WEOLS01  特別講演  8月5日 大ホール 18:00 - 19:00
IntCalへの道 ―――水月湖の年縞堆積物と14C年代較正―――
Towards the IntCal ---Varved sediment of Lake Suigetsu and 14C calibration---
 
○中川 毅(立命館大学古気候学研究センター)
○Takeshi Nakagawa (Ritsumeikan Univ. )
 
放射性炭素(14C)年代測定は、過去およそ5万年の年代を測るために、もっとも普通に用いられる年代決定手法である。しかし、大気中の14C濃度が時代によって一定でないことから、年代は簡単な計算式によって算出することはできず、常にデータセットにもとづいた較正を必要としている。較正データセットの精度を上げることは、地質学や考古学の全幅にわたって大きな意味を持っている。 較正データセットとしてもっとも信頼性が高いのは、樹木の年輪のデータである。だが、年輪のデータはおよそ1万3000年前までしか手に入っていない。それより古い時代については、地質学的記録に頼る必要がある。代表的なものは、海洋の堆積物中から見つかるサンゴの化石や鍾乳石から得られるデータである。だがサンゴも鍾乳石も、深海の水や石灰岩から混入する、きわめて古い炭素の影響を受けている。そのため、測定した14C年代はそのまま用いることができず、ある仮定にもとづいた補正を必要としている。 ここで登場するのが、福井県水月湖の年縞堆積物である。年縞は年輪のように一年に一枚ずつ形成され、しかも深海の水や石灰岩の影響を受けない。すなわち、非常に「素性のいい」較正データセットを作れる可能性がある。水月湖の年縞堆積物のポテンシャルはどのように引き出されたのか。論文に現れない内幕や人間模様まで含めて紹介したい。