THP117  真空  8月9日 大展示ホール 13:10 - 15:10
SuperKEKB陽電子ダンピングリング真空システムのコミッショニング
Commissioning of vacuum system of positron damping ring for SuperKEKB
 
○柴田 恭,末次 祐介,石橋 拓弥,白井 満,照井 真司,金澤 健一,久松 広美(KEK)
○Kyo Shibata, Yusuke Suetsugu, Takuya Ishibashi, Mitsuru Shirai, Shinji Terui, Ken-ichi Kanazawa, Hiromi Hisamatsu (KEK)
 
SuperKEKBの陽電子リング(LER)においては、入射器の途中に新たに建設されたダンピングリング(DR)を用いて低エミッタンス化されたビームが入射される。DRは周長135.5 mのレーストラック形の蓄積リングで、ビームエネルギーは1.1 GeV、最大蓄積電流は70.8 mA、ビーム蓄積時間は40 ms以上である。DRの真空システムの構築は、2018年1月に完了した。ビームパイプのコンダクタンスが小さいため、ビームパイプの排気と主ポンプである非蒸発型ゲッターポンプの活性化には約15日を要した。DRのコミッショニングは2月上旬に開始され、最初の約一ヶ月間はLERへの入射を行わないDR単独運転によるビーム調整に費やされた。この間に放射光(臨界エネルギー:0.8~0.9 keV)によるビームパイプ表面からの脱ガス(真空焼き)が順調に進行し、積算蓄積電流が0.7 Ahの時点で、蓄積電流8 mAで目標値である1000 s以上のビーム寿命が得られている。Molflow+を用いた圧力分布シミュレーションによると、この時のビームパイプ(アルミ合金製)の光刺激脱離係数は1E-4 molec./photon程度であり、ビームパイプ内の平均圧力は4E-6 Pa程度であると考えられる。3月末からはDRを用いたLER入射が行われており、これまでのところ真空システムは問題なく稼働している。