FROK01  企画セッション  9月4日 講演会場1 09:00-10:00
SiCパワー半導体技術の最前線
Recent Technical Advances in SiC Power Devices
 
○田中 保宣(産業技術総合研究所先進パワーエレクトロニクス研究センター)
○Yasunori Tanaka (AIST)
 
パワーエレクトロニクスは、パワー半導体デバイスの性能向上とともに発展してきた技術分野であり、その根幹はシリコン(Si)を半導体基材としたパワー半導体デバイスであった。しかし、LSIの分野でSiの性能限界が叫ばれているのと同様に、パワー半導体デバイスでもSiの物性から予測される性能向上の限界が見えつつある状況である。その中で、炭化ケイ素(SiC)に代表されるワイドバンドギャップ(WBG)半導体は、Siと比較して桁違いに高い絶縁破壊電界強度や高い熱伝導率といった、パワー半導体用基板として重要な特性を有していることから、Siに代わる新しいパワー半導体材料として注目されてきた。中でもSiCは、①Siと同じく熱酸化により絶縁膜の形成が可能であり、MOSFETやIGBTといったSiと同じ構造のパワー半導体デバイスが実現可能、②イオン注入によりn, p両型の局所的伝導制御が可能、③イオン注入後の活性化アニールなどの一部のプロセスを除いて、Siのデバイスプロセスとの親和性が高い、等の優れた特徴を有しているため、早くからその実用化研究・開発が進み、現在では鉄道車両や自動車などの分野でもその実用化が着実に進んでいる。一方で、開発が始まった当初に期待されていたような急激な普及拡大に至っていないことも確かであり、その原因は製造方法に起因するSiCウェハの製造コストが高いこと、更にSiCウェハ中に含まれる結晶欠陥がデバイス特性、ひいては製造歩留まりに悪影響を及ぼすことにより、SiCチップの価格低下が想定よりも遅いことにあると言われている。 本講演では、SiCパワー半導体デバイスの特徴からその活用方法、実用化が進んでいる分野について紹介するとともに、更なる普及のために残された課題についても触れる。また、SiCパワー半導体デバイスはSiでは実現不可能な10 kVを超える超高耐圧を実現することが可能であるため、粒子加速器用電源などへの適用への期待も高い。本講演では、それらの分野へのSiCパワー半導体デバイス適用の取組についても紹介する。