WEP115  真空  8月8日 大展示ホール 13:10 - 15:10
SuperKEKB 陽電子リングの電子雲不安定性対策の検証と課題
Verification and remaining problems of the countermeasures against the electron cloud effect in the SuperKEKB positron ring
 
○末次 祐介,柴田 恭,福間 均,大見 和史,飛山 真理(KEK/総研大)
○Yusuke Suetsugu, Kyo Shibata, Hitoshi Fukuma, Kazuhito Ohmi, Makoto Tobiyama (KEK/SOKENDAI)
 
KEKにあるSuperKEKBの4 GeV陽電子リングでは、アンテチェンバー付きビームパイプや、内面への窒化チタン(TiN)コーティング等、様々な電子雲不安定性(Electron Cloud Effect、ECE)対策が取られている。2016年2月から6月までのPhase-1コミッショニング中、初期に観測されたアルミ製ベローズチェンバーによるECEを抑制後、ビーム電流約0.9 A(1576バンチ)から再度ECEが観測された。このビーム電流の閾値は、銅製丸パイプを用いていたKEKBの場合よりも高く、対策の一定の効果を示している。しかし同時に、対策がまだ不十分であることも示している。そこで、Phase-2コミッショニングに向けて、アンテチェンバーとTiNコーティングの再評価と平行して、さらなるECE対策を行った。すなわち、ビーム軌道近傍の電子密度のビーム電流密度(バンチ電流/バンチ間隔)依存性の測定結果とシミュレーション結果との比較から、TiNコーティングの二次電子放出率はほぼ期待値と近いが、アンテチェンバーによる光電子抑制効果が予想より低いことが推定された。また、新たなECE対策として、リングのドリフト部に永久磁石やソレノイドによってビーム方向の磁場(60~100G)を加えた。ここでは、ECE対策を再評価した結果や2018年3月から始まったPhase-2コミッショニングにおける追加対策の効果、そしてPhase-3に向けた課題等を報告する。