TUP082  ビーム診断・ビーム制御  8月1日 第1,2,3,4会議室他 13:00 - 15:00
チャネリングを利用したビーム操作技術の開発
Development of beam manipulation techniques using channeling phenomena
 
○高林 雄一(九州シンクロトロン光研究センター)
○Yuichi Takabayashi (SAGA Light Source)
 
高速の荷電粒子が湾曲結晶を面チャネリングする場合,荷電粒子は湾曲した原子面に沿ってチャネリングするため,荷電粒子は偏向されることになる.この現象を利用したビーム偏向のアイデアは,1976年に提案されて以来,主に陽子等のイオンビームに関して研究が行われてきた.最近では,CERNのLHCでビームのコリメーションを目的とし,6.5 TeV陽子の湾曲結晶チャネリングの実験が開始された.一方,最近になり,ドイツのMAMI(855 MeV)とアメリカのSLAC(数GeV)で,電子ビームを用いた研究も行われるようになってきた.電子ビームのエネルギーが下がると,結晶中における多重散乱の効果と量子論的効果が大きくなることが知られており,今後の研究の方向性として,より低エネルギー領域での研究が興味深いと考えられる.そこで,本研究では,255 MeVの電子ビームを用いて湾曲結晶チャネリングの研究を行うこととした.実験は,SAGA-LSのリニアックからの255 MeV電子ビームを利用して行った.標的として,厚さ40ミクロンの湾曲Si結晶を用いた.quasi-mosaic効果を利用して,結晶の(111)面を曲率半径約35 mmに湾曲させた.結晶から5.12 m下流にあるスクリーンモニタを用いてビームの角度分布を観測したところ,ビームの一部が1.4 mrad偏向されていることが確認された.この手法を用いれば,ビームの一部だけを偏向させることができるので,ビームスプリッターとして応用できる可能性がある.