MOSOA01  特別講演  8月9日 会議室A 18:45 - 20:15
重粒子線がん治療の現在とこれから
Present and future of heavy ion therapy for cancers
 
○大野 達也(群馬大学腫瘍放射線学分野/重粒子線医学研究センター)
○Tatsuya Ohno (Heavy Ion Medical Center/ Department of Radiation Oncology, Gunma University Graduate School of Medicine)
 
重粒子線がん治療では、腫瘍の形状に合わせてブラッグピーク部分を拡大して照射することで標的への線量集中性は高まり、周囲の正常組織線量は低く抑えることができる。さらに、このブラッグピーク領域では高密度にエネルギーが付与されるため、エックス線に比して高い生物効果が生み出される。つまり、重粒子線治療の最大の長所は標的に対する生物学的線量分布が優れていることである。 一般の根治的エックス線治療では6-7週間の治療期間を要するのに対して、重粒子線治療では、前立腺癌3週間、骨軟部腫瘍4週間、膵臓癌3週間など、多くが4週間以内の短期照射であり、特に肺や肝臓では1-2回の照射も可能である。照射期間が短いことは、患者にとってはより早く社会復帰ができることを示し、治療施設にとってはより多くの患者を治療できるという利点につながる。 本邦では、2016年に根治的切除非適応の骨軟部腫瘍が初めて保険収載され、さらに2018年からは、頭頸部腫瘍や前立腺癌に保険適用は拡大されている。その他の疾患については、肺癌、肝臓癌、直腸癌、婦人科癌、転移癌などは先進医療として実施されているが、2016年度以降はレジストリによる評価体制が開始されている。本講演では、こうした重粒子線がん治療の現状や将来展望について紹介する予定である。