THOLA01  学会賞受賞講演  8月6日 大ホール 17:20 - 17:40
強度変調型永久六極磁石を用いた中性子磁気レンズの開発及びその応用研究
Development and application of a magnetic neutron lens with modulating permanent magnet sextupole
 
○山田 雅子(ポールシェラー研究所)
○Masako Yamada (Paul Scherrer Institute)
 
中性子は磁気能率を持ち、磁場勾配が軸からの距離に比例する六極磁場中ではビーム軸に沿って振動する。この運動を制御して中性子ビーム集束に利用することができる。我々は電磁石に比べて強力かつコンパクトな六極永久磁石をベースに、同軸状の二重リング構造として入れ子になった固定内輪の周りで外輪を回転させることにより磁場強度の変調を可能にし、広いエネルギー(波長λ)分散をもつワイドバンドのパルスビームを色収差なく集束できるレンズ「強度変調型永久六極磁石(modulating-Permanent Magnet Sextupole, mod-PMSx)」を開発した。外輪の回転機構の改良、磁極の渦電流損及び鉄損の低減、回転に必要なトルクを軽減する磁気トルクキャンセラーの導入により、30Hz程度のパルスビームに同期して磁場強度変調を長期的に安定して行うことが可能となった。製作した実機をフランス・グルノーブルのILLの極冷中性子ビームラインにて実証実験を行い、これまで達成されたことのない2倍(λmax/λmin = 2)の波長範囲にわたって集束することに成功、中性子束として対象波長域で43倍と高い集光効率を実証した。さらに中性子小角散乱や拡大イメージングなど応用可能性も実証した。mod-PMSxは比較的安価でビームラインでのアライメントや運転が容易な利便性の高いシステムであるため、広く利用されることが期待される。