THOHP02  学会賞受賞講演  8月1日 百周年時計台記念館 百周年記念ホール 19:20-19:40
陽子線治療用小型加速器システムの開発と実用化
Development and implementation of compact accelerator systems dedicated for proton beam therapy
 
○鮱名 風太郎,青木 孝道((株)日立製作所)
○Futaro Ebina, Takamichi Aoki (Hitachi, Ltd.)
 
陽子を加速してがん等の患部へ照射する陽子線治療は、X線治療に比べて患部以外の放射線被曝を低減できる治療法として近年その需要が高まっている。特に、患部を陽子線で三次元的に走査するスキャニング照射法は、複雑な形状の腫瘍に対しても精度の高い照射が可能であることから陽子線治療において標準的な照射技術となりつつある。一方で、従来スキャニング照射法に適用可能な陽子シンクロトロンは一周が23mと大型の装置であり、その小型化は陽子線治療システムの普及における課題となっていた。我々は、2010年から北海道大学と日立製作所が協力して推進した国家プロジェクト「最先端研究開発支援プログラム」において、スキャンニング照射法に特化した当時としては世界最小となる周長18mの陽子線治療用シンクロトロンを開発した。本シンクロトロンは、4回対称かつ水平方向にのみ弱収束の光学系とすることで電磁石員数を11台にまで低減する一方、三次元磁場解析と粒子トラッキング解析を連携して偏向電磁石磁極形状を決定することにより安定な動作を実現している。陽子線治療システムの更なる小型化を目指し、高エネルギービーム輸送系への偏向電磁石設置を不要とする新たなディスパージョン補正手法を考案した。本開発によりシンクロトロンを用いた一室型陽子線治療システムの実現が可能となり、今後の更なる普及が期待される。