が重陽子大電流線形加速器である。現在青森県六ケ所村の量子科学技術研究開発機構六ヶ所核融合研究所で、2019年末のプロジェクト完了を目指し原型加速器の据付調整が進行中である。現在までに100keV-140mAの重陽子入射器の試験を完了し、後段の9.8mの長尺RFQ、MEBT、ビーム診断系、ビームダンプ、175MHz-1.6MW-CWの高周波源の据付調整を行っているところである。イタリアINFNレニャーロ研究所が製作したRFQ、スペインCIEMATが担当したMEBT及び診断系については、既に六ヶ所サイトに搬入済みであり、2016年度はRFQまでのビームコミッショニング(5MeV-130mA)を開始するとともに、超伝導加速器モジュールの組み立て、液体ヘリウムを供給するクライオプラントの設置に着手する予定である。
 
13:10 - 15:10 
FSP028
p.1409
J-PARC加速器の現状
Status of J-PARC Accelerators

○長谷川 和男,金正 倫計,小栗 英知,山本 風海(原子力機構),内藤 富士雄(KEK)
○Kazuo Hasegawa, Michikazu Kinsho, Hidetomo Oguri, Kazami Yamamoto (JAEA), Fujio Naito (KEK)
 
J-PARCでは2015年の夏季メンテナンス終了後、加速器の立ち上げや調整を経て、10月中旬からハドロン実験施設(HD)と物質・生命科学実験施設(MLF)の利用運転を再開した。HDでは、夏前までのメインリング(MR)の繰り返し周期6.0秒から5.52秒に短縮し、12月には42kWのビームパワー(4月の運転開始時は24kW)まで向上した。1月にはリニアックのピーク電流を40mAに変更し、この条件で利用運転に向けた調整を、リニアック、3GeVシンクトロン(RCS)、MRで行った。それまでの利用運転は30mAであったが、更に強度を上げやすくするためである。この結果、2月のニュートリノ実験施設(NU)の利用運転を330-360kW(30mA時は300-330kW)で開始し、その後の調整により390kWに向上し、5月下旬までの予定で供給している。それ以降は6月末までHDに供給する予定である。MLFは500kWで利用運転を行っていたが、11月20日に標的の不具合により運転を停止し、予備の標的に交換して2月20日に利用運転を約200kWで再開した。2015年秋以降、主な加速器の不具合として、漏電によるリニアックの換気システムの停止、RCSのコリメータ部での真空リーク、MRの偏向電磁石の故障などがあり、2015年度全体の稼働率として、NU向けで約70%、HD向けで約86%であった。
 
13:10 - 15:10 
FSP029
p.1413
原子力機構-東海タンデム加速器の現状
Status of JAEA-Tokai Tandem Accelerator

○松田 誠(原子力機構)
○Makoto Matsuda (JAEA)
 
原子力機構-東海タンデム加速器施設における2015年度の加速器の運転日数は141日であった。最高運転電圧は18MVで、10日間の利用があった。しかし、11月に放電により一部の加速管に不調が生じ、運転電圧を低く抑えて運転を継続せざるを得なくなり、年度末には最高電圧は13MVまで下がった。利用されたイオン種は15元素(18核種、22のイオン種)である。利用分野は核物理36%、核化学26%、原子物理・材料照射33%となっている。 主な整備事項として、加速管の高エネルギー側にあるビームアパーチャーおよびファラデーカップ位置の再アライメントを行った。また、年度途中から不調となった加速管8本のの交換作業を実施した。 加速器の運転・開発状況およびビーム利用開発について報告する。
 
13:10 - 15:10 
FSP030
p.1418
筑波大学複合タンデム加速器施設の現状報告
Status Report of the Tandem Accelerator Complex at the University of Tsukuba

○笹 公和,石井 聡,大島 弘行,高橋 努,田島 義一,大和 良広,関場 大一郎,森口 哲朗,喜多 英治,上殿 明良(筑波大学応用加速器部門)
○Kimikazu Sasa, Satoshi Ishii, Hiroyuki Oshima, Tsutomu Takahashi, Yoshikazu Tajima, Yoshihiro Yamato, Daiichiro Sekiba, Tetsuaki Moriguchi, Eiji Kita, Akira Uedono (UTTAC)
 
筑波大学研究基盤総合センター応用加速器部門(UTTAC)では、6 MVタンデム加速器、1 MVタンデトロン加速器及び高分解能イオン散乱装置からなる複合タンデム加速器施設の維持管理と学内外との共同利用研究を推進している。また、陽電子消滅実験装置及びメスバウアー分光分析装置等の放射性同位元素利用実験設備の維持管理も担当している。 震災復興計画により開発整備を実施した6 MVタンデム加速器は、2016年1月に放射線発生装置としての施設検査に合格し、2016年3月より本格的な運用を開始した。また、6 MVタンデム加速器の運用開始に併せて、震災で損壊した12UDペレトロンタンデム加速器の廃止措置を実施した。2015年度は、その他の施設整備として、低速イオンビーム実験装置を加速器棟9階に設置した。本発表では、複合タンデム加速器施設の現状と加速器開発整備及び研究利用の状況について報告をおこなう。