MOP006  加速器応用・産業利用/粒子源  8月9日 会議室P 12:50 - 14:50
J-PARC MLFにおけるミュオン生成標的の照射中温度分布の観測
Observation of temperature distribution of muon production target during irradiation at J-PARC MLF
 
○的場 史朗史朗,河村 成肇,永谷 幸則(KEK物構研),牧村 俊助(KEK素核研)
○Shiro Matoba, Naritoshi Kawamura, Yukinori Nagatani (KEK IMSS MSL), Shunsuke Makimura (KEK IPNS)
 
J-PARC MLFではミュオン生成標的として,放射線損傷の分散のために回転方式の標的を採用している.加速器によって生成された3 GeVの陽子ビーム(最大0.333 mA)が,厚さ2cmの等方性黒鉛に衝突し,π中間子およびミュオンを生成させる. 回転体に接触式温度計を取り付けることができないため,これまでは熱電対を冷却ジャケットに設置して,輻射による温度上昇を測定していた.この温度測定システムの時定数は分のオーダーであるので,著しい温度上昇があった場合,加速器を迅速に停止させることができない. 我々は,回転標的の温度迅速検知システムを構築するために,赤外カメラを設置した.赤外線カメラ(ビジョンセンシング社製 VIM-640G2NL)は,陽子ビームダクト下部のポートにビーム軸と垂直に設置されている.回転標的からの輻射は,陽子ビームダクト内に45度の角度で設置された金蒸着ミラーで反射され,ZnSe真空窓を通してカメラセンサで観測される.レンズの焦点距離は150mmであり,空間分解能は約2mmである.このカメラを用いて,ビーム運転中の回転標的の温度を測定することに成功した.標的中心部には直径1.5cm程度のビームスポットと思われる高温部が観測された.現在,赤外線放射エネルギー量から絶対温度への変換の解析を行っており、陽子ビーム照射による熱伝導率の変化を解析する予定である.2021年5月現在で約8Gy程度の照射量であるが撮像画像の損傷は見られていない.