THOL02  加速器応用・産業利用1  8月3日 講堂(2F) 9:10 - 9:30
周波数変調型可変エネルギー加速器の提案
Concept of frequency modulated variable-energy accelerator
 
○青木 孝道,羽江 隆光,堀 知新,関 孝義,中島 裕人,えび名 風太郎(株式会社 日立製作所)
○Takamichi Aoki, Takamitsu Hae, Chishin Hori, Takayoshi Seki, Yuto Nakashima, Futaro Ebina (Hitachi, Ltd.)
 
がん治療の一種である陽子線治療の普及にはシステム全体の小型化が必要である。従来加速器のシンクロトロンは偏向電磁石をパターン運転するため、取り出しビームのエネルギーを照射に用いる70MeV〜235MeVの範囲で制御可能である。一方、常伝導のシンクロトロンでは軌道周長が約18mとなり、コンパクト性に課題が有った。そこで、本研究ではシンクロトロンの長所であるエネルギー可変性を持ちながら、主磁場を超伝導電磁石の適用が比較的容易な固定磁場とできる新概念加速器の原理を案出した。新概念の加速器では各エネルギーの周回軌道が同心円ではなく偏心した配置となり、かつ動径方向に磁場が低下する弱収束磁場を用いてビームを安定周回させる。偏心した軌道配置により、各エネルギーの軌道が密に集約した集約領域が形成され、集約領域から照射に用いるエネルギーのビームを取り出すことを目指している。ビームの安定周回が実現する磁場分布を探索した結果、入射点の磁場を5T、235MeVでの磁場を4.94Tとなる磁場分布が発見された。この場合、水平チューンの範囲が0.99以上1未満、鉛直チューンの範囲が0以上0.13未満の範囲で安定周回することが光学計算によって導かれ、加速高周波周波数の変調範囲は76.2MHz〜60.1MHzとなる。この場合、最外周軌道の半径が0.5m以下となるコンパクトな加速器が実現できる。