FROM04  粒子源  8月10日 特別会議室2 9:40 - 10:00
CsKTe薄膜によるGaAsのNEA活性化
A study of NEA activation of GaAs with CsKTe thin film
 
○正木 一成,栗木 雅夫(広大先端研)
○Kazunari Masaki, Masao Kuriki (Adsm of Hiroshima Univ. )
 
次世代の衝突型線形加速器ILC(International Linear Collider)では、スピン偏極電子ビームが大きな役割を果たす。また、スピン偏極電子は磁気に敏感で、かつスピン流を運ぶため、磁区観測やスピントロニクスに有用である。現状では超格子GaAsフォトカソードが、90%という高い偏極度を実現する唯一の方法である。GaAsから高スピン偏極電子を放出させるためには、真空エネルギー準位が伝導バンドの最低準位を下回るNegative Electron Affinity (NEA)表面状態が必要である。NEA表面は清浄GaAs表面にCsと酸素あるいはNF3を吸着させることで得られることがわかっている。これにより、90%という高い偏極度に加えて量子効率10%以上が実現できる。一方で、NEA表面の耐久性は低く、長期間の運転には1.0e-9 Paを下回る極高真空状態が必要であり、RF電子銃など真空環境が理想的でない条件ではビームの生成は困難である。NEA-GaAsを高耐久化できれば、真空環境の条件が緩和され、RF電子銃を含む多様な場面での利用が可能となる。我々のグループでは高耐久NEA-GaAsの実現に向け、安定な半導体薄膜を用いたヘテロ接合モデルに基づくNEA活性化を提案している。CsKTe薄膜を用いたGaAsのNEA活性化実験を行なったところ、GaAsのギャップエネルギー相当の波長800 nmの光によって有意な量子効率を確認し、NEA活性化が示唆する結果を得た。実験の詳細について報告をする。