THPA01  受賞講演  10月20日 会議室A 15:50-16:10
円型加速器中の電子ビームの運動で見る光の回折的振る舞い
Diffraction-like behavior of electron beam motion in a circular accelerator
 
○平岩 聡彦(理研放射光科学研究センター)
○Toshihiko Hiraiwa (RIKEN Spring-8 Center)
 
近年、世界各地で第4世代光源リングの建設や既存の大型放射光施設のアップグレード計画が進行しており、日本においても、軟X線領域をターゲットとした次世代光源リング、通称3GeVリングの建設が本格的に行われている。3GeVリングを始めとする次世代光源リングでは、高密度かつ高電流の電子ビームを蓄積しているため、ビームを廃棄する際に、真空チェンバー保護の観点から、通常、電子蓄積リングで行われているような、言わば成り行きで廃棄する手法は適用できない。3GeVリングでは、電子ビームを安全に廃棄するため、各セルの分散ピーク部に電子ビームアブソーバーを設置し、エネルギー供給遮断後、ビームシェイカーによって一定周波数の正弦波型キックをビームに与え、垂直方向にビームを広げ十分に密度を下げた後に廃棄する。ここで注意すべきは、電子ビームへのエネルギー供給が遮断されているため、ベータトロンチューンはシンクロトロン放射により時々刻々と変化し、それに伴い、共鳴条件も変化していくということである。そこで、我々は、廃棄電子ビームの運動を定式化し、振動振幅の周波数応答を計算してみたところ、それは、光の回折と全く同様の振る舞いをすることを見出した。 本講演では、安全なビーム廃棄の方法を検討する中で偶然に発見した、円型加速器中での電子ビームの運動と光の回折現象との間に潜む類似性とその応用について議論する。