TUOPA01  合同セッション  10月18日 会議室A 9:40-10:10
重力波観測の今・未来
Gravitational wave observation -now and future
 
○都丸 隆行(国立天文台)
○Takayuki Tomaru (National Astronomical Observatory of Japan)
 
2022年現在までに合計90個の重力波イベントが観測されており、そのほとんどは太陽質量の数10倍の質量を持つ連星ブラックホール合体から放射されたものである。何故これほど多くの重いブラックホールが宇宙に存在するのかについては謎である。また、連星中性子星合体や中性子星-ブラックホール連星合体からの重力波イベントもいくつか発見されている。特に2017年に検出された連星中性子星合体GW170817では重力波検出の1.7秒後にショートガンマ線バースト(SGRB)が観測され、長年謎であったSGRBの起源がほぼ特定されるなど大きな成果を上げた。 このように、重力波天文学は飛躍的に発展を続けている。日本では米国LIGO、ヨーロッパVirgoに続いて第3極の重力波望遠鏡KAGRAの運用を開始したところであり、これによりイベント位置の特定精度向上や重力波偏波の検出などに寄与することを目指している。KAGRAはLIGO・Virgoより20年遅れて建設されたため、LHCで培われた超高真空技術など新しい加速器技術が多く導入されており、しばしば2.5世代重力波望遠鏡と呼ばれる。また、KAGRAの技術を採用したヨーロッパのEinstein Telescope(ET)など第3世代重力波望遠鏡計画も急速に進展している。ETでは最終的に連星ブラックホール合体イベントに対して赤方偏移50近くまでの感度を持つ予定であり、ブラックホールの起源について解明出来る可能性がある。 本講演では、最新の重力波観測とETなど将来の超大型重力波望遠鏡計画について報告する予定である。