WEP042  加速器技術/粒子源  8月5日 小ホール 13:00 - 15:00
歪み補償超格子構造を用いたスピン偏極電子源開発
Polarized Electron Source with Strain compensated SL structures
 
○山本 尚人,金 秀光(高エ研),宮内 智寛(名大工),真野 篤志(名大SR),山本 将博(高エ研),保坂 将人,高嶋 圭史(名大SR),竹田 美和(科学技術交流財団)
○Naoto Yamamoto, Jin X.g. (KEK), Tomohiro Miyauchi, Atsushi Mano (Nagoya Univ.), Masahiro Yamamoto (KEK), Hosaka Masahito, Yoshifumi Takashima (Nagoya Univ.), Yoshikazu Takeda (ASTF)
 
我々は従来型スピン偏極電子源であるGaAs/GaAsP歪み超格子薄膜構造に歪み補償と呼ばれる技術を適用し、GaAs/GaAsP歪み補償超格子構造型スピン偏極電子源を開発した。 開発においては最大720 nmまでの厚さを持つ歪み補償超格子サンプルを作製し、膜厚300 nm程度までのサンプルに対し約90%のスピン偏極度を実現できること、少なくとも膜厚500 nmまでのサンプルに対し膜厚に比例した量子効率を実現できること確認した。また、膜厚約200nmのサンプルにおいてスピン偏極度92%・量子効率1.6%を達成した。これは従来の量子効率において従来の3倍以上の性能向上となる。 さらに各膜厚のサンプルを用いて得られたスピン偏極度及び量子効率の励起光エネルギー依存性について詳細に解析することにより、膜厚の増加に対するバンドギャップ等電子源パラメータの変化を見積もった。この結果、膜厚720nmのサンプルにおいても超格子構造部分の結晶性乱れは小さく、我々の測定環境においてスピン偏極度に与える影響はほとんど無視できることがわかった。また本測定において、スピン偏極度の超格子膜厚依存性が観測されたが、これはスピン偏極電子の半導体内拡散中に生じるスピン緩和を考慮することで説明できる。 本発表では、歪み補償超格子構造と従来の歪み超格子薄膜構造を比較し、その有用性を示す。また、実際のサンプルで得られた結果とともに詳細を報告する。