TUP018  光源加速器  8月1日 第1,2,3,4会議室他 13:00 - 15:00
SPring-8蓄積リングにおけるTouschek散乱によるビーム損失について
The beam loss by Touschek scattering at the SPring-8 storage ring
 
○高雄 勝,早乙女 光一,下崎 義人((公財)高輝度光科学研究センター),田中 均(理化学研究所)
○Masaru Takao, Kouichi Soutome, Yoshito Shimosaki (JASRI), Hitoshi Tanaka (RIKEN SPring-8 Center)
 
高輝度放射光リングなど低エミッタンス電子蓄積リングでは、バンチ内電子電子散乱即ちTouschek散乱がビーム寿命に対して支配的な影響を与える。元来、Touschek散乱は衝突によりエネルギー交換した電子がRFバケットから逸れて失われることを指すが、ディスパージョンがあるところで散乱した電子は横方向に大振幅で振動を始め、RFバケット内であってもビーム損失に至ることもある。リング加速器は水平方向にディスパージョンを持つため、水平方向に大振幅を持って振動を始めるが、これがベータトロン結合により垂直方向に回り込み、垂直口径制限によりビーム損失に至ることになり得る。最近の放射光源は、より高強度の放射光を得るため狭ギャップの真空封止の挿入光源を採用することが普及しており、Touschek散乱した電子による挿入光源磁石の減磁が懸念される。この対策としてビームスクレーパーの導入が図られており、その効果を検証するため、Touschek散乱によるビーム損失について数値計算による検討を行った。Touschek散乱電子の挙動を詳しく調べた結果、モーメンタム偏差がアクセプタンス近傍にあり、数100ターンかけて垂直振動が成長し失われる電子に加えて、大きなモーメンタム偏差の電子でも数ターンで垂直口径制限に達して失われることが認められた。この結果を踏まえ、有効なスクレーパー配置についての検討結果を報告する。