日本加速器学会 第13回学会賞

2017年4月26日に開催した学会賞選考委員会およびメール審議における選考をもとに、
評議員会で審議した結果、第13回(2016年度)加速器学会賞受賞者は下記の通り決定した。
(敬称略)


奨励賞 The 13th PASJ Award for Research Encouragement

氏名:西内 満美子
所属:国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構・関西光科学研究所
業績:レーザー駆動重イオン加速に関する研究
<推薦理由>
超高強度レーザーを利用した粒子加速は、一般的な加速器で用いられる高周波電場に比べ、コンパクトな 領域に桁違いに高い加速電場を生成でき、超小型加速器を実現できる。特に物質に高強度レーザーを照射 して、表面の原子を加速するレーザー駆動イオン加速は、陽子だけでなく重イオンの加速も可能で、従来 のイオン源, RFQ, DTL (IH), SDTL, ACSといった複雑なイオン加速器チェーンを、これ1つに置き換える ポテンシャルがある。
西内氏は、量子科学技術研究開発機構・関西研において、このレーザー駆動イオン加速の研究に取り組 んでおり、主に2つの業績を挙げた。1つは、関西研のJ-KARENレーザーの集光強度が向上しない原因 を調査・解明し、それを解決することで、1021Wcm-2を超える超高強度場をターゲット薄膜上で実現した。 その結果、陽子加速において、小型化可能な100fsec以下のレーザーによる従来の世界最高加速エネルギ ーを更新する40MeVの加速に成功した。
また、西内氏は、この1021Wcm-2を超える超高強度場を利用して、重イオンをフルストリップにして加速 する研究についても精力的におこなってきた。その結果、アルミ薄膜の表面に、鉄原子を配置したターゲット で、25価の鉄イオンを生成し、16 MeV/u (Total 0.9GeV)まで加速することに成功した。これはレーザー による鉄イオン加速としては、世界最高である。 このように西内氏が進めてきたレーザー駆動イオン加速における研究の独創性は高く評価できるものであり、 将来の重イオン加速器の小型化につながるものであることから、日本加速器学会・奨励賞に推薦する。

特別功労賞 The 13th PASJ Award for Distinguished Services

氏名: 工藤 治夫
所属: 工藤電機株式会社 取締役会長
業績: 加速器用電源の開発製造
<推薦理由>
工藤治夫氏はラジオ技師を青年期に経験した後、1956年に若干20歳という年齢で東北大学の研究室 からの特注電子機器の設計や試作と修理を目的として現在の工藤電機株式会社の前身である工藤電 機商会を創業した。当時は輸入品が電磁石電源の主流であったが、工藤氏は創業したばかりの自社 で東北大学の研究者とともに電源開発を始め、NMR用電磁石電源として高感度DCCTを用いた高精度な トランジスタ直流電源を1961年に初めて完成した。1965年には東北大学の5MeVバンデグラフの分析 磁石の電源を製作した。これが加速器との最初の関わりで、1976年に東北大学サイクロトロンラジ オアイソトープセンターが開設し、5本のAVFサイクロトロンのビーム輸送ラインに37台の電磁石電 源を製作し、1979年には理化学研究所の重イオンライナックに85台の電源、1980年には電子技術総 合研究所の電子ライナックに130台の電源を納入し、工藤電機は加速器電源メーカーとして大きく 成長した。1990年代にはIGBTスウィッチング電源の開発を進め、国内メーカーでは初めての加速器 用IGBT電源を東北大学の原子核理学研究施設とサイクロトロンセンターに提供した。今日では加速 器施設で工藤電機製電源を見かけない事はないほどである。
工藤氏は自身が少年時代に鉱石ラジオを製作し放送を聞いた感動を現代の少年少女に伝えることで、 学校教育で問題視されている理科離れを止め、未来のものづくり人材育成を図る目的で仙台市太白 少年少女発明クラブを立ち上げ、10年以上にわたって小学生を中心とした多くの子供達に科学の面 白さや魅力を体験する機会を提供している。
これら工藤治夫氏の活動は、電源の技術開発を通した加速器分野の発展のみならず日本のものづく り文化に大きく貢献しており、高く評価されるべきものである。