FROK02  企画セッション  9月4日 講演会場1 13:40-14:40
加速器施設の放射化
Activation in the accelerator facilities
 
○松村 宏(高エネルギー加速器研究機構)
○Hiroshi Matsumura (KEK)
 
加速器の運転中のビームロスにより放射化が起こる。放射化は,1次的には直接ビームロスした物質中での核反応により引き起こされる。さらに,核反応で生成した粒子により,周辺物質にも二次的な放射化が引き起こされる。結果としては加速器施設全体に放射化の可能性があり,放射線管理の対象は,ビームダクト,電磁石,加速器周辺機器,コンクリート,冷却水等,多岐にわたる。加速器の種類,加速粒子の種類,エネルギー,物質等により放射化の様子は異なる。本発表では,実測データを示しながら特徴を解説する。 加速器施設の放射化に関する大きな課題の一つが廃止措置の除染である。例えば,加速器室コンクリート壁床天井は中性子により放射化し,廃止措置を行うような長期間運転した施設では長半減期放射性核種であるEu-152やCo-60の放射能が主要核種として含まれている。放射化している部分を取り除く工事は大変であること,及びコンクリートは物量が非常に大きいことから,可能な限り放射化領域を小さく限定して労力とコストを削減したい。これらへの取り組みとして,我々のグループでは,加速器のタイプによる放射化の恐れのない施設の選別を行っている。非放射化施設と分類されれば,除染作業の苦労は大幅に軽減される。また,除染が必要な施設においても簡便に放射能濃度の推定や放射化/非放射化を判定する方法を考案している。本発表ではこれらの取り組みについても紹介する。 除染作業において,加速器の放射化部位の迅速特定は,放射化物の回収を効率的に行うために有効であり,そのための手段の一つとして,ガンマカメラに着目している。ガンマカメラとは放射能の濃淡を画像化する機器であり,10分程度で放射化部位を特定できる。各社様々なガンマカメラを販売しているが,我々は,実際に放射化している電磁石等を撮影してみて,ガンマカメラの有するべき特徴を整理している。いくつかのガンマカメラでは鮮明な放射化の画像化に成功しており,本発表で紹介する。 加速器施設の廃止措置のための研究は,廃止措置を実施するためのマニュアルとして整備を進めている。一部は今年度,「放射線施設廃止の確認手順と放射能測定マニュアル(日本放射線安全管理学会)」にまとめられて出版された。今年度中にさらに,「放射線発生装置廃止のための放射化評価マニュアル」として,より具体的なマニュアルを出版できるように作業を進めている。