TUP01  ポスター①  8月29日 14号館1421教室 13:30-15:30
SuperKEKB加速器における突発ビームロスの引き金に関するファイヤーボール仮説
Fireball Hypothesis for the Trigger of Sudden Beam Losses at SuperKEKB
 
○阿部 哲郎(高エネルギー加速器研究機構(KEK))
○Tetsuo Abe (High Energy Accelerator Research Organization (KEK))
 
SuperKEKB加速器のビーム運転では、突発ビームロス(Sudden Beam Loss、以下、SBLと言う)が深刻な未解決問題となっており、蓄積ビーム電流を上げることにおいて大きな障壁となっている。通常のビームロスでは、数十ターン以上にわたってビーム不安定性が見られるが、SBLではビーム不安定性は見られず、短いものでは1ターン内に特定の連続したバンチにのみ大きなビームロスが発生する。その結果、加速器コンポーネントやBelle-II測定器に大きなダメージを与えてしまう。このような超高速ビームロスは、従来のビームロスやビーム不安定性の原因とは明らかに違い、世界の他のどの加速器でも観測されていない特異な現象である。SuperKEKB加速器のコリメータでは、タングステンやタンタルのような高融点物質をヘッドとして使用しており、その周辺には低融点物質である銅から作られた真空容器がある。また、コリメータヘッド間のアパーチャーが数ミリと非常に狭い。さらに、バンチ電荷は大きく、バンチ間隔が狭い。これらは、世界の他の加速器と比べて、SuperKEKB加速器特有の条件と考えられ、これら条件は、UHF帯連続波の高周波加速空洞で観測されているファイヤーボール(1000℃以上の高温微粒子)起因の真空放電現象の発生条件に適合する。本発表にて、SBLの引き金の候補としてのファイヤーボール仮説を提案し、それを支持する理論的考察や、シミュレーション等の結果について報告する。