WEOL03  ハドロン加速器1  8月2日 講堂(2F) 9:30 - 9:50
散乱体設置によるJ-PARC主リングでのビームロス局所化の増強
Beam loss localization with scatterer catcher system in J-PARC main ring
 
○佐藤 洋一,橋本 義徳,栗本 佳典,白形 政司,魚田 雅彦(高エネ研・J-PARC)
○Yoichi Sato, Yoshinori Hashimoto, Yoshinori Kurimoto, Masashi Shirakata, Masahiko Uota (KEK/J-PARC)
 
大強度陽子加速器における大強度化の課題は、機器放射化の抑制である。J-PARC主リングでは、入射直線部下流を放射線対策強化区域(コリメータエリア)とし、コリメータ群を設置してビームロスを局所化させることで、区域外の機器の放射化を抑制している。各コリメータは厚いjawブロックでビームハローを捕獲しているが、その際生じる散乱粒子もコリメータエリア内で回収する必要がある。しかし、これは散乱機能と捕獲機能が未分化な状況でコリメータ群を設定しなければならないことも意味し、その最適化には長時間の調整を要する。また、jawでの散乱粒子は約2%におよぶ大きな運動量損失があり、コリメータエリアを抜けたリング曲線部でのビームロスとなることも、調整を困難にしている。本研究では、コリメータエリア上流に薄い散乱体(タングステン板)とモニターシステムを新設し、ビームロス局所化能力を実証した。これは下流コリメータ群を捕獲機能に特化させることで、散乱機能と捕獲機能を独立に操作し、また、散乱粒子の運動量損失を0.05%程度に抑えることを可能にした結果である。今後は、利用運転に適用可能なシステム開発に向けて、散乱体自体の低放射化を目的とした、グラファイトなど低原子番号物質を候補とした素材開発と、散乱体冷却機構の整備を行う。また、散乱機能と捕獲機能の独立化によるビームロス局所化シナリオの構築をシミュレーションベースで進める。