WEP119  加速器応用・産業利用  8月8日 大展示ホール 13:10 - 15:10
静電加速器を用いたRBS/ERDA法による水素定量分析のための標準試料の開発
Development of standard sample for quantitative analysis of hydrogen by RBS/ERDA method with electrostatic accelerator
 
○隈元 大輝,久保 彩佳,志田 暁雄,片桐 一夫,鈴木 常生(長岡技術科学大学)
○Daiki Kumamoto, Ayaka Kubo, Akio Sida, Akio Katagiri, Tsuneo Suzuki (Nagaoka University of Technology)
 
薄膜試料の水素含有量分析手法では静電加速器を使用したRBS/ERDA法が有効であり、絶対定量が可能であることが知られている。しかし、分析精度の向上には装置のビームコンディションの把握や解析者の修得度が主な分析誤差の要因となるため、水素量が既知の標準試料の開発が熱望されている。そこで、Si基板上に水素を含む組成が既知の材料を薄膜化し、RBS/ERDA法の標準試料として適用可能な薄膜の開発を目的とした。薄膜化する材料として、RBS/ERDA法の解析の都合上、微量の重元素を含み、水素量が既知で化学的安定性が優れている酸化バナジウムフタロシアニン(VO-Pc)を選定した。成膜手法は、RBS/ERDA法の解析に要求される膜厚が500~3000Åであるため、成膜条件によって膜厚を変更することが可能な真空蒸着法を選定した。原材料のVO-Pc粉末を使用し、真空蒸着法で作製した薄膜をXRDで結晶構造同定した結果、真空蒸着法で成膜した試料はVO-Pc粉末が化学変化せずに蒸着されていることが確認された。これは組成がC-27.6%H-13.8%N-1.7%V-1.7%Oの薄膜であることを意味し、この薄膜がRBS/ERDA法の標準試料となり得ることが示唆された。この薄膜試料のRBS/ERDA分析の結果、この薄膜の水素量が28±1%と定量でき、VO-Pc本来の化学両論組成(27.8%H)と一致した。