WEP083  ビーム診断・ビーム制御  8月8日 大展示ホール 13:10 - 15:10
0.4 - 3 GeV領域の陽子の弾き出し断面積測定
Measurement of displacement cross-section of proton for 0.4 - 3 GeV
 
○明午 伸一郎,松田 洋樹,岩元 洋介(J-PARC/JAEA),吉田 誠(J-PARC/KEK),長谷川 勝一,中本 建志(J-PARC/JAEA),牧村 俊助(J-PARC/KEK),前川 藤夫,岩元 大樹(J-PARC/JAEA),石田 卓(J-PARC/KEK)
○Shin-chiro Meigo, Hiroki Matsuda, Yosuke Iwamoto (J-PARC/JAEA), Makoto Yoshida (J-PARC/KEK), Shouichi Hasegawa, Tatsushi Nakamoto (J-PARC/JAEA), Shunsuke Makimura (J-PARC/KEK), Fujio Maekawa, Hiroki Iwamoto (J-PARC/JAEA), Taku Ishida (J-PARC/KEK)
 
大強度陽子加速器において標的及びモニタ等の構造材の損傷評価は重要となり、この評価には弾き出し断面積に粒子束を乗じた原子あたりの弾き出し(Displacement per Atom: DPA)が一般的に用いられる。弾き出し断面積には、一般的にNorgett等が提唱したNRTモデルが用いられるものの、実験データが全くないため、NRTモデルの検証・評価が行われていない。J-PARCセンターの3 GeV陽子加速器(RCS)を用い、極低温に冷却した試料に陽子ビームを入射し、試料の抵抗率変化により弾き出し断面積を測定した。試料中の損傷を維持するためには、極低温(20 K以下)に冷却する必要があるためGM冷凍機を用いた。照射に伴う試料の抵抗率増加を、試料に入射する平均陽子束と損傷当たりの抵抗率増加で除することにより、弾き出し断面積を得た。試料中に損傷が生成に伴う抵抗率増加は既知であり、高精度に校正されたビームモニタによる入射陽子平均束により弾き出し断面積を得ることができる。実験の結果、測定で得られた銅の断面積は3 GeV陽子に対し1070 bとなり、3 GeV陽子の断面積の取得に世界で初めて成功した。本実験結果と計算の比較の結果、NRTモデルは実験を4倍程度過大評価し、これまでの材料損傷評価では4倍過大評価していたことが判明した。Nordlund等により新しい損傷モデルが今年発表され、このモデルを用いて断面積を計算したところ、Nordlund等のモデルは実験をよく再現することがわかった。