WEPP37  ポスターセッション①  9月2日 ポスター会場 12:40-14:40
Cバンド50 MWクライストロンの高効率化
Efficiency enhancement of C-band 50-MW klystron
 
○阿武 俊郎,大久保 良久(キヤノン電子管デバイス株式会社),稲垣 隆宏(理化学研究所,高輝度光科学研究センター)
○Toshiro Anno, Yoshihisa Okubo (Canon Electron Tubes & Devices Co., Ltd.), Takahiro Inagaki (RIKEN, JASRI)
 
キヤノン電子管デバイス株式会社のCバンド (5712 MHz) 50 MWクライストロンは、国立研究開発法人理化学研究所のX線自由電子レーザー施設SACLAのCバンド加速器に使用されている。このクライストロンの出力空胴部の設計を改良し高効率化したクライストロンを開発した。クライストロンの出力空胴は、集群した電子を減速しその運動エネルギーをマイクロ波のエネルギーとして取り出す機能を持つ。改良設計では出力空胴に接続するドリフト菅の直径を従来よりも小さくすることで、ドリフト菅への電界の漏れを小さくした。これにより出力空胴で電子をより減速し、より大きなマイクロ波のエネルギーが得られるようにした。Cバンド50 MWクライストロンの出力空胴は3つのセルで構成される動作モードπ/2の進行波型空胴であるため、ドリフト菅の直径の変更に伴い各セルの共振周波数とセル同士の結合係数も変更した。従来設計に対して効率を5ポイント以上向上することを目標に設計を行い、FCIコードによるクライストロンの動作シミュレーションで効率が7ポイント向上した。改良設計を適用したクライストロンを1台製作し、2020年3月に試験を実施した。出力電力50 MWでの効率は従来の43%から設計通り約7ポイント向上し50.2%となった。またビーム電圧の規格上限の370 kVでは62.5 MWの出力電力が得られた。