WEOM05  加速器応用・産業利用1  8月5日 あいあいホール 16:40 - 17:00
中性子反射率法を用いた金属磁性体コア腐食耐性に関する研究
Study of a corrosion resistant coating layer for metal magnetic cores using neutron reflectometry
 
○阿久津 和宏(CROSS東海),新関 智丈,永山 紗智子,長谷川 良雄(アート科学),佐原 雅恵,宮田 登(CROSS東海),吉井 正人(KEK),下村 昭夫(下村漆器店)
○Kazuhiro Akutsu (CROSS Tokai), Tomotake Niizeki, Sachiko Nagayama, Yoshio Hasegawa (ART KAGAKU), Masae Sahara, Noboru Miyata (CROSS Tokai), Masato Yoshii (KEK), Akio Shimomura (Shimomurashikkiten Co., Ltd.)
 
J-PARCメインリングの加速器空胴に用いられる金属磁性体カットコアは、J-PARC陽子加速システム性能を飛躍的に高めるための重要な役割を担っている。本磁性体コアは水冷方式により冷却されているため、表面シリカコーティングによる防錆加工を施し、腐食劣化を抑制している。本コーティング膜は、薄すぎると防錆能が低く、厚すぎるとクラックが生じるといった問題があり、現在、コーティング技術の高度化による改良が試みられている。本研究では、磁性体コアを模擬した基板上にポリシラザン系シリカ前駆体溶液を用いたシリカコーティング膜を作成し、中性子反射率法により、コーティング膜の厚み変化が及ぼす膜内の微細な構造変化について詳細に調べた。 中性子反射率は、J-PARC/MLF BL17に設置された偏極中性子反射率計「写楽」を用いて測定した。反射率データを解析した結果、コーティングで作成したSiO2膜の密度は通常のガラスの密度よりも低いことが明らかとなった。また、コーティング膜の厚みが厚いほど、SiO2の密度が高くなる傾向も示された。従って、本コーティング膜の厚みは薄いとSiO2の密度が低く防錆効果が低くなり、一方で厚すぎるとSiO2の高密度化によるひずみが発生し、その結果クラックが生じることが示された。現在は、これらの結果を基にコーティング法の高度化と最適な膜厚の探索を試みている。