SAOHT01  技術研修会2  8月3日 百周年時計台記念館 百周年記念ホール 9:30-10:30
Neural Network Consoleと組込ボードSPRESENSEではじめるDeep Learningの活用
Application of Deep Learning using "Neural Network Console" and single board computer "SPRESENSE"
 
○小林 由幸(ソニー株式会社)
○Yoshiyuki Kobayashi (Sony)
 
深層学習(Deep Learning)とは、人間の脳の構造をコンピュータ上に模したニューラルネットワークをベースに発展の続く機械学習手法である。2011~12年には音声認識や画像認識の分野で従来の機械学習手法を大きく上回る性能を実現したことで、多くの研究者の注目を集めることになった。以後も深層学習を用いた認識技術は指数関数的な性能向上を続け、2015年頃から様々な課題で人の認識性能を上回る例が報告されるようになった。 深層学習は学習に用いるデータの数を増やせば増やすほど高い性能が得られるという特性を持つことから、今後も指数関数的な性能向上傾向は継続することが予想される。 また、深層学習は汎用性の高い技術でもある。実際ニューラルネットワークへの入出力データを変更するのみで、データの分類、翻訳、データ生成など様々な知的機能を実現することができる。例えば加速器の分野においては深層学習を予測問題、異常検知、制御問題に適用することで、従来手法や人と比較してより高い予測、異常検知性能、精密な制御性能の実現が期待できる。 深層学習が極めて高い予測性能を実現できる理由は、大量のデータから学習された無数のニューロンを用い、シンプルな数式や文章では説明できないほど複雑な事象をモデル化できるからである。その代償として深層学習により得られるモデルはブラックボックスであり、学習や予測結果の説明性が低いことから、説明性が重要となる分野での研究開発には向かないという指摘もある。しかしながら、より高品質、高性能なものを実現するという目的に立ち返れば、説明性よりも高い予測精度の方が研究開発の進捗のために有効に働くシーンも多い。深層学習は技術開発のありかたそのものを変える可能性を秘めた技術であるとも言える。 深層学習は高い性能と汎用性を提供する最先端の技術でありながら、その利用環境も急速に整いつつある。ソニーでは2010年より、増え続けるニーズに対応する深層学習の技術者を早期に育成するため、あるいは限られた数の専門家で効率的に多数の案件をこなすため、深層学習を用いた研究開発を効率化するソフトウェア環境の整備を続けてきた。本研修会で紹介する「Neural Network Console」は、Pythonによるプログラミングを行うことなく本格的な深層学習応用技術の開発を行うことができる深層学習の統合開発環境である。また、「SPRESENSE」はNeural Network Consoleで学習したモデルを簡単に動作ことができるボードコンピュータである。実際今日既に「Neural Network Console」「SPRESENSE」を用いることで、深層学習の専門知識をほとんど持たない初心者でも、具体的応用につなげることが可能である。深層学習は最先端であると同時に、従来の機械学習技術と比較しても活用が容易な技術であると言える。 本研修会では「Neural Network Console」「SPRESENSE」を用いながら、予測、異常検知、制御といった問題への深層学習の実践的な活用方法について解説する。