MOOL07  電子加速器/真空  8月8日 国際会議室 17:20 - 17:40
超高真空における電子刺激脱離と直流放電現象の関係
Relation between electron-stimultated desorption and dc discharge in ultra high vacuum
 
○山本 将博(高エネ研),西森 信行(量子科学技術研究開発機構)
○Masahiro Yamamoto (KEK), Nobuyuki Nishimori (QST)
 
高輝度電子ビーム源の開発は、高繰り返しX-FELや高ルミノシティーの電子‐イオン衝突型加速器の実現に不可欠である。直流電界型電子源では、電極間に高電圧を長時間安定に印可することが求められ、特に数百kV以上の高電圧を安定に維持するためには、電極間で微小な放電を繰り返して放電電圧を上昇させるコンディショニングが不可欠である。KEKに建設されたエネルギー回収型リニアックの実証機であるcompact ERLの電子銃についてコンディショニングを実施し、i)放電が停止する電圧(以下、放電停止電圧)が存在すること、ii)放電停止電圧は放電回数に対してほぼ連続的に増加すること、iii)放電発生時に放出されるガスは放電開始時の電圧と放電停止電圧の差にほぼ比例すること、iv)電圧の保持時間は放電停止電圧以下では非常に長いこと、を明らかにした。我々はこれらの現象を無矛盾に説明できる物理現象として陽極で起きる電子刺激脱離現象に注目し、超高真空における直流放電発生およびコンディショニング進行のメカニズムについて考察した。ここで得られた知見は、電子源に限らず高真空より良い真空の直流高電圧機器のコンディショニングの進行状況の判断や安定に保持できる電圧を知る点で有用である。