TUOLP02  合同セッション  8月1日 クラーク会館 10:30 - 11:00
LHCの現状と将来のアップグレード計画
Status of LHC and future upgrade plan
 
○中本 建志(高エネ研)
○Tatsushi Nakamoto (KEK)
 
欧州原子核研究機構(CERN)のLarge Hadron Collider(LHC)は、世界最高エネルギーでの陽子・陽子衝突実験を行う、エネルギーフロンティア加速器である。世界最高の重心系衝突エネルギー(7+7=14TeV)を実現するため、トンネル内に定格8.3 Tを発生する15 m長ビーム偏向用NbTi超伝導双極磁石が1232台設置されている。LHCは、2010年から本格的なビーム運転を開始したが、運転初期のRun 1では超伝導磁石間を接続するバスラインのハンダ接続不良から、衝突エネルギーは8 TeV以下に抑えられていた。その後2年間の改修工事を経て、2015年から再開したRun 2では、衝突エネルギーも13 TeVにまで回復し、またピークルミノシティも設計値1.0×1034 cm-2s-1を超えて、順調に運転が続けられている。この間、2013年ノーベル物理学賞をもたらした『ヒッグス粒子の発見』をはじめ、数々の成果をあげている。こうした状況の中、CERNはLHCからの物理成果を将来にわたって最大限に引き出すため、積分ルミノシティを現行の10倍に増大させる『LHC高輝度(高ルミノシティ)化アップグレード(High Luminosity Large Hadron Collider: HL-LHC)』計画を立ち上げた。 本講演では、LHC加速器の現状について報告したのち、HL-LHCアップグレード計画の概要とプロジェクト成功の鍵を握る先端加速器技術開発について紹介する。最後にHL-LHC以降の将来計画について言及する。