FROH01  ハドロン加速器②  8月2日 百周年時計台記念館 百周年記念ホール 9:30 -9:50
J-PARCにおける重イオン加速の検討
Study of heavy ion beam acceleration in J-PARC
 
○原田 寛之(原子力機構/J-PARC)
○Hiroyuki Harada (JAEA/J-PARC)
 
宇宙最高密度の巨大な原子核である「中性子星」に関して、中性子星同士の合体で発生した重力波の観測に、2017年人類で初めて成功した。その重力波観測によって、人類が未解明である中性子星内部の構造情報の取得が可能になった。そして、ミニ中性子星合体と相似のGeV級の高エネルギー重イオン衝突実験による宇宙最高密度物質やハイパー核の研究が世界中で加熱しており、ドイツFAIR計画、ロシアNICA計画、中国HIAF計画などの大型研究計画が進められている。J-PARCにおいても重イオン用の新たな入射器を建設し現存の2基のシンクロトロンを活用して、GeV級の重イオンビームを大強度で供給する事を目指している。J-PARCは、パルスあたり世界最高強度の陽子ビーム(10^14個を超える粒子数)を加速・供給しており、重イオンビームに対しても世界最高強度を超える大強度出力(10^11個相当の粒子数)のポテンシャルを十分有する加速器である。既存の加速器への入射の際に重イオンのリジリティを陽子と同じにすることで、重イオンも同様の横方向運動を行う。また、加速器から実験施設への大強度出力には高いビーム取り出し効率が要求されるが、ドイツGSI研究所のSIS18での70%程度と比較し、陽子で99.5%と非常に高い取り出し効率を達成しており、重イオンの大強度化も期待できる。本講演では、既存のJ-PARCの陽子ビームの状況に加えて、学術的背景や重イオン用入射器の検討状況を報告する。