WEAOA03  学会賞受賞講演  8月11日 会議室A 17:50 - 18:10
高信頼性・高保守性・高輝度ビーム特性を兼ね備えたグリッド熱陰極RF電子銃の開発
Development of low-emittance gridded thermionic-cathode RF electron gun with high reliability and high maintainability
 
○安積 隆夫(高輝度光科学研究センター、理化学研究所 放射光科学研究センター、量子科学技術研究開発機構 次世代放射光施設整備開発センター),大竹 雄次(高輝度光科学研究センター)
○Takao Asaka (JASRI,RIKEN SPring-8 Center,QST), Yuji Otake (JASRI)
 
グリッド付き熱電子銃は、取り扱いが容易であることから多くの加速器施設で使用されてきた。しかしながら、グリッドのレンズ効果のため、数mm mrad以下の規格化エミッタンスが要求される軟X線FELでは使えないとされた経緯がある。我々はグリッド付き熱陰極の高保守性、長寿命といった優位性に着目し、これによる低エミッタンスビームの生成を検討した。グリッド近傍の電場歪みと電子軌道について、物理モデルによる解析とシミュレーションの両面から評価したところ、グリッドを通過する電子軌道がビーム軸と平行になる電場条件が存在し、このとき電子銃出口では粒子分布が均一でかつ最小エミッタンスを与えることが分かった。これは僅か50kVの電子銃電圧でも実現でき、2mm mrad以下/1nCの高品質ビームが生成できる。この低エミッタンスビームは、電子銃に直結した高周波空胴により即座に500keVまで加速することで、空間電荷効果によるエミッタンスの増大を回避できる。我々は、以上のスキームに基づいて製作した電子銃システムの実証試験において、2mm mrad以下の目標ビーム性能を達成していることを確認した。また、グリッドの電場歪みによるエミッタンス依存性についてもシミュレーションと一致する結果を得た。本講演では、電子銃システムの概要と実証試験で得られたビーム性能について述べる。