TUP021  ポスター①  10月18日 会議室P 13:30-15:30
KEKB入射器陽電子源における陽電子捕獲過程の直接観測
Direct observation of positron capture process at the positron source of the KEKB injector linac
 
○諏訪田 剛(KEK加速器)
○Tsuyoshi Suwada (KEK Acc. Lab.)
 
KEK電子陽電子入射器では、SKEKBリングへの陽電子増強を目指し、2020年夏期保守にe+捕獲部の改造を行なった. 本改造では、e+集束用フラックスコンセントレータの放電対策、及びe+捕獲部の4箇所に偏向電磁石と広帯域モニターが新たに設置された. e+捕獲部は、上流のe+標的により放射線環境が悪いこと、ソレノイド電磁石列により設置空間の余裕が厳しいこと、さらにe+標的内でほぼ等量の電子と陽電子が同時に生成されるので広帯域に分解しないと分離検出が難しいという問題があり、これまで診断装置は設置されていなかった. e+捕獲部内では、磁場による横方向の閉じ込めと加速管による加速が同時に行われる. この結果、e-e+は各バンチの位相スリップ過程を通し軸方向にわずかな走行時間差を生じる.このような極短時間のe-e+分離検出をどのように実現するのかが課題となる. 電子ビームの2バンチ加速に伴う陽電子の2バンチ生成時におけるe-e+の同時分離検出が広帯域モニターにより可能になった. 典型的なe-e+走行時間差は150-250 psである.このためe-e+分離検出にはモニターの広帯域化が必須であった. 広帯域モニターの実現により、e-e+の同時検出だけでなく、さらに複雑なe-e+の位相スリップ過程の直接観測も可能になった. これは世界初の成果である. 本報告に、これまでの経緯と得られた成果についてまとめることにする.