THOHP03  学会賞受賞講演  8月1日 百周年時計台記念館 百周年記念ホール 19:40-20:00
ビーム位相制御技術開発によるAVFサイクロトロンでの重イオンマイクロビーム形成及びビーム利用の実現
Development of beam phase control technology of AVF cyclotron for realization of microbeam formation and its application
 
○宮脇 信正,倉島 俊(量子科学技術研究開発機構 高崎)
○Nobumasa Miyawaki, Satoshi Kurashima (QST Takasaki)
 
量研高崎のAVFサイクロトロンは材料科学・バイオ技術研究用途に特化し、通常のビーム照射のほか、重イオンマイクロビームやシングルパルスビーム等の特殊照射が必要な研究にもビームを提供している。四重極電磁石を用いたマイクロビーム形成には、ビーム集束時に発生する色収差を低減するため、ビームエネルギー幅(⊿E/E)を従来の10^-3台から10^-4台へ狭くすることが必須であった。そこで、RF加速においてビーム位相幅に起因するエネルギー利得の差を小さくするために、ビーム位相幅を狭小化する中心領域の改造と5倍波によるFlat-Top(FT)加速の導入を行い、サイクロトロンで最小約0.7μmのマイクロビームの形成に成功した。更に、実用化するために、中心領域で発生する位相バンチングを積極的に用いてビーム位相幅の狭小化を果すとともに、RF位相上のビームの測定・制御技術を開発し、エネルギー利得の差が最小になる正弦波の頂点で常に加速することを可能にした。その結果、難しい調整に時間を要するFT加速を使わない約2μmのマイクロビームの短時間形成とその定常的な利用を実現した。これらの技術は、前述の特殊照射の実現に加えてカクテルビームの高品位化ももたらすなど、サイクロトロンの多様なビーム利用の基盤技術となっている。