MOP009  加速器土木・放射線防護/真空  8月9日 会議室P 12:50 - 14:50
表面を窒化した高純度無酸素Ti蒸着膜の走査透過電子顕微鏡(STEM)と電子エネルギー損失分光測定(EELS)研究
Study of high purity oxygen-free Ti deposited films with nitrided surfaces using scanning transmission electron microscopy (STEM) and electron energy loss spectroscopy (EELS)
 
小野 真聖,吉岡 和夫,吉川 一朗(東大),山中 操(物材機構),橋本 綾子(物材機構、筑波大),菊地 貴司(高エ機構),○間瀬 一彦(高エ機構、総研大)
Masato Ono, Kazuo Yoshioka, Ichiro Yoshikawa (UTokyo), Misao Yamanaka (NIMS), Ayako Hashimoto (NIMS, Univ. of Tsukuba), Takashi Kikuchi (KEK), ○Kazuhiko Mase (KEK, SOKENDAI)
 
最近我々は10–8 Pa台の超高真空下での昇華により高純度無酸素Tiを蒸着して高純度N2を導入すると表面が窒化すること、表面を窒化した高純度無酸素Tiを蒸着した真空容器は、真空排気、185℃、6時間ベーキング後に室温に戻すと、H2、H2O、O2、CO、CO2などの残留ガスを排気することなどを報告した。本研究では、表面を窒化すると活性化温度が低下する原因を明らかにするために、高純度N2を導入して表面を窒化した高純度無酸素Ti蒸着膜試料と積極的に表面を窒化しなかった高純度無酸素Ti蒸着膜試料を作製し、断面の走査透過電子顕微鏡(STEM)像、電子エネルギー損失分光(EELS)によるチタンおよび酸素のエッジ強度マップを測定して比較した。その結果、表面を窒化した試料では表面TiO2層が明瞭に観察されなかったのに対し、表面を積極的に窒化しなかった試料では表面TiO2層が明瞭に観察された。表面を窒化した試料および表面を積極的に窒化しなかった試料の断面における酸素とチタンのエッジ強度比を、表面から25 nmまでの深さまでプロットした結果、表面を窒化した試料ではTiO2中の酸素原子がTi蒸着膜内部に拡散していることを示唆する結果が得られた。これらの結果は、表面を窒化した高純度無酸素Ti蒸着膜では、表面のTiO2薄膜中の酸素原子がTi蒸着膜内部に拡散しやすく、電子照射による温度上昇で表面TiO2層中の酸素原子がTi蒸着膜内部に拡散することを示唆している。