IPP005  革新的加速器技術(の提案)  8月1,2日 第1,2,3,4会議室他 13:00 - 15:00
陽子線治療向けの大電流可変エネルギー加速器
Variable-energy accelerator with large current for proton beam therapy
 
○堀 知新,青木 孝道,関 孝義((株)日立製作所)
○Chishin Hori, Takamichi Aoki, Takayoshi Seki (Hitachi, Ltd.)
 
陽子線治療において、スループット向上は最重要課題の一つである。その方策の一つとして、大電流化による照射時間短縮がある。この観点からは、シンクロトロンよりもサイクロトロンの方が有利である。しかし、陽子線治療用の加速器には、70-230 MeV程度の範囲におけるエネルギー可変性が求められ、サイクロトロンではディグレーダによるエネルギー調整が必要となるため、230 MeVでは大電流(数百nA)であっても、70 MeVでは低電流(数nA)となっていた。そこで、本研究では、このエネルギー範囲で一定の大電流を供給することを目標に、新たな加速器を考案した。新加速器の特徴は、ビーム軌道中心がエネルギー増大に応じて偏心していくことである。これによって70-230 MeVの軌道間隔を数cmまで狭めた領域をつくることで、エネルギーの異なるビームを一つの射出チャネルから取り出せると考えた。本研究では、上記のような軌道で陽子線が安定周回する磁場を光学計算によって探索した。サイクロトロン並みの大電流化のために、磁場には等時性条件を課した。その結果、最大磁場2.45 T、最小磁場0.8 T、70-230 MeVの軌道間隔12.4 mmで、10 MeV以上で水平チューンが1.0-1.5、垂直チューンが0.5-1.0の領域に収まる解を得ることができた。ビーム安定性は、トラッキング計算によっても確認できた。