MOPOA03  合同セッション  8月9日 会議室A 10:10 - 10:40
ミューオン加速器で探る未知の素粒子現象
Muon accelerator explores unknown elementary particle physics
 
○大谷 将士(高エネルギー加速器研究機構)
○Masashi Otani (High Energy Accelerator Research Organization (KEK))
 
なぜ宇宙から反物質が消え去り、物質だけが生き残ったのか?暗黒物質の正体はいったい何なのか?素粒子の標準理論では答えることができないこれらの謎の解明には、標準理論では説明できない新現象を捉える必要がある。2021年4月にフェルミラボ研究所(FNAL)が発表したミューオン異常磁気能率(g-2)の精密測定結果は、10年以上前のブルックヘブン研究所(BNL)の測定値と無矛盾であり、標準理論による計算値とのズレは4.2標準偏差に達した。しかし、FNAL実験は、測定のかなめである直径14mのミューオン蓄積リングをBNL実験から再利用した同じ原理の測定であり、測定に由来する不定性を排除したとは言い切れない。よって、ミューオンg-2の問題に決着をつけ、新物理を紐解くためには、新しい測定原理のミューオンg-2実験が必要不可欠である。 我々はJ-PARCにおいてミューオンの冷却・加速によって得られるこれまでにない低エミッタンスビームを用いた全く新しい測定原理のミューオンg-2実験を準備している。本実験では、ミューオンをミューオニウムレーザーイオン化によって4MeVから25meVまで冷却し、その後、ミューオン線型加速器によって212MeVまで加速する。ミューオン線型加速器は324MHz RFQ、IH-DTL、1296MHz DAW-CCL、disk-loaded structureから構成され、RFQプロトタイプによる世界で初めてのミューオンの高周波加速を実現し、後段の加速空洞も製作に着手している。本講演では、実験の概要とミューオン線型加速器の開発状況について報告する。