WEAOA01  学会賞受賞講演  8月11日 会議室A 17:10 - 17:30
薄膜フォトカソード用の再利用可能な基板としてのグラフェン
Graphene as reusable substrate for thin film photocathodes
 
○郭 磊(名大),山口 尚登(ロスアラモス国立研究所),山本 将博(高エネ研),松井 文彦(極端紫外光研究施設),Wang Gaoxue ,Liu Fangze ,Yang Ping ,Enrique R. Batista,Nathan A. Moody(ロスアラモス国立研究所),高嶋 圭史(名大),加藤 政博(広大)
○Lei Guo (Nagoya Univ), Hisato Yamaguchi (LANL), Masahiro Yamamoto (KEK), Fumihiko Matsui (UVSOR), Gaoxue Wang, Fangze Liu, Ping Yang, Batista Enrique R., Moody Nathan A. (LANL), Yoshifumi Takashima (Nagoya Univ), Masahiro Katoh (hiroshima Univ)
 
CsK2Sbフォトカソードは、低エミッタンス、可視光で励起可能、高い量子効率(QE)など多くの利点を持っており、先端加速器用高性能電子源として有力な候補と考えられている。近年我々は最適な蒸着条件を見つけ、50 nmにおいて10%程度のQEを再現性良く実現する技術を確立した。しかしながら、基板がカソード性能へもたらす影響には未知な部分が多い。本研究では、シリコン(Si)とモリブデン(Mo)の従来の基板と、それらにグラフェンをコーティングした基板を真空中で加熱洗浄した後、光電陰極物質(セシウム(Cs)、カリウム(K)、アンチモン(Sb))の蒸着、再度加熱洗浄、光電陰極物質の蒸着を繰り返し行って基板の再利用性に対するグラフェンコーティングの効果を比較した。従来型のSiおよびMo基板ではQEが大幅に減少したのに対し、グラフェンコーティングされた基板ではほぼ同等の性能が維持された。基板の状態を放射光を用いて調べたところ、500℃の加熱洗浄後にグラフェン表面では光電陰極物質であるCs、K、Sbの残留は無く、一方SiおよびMo基板ではこれらが多く残留していることが分かった。また、グラフェンは光電陰極の成膜および加熱洗浄後も損傷はないことが分かった。光電陰極物質とグラフェンの元素間の結合力について、シミュレーションによる計算結果では、Siの場合と比べて大幅に小さい結果となり、実験結果と良い一致を示した。