TULTA01  企画セッション①  8月10日 会議室A 9:00 - 10:00
電子線照射装置の工業利用
Industrial Applications of Electron beam Processing System
 
○奥田 慎平(㈱NHVコーポレーション)
○Shinpei Okuda (NHV Corporation)
 
電子加速器(電子線照射装置)が工業的に利用され始めてから半世紀以上が経過した。放射線の工業利用の幕開けは、1952年チャールスビーによるポリエチレンの放射線架橋の発見である。 わが国ではポリエチレン被覆電線の架橋による耐熱性向上から始まり、熱収縮チューブの生産、発泡ポリエチレン生産への応用など、現在に至るまで様々な分野で利用されるようになった。 高速の電子のエネルギーが物質に与えられ、分子の励起やイオン化等を生じて起こした化学反応を利用して、従来の熱や光では出来なかった特徴のある化学処理を行うのが電子線照射である。 本講演では、電子加速器の実用化例(仕様と用途)を、電子線照射の優れた特徴と共に紹介する。当初の電子加速器開発の潮流は、生産処理能力向上を目指した大型の大電流装置であったが、近年では低電圧装置のニーズも高まりをみせている。背景には、印刷分野でUV(紫外線)硬化法が広く利用されているが、UV塗料に含まれる物質が人体、環境に影響することから、EB(電子線)硬化法への置換えが検討されていること、低電圧装置はコンパクトなため応用が利きやすいなどがある。またSDGsへの取組が世界中で活発な中、電子線照射装置は半導体の特性改善を利用したインバータによる省エネ化などを通して貢献してきた。今後も電子線の更なる利用の拡大に期待する。